第二話 予定調和のアーキタイプス ⑦
駅を下りると、静かな田園の景観が広がっていた。
『素敵ですね』
「うん、空気が美味しい」
深呼吸をしながら天海が頷く。
それを聞くと、リュシストラテは誇らしげに言った。
『喜んで頂けて何よりです』
「とっても素敵な街です。僕はとても気に入りました」
天海は珍しく弾んだ声でリュシストラテに言い返した。
歳相応の無邪気な笑顔を見て、カナタも彼女に同意した。
田園部のところどころには、芸術品らしき大理石像も数多く見られた。
真っ白な神殿のような歴史的建造物もある。
ギリシャの遺跡みたいだなあ、と思ったカナタ。
しかしその頭上を見上げた彼女は、思いもよらなかった存在を視界に捉えることとなる。
『星条、旗?』
アメリカだった。
カナタは、なんとも言えない気分に陥った。
放牧地に差し掛かると、天海が言った。
「家畜も居るんですね」
『はい、食料だけでなく繊維産業のためにも飼育されています』
するとカナタが、戸惑ったようにリュシストラテに訊き返した。
『でもあれは……羊ですよね?』
『はい、羊です』
「シープって、なんだい?」と天海。
『西暦時代の哺乳類です。バルドには居ないはずのイキモノ』
それを聞いた天海の表情がさっと強張った。
それから非難するような視線をリュシストラテに送る。
リュシストラテは動じずに、二人に言った。
『順を追って説明します。こちらへ』




