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ヒッチハイカー  作者: 幻田恋人


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3/11

第3話「どうしても南へ行きたいんだ… ①『そいつとの出会い…そして恐怖による支配へ』」

 雪の降る山間部の国道**線を一台の白い大型SUV車が走っていた。山道の気温は低く、SUV車の窓ガラスは中に乗っている満載の乗員による人いきれからか、白く(くも)っていた。

 中には若者達が乗っているのだろう… 車内で鳴らしているアップテンポの流行曲の響きが、大型の車体を通して外まで伝わっていた。

「おい、伸田(のびた)。まだかよ? その(こお)り付く湖の(そば)にある温泉宿ってのは? うっ! エリ、もっと激しくしごいてくれ…」

 SUV車の中央列であるセカンドシートの右側座席に(すわ)る巨漢の幸田 剛士(こうだ たけし)が、車を運転する伸田 伸也(のびた のびや)に聞いた。

 最後の剛士(たけし)の言葉は伸田(のびた)にかけられたものでは無い。剛士(たけし)(となり)に座るガールフレンドの水木エリとペッティングの真っ最中なのだ。右手をエリのショーツに突っ込んで、クチュクチュと卑猥(ひわい)な音を立てながらエリの中に入れた指を激しく動かしていた。

 エリの方も恍惚(こうこつ)とした表情で口を半開きにして(あえ)ぎながら、やはりズボンとパンツをずらして下半身を丸出しにした剛士たけしのビンビンに屹立(きつりつ)した巨大な性器を握りしめ、相手に負けじとばかりに激しく右手で上下にしごいている。


「お前らなあ… 僕にばっかり運転させやがって、後ろでいちゃいちゃと何やってくれてんだよ!」

 剛士(たけし)に話かけられた運転席でハンドルを握った伸田 伸也(のびた のびや)が、ルームミラーで後部座席を(のぞ)き込みながら怒鳴(どな)った。だが、そう言う伸也も運転しながら助手席に座る恋人の皆元 静香(みなもと しずか)に、口を使った奉仕をしてもらっていた。静香(シズカ)勃起(ぼっき)した伸也のモノを小さな口に頬張(ほおば)り、頭をゆっくりと上下させている。


 元々、幼馴染(おさななじみ)だった伸田(のびた)静香( しずか)の二人は、成長して大学に進学した今では互いに愛し合う恋人同士という関係を越え、自分達だけではなく双方の親達の間でも結婚を公認している婚約者同士だったのである。

 車内にいる6人の内、伸田(のびた)静香( しずか)、そして幸田(こうだ)と後部シートに乗る須根尾(すねお)の4人は幼稚園に入園する以前から近所に住む幼馴染であり、大学4年生となった今でも4人の仲の良さは変わる事無く続いていた。

 残る2人の女子大生は幸田と須根尾(すねお)のそれぞれの恋人達であり、6人の若者達全員の就職内定と卒業旅行を兼ねての冬のスキーと温泉(めぐ)りに向かう旅の道中だった。


「へっ! もう()められるかよ! 後ろの座席じゃ、我慢出来なくなった須根尾(すねお)がミチルと(なま)で本番始めちまったぜ!

 お前だって、運転しながら(いと)しのシズちゃんにフェラさせてるじゃねえか!

 危ねえからバックミラーで後ろなんか見てねえで、お前は前見て運転に集中してろ!」

 高まってきた快感に()いしれた剛士(たけし)が、エリの(ちつ)に入れた指を夢中で出し入れしながら大声で言った。

 なるほど、たしかに剛士の言った様に、SUV車の最後尾(さいこうび)のシートでは、下半身全裸になった二人の若い男女が狭い場所ながら器用に後背位(バック)(つな)がったまま激しく腰を動かしている最中だった。


「シズちゃん… ぼ、僕…もう…イキそうだ… ううっ! 出る!」

 伸田(のびた)は右手だけでハンドルを握り、左手で恋人の静香(シズカ)の頭を押さえつけると、彼女の喉奥(のどおく)深くまで自分のモノを突き立てて思いっ切り射精した。

