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不死者のダンジョン  作者: 立花 黒


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第7話、怪人トワ

 ◆ ◆ ◆



 大陸中央部にある街、ラール。

 上がる悲鳴、飛び散る鮮血、様々な負の感情を顔面に貼り付かせ絶命する人々。

 さっきまで平和だった街の大通りには、多くの市民の死体が転がっている。それはボクが無差別に襲いかかったから。犠牲者の数は時間と共に増えていく。


 しかし、どうしてすぐ壊れちゃうのかな? どうしてすぐ逃げちゃうのかな? どうしてすぐ死んじゃうのかな? もっともっと遊びたいのになー。


 それからボクは鎖に繋げた八本の剣を闘気を纏わせる事により自在に動かして、駆けつけた衛兵たちと戯れていると——


「貴様、何者だ! ? 」


 目的のメインディッシュがボクの元に到着した。


「ボクはトワ、そういうキミは『最強五天(ごてん)』の一人、斬手(ざんしゅ)のリザルバーだね」


 最強五天、それはこの一番大きな大陸で五人の強者に与えられた称号。


 場繋ぎの玩具である衛兵を血祭りにあげると、リザルバーと対峙する。リザルバーが素手でスッと構えを取ると、気温が下がる感覚に陥る。そこでボクも血塗れた八本の剣と自身で直接握る長槍で構えを取る。そして互いに地を蹴ったのは同時だった。交わる影、繰り出す斬撃に、奏でられる金属音(・・・)。そう、リザルバーが繰り出した拳に纏った研ぎ澄まされた闘気は、ショートソード程の長さがある何物をも斬り裂く斬撃の闘気へと昇華されていた。

 流石最強五天の一人、接近戦では勝負がつくのには時間が掛かってしまいそうだ。

 そこで攻防を繰り広げる中、発動条件が揃ったので、七つの魔力回路が全て機能する事によって発現したボクの能力、『残酷な未来』を左手上に具現化。すると手の平サイズの闘気で出来たリザルバーの人形が現れる。

 そしてそれを見たリザルバーの顔に疑念の色が混ざる。


「なんだ? その能力は? 」


 そしてリザルバーはそのままでは危ういと察したようで、怒涛の攻撃を繰り出してくる。

 そこで脇に挟みこんだ槍を右腕一本で操作しながら八本の剣を動かし攻防を繰り広げ、生まれた間隙で人形の首を刎ねる。さてと、あとは実際に攻撃がいくまで逃げるだけなんだけど——飽きた。リザルバーと戯れるのに飽きた。そうしてボクは大きく跳躍すると、リザルバーを残してラールの街から去るのであった。


 ボクが強すぎるからいけないのかな? ボクに見合った相手が必要かな? ボクと楽しいひと時を過ごしてくれるのは誰かな?

 どうせやるなら——

 西方にあるダンジョンがある街ダリア。そこに片腕のネクロマンサーがいるという。『最強五天(ごてん)』という言葉が出来てからずっと数えられているだけではなく、その五天の中でも別格と噂される女。

 そいつなら甘酸っぱい体験が出来るかも。胸熱な体験が出来るかも。極上な体験が出来るかも。



 ◆



 ダリアの街、活気があるな。ダンジョンがあるため冒険者が集まり、その冒険者を相手に商売する者たちも集まることで街を形成している。その分玩具が沢山あるわけだ。

 そうしてボクは踊った。街で一番大きな通りで道ゆく人々を斬り刻みながら、笑い声をあげながら死のダンスを踊った。

 と気がつくと、横たわる大勢の死体の先にフードを目深に被った女が立っていた。女は杖を持っている事から、魔法使いのようだ。

 新しい玩具みーつけた。片腕のネクロマンサーはダンジョンに潜らないと会えないそうだから、当分の間は会えない。だからちょっとだけ、こいつで遊ぼうかな。まぁ遊ぶに値しなくても、他の玩具を見つけたらいい話だし。


 とそこで女の杖から放たれる複数の光線魔法。直線状にこちらへ真っ直ぐ伸びてくる光線を姿勢を低くして避けていく。この女、問答無用か、面白い。

 駆ける、女に向かって。その間放たれる光線を避けながら。そしてボクの射程である中距離まで間合いを詰めていくのだけど——棘? そう、今踏みしめようとしている地面には、多くの鋭い棘が生えている蔦で埋め尽くされていた。

 そのため足場を確保するため、その蔦を槍の横薙ぎで斬り飛ばし着地。しかし既にその場は女のテリトリーの中のようで、ボクは多くの蔦に取り囲まれる形となっていた。

 女、蔦を操作するのか。面白いね、楽しいね、興奮するね。

 そうして四方八方から襲いかかってくる蔦。それを八本の剣で斬り飛ばしていく。また槍の間合いに女を入れるため、ゆっくりとした足取りで前進していく。しかし前進すればしただけ、蔦の猛攻は激しさを増していく。そして間合いに捕らえたと思った時に、女がハッキリと言葉を口にした。


「烈火の刃」


 女が右腕を下から上に向かって勢いよく振った。すると女の足元から発生した炎が、まるで地を這う炎の刃のようにボクへ向かって伸びるようにして迫ってきた。


「ちっ」


 そのためボクは前進を諦めて横へ飛ぶ。しかし女は次々と炎の刃を放っていく。

 くそっ、この炎、足元の蔦を燃やしながら進んでいるため、まずい。一度逃げないと!

 しかしどこへ逃げても女が先回りするように炎を放っているため、ボクはあっという間に炎に取り囲まれてしまっていた。

 そして間近に迫る炎の壁によりボクの肌は焼けただれていき、しまいには身体に火がついてしまう。

 ボクは、こんな無名の魔法使いにやられてしまうのか? ——いやだ、嫌だ嫌だ!

 こうなれば道連れだ。女も一緒に殺してやる!


 チャレンジを一日一回しか出来ない能力『残酷な未来』を発動させるため思考をフル回転させる。半径十メートル以内に三分間は捉えていた。そうしてもう一つの発動条件である、主となる魔力回路を当てなければいけない。魔法使いという事は二つに絞られるが、単純に魔法を連発していた事から『全知全能の開花(エナジークラウン)』ではなく、恐らく『叡智の覚醒(アジリティセンス)』。

 どうだ、ボクの能力は発動するか?

 すると手の平サイズの闘気で出来た女の人形が現れた。ふははははっ、やったぞ、ボクはやったぞ!


 そうしてボクは最後の力を振り絞って、八本の剣で女の人形を粉々に破壊した所で、炎の勢いに負けて力尽きてしまった。

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