第9話「どうしても南へ行きたいんだ…⑦『伸田、SITとの共闘! 明かされたヒッチハイカー誕生の秘密…』」
「Cチームのみんな、死ぬな! 俺達が行くまで誰も死ぬんじゃないぞ! 今、行くからな!
Aチーム総員、SMGの安全装置解除! いいか、絶対に味方を撃つんじゃないぞ! 誰も死ぬな! 全員、日頃の訓練の成果を見せろ! 全速で走れ!」
カチッ! カチ!
ダダダッ!
Aチームリーダーである島警部補の発した命令通り、それぞれに安全装置を外したSMGを構えた隊員達は、コンクリートとアスファルトで舗装された地面を懸命に走った。今まさに戦闘の行われている林は舗装路を横切った向こう側だ。
敵から丸見えとなってしまうが、林の中をぐるっと迂回するより炎上しているガソリンスタンドの敷地内を通った方が早い。6人はCチーム隊員達のSMGの発砲音と、林の木の間から見え隠れするマズルフラッシュ(銃撃の際、発射火薬が銃口付近で燃焼する事により発生する閃光)を目標にひたすら走った。
遂に林への入り口にAチームの隊員達が到着した時、すでにCチームによるSMGの発砲音は止んでいた。
チームリーダーの島以下の全隊員が戦闘に備えてヘルメットの防弾バイザーを下ろそうとしたが、懸命に走って来たので呼吸が荒く、息でバイザーが曇って視界の妨げになるため仕方なくそのままにした。
「全員油断するな… 各員、くれぐれも味方を撃つんじゃないぞ。」
島の指揮のもと、隊員達は横隊を組み、SMGを前方に向けて構えながらゆっくりと歩き始めた。
今なお炎上し続けているガソリンスタンドの炎による明かりが木の間を通して入り込んでくるおかげで、夜間の林の中ではあったが視界は悪くなかった。しかし、そのおかげで前方に広がる目を覆わんばかりの惨状がAチームメンバー達の視界にハッキリと晒される事になった。
「うっ!」
「そんな…間に合わなかったのか…」
「Bチームに続いてCチームまで全滅だなんて…」
「な、何やねん…これ… メチャメチャやないか…」
「うっ、うええっ!」
「なんて事を… ひどすぎる…」
Aチームの隊員達全てが自分の目を疑った。現場一帯には、飛び散った大量の血しぶきと共に、かつての仲間だった者達の残骸としか言いようのないものが多数散乱していた。
SITの隊員達は全員が現役の警察官であり、殺人等の凶悪事件を主に扱う捜査一課に属する者達だ。誰もが殺人事件の現場やバラバラにされた死体にも少なからず接してきた。そういった経験豊富な隊員達でさえも…今、現実に目の前にしている惨状は見た事が無いほど凄まじいものだった。しかも、目の前に転がっているのは、つい先ほどまで本作戦を共に遂行していた同じSITの仲間達の遺体なのだ。
だが、彼らの遺体は文字通り滅茶苦茶に切断され、かつて人間だった存在のバラバラになった血まみれのパーツ…としか表現しようのない代物と化していたのだった。
それらの散らばった隊員達の残骸の中央に、ただ一人完全な状態で立っている人間の姿があった。
その身長は驚くほど高く、2mは優にあろうかという大男だった。男が身に着けていた衣服はBチームとCチームの合計12丁のSMGから浴びせられた夥しい数の銃弾によりズタズタにされたのだろう、そいつの上半身にかろうじて纏わりついているのは、原形を想像するのも難しいくらいのボロ切れだけだった。上半身に弾が集中したためか、穿いていたズボンと登山靴は比較的ましな状態を保っていた。そんな有様であるのにかかわらず、男は二本の脚でしっかりと立っているのだ。
もはや半裸と言える男の肉体は、ボディビルダーの様に作られたマッチョな筋肉では無く、細身だが野生の獣を連想させる鋼の様に強靭でしなやかそうな筋肉で覆われていた。真っ黒でボサボサの頭髪は大量に浴びた被害者の血と脂で鬣の様に逆立ったまま固まっている。意外に体毛の少ない露出した肌は犠牲になった者達の血と脂を浴びてぬらぬらとテカり、近くで燃え上がる炎に照らされて異様に光り輝いていた。
金縛りに遭ったかの様に動けないままのAチームの隊員達が呆然として見守る中、そいつは地面に屈み込むと、自分の前に横たわっていたCチームの中で唯一、人体の原形をとどめたまま地面に倒れ伏していた一人の隊員の頭を大きな左手で鷲掴みにした。そして、重装備の成人男性の重い身体を左腕一本だけで軽々と宙に持ち上げたままゆっくりと立ち上がった。
そいつは左手で掴んだ隊員の身体をAチームの隊員達に向けて見せつけるようにして突き出すと、血まみれになった顔の薄い唇の端から僅かに覗いた舌の先を唇に沿ってゆっくりと動かした。表情のない顔のまま、男は舌なめずりをしているのだ。
「ひどい… あれは…階級章から言って金田巡査部長…か? 彼は…生きているのか?」
そう島がつぶやくのと同時に、空中に吊り上げられている金田巡査部長の右肘が微かに曲がり、わずかだが右手が動いた。彼は生きていた…
「撃つな! 金田は生きてる! 決して撃つんじゃないぞ!」
金田が示した微かな生体反応を見て取った島が部下達に向けて怒鳴った。一触即発とはまさしく、今のこの場の状況の事だろう。何かのきっかけさえあれば、この場にいる全員が発砲しかねない状況だった。そんな事になれば、かろうじて生きている金田巡査部長の身体までがハチの巣になってしまう。
高々と金田を持ち上げた殺人鬼の顔の筋肉が一瞬笑ったかの様な動きを見せた。だが…そんな表情の中でも目だけは何の感情も表していなかった。
次の瞬間、殺人鬼は右手に握っていた山刀を横薙ぎに一閃させた。
バシュッ!
