第4話「どうしても南へ行きたいんだ…➁『謎の男による恐怖と快楽の支配からの脱出』」
東京都内の大学に通い、卒業を間近に控えた男女6人の仲間達が冬休みを利用し、スキーと温泉三昧を楽しむために〇X県の祖土牟山にある温泉旅館へと向かう最中の山道上での車内である。
本来は冬休みの年末を、全員が気心の知れた仲の良い仲間達である三組の恋人達だけで過ごす楽しい旅行の筈だったのだ。奇妙なその男が現れるまでは…
その男…正体不明で謎のヒッチハイカーが強引に乗り込んで来てからは、仲間達だけの車内の和やかで楽しかった雰囲気は一変してしまった。
車内の温度が急激に上昇していたが、それは単に車のヒーターによる暖房効果だけでは無かった。
伸田伸也が運転する、仲間達だけが乗っていた大型SUV車に突然強引に乗り込んで来た男の車内での振る舞いに対し、6人の若い男女が感じずにはいられない恐怖と性的興奮によって血中に流れ出したアドレナリンが彼ら全員の体温をさらに上げ、身体から発散する熱がヒーターによる暖房と相まって、外が雪の吹きすさぶ山中である事が考えられないほどに車内の温度が上昇していた。結露を取り除く機能の無い横側のガラス全てが真っ白に曇っていた。
カチ…
運転者の伸田伸也は暖房を切った。
「ごめん、一旦暖房を切るよ。窓が曇ってるし暑くて頭もボウっとしてきたから…」
暖房を切った事で外の吹雪く音は大きくなったが、車内のセカンドシートで行われている男女二人の行為も余計に全員の耳に際立って聞こえてくる。
セカンドシートではヒッチハイカーの開いた長い脚の間に、上半身に着ていた服を自分から全て脱ぎ捨てて半裸となって跪いた姿勢のエリが、夢中になって男の巨大にそそり立ったペニスの亀頭を舐め回しながら両手で竿部分をしごき続けていた。
男はエリの剥き出しになった見事なまでにたわわに実った巨乳を両手で鷲づかみにして、乱暴に揉み続けている。
「はっ、はっ、はっ、うう… いいっ! あああぁ…」
剝き出しになった両乳房を謎に包まれた野獣の様な男に乱暴に揉みしだかれ、本来の恋人や友人達の見ている前で蹂躙される被虐的な快感に酔いしれながら、エリ自身も自ら男のそそり立ったペニスを両手で握りしめて一心不乱に行為に没入していた。
エリが今までに見た事もないほどに男のペニスは長く太く、そして硬く屹立していた。それは彼女の指先から肘までよりも長く、太さも彼女自身の前腕よりも太くて指が回りきらないほどだった。
「ゴクリ…」
「ゴクリ…」
助手席の皆元静香とサードシートに座る山野ミチルが。ほぼ同時に生唾を飲み込む音が、異様に大きく聞こえた。
助手席に座る静香からは運転席との間の隙間越しに、サードシートの真ん中に座るミチルからはセカンドシートの座席の間から、エリの両手でしごかれ続けるヒッチハイカーのあまりにも長大なペニスが丸見えだったのだ。この車内にいる女性の誰もが、あれほど見事に巨大な人間男性のペニスは見た事が無かった。それは、まさに馬並みの長大さだった。
車内の男達が自分の持ち物とのあまりの違いにシュンとなったのは言うまでもない。
静香は後ろから聞こえてくるエリによる激しい手コキの音と二人の発する荒く激しい呼吸で性的に刺激され、興奮した自分の股間が疼いて仕方が無かった。
普段、人前では清楚でお淑やかな女性として通っている静香も、若く健康な大人の女である以上、性的な刺激に対して反応してしまう自分の身体をどうする事も出来なかった。彼女は自分の身体の中心にある秘めた部分から、温かくトロみのある液体がじわじわと流れ出すのを感じていた。
助手席に座る静香の、しなやかでほっそりとした右手の白い指が運転する伸田の股間に伸び、再び勃起した彼のペニスを愛おしそうにズボンの上から擦った。彼女も背後のシートで繰り広げられる男女の痴態に激しく興奮し、狂おしいほどに昂った自分の性欲をどうにかしたかったのだろう。若く健康な身では無理も無かった。
ギリッ、ギリッ!