「グエッ! ゲボッ! ゲホゲホッ! ん~!ん~!」

 静香は必死になって頭を振り、喉奥深くまで突き立てられた男のイチモツを吐き出そうとするが、伸田(のびた)はなかなか解放しようとしなかった。彼は右手だけでハンドルを握って器用に運転したまま、恍惚(こうこつ)とした表情を浮かべ、精液を最後の一滴まで静香の喉奥に放出し終わるまで、逃れられずに苦し気に両手を振って(あば)れる彼女の頭を左手で強く押さえつけていた。

「げええぇーっ! な、何す… うえーっ、ぺっぺっ! 苦しくて死ぬかと思った!

 もおっ、ノビタさん! あたしを殺す気? おえっ! こんなにいっぱい出して!

 うえっ… 半分以上飲んじゃったじゃない…、ノビタさんの精子! うぇ~気持ち悪い… げえっ!」

 普段は美しく清楚(せいそ)な顔にいつも優しい微笑を浮かべ、彼女の前では同世代だけでなく年齢にかかわらず男なら誰でも魅了されてしまう静香(しずか)なのだが、今は本気で伸田(のびた)に怒りながら車内のゴミ箱に、自分の喉奥(のどおく)に放出された精液を可能な限り吐き出そうとして激しく嘔吐(えず)いた。

 さすがに相思相愛の恋人同士でも、相手の理不尽な行為に静香( しずか)は本気で怒っていた。

 静香( しずか)の口内に溜まっていた精液をたっぷりと放出して満足し、すでに『賢者タイム』に入っていた伸田(のびた)は、横目で見た恋人の怒りの表情を見て心底後悔した。

「ご、ごめんよ…シズちゃん、怒らないで… あんまり、君の口が気持ち良かったもんだから…」 

(あわ)てて何度も謝罪する伸田(のびた)が少し可哀(かわい)そうになったのか、本来が優しい性格の静香( しずか)は多少引きつってはいたが、美しい顔に微笑みを浮かべながら言った。

「もういいわ。後ろの人達ばっかり気持ちのいい事始めちゃって我慢出来なくなったんだもんね。許してあげるから、ちゃんと前見て運転してちょうだい。」

 (いと)しい静香( しずか)の許しを得てホッとした伸田(のびた)は、これでようやく運転に集中する事が出来ると思った。彼としては、後ろで仲間達が繰り広げる痴態にげんなりとしながらも、はち切れそうに勃起(ぼっき)した若い自分自身が(つら)くて仕方が無かったのだ。そんな恋人を見かねた優しい静香( しずか)が、手と口で彼のイチモツを(なぐさ)め始めたのだ。


 面倒見のいい静香( しずか)婚約者(フィアンセ)である伸田(のびた)の放出したばかりのイチモツを、嫌がる事も無く自主的にウェットティッシュで綺麗(きれい)()き取ってから、ズボンとパンツの中に元通りにしまってやった。

 伸田(のびた)は、そんな優しい静香が好きで好きでたまらないのだ。彼は早く静香と結婚して所帯を持ちたくて仕方が無いのだった。彼女の存在を身近(みじか)に感じているだけで、自然と自分の鼻の下が伸びているんじゃないかと思うほど幸せなのだった。

 山道を運転中にもかかわらず、気が緩むと静香( しずか)の美しい横顔に目がいきそうになるのを、彼女に心底から()れている伸田(のびた)にはどうしようもなかった。


「うっ! お、俺も…もう出そうだ… エリ、お前の口で受けてくれ…って…! うわっ!

 おいっ! 伸田(のびた)! 前見ろおっ! ひ、人だ! 人がいるぞっ!」

 剛士(たけし)がエリの右手にガチガチに勃起したイチモツをしごかれたまま放出した精液を空中に()き散らしながら、フロントガラスの前方に見える光景を恐怖の目で見つめながら叫んだ。


「えっ? う、うわあっ!」

ギギギーッ!ギャギャギャギャギャーッ! ドンッ!