肉と骨を断つイヤな音がしたかと思うと、左手一本で殺人鬼に持ち上げられていた金田の身体は首で分断され、掴まれていた頭部だけがそいつの左手に残り、首から下の身体部分は着用していた重い装備と共に地面へと落下した…
ドサッ!
「ひいいぃーっ!」
タタタタタッ!
一生網膜に焼き付くような惨い光景を目の当たりにして張り詰めていた緊張の糸がプツンと切れたのか、SITの中で最も優しい性格の安田巡査が甲高い悲鳴を上げながら、上司の命令を待たずして構えていたSMGを発砲した。
安田だけではなかった。彼以外の隊員達も唯一の生存者だった同僚が惨殺されるのを見せつけられた以上、誰も発砲をためらいはしなかった。安田に倣えとばかりに、正体不明の男に向けて構えていたSMGの引き金を引いた。
タタタタッ!
「うわあああーっ!」
タタタタッ!
「死ねや! さっさと死にさらせええーっ!」
タタタッ! タタタッ!
「仲間達を返せえっ!」
タタタタッ!タタタタッ!
「このクソ野郎っ!」
タタタタッ! タタタタッ!
タタタタッ!
もはや警官の理性など消し飛んだ男達の怒号が飛び交い、SMGの斉射音が鳴り響いた。
その任務性から常に沈着冷静な判断が要求されるSITの隊員達とは言え、あまりにも凄惨過ぎる光景を目にした恐怖で理性の箍が弾け飛んでしまい、一種の集団ヒステリー状態に陥っていた。
パニックに陥った隊員達は目の前にいる殺戮を繰り返す恐怖の源に対して、全弾撃ち切るつもりで引き金を引いていた。部下達の恐怖が伝染したのか、チームリーダーである島さえもが、他の隊員を制止する事無く殺戮者に向けて同様に引き金を絞っていた。
タタタタッ! タタタタッ!
タタタタッ!
リズミカルなSMGの発砲音が響き渡り、六つの銃口にマズルフラッシュが繰り返し輝くたびに吐き出される硝煙が辺り一帯に漂って隊員達の視界を遮っていく。
カチッ、カチッ…
カチッ、カチッ、カチッ…
まず最初に発砲し始めた安田巡査のSMGのマガジン内に残弾が無くなり、すぐに他の隊員達も全弾撃ち尽くした。全員が構えたままのSMGの銃口から立ち上る硝煙は、すぐに風に吹き散らされていった。
「もういい! 撃ち方止めっ! 各員、マガジンを交換しておけ!」
島が大声で叫び、我に返った隊員達は空になったマガジンを予備の物に交換した。
ガシャッ、ガシッ!
ガシッ!
