第8話、不死者の能力
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ゲートを開きリリーのもと、ダリアの街の広場へと転移する。すると私に気付いたリリーが笑顔で迎えてくれる。
「マスター、無差別に虐殺している者がいましたので、報いを与えてあげました」
「ご苦労だったな」
そこでリリーを注視すると、約五分後に身体が爆散してしまうのが伝わってきた。これはやはり呪い、私が受けている呪いとは程遠いが、同じような力が作用している状態。いくら弱いとはいえ、リリーでは弾き返す力はない。
「あの、マスター、どうかされましたか? 」
小首を傾げるリリー。
「……いや」
私は迷っているのか? リリーを助けるのか助けないのかを。……助ける手段はある。我が身を犠牲にすれば済むだけの話。そう、それだけの話なのだ。迷う必要などなかった。私は片腕を失っているが、それ以上にリリーは私の片腕となり、また様々なものをもたらしてくれた。
……思い出してきた。私は生まれながらに全ての魔力回路が起動しており、その能力の使い方も熟知していた。そして私の能力『願いの代償』によって私だけの世界、ダンジョンを創造すると共に左腕を持っていかれたのだ。
私はリリーに向かって右手をかざす。
「マスター? 」
「リリー、私は頭のネジが抜けた、人間であって人間ではない存在。今からリリーを助けるため、そんな存在に変えてしまうかもしれないが、それでも良いか? 」
「私は、信じます! マスターを、そして私を! 」
「そうか、強いな。……そろそろ時間がなくなってきた。じっとしているのだ」
「はい! 」
願いとはもちろん、リリーが受けた呪いを弾くため、リリーを私と同じ存在にクラスアップさせる事。
そして能力『願いの代償』を発動させる。
私の背後を中心に、ゆらりと闇が生まれ広がりをみせる。そして停止した世界の中で、私の背後から紺色のスーツを身に纏った金色でミディアムヘアの女性が現れる。後方の闇に引きずり込まれそうになる中、その女性は絡みつくように背後から私に抱きついてくる。そして右腕をピンと前に伸ばしてきた後、手首を曲げて頭を指差した。
そうしてリリーを私と同じ存在、完璧な不死者へと変えるのであった。
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マスターが私を呪いから守ってくれました。でも所々記憶がなくなっているようで——それからというもの、食事やお風呂に誘っても断われるようになりました。またダンジョンに侵入した冒険者たちに容赦がなくなっていて、あの『場』を度々設けています。この間も私の目の前で場を作っていましたし。どうやら積極的にDPを求めているようですけど——
「くたばれ」
今も命乞いしている冒険者たちを、眷属たちを使い跪かせた状態で首を切断していきます。そのため私の顔に返り血がつきましたので、ハンカチで拭います。
また私も完全なる不死者になり、マスターと同じくダンジョンの一部となった事で、あと少しでDPの回収が終わる事がわかります。でもDPを求めた先に、なにが待っているのかまではわかりません。
そしてマスターが私を守ってくれた時に現れたあの女性、その時に目が合ったのですけど——
マスターを見つめる瞳とは対照的に、とても冷やかな瞳で私を見ていたような気がして、思い出すだけで胸騒ぎが収まりません。
そんな胸騒ぎを抱いたまま数年の月日が流れて、ついにDPが集まるのですが——
◆ ◆ ◆
ダンジョン内の全ての壁、空間、そして私と眷属が、まるで心臓の鼓動が大きく脈を打ち始めたかのように動き始める。
「マスター」
立っているのもキツイようで、眷属が私の腕に掴まってきた。そう考えている内にも、鼓動の大きさと早さは増していく。
そこで映像が流れ始める。大量のDPを消費してダンジョンの階層が猛烈な速度で増えていき、地中深く突き進んでいく。そしてダンジョンの最下層にあるダンジョンコアが、瞬く間に星の中心部に到達。ダンジョンコアと星のコアが接触し、やがて融合。そうして新たなコアが誕生した。新たなコアは眩い光を放ち始めたかと思うと、一度収束していき一拍の後、闇色の空気を噴出させ始めた。その闇色の空気はあっという間にダンジョンを駆け上がり、ダリアの街も包み込んだ猛烈な勢いのまま大陸中へと伸びていく。そうしてこの星全体を侵食するように闇色に変えた後、私と眷属以外の全ての生命体が闇に沈んでいくようにして命を枯らしていった。
「ダンジョンは壮大な生け贄を受け入れるための装置」
声がした方へ視線を向けると、私が能力を使用した時に後ろから抱きしめてきたあの紺色のスーツを身に纏った金髪の女性が佇んでいた。
「そして星全ての生命を刈り取る事によって、私が現世と幽界の狭間であるこの新たな世界に降臨する事が出来たわけ。というか、そろそろ私とリンクするから説明は不要かしら」
そこで私の身体が発光し出す。そしてその光が収まると、私は一番古い記憶にあった金髪の少年の姿に変わっていた。
◆ ◆ ◆
膨大な情報が音や映像、そして匂いや感触となって頭の中に流れ込んできます。その頭が痛くなる程の情報量に片膝をつき耐えていると、マスターが少年の姿に変わっている事に気が付きます。
この姿がマスターの本当の姿。
そして宇宙が生まれる前から現在に至るまでの情報と共に、あの女性の事についてもわかります。
あの女性は過去現在未来を行き来する、静止の世界の住人と呼ばれる一人。そして生命を次の段階に押し上げるための役目の中で孤独に耐えきれず、堕天するのも覚悟の上で同族を作ろうとします。その同族の卵だったのがマスター。そしてマスターがダンジョンを創造するよう仕向けてきた存在も、あの女性。
「やはり小娘、お前は異物ですわね。これから築く私と可愛いボウヤの甘い世界にお前は、土足で上がり込んでくる蛮族と同義。しかしボウヤの魂と密接に同化してしまっているお前を切り離す事は出来ないですわね」
そこで女性の眼前に返し刃が付いたナイフ程の大きさの刃物が十数本現れます。
「私とボウヤの悠久の時間の傍で、目玉やはらわたに突き刺しては引っ張り出してぐちゃぐちゃに破壊する行為を、その不死の体に延々と繰り返してあげますわ」
次話が最終話となりますデス♪♪