 突然の剛士(たけし)の叫び声で前方に目を向けた伸田(のびた)が、急ブレーキを()んだ時には遅かった…

 車は雪道用のスタッドレスタイヤを着用していたが降り積もった雪が(こお)った路面でスリップし、何とかスピンこそ(まぬが)れたものの車体を左右に振りながら何かに衝突した。

 車は停車したが、車内の全員が自分達の快楽行為に没頭(ぼっとう)するためにシートベルトを着用していなかったのだ。

 衝突の瞬間に握ったハンドルに両手を突っ張った伸田(のびた)を除いた全員が、ダッシュボードや前のシートに頭や身体を強く打ち付けてしまった。

「うっ!」

「いったあ~い!」

「頭打ったぁ…」

「痛い痛い」

 車内のあちこちから乗っていた男女の悲鳴や(うめ)き声が上がった。


「おい、シズちゃん! しっかりして! み、みんな、大丈夫か…?」 

 そう呼びかけながら、伸田(のびた)は車内を見回した。 助手席の静香はダッシュボードにぶつけて頭を切ったのか、(ひたい)から伝った血が白く美しい顔を汚して気絶していた。(くちびる)を切ったのか半開きの彼女の口からも、伸田(のびた)が放出した精液の残りが混ざった血が少量だが流れ出していた。

 後部座席にいた者達も、各々(おのおの)がぶつけた身体をさすったり頭を振ったりしながら、(うめ)き声を上げている。誰も伸田に「大丈夫だ」と返事をする者はいなかった。


 最後尾で夢中になって性交に(はげ)んでいた須根尾 骨延(すねお ほねのぶ)と恋人の山野ミチルは、かわいそうに膣内(ちつない)にペニスを挿入(そうにゅう)したままの状態で身体を重ねて床に転げ落ちていた。ぶつかった衝撃で須根尾(すねお)はミチルの膣内に射精したらしく、二人の性器の結合部から白い精液が流れ出ていた。

 二人とも呻き声を上げているが、どうやら無事の様だ。


 暖房の()いた暖かい車内には、若い6人の男女が(おびただ)しく放出した体液のすえた(にお)いと、全員の()き出しになった性器と汗ばんだ全身から発散されるオスとメスの発情した匂いが、熱気と共に充満していた。

 運転者を含めた乗員全員が、こんな快楽行為に(ふけ)った状態で凍った路面に車を走らせていたのだから、衝突事故に()っても不思議では無かった。

 こんな非常識でバカな連中の乗った車にぶつけられた人間がいるとしたら、それこそ不幸のひと言で()ませられないだろう。心身ともに(たま)ったものでは無い。


「い、いったい何だったんだ…? ぼ、僕…ひ、人を()いちゃったのかな? 

 ど、どうしよう… 視界がホワイトアウトに近い状態で、前方がよく分からなかったんだ。路面が凍ってるからそんなにスピードは出してなかったけど…まさか、死んじゃいないよな。

 ジャイアンツ、お願いだから一緒に外へ見に行ってくれよ…」

 運転者の伸田(のびた)が背後を振り返って泣きそうな声で訴えた『ジャイアンツ』というのは、二列目のシートで恋人である水木エリにフェラチオをさせていた幸田 剛士(こうだ たけし)の事である。

 彼自身が日本プロ野球セリーグの有名チームの熱狂的ファンでもあり、身体も同級生の中でずば抜けて大きかった事から幸田 剛士(こうだ たけし)は、親しい者達の間では幼い頃より『ジャイアンツ』というあだ名で呼ばれているのだった。


 この6人グループの中で、男達3人と女子の皆元 静香(みなもと しずか)だけは、幼稚園に入る前からの幼馴染(おさななじみ)の間柄だった。

 全員別々の大学に進んだのだが、大学4年生となった今でも4人の仲の良さが変わる事は無かった。

 どういうわけか、男子のうち一番可能性の低いと思われた伸田(のびた)が、三人の男達のアイドルだった皆元 静香(みなもと しずか)のハートを射止(いと)めたようで、今では伸田(のびた)静香(しずか)は自他ともに認める恋人同士となっていた。