やがて…6丁のSMGの銃口から銃弾と共に吐き出されて周辺に立ち込めていた硝煙は全て風で吹き払われ、視界は良好な状態に戻った。
一呼吸置くと隊員達にも少し気持ちの余裕が出来、殺人鬼が立っていた場所を含めた周囲の状況を落ち着いて見る事が出来る様になった。
だが、そこに横たわっていたのは殺人鬼の死体ではなく、生きたまま残忍に切断された金田巡査長の首と胴体だけだった。
「そんな馬鹿な… ヤツの死体が無い… 俺は間違いなくヤツに当てたぞ…」
誰に言うともなくつぶやく島の周りに辺りを警戒しながら他の隊員達が集まって来た。
「警部補、自分もヤツに当てたはずです…」
震えながらそう言ったのは、最初に発砲した安田巡査だった。
「自分も何発か分かりませんが、絶対にヤツの身体に当てた自信があります…」
関本もわけが分からないといった口ぶりで言った。
「こんな距離で、この俺が外す筈あるかいな。」
最も年配で経験豊富な山村巡査部長が自信を持って出身地の大阪弁で言う。
「はい、自分も間違いなく当てました。」
片岡巡査が構えていたSMGから放した右手を上げながら発言した。まるで挙手を先生に当ててもらってから発言する中学生の様だと皆が笑った。
「私もです…」
普段から寡黙な足立巡査は小さな声でポツリと言った。
全員が互いに顔を見合わせながら頷くのを見た伸田は、さすがはSITの隊員達だなと思った。
「では、数十発の弾丸を食らったはずのヤツの死体はどこへ行ったんだ…?」
全員の頭に浮かんだ考えを、島が真っ先に口にした。
全員がSMGを構えながら慎重に周囲を見回した。だが、奇妙な事に遺体はおろか、死んでいないにしても重傷を負って瀕死の状態になっていてもおかしくない筈の殺人鬼の姿は、どこにも見当たらなかった。
「上だあーっ!」
突然、6名の隊員達以外の誰かが叫び声を上げた。
その声に反応した隊員達が一斉に上を見た。複数の視線が向かった先にヤツがいた。
どうやって登ったのか、殺人鬼は自分のすぐそばに立っていた幹の直径が1mはあろうかという大木の樹上に身を隠していた。
地面から4mくらいの高さの幹から横向きに生えた太い枝の上に立ち、下の様子を見下ろしていたのだった。
樹上にいた殺人鬼の存在に気付きはしたが、隊員達の対応は遅れた。敵を認識した6人が再びSMGを撃つ動作に入るよりも先に、巨大な山刀を振りかぶった殺人鬼が地上にいる隊員達に向かって飛び降りた。
パンッ!パンッ!パーンッ!
その時、林の中に連続した三発の銃声が響き渡った。
三発のうち一発は落下中の殺人鬼の眉間に見事に命中し、もう一発は半裸の胸の中央に穴を穿ち、最後の一発は殺人鬼が右手で振りかぶっていた山刀の刃に当たって火花を散らした。
落下途中の殺人鬼の動きを止めるべく三発の弾丸を撃ったのだとすれば、全弾とも見事に命中したと言えるだろう。それはまさしく神業としか表現しようのない腕前だった。相手の急所に二発を命中させ、残る一発は振りかぶっていた凶器の刃に当てたのだ。しかも標的が動きながら落下する最中にである…
「チィッ!」
こちらも信じられない事に、二発の銃弾を眉間と心臓部に喰らったにも拘わらず、舌打ちをした殺人鬼は空中でクルリと回転したかと思うと体勢を変えながら見事に着地した。今の三発の発砲が無かったなら、Aチームの隊員達のうちの誰か一人の頭部は間違いなくスイカ割りのスイカよろしく真っ二つに斬り下げられ、着地と同時に立て続けに二人は惨殺されていただろう。
「今だ、全員撃てっ!」
我に返ったAチームの隊員全員が、島警部補の号令を合図にマガジンを交換し終えたばかりのSMGの9㎜パラベラム弾を殺人鬼に向けて容赦なく吐き出した。
タタタタッ!
タタタタッ! タタタタッ!
バスッ、バスバスッ!
タタタタッ!
タタタタッ! タタタタッ!
バスッ、バスッ! バスバスバスッ!
今度こそ間違いなかった。近距離から発射された6丁のSMGの弾丸の内数十発は、殺人鬼の身体のあちこちに命中していた。
着弾するたびに殺人鬼の身体から血しぶきと肉片が飛び散るのを、発砲した全員が目撃した。
「よしっ! いけるぞ!」
隊員達の全員がそう思った。
カチッ! カチッ、カチッ! カチッ!
