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不死者のダンジョン  作者: 立花 黒


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第4話、成長

 ◆ ◆ ◆



 俺の名はザンマ。大猿の獣人と人間とのハーフだ。そしてハーフはどこにいても迫害を受けちまう。つまり産まれながらに呪われた存在というわけだ。

 だが同族よりも大きな身体である俺は、迫害に屈しなかった。俺に石を投げる奴等は腕をへし折り、楯突く奴は力で黙らせてきた。

 俺の中では暴力こそが全て、暴力こそが正義。


 だが世の中はおかしい。正当防衛であるにも拘わらず、俺はお尋ね者になり身を隠して大陸を転々とするはめに。

 ただ盗賊団に入った事もあったが、あの時のメンツは良かった。みんな俺みたいな境遇の奴等で、気が合い暴れ回った。その時村を一つ壊滅させちまったが、あれが失敗だった。俺たち盗賊団の討伐隊が組織されちまって、その時俺以外の全員が捕縛もしくは処刑されちまったからな。

 かくいう俺も多勢に無勢、命からがら逃げてこの地に流れ着き、再度追い込まれた俺はダンジョン宝物庫に飛び込んだのだった。しかしここに逃げ込んで正解だった。ここまで潜れば冒険者もいなければ、宝箱の中には干からびて硬いがパンが入っている事もあるから。このままほとぼりが冷めるまで、やり過ごせる環境。

 それにこの通り、女にも不自由してないしな。


「おら、顔を上げろ」


 たまたま遭遇した冒険者たちを闇討ちして、その中の女を攫ってきた。自分でも盗賊の鑑だと思う行動だな。

 さてと、これからお楽しみといくか。


 俺は縄で縛られているため動けないでいる女に向けて腕を振り下ろしていく。次第に壊れていく女の顔を見て、興奮してきてしまう。たまらんな。

 そこで気配を感じた。息を殺す。

 こんな深層に冒険者か? それとも俺を追ってきた誰かか?


 俺の全ての魔力回路が起動して発現した能力は、『気配察知能力』。そんな能力クソの足しにもならないとみんな馬鹿にしていたが、俺はこの能力があったため生きながらえていた。

 まぁ、みんなには本当は三十メートルのところ、五メートル先の気配がわかると嘘の情報を伝えていたがな。そしてこれまでどんな相手でも、先制攻撃が決まり相手は屍と化していた。


 そうして俺はこれまでと同じように、ダンジョン内で冒険者たちを殺したように、両腕に鉤爪を装着すると、ダンジョンの物陰に身を潜ませながらターゲットに接近していく。そして目視が出来る位置までくると、相手が近寄ってくるのをジッと待つ事に。


 ん? ターゲットが一人なのは知っていたが、女だと?しかも肌が茶褐色だが、あれはかなりスタイルが良くてその上べっぴんだぞ。

 どうする? ……気絶させていただいちまうか。

 女は杖を持っている事から魔法使いだろう。魔法使いは接近したら、煮るなり焼くなり好き放題だ。


 舌舐めずりした俺は利き手の鉤爪だけを外すと、腰紐に引っ掛ける。そして獲物が俺の間合いに入るのを待って待って、今だっ!

 地を蹴り姿勢を低くして、女に急接近!

 そしてあと一歩踏み込んだら、女の腹に向けて拳を繰り出すだけなんだが——


 足の裏に鋭い痛みが。これは、棘、だと?

 そう、女の周辺の地べただけ、多くの植物の蔦が這っておりその蔦には多くの拳大の鋭い棘が上に向かって生えていた。

 いや、女を中心に蔦が生えている? つまりこれは女がやったのか?

 串刺しになっているため動けないでいる俺に向かって、地面を這う蔦が一斉に巻き付いてきた。身体を高速で這う棘付きの蔦により、身体に多くの傷が刻まれていく。そしてあろうことか、俺のイチモツの尿が出る穴から細い細い蔦が侵入してきた。


「ぎがっ」


 そして俺のイチモツの内部から外に向けて、細い棘が突き出してきた。使い物にならなくなったイチモツを見て、俺は激昂する。

 舐めるなよ、小娘! 長年魔力を使わずに体内に溜め込んだ『脳筋』である俺の力で蔦を引きちぎって、まずはお前の顔面を修復不可能なまでに破壊してやる!


「ガァー! 」


 脳内物質で痛みが麻痺した俺は、手当たり次第に鳥籠状に俺を覆っていた蔦を引きちぎっていくのだが——


 そこで女が囁くように口を動かした。


火の粉(ひのこ)


 瞬間俺と女の間の空間に、色とりどりの火花が多く現れた。その火花の美しさは、思わず俺に怒りを忘れさせる程であった。そして見入ってしまっていた俺の腕に火花が着弾。その触れた肌がドロリと溶ける。

 そして残りの火花が俺に降り注いできたのであった。



 ◆ ◆ ◆



 ゲートを開きリリーの隣へと並ぶ。目の前の獣人はドロドロに溶け絶命していた。そしてリリーは嬉しそうに私へ視線を向ける。


「やはりマスターが言うように、杖を持っていたら大抵の敵が警戒を怠って間合いを詰めてきますね」


「あぁ、魔法使いは間合いを詰められたら致命的だからな。トラップ魔法はその逆を突く戦法だ。しかし街で男たちに絡まれた時とは見違えるな」


「もーう、またそんな昔の話を持ち出さないで下さい。マスターには及びませんが、私もそこそこの歳なのですから」


 リリーが獣人が連れていた女に駆け寄ると、回復魔法で傷を治癒していく。


 しかしリリーが我が眷属になって二百年か。その間ずっと、食事や身だしなみといった人間らしい行為を私に行ってくれた。

 そしてダンジョンの機能の一つに、激しい感情を抱いた人間を喰らうと大量のDPを得られるというものがある。私は幾度となくその恩恵に与ってきたが、リリーが私の元にきてからまだ一度もその場を設けていない。

 それは心の引っかかり。まだ見ぬその先の世界を求めてきた私だがその引っかかりがあるがため、踏み出せずにいた。

 私は揺れているのか? 本能ともいうべきDPを求める考え方と、リリーと過ごす温もりの狭間で。

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― 新着の感想 ―
200年経ちましたか…。人間はほぼほぼ世代交代し、下手をするとダンジョンを擁する街の様相すら変わっているレベル。まあ、一等賞()の父親とか確実に領主から退いて、別体制での運用がされているだろうなぁ。 …
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