 4人に加え、幸田 剛士(こうだ たけし)須根尾 骨延(すねお ほねのぶ)のそれぞれの彼女を加えた合計6人の一行は伸田の発案と彼自身の運転する車で都心を離れた〇X県へと三泊四日のスキー旅行へと出かけて来たのだが、現在は目的地に向けての往路(おうろ)の途中だった。


 伸田(のびた)は車を路肩に寄せて安全に停車し、エンジンをかけたままギアをパーキングに入れてしっかりとパーキングブレーキをかけた上でハザードランプを点灯させてから、脱いでいたパンツとズボンを穿()き直した剛士(たけし)と共に防寒用の上着を着込むと、暖かい車中から吹雪(ふぶ)いている車外へと出た。


サク、サクッ…

 二人が歩くたびに路面に積もった雪が小気味(こきみ)よい音を立てる。

 車の前に回り込んだ伸田はスマホのライトで車の前部を照らして見た。すると、助手席側のヘッドライトが割れ、その周囲の車体部分が(へこ)んでバンパーも破損しているのを見とめた。


「あちゃあぁ…やっちゃったな。まだローンがだいぶ残ってるのに…」

 今にも泣き出しそうな声で伸田がボヤくのを聞いた剛士が怒った声で言った。

「バカ野郎!

 てめえの自業自得(じごうじとく)だろ。ノビタのくせに、運転しながら俺達のマドンナのシズカちゃんにフェラなんてさせてっからだろ!

 下手(へた)したら全員死ぬところだったぜ! ったく、これだからノビタは…」

 幼い頃からイジメっ子だった巨漢の剛士が大声で怒鳴ったものだから、伸田は本当に泣き出しそうな顔になって答えた。

「ご、ごめんよ、ジャイアンツ… そ、それよりも何にぶつかったかだよ… 君が見たのって本当に人だったの?」  

 そう言って伸田は、路肩(ろかた)に止めた自車の周囲をスマホのライトで照らして見た。

「バカ野郎! ノビタの分際で、この俺様が見間違えたって言いてえのか? 

 思いっ切りぶん(なぐ)るぞ、ノビタ! あれは間違いなく人間の男だったんだ!」

 雪の降りしきる車外で寒そうに震えながらも、握った右(こぶし)を口元に持っていき息を吹きかけながら剛士が伸田を怒鳴りつけた。

 怒鳴られた伸田は外の寒さだけではなく、恐ろしさで震えあがった。白い息を吐き続ける彼の口元では歯がガチガチ鳴り、顔も真っ(さお)だった。彼は今にも卒倒(そっとう)しそうなほど震えていた。


「何だ、ノビタ! 臆病もんが! お前はちっちゃい頃から小心者で臆病(おくびょう)なヤツだったけど、そんなにブルブルガタガタ震え上がりやがって! みっともねえ野郎だぜ。しょうがねえ、今回は勘弁(かんべん)して殴らねえでいてやるけど、俺の前でシズカちゃんに二度とあんな事させるなよ。」

 ガタガタと(おび)える伸田の姿を見て留飲(りゅういん)の下がった剛士はニヤニヤ笑いながら振り上げていた右拳を下ろした。だが、剛士がそう言ってやっても伸田は凍り付いたように固まったまま一点を凝視(ぎょうし)していた。

「ジャ、ジャイアンツ… う…後ろ…」

 震える伸田が右手を上げ、剛士の後方を指さした。

「な、何だよ。そんなに震えやがって… 俺の後ろがどうしたってんだ?」

 さすがの剛士も伸田の態度が示している尋常ではない恐怖が伝染したのか、恐る恐る自分の背後を振り返った。すると、振り向いた剛士の目の前にそいつ(●●●)が立っていた…