6人の隊員達が構えるSMGの弾倉が、また空になった。
「ダメだ、殺られる!」
その場にいた全員が、撃ち尽くしたSMGの空マガジンを交換する間に自分達の死ぬ光景を頭に思い浮かべた。
「ちっ…」
殺人鬼は舌打ちを鳴らしたかと思うと即座に身を翻し、木が密集している林の奥の方へと姿を消した。
「ふううう… 助かった…のか?」
ガクガクする両膝を地面に突いた安田が深い息を吐き出した。確保すべき相手に逃げられたにもかかわらず、彼は思わず本音を口走っていた。
だが、それは安田だけでなく隊員達全員の共通した思いだった。それが証拠に、みんなが地面に尻を突いたり足を投げ出してへたり込んでいる。リーダーである島ですら同じだった。だが、島は萎えそうになる気力を振り絞って部下達に言った。
「安心して油断するな… ヤツの襲来に備えて、全員、空になったマガジンを交換しておけ!」
部下達にそう命じた島の声は掠れていた。
「それにしても…」
新しいマガジンに交換しながら関本がつぶやいた。
「『上だ!』って我々に警告してくれたり、三発の銃撃を一発も外す事無くヤツの殺戮の動きを寸前で止めてくれたのは、いったい…」
「そうだよ… あれは誰だったんだ?」
「分からん…」
マガジンの交換を終え、口々に言い合った隊員達は三発の銃撃が起こる前に叫び声のした方を見た。
その方向の暗がりに、一人の男が立っていた。
隊員達は用心のため、手に持ったSMGの銃口を男の方に向けた。その人物が敵か味方か不明だったためだ。
その男は両手を上に挙げ、ゆっくりと近付いて来た。戦う意思は無いらしい…
Aチームの隊員達は立ち上がり、自分達の方へ近付いて来る男の格好を見て目を見開いた。
なぜなら、その男は驚いた事に、自分達○✕県警SIT隊員の正式装備である防弾バイザーの付いたヘルメットを頭に被り、やはり自分達が着ているのと同じ隊支給のボディアーマーとタクティカルベストを着用していたのである。
空に向けて挙げた男の右手には、撃つ意思が無い事を示すべく銃口側を握り銃把(銃の握り部分)を空に向けた自動拳銃が掲げられていた。その自動拳銃もSMGに継ぐセカンダリィウエポン(第二武器)としてSITから支給されている物と同じ『ベレッタ90-Two』だった。
そして、右大腿部に取り付けられた銃のホルスターにももう一丁別の『ベレッタ90-Two』が収まっていた。つまり、この男が自分達と異なるのは、SMGを装備する代わりに二丁の『ベレッタ90-Two』を所持している事だった。
他にも着用の仕方に部分的な違いはあったが、男が身に着けている装備は間違いなくSITの正式装備品だったのだ。
「おい、そこで止まれ! 関本、その男の持っている武器を全て取り上げるんだ!
俺と関本以外の者は、殺人鬼の再度の襲撃に備えて周囲の警戒を怠るな!」
自分はSMGで男に狙いを定めたまま、島が部下達に命じた。
島がSMGで狙いを付ける前で関本が男が所持していた二丁の拳銃を取り上げ、さらにボディーチェックをした関本男の持っていた全ての武装を解除した。
男は関本に武装を解除される間、一切逆らう事なく両手を上げたままの態度を保っていた。全ての武装を解除された後、男が目の前に立つ島に向けて恐る恐るといった態度で口を開いた。
「ぼ、僕は敵じゃありません… あのヒッチハイカーに襲われた被害者の内の一人です。大学生の伸田伸也といいます… ふうう…」
学生の伸田と名乗った男は、そこまで言うと緊張の糸が途切れたのか、両手を上げたまま大きな吐息を吐き出し、その場にへたり込んでしまった。
「ふむ。では、あなたが皆元静香さんの証言にあった生き残りの方でしたか。これは失礼しました。我々は皆本さんの要請であなた達を救助に来たのです。
よくご無事でしたと言いたい所ですが、あなたのその格好は、いったい…?」
目の前の男の素性が知れ、警戒を解いた島は伸田に向けていたSMGの銃口を下げた。
「えっ! シズちゃ…いや、静香は無事なんですか? 本当に…?」
伸田は湧き上がる喜びと感動に震えながら、目の前の島に掠れ声で尋ねた。
「ええ、皆元さんは自分達が保護して現在は安全な所にお連れしてありますので、ご安心下さい。」
それまで厳しかった島の態度と表情が優しく穏やかなものに変わり、伸田を安心させる様な口調で告げた。
「あ、ありがとうございます… 僕は静香を助け出すために、あなたの仲間の方達が最初にヤツに襲われた地点で遺体と一緒に遺棄されていた装備を拾って着用していたんです。でも、静香が救われたのなら、もうそんな装備は僕に必要ありませんね。」
そう言うと伸田は自分が身に着けていたタクティカルベストやボディーアーマーといった銃器以外の装備も外そうとしたが、それを見た島は首を横に振って言った。
「いえ、伸田さん… その格好のままでいて下さい。気休めにしかならないかもしれないが、またヤツが襲撃してきた時のためにもね。
