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第三話 現世人類のアタラクシア ⑫
二人が出国を決めたという話は、たちまち国中に伝わり、すぐに国王のもとにも届いた。
トンマゼオは二人を玉間に招くと、一本のPHBメモリを差し出した。
「これがダヴィデに向かうまでの道程を示した情報だ。この国の地政学者と、周辺国への取材、そしてなによりトーテムたちの協力で、かなり正確なものになっているはずだ。雲野イヲリ殿の辿った足跡や過去の目撃情報も、そこに重なっている。道中で訪ねてみるといい」
「何から何まで……本当にお世話になります」
そう御礼を言ったソラは、カナタにメモリーを受け取るよう促した。
国王・トンマゼオは、PHBを握りしめた少女・カナタに、さりげなく最後の質問を投げた。
「なあカナタ嬢、そなたはどうしてそこまでしてソラ嬢のために尽くす?」
「自分でも分かりません。ただの口約束にここまで自分が拘る理由も。でも――」
「でも?」
「やるべきことがあるっていうのは、やっぱりいいですね」
そう言うとカナタは、頬を掻きながら照れくさげに続けた。
「何もしないまま眠るには……九十億年は少し長過ぎますから」