「うっ…」

 剛士は驚きの余り、息を()んだ。目の前に立ったそいつ(●●●)は、185cmもの身長がある巨漢の自分よりもさらに上背(うわぜ)のある大きな男だった。


「な、何だよ… あ、あんたは…?」

 剛士は生まれて初めて他の男に圧倒された。いつも自分の強さを自慢にしていた剛士が、この男には(かな)わないと動物的な本能で感じたのだった。


「お前らの車が俺にぶつかったんだ… 許してやる代わりに俺を車に乗せてくれよ。俺、どうしても行きたい所があるんだ…」

 (つぶや)くような低い声でそう言った男の顔は、なるほどボサボサの長髪頭から額を伝って血が流れていた。車に衝突されて倒れた拍子に凍った地面に強く頭をぶつけたのだろうか?… だが、頭がフラフラする訳でも無さそうな態度でしっかりと立って話をしている。

 それにしても、この男は寒い年末の雪が降りしきる山道を一人で歩いていたのだろうか…?

 2m近くあろうかという長身で見るからにガッシリとした体格の男は、カーキ色でフードが付いたM-51と呼ばれるアメリカの軍用コートを着込んでいた。このコートは、単独では防寒具と呼べる代物(しろもの)では無い。温かいインナーも無しにそれを着ただけでこの山間部の屋外で行動するなど正気の沙汰(さた)とは思えなかった。だが、そいつは厳寒(げんかん)の山間部における夜間であるにも関わらず、コートの前を合わしもせず開いたままだった。

 コートの中に着ているのはヨレヨレのワークシャツに下半身に()いているのはダボッとしたやはり軍用だと思われる汚れたチノパンだった。足元は頑丈(がんじょう)そうな()み上げの登山靴を()いていた。

 見た目で最も奇妙なのは、彼が左肩にかけているリュックサックだろうか。一見(いっけん)女性用にも見える…およそ、この男には似つかわしく無い代物(しろもの)だった。

 軍用の服を好んで着ているこの男には全く実用的であるとは思えず、ちょっとしたハイキングや街歩き程度で若い女性が使用するファッショナブルな造りのリュックサックなのだ。元々の色合いは不明だが、今は気味の悪い赤黒い色を塗りたくった様な有様(ありさま)だった。

 男に不釣り合いな奇妙なリュックサックからは、中に入りきらない頑丈そうで使い込んだ感のある木製の握り部分(?)が突き出ていた。何かの特別な工具なのだろうか?


 しかし、この男の発散している(にお)いは何だ… まるで野生の動物が発する様な鼻を()く体臭だった。すぐ(そば)に立った剛士は男の匂いに顔をしかめた。寒風の吹きすさぶ野外なのにも関わらず、少し離れた所に立った伸田の所にまで強く匂ってきていた。


「と、とにかく傷の手当てをしなきゃ! 中に救急箱があるから入って下さい。こんなとこで話してたらみんな(こご)え死んじゃうよ!」

 伸田が叫んだ。その通りだった。さっきよりも風と雪がきつくなっていたのだ。山頂から吹き下ろす風で吹雪(ふき)が強まっていた。

 剛士は男の前に立ちすくんだ今の状態から逃れられるのなら、理由は何でもよかった。伸田の提案に渡りに船とばかりに賛成した。

「お、おう! そうだな、とにかく車の中に入ろう。さあ、あんたも入れよ!」

 そう言いながら剛士は車の左側スライドドアを開けてやり、男に入るように(うなが)した。そして自分は反対側に回り込んで右側ドアを開けて中に乗り込んだ。そうすると当然ながら剛士のガールフレンドの水木エリが大男二人に(はさ)まれる形になる。大型SUVとは言っても三人にとって非常に窮屈(きゅうくつ)な状況である。