何の音かと思えば、ヒッチハイカーによってサードシートに追いやられ、自分の恋人を寝取られた幸田剛士が、悔しくて歯ぎしりをしている音だ。
彼はすぐ目の前の座席で繰り広げられている自分のガールフレンドの痴態を見ない様に横を向いていたのだが、あろうことか、彼の右手は横に座るミチルの股間をズボンの上から指でグリグリとまさぐり続けていた。彼女はヒッチハイカーと遭遇する前までサードシートで恋人の須根尾骨延と生のセックスを繰り広げていたのだったが、事故の衝撃で不本意だったとは言え、曲がりなりにも自分の膣内で射精を果たした須根尾と違って、ミチル自身はエクスタシーまで達していなかったのだ。つまり、彼女自身の燃え上がった性欲は一度も満たされず、不完全燃焼のままだったのだ。
当然、目の前でヒッチハイカーとエリの激しい行為を見せつけらえたミチルは再び性欲の炎がメラメラと燃え上がり、ヒッチハイカーの登場で身に着け直したショーツは膣内から湧き出してくる愛液でぐしょ濡れになり、ズボンまで湿らせていたのだ。その熱く燃えた女の秘所をズボンの上からとは言え、剛士の指でグリグリといじられた彼女は堪らなかった。
興奮しているミチルは、剛士が仕掛けてくる指でのイタズラを抗ってはいなかった。それどころか、前列シートで繰り広げられる激しい行為に興奮した彼女は剛士の指をむしろ積極的に受け入れる様にして自分から性器を擦り付けながら、右側に座る恋人の須根尾の首に左手を回し、彼と舌を絡め合う激しいディープキスを繰り返していた。しかもミチルの右手は須根尾のズボンのチャックを引き下ろして中に潜り込み、握りしめた恋人のお粗末で小ぶりだが硬く勃起したペニスを上下にしごき始めていた。
もちろん須根尾とて、ミチルにされるがままになっているだけでは無く、彼女の腰の部分からたくし上げたセーターの中に差し入れた両手でノーブラ状態のミチルの乳房を乱暴に揉み続けていた。
こうなるとサードシートでも、興奮した男女3人による性行為が始まった様なものだった。
突如乱入して来たヒッチハイカーのおかげで、元から車内にいた6人の若い男女は非合法な薬物を使用して精神的にトリップしたのと同じ様な興奮状態に陥っていたのだった。ヒッチハイカーに恐怖と嫌悪感を抱きながらも、いつの間にか彼の性的な興奮が若者達に伝染したかの様に車内に蔓延していたのだった。
こんな狂乱状態では安全どころか、まともに運転など出来ない… 車内の状況に自分自身も興奮しながらも、全乗員の安全を預かる運転者の身として賢明にもそう考えた伸田は、自分が運転するSUV車を山道を安全にすれ違うために設けられている安全地帯である待避場所に乗り入れて停車した。そして、事故を防ぐためにハザードランプも付けておくのも忘れなかった。前後の見通しは悪く無い道路なので、これで取りあえず他車から追突される危険は軽減したと言えるだろう。
伸田が停車したのは、デフロスターの機能するフロントガラスはまだましだったが、他の全ての窓が7人の吐き出した息と車体の内外との気温差によって内側から曇り、それ以上カーブの多い路面の凍り付いた山道での走行を続ける事が危険だったためなのだが、本当の理由は助手席に座る恋人の静香がすぐ後ろで繰り広げられる男女の行為に感化され自分も興奮したのか、伸田のズボンのチャックを開けて彼の勃起した性器を引っ張り出して愛撫し始めたからだった。
普段は恋人の伸田と二人きりの場所でしか性行為をする事を嫌悪する静香なのだが、車内の異様な熱気と興奮した雰囲気に酔い痴れてしまったのだろう。
こんな状態で吹雪く山道を運転できる筈が無い…との判断は賢明だと言えたのだが、伸田自身も若く健康な肉体を持った男性なのだ。車内の性的に異様な雰囲気の中、高まって来る自分の性衝動を抑えるほどストイックな精神を持ち合わせている訳では無かった。
だから彼も静香が人前で始めた大胆な行為を咎めるどころか、自分でも積極的に求め始めてていた。
性的興奮でトロンとした目をした静香はショーツの中に突っ込んだ右手の指で自分の最も敏感な部分をいじりながら、伸田のペニスを口に頬張り自分から積極的にフェラチオを開始した。