それにしても、伸田さん… 殺人鬼が我々に飛びかかって来た時に、ヤツを撃退した三発の銃撃は本当にあなたが…?」
島は自分を含めたAチーム全員が最も気になっていた点を伸田に質問した。
「ああ、あれですか。そうです、三発とも僕が撃ちました。あなた達が危ないと思って無我夢中で…」
そう言いながら右手で頭を掻こうとした伸田は、自分がヘルメットを被っていた事に気付き、照れ隠しにヘルメットをポンポンと叩いた。
「おおお…」
「ホンマかいな?」
「信じられない…」
周囲に警戒態勢を敷いていた隊員達から口々に感嘆の声が上がった。
Aチームの面々が驚きを隠さず感嘆するのを、伸田は目をパチパチさせながら見まわした。
「や、やっぱり…民間人の僕が許可も無く銃を撃ったのは、銃刀法違反か何かの罪に…?」
自分が取った行動が目の前の現役警察官達に咎められる事を恐れて、伸田は島に恐る恐る尋ねた。
「ははは」
島を含めた隊員達の全員が揃って笑い声を上げた。だが、彼らの笑いはバカにした態度ではなく、伸田に対する好意の気持ちが表れていた。
「いや、あれは『緊急避難』に該当する行動でしょう。あなたの発砲が無ければ、我々の何名かは間違いなく殺されていたんですから。本当に助かりました。現役警察官の我々が民間人のあなたに銃で助けられるとは…面目次第も無い。とにかく伸田さん、我々の危ない所を救って頂き、ありがとうございました。」
島は言葉だけでなく、伸田に向けて実際に頭を下げて見せた。
「それはそうと、伸田さん…落下中のヤツを正確に狙い撃ったあの銃の腕前は尋常なものでは無い。我々はそれが不思議でならない。いったいどういう事なのか教えてもらえませんか…?」
それこそ、隊員達の全員が知りたかった事だった。
「はあ… 自分で言うのもなんですが、僕は小さい頃から射的やエアガンなんかの射撃に関する遊びやゲームが、なぜだか得意だったんです。大人になった今では、海外旅行に行った際に向こうの射撃場で実銃の射撃を楽しんでいます。さすがにSMGを撃った事はありませんが、ベレッタは実際に何度か撃った経験があります。ベレッタは、僕のお気に入りの銃なんです。」
自慢げでなく照れ臭そうな態度で正直に話す伸田を見た島は、ますます彼に対して好感を持った。
「しかし、あれは本当に尋常な射撃能力では無かった。まさに神がかり的だった。現役警察官の自分達でも間違いなく不可能でしょう。」
県警だけでなく全国警察官の中でもトップレベルの射撃の実力を誇る島自身の正直な感想に対し、他の隊員達が何度も頷いて同意を示した。
「だが、眉間と心臓…急所を外さず当てたのに、ヤツは死なないで逃げ去った… あいつはいったい…」
この不可解な現実に島は唸った。
「島警部補、伸田さんの銃弾以外にも自分達が放ったSMGの9mmパラベラム弾もヤツの身体中に合計で数十発は当たった筈です。それなのに…」
安田が恐ろしそうに言った。
「人間の姿をしてはいますが、あれは不死身の怪物なのでしょうか…?」
関本が誰に言うともなくポツリと口にした。
「信じたくは無いが、そうとでも考えるしか無いな…
関本、伸田さんにベレッタをお返ししろ。もちろん、法的にそんな事は許されない。だが、この現実離れした敵を相手にする非常事態の真っ最中だ。この際、銃の扱いに慣れ、腕前も我々全員が認める伸田さんなら戦力として申し分ない。自分自身の身を守るためにも持っていたもらった方が良いと俺は思うんだが、みんなの意見はどうだ?」
島が意見を求めるべく全員の顔を見回した。
「俺は異存あらへん。」
「私も同感です。」
「異議なし…」
「賛成します。」
「正直言って、私も彼には自分で身を守ってもらう方がいいと思います…」
彼らの意見は民間人を守るべき立場の警察官としては不適切極まりなかったが、全員の正直な意見だと思われた。それが証拠に全員が顔を見合わせ合いながら、同意を示す様に真面目な表情で頷いていた。
「よし、決まった。これは今この場だけでの超法規的措置である事はご理解頂いた上で、伸田さんには護身用として拳銃を持っていてもらいましょう。我々としても、確かな腕前なら猫の手でも借りたいのが正直なところです。そして、自分で言うのも情けないが、あなたを常にヤツから警護出来ないかもしれない。万が一の時は緊急避難措置として私の責任において発砲を許可します。
ただし、この作戦の間だけです。終われば、あなたの装備は全て返してもらう。いいですね。」
島がそう言い終えると、関本が取り上げていた二丁の拳銃を含む全ての装備を伸田に返した。
「ありがとうございます、みなさん。もちろん、警部補が仰ったように僕もむやみに撃ちはしないし、皆さんの足手まといにならないように精一杯努めます。」