 運転者である伸田が最後に運転席に乗り込むと、助手席から静香が優しい笑顔で迎えた。それを見た伸田の身体から少しだけ緊張が解けた。

 ついさっきまで車内では下半身丸出しか全裸で不埒(ふらち)な行為が行われていたが、今では衣服を着て車外の成り行きを見守っていた残りの連中が緊張した面持(おもも)ちで無言のまま、外にいた三人が車内に入って来るのを迎えた。

 助手席の静香は(ひたい)絆創膏(ばんそうこう)()っていたが、血が(にじ)んでいない所を見ると傷自体は大した事は無さそうだった。それを見た恋人である伸田は少し安心した。


「うっ! 何よ…この(にお)い…?」

 セカンドシートに座っていて、新たに入って来た男に身体をくっつけられた水木エリが遠慮(えんりょ)する事無く露骨(ろこつ)に顔をしかめてつぶやいた。口にこそ出さないが、他の者達も同じ思いであるのに違いは無かった。

 しかし、車内にも服は着たと言っても6人の男女の快楽行為による匂いの残滓(ざんし)(こも)っていた。この正体不明の男も鼻をヒクヒクさせて車内に漂う淫靡(いんび)な匂いを()いでいる様だった。

 女達は全員が新たに乗って来た男の発する獣臭(けものくさ)い匂いを我慢(がまん)しながらも、男に自分達の没頭していた性行為が気付かれたのではないかと(ほほ)を上気させ、さっきまで快感に()れそぼっていた股間を無意識に手で隠すようにした。

 しかし、女達が太ももを(こす)り合わせるようにして股間を閉じたのには別の理由もあった。

 匂いに閉口しながらも男の野性味あふれる体臭にメスの本能を刺激され、さらなる性への欲望を感じた股間の秘所の奥からジワジワと(あふ)れ出してくる液体を自分でどうする事も出来なかったからだ。

 普段は清楚(せいそ)で大人しく振舞(ふるま)っている静香(しずか)でさえ、身体じゅうが熱くなってショーツをグショグショに濡らし、さらに染み出した愛液が防寒用に()いている裏起毛(うらきもう)の防寒用パンツの太ももまでぐっしょりと濡らしていた。

 三人の女が全員、顔を匂いにしかめながらも一様に形の良い太ももの内側をもじもじとすり合わせているのは、獣じみた野性味あふれる男の出現によって女の欲望に火がついたのを表していたと言えるだろう。


 最後列のシートでさっきまで人目もはばからず(まじ)わっていた須根尾 骨延(すねお ほねのぶ)と女友達の山野ミチルは、(とな)り合った身体を少し離すように座っていた。よく見ると、ネズミの様な顔をした須根尾(すねお)の左(ほほ)にはピンク色の手形がくっきりと付いていた。どうやら、先ほどミチルの膣内(ちつない)で射精したために彼女に(なぐ)られたのだろう。


 大きな身体をしたヒッチハイカーが、新たに剛士と水木エリのカップルが座っているセカンドシートに加わったので、真ん中になったエリが男達二人の間でつぶされそうになっている。

 怒った剛士が腰を浮かせてヒッチハイカーに抗議する。

「おい! この列は俺とエリの席だ! お前は遠慮して後ろの列へ行けよ!」


 暖房で(あたた)まっていた車内のムンムンとした空気が一瞬にして(こお)りついた。車内の誰もが、巨漢で日頃から乱暴者で通っている剛士と、野生見丸出しで正体不明のヒッチハイカーとの一触即発(いっしょくそくはつ)の状況に(おそ)れをなしたのだ。

 暴力とは無縁で臆病な伸田(のびた)須根尾(すねお)は、真っ(さお)になって、女達よりもガタガタと震えていた。

 剛士から怒鳴られた男は何も言い返しもせず、ただ静かに剛士の顔を見つめるだけだった。しかし、右(こぶし)を握り()めていつでも殴れる状態に固めていた剛士は、そいつの目の奥に底なしの虚無(きょむ)を見た気がして戦う気力が一気に()えてしまった…