こうしてしばらくの間、停まっているSUV車は車内で男女が続ける行為により車体がギシギシと揺れ続けていた…
「はっはっはっ! いっ、いいっ!」
セカンドシートからエリの荒い息遣いと嬌声が聞こえた。いつの間にかヒッチハイカーの膝に対面に跨った彼女は、男の巨大なペニスを自分の膣に受け入れて腰を振っていたのだ。エリの下になったヒッチハイカー自身も激しく腰を上下させている。
「うっ! いいっ! イクっ! イクイクっ! イっクうぅ~!」
やがてエリが荒い息遣いと喘ぎ声の果てに絶叫を上げ、身体を激しく痙攣させながら絶頂を迎えた。それでもまだヒッチハイカーは突き上げる腰の動きを止めようとはしなかった。ぐったりとしたエリはガクンガクンと揺れながら何度も何度も男に突き上げられ、まるで暴れ馬に跨ったまま気絶したカウガールの様な状態だった。
その状態が数分間続いたが、やがて男が動きを止めた。エリとの結合部から白くドロリとした液体が流れ出したのをみると、どうやら膣内に射精したらしい。
あまりの快感で白目を剥いて気を失っているエリは、ほっそりとした首を後ろにのけ反らせて半開きにした口からダラリと可愛いピンク色の舌を突き出したまま泡状になった涎を垂らし、全裸で汗の浮かんだ身体を何度も痙攣させていた。
おそらく彼女にとって、生まれて初めて経験した激しい絶頂だったのだろう。
サードシートでは興奮した3人の男女によって本格的な3P行為が繰り広げられていた。目の前で自分の恋人が激しく犯される姿に興奮した剛士がミチルをバックスタイルで背後から貫き、ミチルはくぐもった喘ぎ声を上げながら恋人の須根尾のペニスを喉奥深くまで咥え込んだ頭を前後に激しく振っていた。
運転席では深いキスで舌を絡め合った伸田と静香が互いに熟知し合った相手の敏感な部分をじっくりと指で攻め立てていた。
性の饗宴と言えば聞こえはいいが、大型SUV車とはいっても狭い車内で繰り広げられる7人の若者達の乱交騒ぎだった
車内の全員が興奮に酔いしれて性行為に没頭していたと思われていた時だった。
「おいっ!」
ドカッ!
セカンドシートでエリの膣内に射精をし終えたヒッチハイカーが、エリと対面騎乗位で交わったまま右足で突然に運転席の背を強く蹴り付けたのだった。
「うわっ!」
伸田は驚いて絡めていた舌を静香の口内から離し、静香の膣の中をまさぐっていた中指を引き抜いた。
ちゅぷっ…
「あん…」
「な、何するんですか… いきなり…」
伸田は愛し合う自分達の行為を途中で邪魔された怒りはあったが、刺す様な視線で自分を見つめる燃える様なヒッチハイカーの目と目が合うと、すぐに視線を逸らして弱々しく抗議した。
「お前、何で車を止めた…? 俺の行きたい南へ車を向けるためか?」
「あん、動かないで… 信じられない… あれだけいっぱい出したのに、私の中でまだ硬く勃起てる…」
まだ対面騎乗位で交わったまま放心状態で呟くエリの頭の横から覗いたヒッチハイカーの異様に光る目がルームミラー越しに伸田を睨みつけていた。
伸田は答えないと殺される… そう思った。
「ち、違うけど… みんな…君だってエリちゃんとのセックスに夢中だったじゃないか…? ぼ、僕だってシズちゃんと気持ち良くなりたかったし、窓が全部曇っちゃってて運転するのが本当に危険だったんだ…」
伸田は、咥えていたペニスを口から吐き出し、それでもまだ恋人の萎えて縮んだ性器を震える右手で握り続ける助手席の静香の恐怖の浮かんだ視線を自分に向けてくるのを痛いほど意識しながら、恐る恐るヒッチハイカーに対して言い訳をした。
サードシートで夢中になって3Pをしていた三人も行為を中断して静かになっていた。ついさっきまで、車内の誰もが狭い車内で自分達の繰り広げる性行為に没頭し狂乱したような快感状態の中にあったが、射精したヒッチハイカー自身の『賢者の時間』と呼ばれる冷めた状態での伸田に放った厳しい恫喝とも言える言葉で、全員の興奮は一気に冷めてしまった。
しかし、エリが言うには彼女の膣内でヒッチハイカー自身のペニスは勃起して硬いままだと言う… つまり、まだまだエリとのセックスを続けられる興奮状態であるにも関わらず、冷徹な言葉を伸田に向けて吐き出しているのだ。この男の肉体と精神は、いったいどうなっているのだ?
