第二話 予定調和のアーキタイプス ⑪
残された天海ソラは、気丈な態度でそこに立ち尽くした。
彼女は先ほどの男に対して、それまでとは打って変わった尊大な口調で語りかけた。
それは少女としてではなく、彼女の本来の肩書き――新人類たちが信仰する上霊新教の戦巫女としての立ち居振る舞いそのものだった。
「そなたら、あのトーテムを何処にやろうとしているのだ?」
「むしろ、あなたはどうしてそこまでして彼女を助けようとするのですか? 彼らは自然の理と祖霊の尊厳とを踏みにじる異端の神です。分別もなく科学に身を委ねるような、おおよそ自制心に欠けた蛮族です。答えてください、ホモ=ヌーメノン」
それを聞いた天海ソラの、すましたような表情が一瞬ぴくりと揺らぐ。
けれどすぐに元に戻って、質問に対する答を選び始めた。
「泣いていたから……では駄目か?」
「なんですって?」
「泣いていたのだ。お兄ちゃんに会いたいと」
「あの娘も被害者の一人だと?」
「そう。はからずもこの世界に生まれてしまった、可哀想なマインドのひとつだ」
「いかにも上霊新教徒の言いそうなことだ……」
「人類と人類は分かりあえない。だが僕と彼女はその限りではない」
「悪魔に誑かされているとどうして考えないのです?」
「それでもいい。僕には彼女に対して恩と責がある。それは充分な理由だ」
天海ソラは、どこまでも平行線な会話を打ち切って、彼らに鋭く言い放った。
口調を元に戻す。
「……ところで、北ルナリアのフェリブリージュの方々は何処にいるのでしょうか? ここムセイオンに来てから、僕たちは実に一度たりとも彼らの姿を拝見していないのですが」
ソラはひんやりとした視線を男たちに返した。
十四歳にしては大人びた、整った顔立ちをしていた。