隊員一同に向けて頭を下げながら、伸田は手渡された拳銃のうち、一丁を右太ももに装着したホルスターに戻し、もう一丁は安全装置を確認した上で右手に握った。彼は自分の手の中にある、その実銃だけが持つズシリとした重さが安心感を与えてくれる気がした。
「よろしい。では私は、現在の状況を無線で作戦指揮所にいる長谷川隊長に伝える。伸田さんも含めて全員、周囲を警戒しつつ林を抜けてガソリンスタンドの敷地内に移動しよう。この林の中ではヤツにとって有利だ。それに各員、殉職したCチームの装備から未使用の弾倉を抜き出して自分達が消費した分の弾丸を補給しておけ。これから必要になる。」
島の言葉通り、隊員達はCチームの隊員達だった遺骸に手を合わせて彼らの形見となったSMGの未使用マガジンを回収した。
伸田は三発使用した自銃のマガジンを引き抜き、殉職した隊員が所持していた予備の物と交換させてもらった。この際、弾丸は一発でも多い方が心強かった。
Aチームと伸田を合わせた6人は各員が周囲を警戒しながら林を抜け出た。ガソリンスタンドはまだ炎上しているため、辺り一帯は燃え盛る炎の熱で熱いくらいだった。空が雲に覆われた夜間の山中であっても明るさに関しても不足は無かった。身を隠すための遮蔽物らしい物の無いここならばヤツが襲ってきても、すぐに見つける事が出来る。
さっそく、島は本部である作戦指揮所へと無線連絡を入れる。
「本部、応答願います。こちら、Aチームリーダーの島警部補。
・・・・・・・・・・・
・・・・・・はい、了解しました。では、ここで一行の到着を待ちます。」
島は少し困惑した表情で、本部である作戦指揮所との連絡を切った。
「どうでしたか、島警部補?」
チームの中では最年長隊員である山村巡査部長が年下の上官を振り返って訊いた。
「ああ…ヤマさん、それがおかしいんですよ。こちらが報告するより前に、長谷川隊長と横田副長はDチームを率いて現場へ向かっているという事らしいんですがね…」
島の困惑気味の顏は変わっていない。
「そしたら、隊長自らが援軍を率いて来てくれはるんですか。警部補、いい報せやないですか。」
島とは違って山村が嬉しそうな顔で言った。
「それはそうなんですが、本作戦の指揮官が長谷川警部から『おおとり』と言う人物に代わったらしくて、その人物自身も直々にこちらへ来るそうなんですよ。」
そう言った島は首をかしげたままだ。この緊急事態においての現場指揮官の交代など、彼には到底理解出来なかった。しかも、島自身に鳳なる人物に心当たりはなかった。
「『おおとり』はん、ですか…? それやったら、階級は長谷川警部よりも上の警視クラスなんですかね?」
県警では古株である山村にとっても一向に知らない名前だった。
「まあ、もうすぐ会えるから、その時になれば分かるさ。」
「そうでんな。」
島と山村の二人は見合わせた顔に苦笑を浮かべた。。
「島警部補、本部では何と言っているんですか?」
近くで聞いていた伸田が島に尋ねた。
「ああ、伸田さん。朗報と言えるのかどうか分からないのですが、あなたの恋人の皆元さんがこちらへ向かう援軍に同行されるようです。ご本人からのたっての希望らしくて…」
島としては、この事を伸田に報せるのは躊躇いがあったのだが、どうせすぐに分かる事だと隠さずに告げた。
「ええっ? シズちゃんがこんな危険な所に戻って来るなんて… いったい、何で…? そんなの危険じゃないですか!」
伸田は嬉しいというよりも、静香の身を心配する気持ちの方が強かった。恋人としては当然の反応だろう。
「正直に言うと私も同意見です。ですが、本部の決定なので我々にはどうしようもないのです、申し訳ありません…」
島にも伸田の心配する気持ちは痛いほど理解出来た。自分達が保護し安全な場所へと連れて行った彼女を、また危険な地域に逆戻りさせるという本部の決定が理解出来なかったのだ。伸田に対し、島は自分が済まない事をしたような気がして頭を下げていた。
「やめて下さい、島さん。あなた方が悪い訳じゃないんですから。」
伸田は慌てた。そして改めてここにいる警官達は皆いい人なんだなあと伸田は思った。自分が彼らの危機を救った事をとても気持ち良く思えた。
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場所は変わって、こちらは今も炎上中のガソリンスタンドに向かって国道を走行中の移動現場指揮車の中である。この車両は幹部級の捜査担当者が搭乗して現場に赴き、移動型の作戦本部として機能するための特殊車両である。
運転はSITのDチーム隊員が行っていたが、車内にはSIT隊長である長谷川警部と副長の横田警部補の他に、新たに指揮官となった鳳 成治と共に搭乗した皆元静香の姿もあった。