「わ、分かったよ… 君の言う通り、今から南へ向かうよ。みんな、いいね?」
ヒッチハイカーへの恐怖から、伸田はそう答えざるを得なかった。
車のカーナビの表示では、設定してあった目的地はもう近くのはずだった。だが、車内の誰もが否を唱えるどころか、一言も声を発する事が出来ないでいた。ただ一人、ヒッチハイカーの硬く勃起したペニスを自分の膣に挿入されたままで、ときおり快感の喘ぎ声を上げるエリ以外には…
「ああ、それでいいよ。間違えるなよ、南だからな。」
伸田の返事に満足したのか、今度は穏やかな声でそうつぶやき、やっと睨みつけていた伸田から視線を外したヒッチハイカーは、大きな両手でエリの白く締まった尻をもう一度力強く鷲づかみにすると、彼女の身体を軽々と上げ下げして対面騎乗位のままで激しいピストン運動を再開した。彼自身はエリとの性交を止めるつもりはさらさら無いという態度だった。
どうやら、この男は底なしの精力と体力を秘めているらしい。グラマーで女性としては大柄な168㎝で58kgもあるエリの身体を、重さなどまるで気にしないかの様に軽々と扱っていた。
「ああっ! いい! もっと、もっと~!」
ぬちゃっ! ぐちゅっ! ぬちゅっ! ずぶぶっ!
動き出した車内に響いているのはエリの快楽の叫びと、二人の体液まみれの結合部が激しいピストン運動で立てる粘液質で卑猥な摩擦音だけだった。
だが、残りの5人はもう性的な興奮から覚め、それぞれが黙りこくったまま自分の乱れた衣服を黙って整え始めた。ただ一人、剛士だけは相変わらず苦虫を噛み潰したような表情で、目の前のセカンドシートで自分のガールフレンドが自分以外の男と繰り広げる痴態を悔しそうに見つめながら歯ぎしりを繰り返していた。
伸田はハザードランプを消し、進行方向に向けてウインカーを点灯させると車を発進させ、Uターンして来た道を逆走し始めた。
「ねえ…ジャイアンツ… ノビタのヤツ、ホントに旅館へ行くの諦めちゃったのかな…? せっかく、すぐ近くまで来てたってのに…」
サードシートの真ん中に座るミチルの背中越しに須根尾が服を引っ張って剛士を近寄せ、彼の耳に囁いた。ミチルは小柄な自分の身体で恋人の須根尾の顔を前の座席から隠すようにした。
「さあな…そんな事、俺にも分からねえよ。だが、ノビタの判断は間違っちゃいねえよ。アイツの言う通りにしなかったらノビタは今頃きっと殺されてたぜ…」
剛士は、さっき今日初めて3Pで交わったミチルの中に自分が興奮して放出した精液の臭いがする彼女のズボンの尻部分に鼻を押し当てて匂いを嗅ぎながら、須根尾に囁き声で返事をした。
「ジャイアンツ… アイツ、あまりにも異常だと思わないか? 今だって、恋人である君の目の前でエリちゃんを… それに、もう1時間くらいエリちゃんに挿入し続けてるんじゃないかな…」
左手首にはめた腕時計で時間を確認した須根尾が、剛士に向かって言いにくそうに告げた。
「お、俺だって、本当は腸が煮えくり返りそうなほど悔しいんだ。あの野郎、隙を見つけて必ずブチのめしてやる… 絶対にエリをアイツから奪い返す。あんな訳の変わらない野郎に、俺達が楽しみにしてた旅行を邪魔されてたまるかよ。」
歯ぎしりしながら剛士はそう言ったが、彼の耳には途切れる事の無いエリの喘ぎ声と、ときおり上げる絶頂の叫びが聞こえ続けていた。