 喧嘩(ケンカ)場数(ばかず)を多く()み、度胸に関して自信のある剛士だったが、こんな気味の悪い男を相手にタイマンの喧嘩をした事は無かった。いや…したいとも思わなかっただろう。


「うっ… や、やっぱり俺が後ろに(すわ)ろう… おい、どけっ! スネオ!」

 捨て台詞(ぜりふ)の様に怒鳴ると、剛士はセカンドシートの中央を(また)いで須根尾(すねお)と山野ミチルのいるサードシートへ移った。

「無茶言わないでよ、ジャイアンツ~ 君みたいなデカいのが来たら、僕もミチルも狭くて苦しいよ…」

 ネズミ(づら)をした須根尾(すねお)とミチルは二人とも小柄(こがら)なカップルだったが、それでも巨漢の剛士が加わると、元から()た二人にとっては窮屈(きゅうくつ)となり、迷惑この上なかった。

「やかましい! お前らさっきまで、ここでズコバコ(なま)本番やってたくせしやがって!

 俺様がお前の精液(くさ)いのガマンしてやるってんだ、生意気(なまいき)に文句言うんじゃねえ!」

 剛士にギロリと(にら)みつけられた小柄(こがら)な二人は、真っ(さお)になって抱き合って震えるだけで何も言い返せなかった。

 可哀(かわい)そうに、二人の男達に(はさ)まれた格好(かっこう)になったミチルは、可能な限り剛士の身体から遠ざかろうと右隣に座る彼氏である須根尾(すねお)に必死にしがみついていた。

 だが、自分が見せた先ほどの臆病(おくびょう)な一面をごまかすためか、剛士はミチルの(しり)をズボンの上からイヤらしく()でまわす。そして、嫌がるミチルの股間の秘所をグリグリと指で(なぶ)り始めた。彼女の膣からは自身の愛液と共に須根尾(すねお)が放出し、中に残っていた精液の残滓(ざんし)がトロリと流れ出した。

 剛士はミチルが自分を忌避する態度など一向に構わずに愛撫(あいぶ)を続け、ミチルの耳に息を吹きかけながら(ささや)いた。

「お前さ…チビのくせにプリプリしたいいケツしてるじゃねえか… 今度一発俺にやらせろよ… スネオよりデカくてぶっといので天国へ連れてってやるからよ…」

 ミチルは首を大きく振りながら涙を流して、剛士と反対側にいる須根尾(すねお)に力いっぱい抱きついた。


「もう! こんな時に冗談はやめてくれよ、ジャイアンツ!」

 須根尾(すねお)も涙を浮かべて必死な思いで剛士に(うった)えた。

 すると、セカンドシートを乗っ取ったヒッチハイカーがぐるりと後ろを振り返り、剛士を鋭い目で(にら)みつけて言った。

「やかましいな、お前… 殺してやろうか…?」

 男は本気で言っているのだろうか…恐ろしい言葉を淡々と静かに告げたので、剛士にとっては怒鳴られるよりも余計に恐怖を感じずにはいられなかった。

「じょ、冗談だよ… し、静かにしてるさ…」

 普段は傲慢(ごうまん)で人の言う事などに耳を貸さない性格の剛士が、正体不明の男に反発する事も無く、しどろもどろに呟きながら男の言葉に素直に従った。剛士をよく知る車内の者達は、彼の震える声を聞いて自分の耳を疑った。

 剛士の態度は、蛇に(にら)まれた(かえる)を連想させた。自分自身も粗暴(そぼう)喧嘩慣(けんかな)れした彼は、ヒッチハイカーが無造作に言い放った中の『殺す』という言葉が、決してただの(おど)しでは無い事を本能的に感じ取ったのだ。


「ね、ねえ… ところで、君さ… どこまで行きたいの? 僕達は、この先のスキー場の近くにある〇X村の旅館へ行くつもりなんだ。露天(ろてん)の温泉もあるらしいしね…」

 運転席の伸田が後ろの席の険悪な様子を少しでも(やわ)らげようと、チラチラとルームミラーで後ろを見ながら、臆病なこの男には珍しく勇気を振り絞ってそいつに(たず)ねた。