この移動現場指揮車を先導する形で、フル装備したDチームの隊員達5人を乗せたSITの人員輸送車が走っている。この車両は本作戦で先行したABCの3チーム合わせて18名のSIT隊員達と彼らの装備を運ぶのにも使用されたが、今回の往路では5人の隊員が乗っているだけだった。
先に、静香とAチームの安田巡査が、ガソリンスタンドから製材所の材木置き場に設置された臨時作戦指揮所まで歩いた時は所要時間が30分あまりだったが、車両での移動となると山の周りを大きく迂回する国道を走行する事になるために、車でも歩くのと同じかそれ以上に時間かかる事になる。
しかも真夜中近くになった国道の路面は吹き荒れる吹雪のために、スタッドレスタイヤを着用した上にゴム製のチェーンを巻いている車輪でも走行が困難なほど凍結していたのだ。
「鳳指揮官、たった今Aチームリーダーの島警部補から現状報告がありました。Bチームに続き、Cチームも壊滅…金田巡査部長以下6名の隊員が『ヒッチハイカー』との交戦により、全員殉職したとの事です… くっ! ううぅ…」
Aチームの島警部補から無線で直接連絡を聞いた長谷川警部が、本作戦の新たな指揮官となった鳳に報告した。だが…長谷川の報告は、自分の可愛い部下達を失った悲しみと口惜しさから、こみ上げてくる嗚咽で何度も途切れてしまった。
「ふむ… 部下を失った君の気持ちは分かるが、こんな時こそ上に立つ者は落ち着くものだ。さもないと部下達に不安と混乱を招く。報告はそれだけかね?」
新指揮官となった鳳 成治はSIT隊長である長谷川や副隊長の横田警部補の様に、隊員達の死に感情的になる事も無く、総指揮官として冷静に報告を聞いていた。隣に座っていた静香は、この鳳という男に対し冷静というよりも機械の様に冷たい印象を受けた。
『この人って、人間の感情を理解出来ないのかしら…』静香は心の中でそう思った。
「失礼しました… 自分の子供達の様に可愛く思っていた部下達だったので…
もう一つの報告は…こちらは我々にとっても皆元さんにとっても朗報でありますが、Aチームが生存されていた救出対象者の伸田さんを無事保護し、現在同行中との事です。」
この報告をする時だけは、長谷川も少し微笑んで静香を見た。
「ノビタさんが! 無事だった! あっ、すみません…」
静香は喜びのあまり大きな声を出してしまい、慌てて周りを見回して謝った。長谷川や横田に加え、運転している隊員にとっては大勢の仲間達を失った報告を受けたばかりなのである。静香は自分の軽率な態度を後悔して唇を噛んだ。
「良かったですね、皆元さん。で、例の『ヒッチハイカー』に関しての報告はどうなんだ?」
静香に対しては、おざなりの様にほんの少し言葉をかけただけで、鳳は長谷川に話の続きを促した。
なお、彼らの会話で用いている『ヒッチハイカー』という呼称を今回の連続猟奇殺人事件の被疑者に対して使用する事が、捜査本部において正式に決定されたのだった。
「はい、AチームはCチームの交戦中の現場に急いで駆け付けたのですが、すでにCチームは壊滅しており、そこにいた『ヒッチハイカー』と交戦を開始、ヤツに対して急所も含めてかなりの数の9mmパラベラム弾を浴びせた模様。ですが、信じられない事に『ヒッチハイカー』は自力で走って逃亡したとの事です。」
今の部分が最も驚くべき件なのだが、話している長谷川自身が現場から報告された状況を信じられないという表情なのに反し、この驚くべき内容を聞いた鳳の反応は、さして驚いた様子もなく落ち着いた表情で頷いて見せただけだった。
「ふむ、やはりな… SMGで数十発の9mmのパラベラム弾を撃ち込んだ程度では、ヤツは死にはしないだろうと予想はされていたが、これで実証されたと言う訳だな…」
鳳が誰に聞かせるという訳でもなく、ひとり言のような口調でつぶやいた。
それを聞いた長谷川の顔色が変わり、鳳に対して噛み付く様な声で怒鳴った。
「何ですって? 鳳指揮官! あなたは我々の知らない『ヒッチハイカー』に関する情報を、いったいどれだけご存じなんですか? 我々にも開示していただきたい!」
真っ向から鳳の顔を睨みつけた長谷川警部の顔は、怒りのために真っ赤に染まっていた。大勢の部下を失った彼が示した怒りは無理もないだろう。
「怒鳴るんじゃない、いちいち興奮するなとさっきも言ったはずだぞ。冷静になれ、警部。しかし…まあいい、君達は当事者として知る権利はあるだろう…
これは君達が属する警察組織においては、警視正以上の階級の者しか触れる事の出来ない国家機密なのだが、大まかに話してやろう。だが、今から私が話す内容は絶対に他言無用だ。覚悟して聞きたまえ。」
鳳の厳しい言葉に車内の全員が緊張した。静香もゴクリとつばを飲み込んだ。
「元々、今回の事件は3カ月前に某国の軍需産業が極秘裏に開発したある薬品を陸路で運搬していたコンテナトラックが、この近くで発生した交通事故に巻き込まれて横転すると言う事態に端を発している。