「でも、どうやってさ? 悪いけど…アイツ、君よりも強そうだぜ…」
須根尾の遠慮の無い言い方に腹が立ったが、剛士には否定する事が出来なかった。その通りだと自分でも感じていたからだ。ヒッチハイカーの男には近寄りがたいほどの不気味さとともに、禍々しいほどに圧倒的な暴力の匂いが身体中から発散されているのだ。喧嘩には自信のある剛士だったが、この常人離れをしたヒッチハイカーだけは勝手が違い、薄気味悪過ぎて出来れば相手をしたくは無かったのだ。
「スネオ… お前…喧嘩は弱いけど、昔から悪知恵だけは働いてたじゃねえか… 何か考えろよ…」
剛士の言葉に須根尾はネズミのような顔でニヤリといやらしい笑みを浮かべて言った。
「ああ、ちょっと僕に考えがあるんだ… それにはノビタの協力が絶対に必要なんだよ… でもノビタは運転中だから、今から僕のスマホでシズちゃんに宛ててLINEメッセージを送るよ…」
「お、おい… そんな事して大丈夫かよ… ヤツに見つかったら殺されるぞ…」
須根尾の提案に恐れをなしたのか、巨漢で乱暴者の剛士が額に汗を浮かべて震えながら囁いた。
「大丈夫だって… 僕の見た所、アイツはLINEなんて知ってる筈が無いさ…」
自分よりも怯えている様に見える剛士の様子を笑いながら、須根尾は自分のスマホを取り出してLINEのアプリを開き、助手席の静香あてにメッセージを入力し始めた。
そして打ち終わったメッセージを送信した後、須根尾は剛士に自分の考えたプランを説明した。須根尾の恋人であるミチルも、自分の背後で交わされる男達の会話を耳を澄ませて聞いていた。
須根尾がセカンドシートで相変わらず激しい性交に励み続ける二人の隙間を通して、助手席の様子を窺った。
エリはすでに数えきれないほどの絶頂に達していたはずだったが、一向に性交を止めてヒッチハイカーのペニスを自分の膣から抜こうとはしなかった。男の巨大なペニスを膣奥に深く飲み込んだまま、荒い呼吸に激しい喘ぎ、それに時おり悲鳴の様に聞こえる絶頂の叫びを上げながら跨った男の腰に自分の股間を杭打機のように激しく打ち付け続けていた。それはまるで、彼女にもヒッチハイカーの狂乱的に激しい情欲が伝染したかのようだった。
いつの間にか何もかも脱ぎ捨てて全裸になっていたエリの白く艶めかしい裸体に滝の様な汗が流れ落ち、まるで風呂上がりの様に身体から湯気が立ち上っていた。
パン! パン! ぬちゅ… パン! にゅぷ… パン! じゅぶぶ…
「はっ、はっ、ううっ… はっ、はっ、い、いい… もっと、もっとおっ!」
二人は他の者達など存在しないかの様に獣じみた雄叫びを上げながら、狂ったようにピストン運動を繰り返している。互いの性器が抜き差しされるたびに結合部から溢れ出し白い泡状になった体液がさらにかき回され、耳を覆いたくなる様な粘液質で卑猥な音を上げ続ける。
自分達だけが没頭する目くるめく交尾の興奮に酔いしれた二匹ののオスとメスは、須根尾が行おうとしている計画や、前後の座席の者達の不審な動きに気付く様子など全く無かった。
「おい… スネオ… エリは助けてくれよ… エリは馬鹿みたいにセックス好きな淫乱女だけど、俺にとっちゃあ可愛くていい女なんだ。俺はアイツの事を愛してるんだ…」
剛士がミチルの背中越しに須根尾の服の裾を引っ張りながら言った。
「分かってるんだけど… エリちゃんとあのヒッチハイカーの身体が繋がったままじゃ、僕の立てた計画は実行出来ない。何とかして、あの際限無しのセックスを中断させて二人の身体を引き離さなきゃ… あの二人、もう2時間近く挿入したままでやりっぱなしなんだぜ。エリちゃんは女だから何度でも可能だろうけど、あの男は底なしの精力を持ったバケモンだね… あ…待って、シズちゃんからLINEの返事が来た…」
剛士はエリの喘ぎ声と二人のピストン運動をする結合部が出す卑猥な抜き差しの音を聞かないように、両耳に人差し指を突っ込んでミチルの尻に顔を押し付けていた。剛士の気持ちを察し、彼を哀れに思ったミチルは嫌がる事無く左手で彼の背中を優しく擦ってやっていた。ミチルは基本的に心優しく世話好きな女の子なのだ。
須根尾は剛士の頭を叩いて自分の方に顔を向けさせた、剛士は愛する恋人が目の前で繰り広げる痴態を見聞きしたくない余り、きつく目を閉じて両耳に指を突っ込んでいたのだ。須根尾は剛士の指を無理矢理耳から引き抜いて彼の耳元で囁いた。
「ちょっと… ジャイアンツ… シズちゃんから返事のLINEが届いたよ。
次にエリちゃんが絶頂に達して身体がぐったりとなった時に、シズちゃんが助手席から乗り出してエリちゃんの両脇に手を差し込んで彼女の身体を前に引っ張るって。そうすれば、あの男のペニスがエリちゃんの膣から抜けるだろうからって。その時に例の作戦を決行だ。」
「おう、分かった… エリがイッた時だな。同時にあの野郎もイッちゃってくれりゃもっといいんだがな…」
いよいよ、その時が来たようだった。セカンドシートで性交を続ける二人の呼吸がそれまでよりも荒く早くなり、ヒッチハイカーがエリの腰を突き上げる動きが激しくなった。
ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!
にゅぷっ! じゅぼっ! じゅぶぶ! じゅる!
「ああっ! いいっ! わ、私…またイ、イキそう! こ、今度こそ! も、もうダメ! イク、イっクうううっ!」
エリが先に絶頂を迎えた様だ。彼女の全身が激しく痙攣した。ヒッチハイカーも天井に顔を向け口を半開きにしている。彼もまた射精の瞬間が近づいたのだろう。
「イッくうぅっー!」
「うおおおおおおっ!」
同時に絶叫を上げ痙攣を繰り返した後、二人の身体の動きが止まった。エリの豊かな尻を鷲づかみにしていたヒッチハイカーの両手が離れ、横にダラリと垂れ下がった。
さすがの絶倫男も人間である以上は、射精した後に一時的な放心状態が訪れはするみたいだった。
「今だっ! シズちゃん!」
サードシートで須根尾が叫んだのを合図に、エクスタシーに達して弛緩しているエリの脇の下に手を入れた静香が渾身の力で上に引き上げた。
にゅぽっ!
厭らしい音と共にエリの膣内から二人の体液に塗れた巨大なペニスが抜けた。
びゅっ! びゅるるるーっ!
膣から抜けると同時にヒッチハイカーのペニスの先端から夥しい量の熱い精液が迸り、静香の顔面に勢いよく直撃した! その白い液体の勢いと量はまるで消防車の放水の様だった。
「きゃあっ!」
悲鳴を上げながらも、静香は必死になって耐え、両腕でぐったりと弛緩してままのエリの身体をしっかりと支えた。
「今だ! ノビタぁーっ!」
静香の懸命の行動が成功したのを見て取った須根尾が、今度は運転を続ける伸田に向けて叫んだ。
ピーッ、ピーッ、ピーッ!