その際にコンテナの扉が破損し、中に積載されていたジュラルミン製のケースが数個、外へと転がり出てしまった。
当局による懸命の捜索で薬品のほとんどが回収出来たのだが、投げ出された衝撃で蓋の開いたケースが一つあり、中に保管されていた50㏄のバイアルの一本だけが遂に見つける事が出来なかった。」
ここで鳳は一度言葉を切った。気を利かせた横田警部補から手渡されたペットボトルの水を一口飲むと話を再開した。
「そのコンテナトラックが事故を起こしたのが、現在我々がいるこの祖土牟山の隣に位置する醐模羅山の周回道路なのだ。世間を騒がしている一連の『ヒッチハイカー』によると思われる猟奇殺人事件の全てが、この二つの山の近辺で発生している。
事故当時、偶然居合わせた我々の『ヒッチハイカー』なる人物が紛失した薬品を手に入れ、どういう経緯でかは不明だが経口もしくはそれ以外の方法で体内に摂取したものと考えられる。
結果として、それまでは通常の人間だった一人の男が予期せずに摂取した薬剤によって肉体の変化を促され、人間を遥かに凌駕する能力を手にしてしまったのだろう。
現場からの報告にあった『ヒッチハイカー』の不死身に近い再生力を含めた驚異的な身体能力や、女性に対して抱く異常なまでに強い性欲や他者の殺戮に対する躊躇の無さなども、ヤツが摂取した薬剤の副反応によるものだと考えられる。
その失われた某国製の薬剤とは、人体に投与した場合に、そういう効果をもたらす事を目的として作られた薬剤だった…とだけ言っておく。
私は自分の職務として、今回の事件を事故発生時から追って来たのだ。この一件は国家重要機密に該当するため、私が君達に言えるのはここまでだ。私が今しゃべった話を他言した者は誰であろうと裁判を経る事なく拘束され、命に関しても保証出来ないと言っておく。
当然ながら、この件に関わった人間は一生を通じて当局にマークされる。」
ここまで聞いていた一同は、シンと静まり返っていた。
まるで架空の出来事の様な怪物『ヒッチハイカー』の誕生秘話とその機密扱いが、自分達の予想を遥かに超えていたため、誰も口を利く事が出来なかったのだ。
「じゃあ… あの『ヒッチハイカー』も、その紛失した秘密の薬剤の犠牲者だって言うの…? そんなの、ひどすぎるわ…」
被害者の一人であり、親しい友人を4人も失った静香は激しいショックを受けていた。
その失われた薬剤が原因で、判明しているだけでも43人もの尊い命が奪われたのだ。しかも、それら多くの命を奪った当の殺人鬼さえもが犠牲者だったというのか…? それでは被害者や遺族達の怒りの持って行き場が無いではないか…
それは、この場にいる鳳を除いた全ての者達に共通した気持ちだっただろう。
長谷川や横田だけでなくDチームの隊員達にとっても、同じ釜の飯を食い、共に死線をくぐり抜けて来た大切な仲間を無残に奪われたのだから…
「うわあーっ! 危ない!」
突然悲鳴を上げ、車内の静寂を破ったのは車両を運転していたDチーム隊員の東尾巡査だった。
登りから下りへと変わる山道の起伏を越えた地点で、先行して走行中だった人員輸送用車に向けて山側の崖の上から直径が2m近くもある岩が突然落下してきたかと思うと、Dチームの5人を乗せた車両の左側面を直撃したのだ。
重量が何トンあるのか不明だったが、巨大な岩は玉突きをするかの様に人員輸送車を跳ね飛ばし、ガードレールを突き破った車両は乗員を乗せたまま反対側の崖下へ転落していった。
「きゃあああーっ!」
突然前方で生じた光景を目の当たりにした静香が叫び声を上げた。
あっという間の出来事だった。移動現場指揮車を運転していた東尾巡査が慌てて急ブレーキを踏んだが、凍り付いた路面でスリップした車両は車体後部を大きく振るようにしてスピンすると、路上に留まっていた巨岩にぶつかり、車体の右後部を大きく破損してようやく停止した。
「ううっ…」
「痛い…」
「クソ…どうなったんだ…」
「みんな…大丈夫か…?」
移動現場指揮車の車内では、乗っていた者達の呻き声があちこちから聞こえていた。前の座席の背もたれに額をぶつけた静香は激しい眩暈がしていた。額から流れ出た血が彼女の美しく白い顔に縦に赤い筋を引いていた。
ドッカーン! バキバキバキッ!
マイクロバスをベースにして作られた移動現場指揮車の左前部にある乗降口のドアが外からの強い衝撃を受け、車内に向けて枠ごと吹き飛んだ。
「うわあっ!」
運転席に座った東尾巡査が驚愕の声を上げた。
破壊されたドアから吹き込む吹雪に身を晒されながら、薄れゆく意識の中で静香は見た…
流れ込む吹雪を背に浴びながら搭乗口の階段に立つ、僅かばかりのボロ切れとなった衣服の残骸を身体にまといつかせただけの身長が2mはあろうかという大男の姿を…
「ヒッチ…ハイカー…?」
この言葉を吐いたのを最後に静香の意識は消失した…