すると突然、警告音を鳴らしながら車体の左側に位置する電動スライドドアが開いていく。伸田が須根尾の合図で運転席にある左側ドアの開閉スィッチを押したのだった。そして大声で後方に向けて叫ぶ。
「今だ、ジャイアンツっ!」
「おおっ!」
開いた左側のドアから吹雪が車内にドッと吹き込んで来た。油断ならないヒッチハイカーも、流石に射精した直後で何が起こったかハッキリと分かっていない顔つきだった。性器で繋がっていたエリの身体が自分から離れたと思った途端、突然左側のドアが開いて激しい吹雪が吹き込んで来たのだ。
この瞬間を待っていた剛士が、渾身の力を込めてヒッチハイカーの身体を開いたドアから外に向けて蹴り出した。
「出て失せろ、このクソ野郎がっ!」
ドドーンッ! ザザザーッ!
ヒッチハイカーは何が自分の身に起こったか理解するよりも前に走行中の車から外へと放り出され、|降り積もった雪が凍り付いた固いアスファルトの路面に下半身丸出しのままの半裸の身体を叩きつけられ、後方へゴロゴロと転がっていった。
バックミラー越しにその様子を確認した伸田は、すかさずアクセルを踏み込み、安全のために落とし気味だった愛車の速度を上げた。加速した車は路面に転がったヒッチハイカーの身体からどんどん遠ざかって行く。
「ドアを閉めるよ! みんな気を付けて!」
伸田が車内の全員に向けて叫んだ。
「ちょっと待て、ノビタ! アイツの忘れてった汚ねえズボンとコートを車から外へ放り出す! こんな気味の悪いもんを置いとけねえ!
そらよ! 受け取れ、マヌケめ!」
セカンドシートに戻った剛士がヒッチハイカーの脱ぎ捨てていたコートとパンツの入ったままのズボンを掴むと、開いたドアから外へと勢いよく放り投げた。
衣服は吹雪に巻き上げられて飛んで行き、不気味なリュックサックは路面を転がって、すぐに視界から消えた。
「よし、ノビタ! いいぜ、ドアを閉めろ!」
伸田が運転席にある開閉スイッチを押し、開いていた左側電動スライドドアを閉めた。
車内で渦巻いていた吹雪がやっと収まったが、それまで異様に暑かった車内は凍えるほどの温度に下がっていた。外から吹き込んだ雪が若者達の身体やシートに積もっている。
伸田がすぐにヒーターを最強で点けた。
ガチガチガチ…
みんなが一斉にエリに注目した。凍えて震えるエリの歯が大きな音を立てていたのだった。
一人だけ全裸だったエリの身体が、開いたドアから車内に激しく吹き込んだ吹雪で冷え切ってしまっていた。凍えたエリの全身は蒼白になり、低体温症に陥っている状態だった。慌てた静香が両腕に抱えていたエリの身体を擦ってやりながら大声で叫んだ。
「エリちゃんが危険だわ! 何か彼女の身体に掛ける物をちょうだいっ! 早く!」
「これを着せろ!」
剛士が自分の着ていた厚手のセーターを急いで脱ぎ去ると、エリの頭からすっぽりと被せて彼女の凍えた身体を力強く抱きしめた。大柄な剛士のセーターなのでエリの身体を膝下まですっぽりと包み込んだ。セーターは着ていた剛士の体温で温まっていたので、今のエリには最適な被せ物だった。
その上、剛士が抱きしめたエリの身体を大きな両手で擦りながら温めてやった。その内、徐々に車内の温度も上がって来た。
凍えていたエリの顔が、少しずつだが生気を取り戻してきた様だった。彼女の真っ白だった頬に、ほんのりと赤みがさし始めていた。
「ノビタ! 俺達の行くはずだった旅館まで、あとどのくらいだ?」
エリを抱いた剛士が運転席の伸田に向けて大声で訊いた。
「ナビの表示では、この速度で走ったなら一時間くらいだと思う。でも、さっき通った時よりも道路の凍結が進んでるから速度が出せない。それに…最悪だけどガソリンが残り少ないんだ。旅館までに一度給油しないと…持たない…」
伸田が言いにくそうに皆に告げた。
「何だよ、ノビタ! この車、ガソリン車なのかよ! ホントにこれだからノビタは、マヌケでグズでノロマだってんだ!」
剛士がじれったそうに言ったが、その顔は本心から怒っている訳では無かった。彼の顔には、うっすらと笑みすら浮かんでいたのだ。伸田も含めた皆の活躍で窮地を脱したのだ。エリを取り戻せた今、剛士の気持ちにも余裕が生まれていた。
「そんなにひどく言うなよ~、ジャイアンツ~」
ルームミラーでセカンドシートに座るジャイアンの顔をちらちら窺いながら、伸田が情けない声を上げた。
「ぷっ!」
助手席で二人のやり取り聞いていた静香が、我慢出来なくなって吹き出した。
それを合図に車内のエリを除いた全員が笑い出した。抱きしめているエリの顔にも微笑みが浮かんだのを見て、剛士はエリの頬に自分の頬を押し付けた。柄にもなく剛士の目には大粒の涙が浮かんでいた。
「無精ひげがチクチクして痛いよ、剛士… ごめんね、さっきの事…」
弱弱しかったが、耳慣れたハスキーな声が聞こえた剛士は抱きしめているエリの顔を見つめた。閉じていた両目がうっすらと開き、僅かだが微笑みを浮かべたエリが剛士の顔を見返していた。彼女の両眼にも涙が溢れていた。
「そんな事、気にしてねえよ! お前が元気になったら、今度は俺がヒィヒィ言わしてやるからな! 覚悟しとけよ!」
力強くエリを抱きしめ、剛士がボロボロと涙を流しながら言った。
「ごめんね、タケシ… ごめんね…」
エリが自分を抱きしめる剛士に向けて何度も謝りの言葉を告げた。
「もういい、エリ。俺の方こそ悪かった… お前をもっと早く助けてやれなくて。もう二度と、お前をあんな目に合わさねえ。お前は俺の女なんだ。」
オイオイと泣きながら剛士が言った。
「ホントに良かったわ…」
サードシートに座るミチルが恋人の須根尾と抱き合いながら涙声で言った。この二人もまた、エリが無事だっただけではなく、自分達に危害を及ぼしそうな正体不明の男を撃退出来た事が心から嬉しくて仕方がないのだった。
「スネちゃん、これで安心して目的地まで行けるね。」
ミチルが須根尾に顔を向けて目をつむると、須根尾が照れながらミチルの唇にキスをした。
「おいおい、旅館に着くまでイチャイチャすんじゃねえよ! また、おかしな野郎が現れたらどうすんだ!」
自分はエリを抱きしめたままの剛士が後列の二人を大声でからかった。それを聞いて顔を真っ赤にしたミチルと須根尾は慌てて抱き合っていた互いの身体を離した。
「あははははは!」
再び温かさの戻った車内に、若者達の高らかな笑いが湧き起こった。
助手席では静香が笑顔を浮かべて運転する伸田の左太ももを優しく擦っている。伸田は横目で自慢の美しい恋人の顔をちらっと見て微笑んだ。
目的地までの往路における楽しかった仲間達だけの団欒の時間が、突然現れた不気味なヒッチハイカーのせいで無理矢理恐怖に陥れられたのだ。謎のヒッチハイカーから解放された安心感が車内を再び明るい雰囲気にしていた。
車内にいる全員の顔に、旅の楽しい時間と場所を取り戻せた安堵の表情が浮かんでいた。
「あっ! ガソリンスタンドが見えて来たよ! あそこで給油して行こう。」
いち早く気付いた伸田が大声を上げると、全員が前方に目を向けた。
その瞬間だった…
車内の全員が一斉に見つめる中、吹き荒れる吹雪を通して前方に見えて来たガソリンスタンドが、見る者の目が潰れそうなほどの眩しい輝きを上げて突然爆発した。
ドッカアーーーンッ!!!
吹雪く夜の山道を明々と照らす火柱が上がった。
「うおっ!」
「きゃああああーっ!」
「何なんだよおっ!」
自分の見ている光景が信じられない若者達は口々に叫び声を上げた。