 震えながら自分の左太ももに力いっぱい両手でしがみついている恋人の静香に、いい所を見せたかったのだろう。

 伸田の言葉に、後ろを振り返っていたヒッチハイカーの男がゆっくりと前方へ身体の向きを戻して答えた。

「俺… 行きたいところがあるんだ。この車で連れてってくれないかな…?」

 口調だけ聴くと少し間延びした調子の、いたって穏やかな落ち着いた感じの話し方であったが、ルームミラー越しにヒッチハイカーと目の合った伸田は(あわ)てて目をそらした。

「も、もちろん… か、構わないよ… ぼ、僕達が行ける所まででいいなら…だけどね。」

 伸田が前方に目をやりながら、ルームミラーで自分を見つめているヒッチハイカーに恐る恐る答えた。

「うん、それでいいよ。じゃあ、南へ向かってくれないかな。」

 ヒッチハイカーの答え方は、じつに(おだ)やかな話し方だったので伸田は笑顔を返そうとしたが…

「えっ、南…? じ、じゃあ…僕達の向かうのと逆の方向だよ… 僕達は南の方から来たんだ…」

 また、車内の空気が(こお)り付いた。

 車内の全員が伸田の発した答に顔をしかめて、恐る恐る様子を(うかが)っている。誰もひと言も声を出せないでいた。

「じゃあ、Uターンしてくれないか。頼むよ、どうしても南に行きたいんだ…」

 ヒッチハイカーは伸田の顔の映るルームミラーを、まっすぐ覗き込むようにして言った。だが… 伸田に向かってしゃべりながらも、いつの間にか彼の右手は横にいる水木エリのノーブラの巨乳をセーターの上から(わし)づかみにして力強く()みしだいていた。

「あん! いや、痛いっ! 乱暴にしないでよ!」

 エリが小さな悲鳴を上げながら、ヒッチハイカーに抗議している。彼の右手を自分の胸からもぎ放そうと両手で逆らうが、男の力強い手はビクともしなかった。

 ヒッチハイカーの左手は自分の盛り上がったチノパンのチャックをゆっくりと引き下ろし、そそり立つ巨大な性器を外に(つか)み出した。


「おい、お前。俺にも後ろのヤツにやってた事をしてくれよ。俺も気持ちよくなりたいんだ…」

 そう言いながら男は()んでいたエリの胸から右手を放すと、彼女の左手に無理やり自分の()き出しになった性器を握らせた。


「う…うわ、何これ… めっちゃおっきい… 剛士の〇〇〇よりずっと大きい…」

 エリは最初は嫌がっていたが、そのあまりの大きさに興味をそそられたらしくヒッチハイカーの(かた)屹立(きつりつ)したペニスを両手で握りしめ、ゆっくりとだが上下にしごき始めた。この時、なぜか助手席で静香(しずか)が、サードシートではミチルがゴクリと(つば)を飲み込む音が響いた。


「エリ! てめえっ! 俺以外のヤツのチンポなんて(さわ)るんじゃねえ!」

 サードシートで激昂(げっこう)した剛士が叫んだ。


「うるさいな。騒いだら殺すと言ったろ。黙ってろ、この女の邪魔をするな。

 騒いだり邪魔したヤツはみんな殺す…」

 ヒッチハイカーは剛士の方を振り返りもせず、発した恐ろしい言葉とは裏腹に少しも興奮していないかの様な静かな調子で言った。だが、その口調には誰にも有無を言わせない威圧(いあつ)感と迫力があった。

「ぐうっ…」

 剛士は男に何も言い返せない(くや)しさに顔を真っ赤にして歯を食いしばり、自分の恋人を奪われた屈辱感に涙を浮かべながらも黙らざるを得なかった。

 

 不思議な事だが、車内にいる全ての者が一様に理解したのは、この正体不明のヒッチハイカーは自分に(さか)らったら脅しではなく本気で殺す…という事だった。

 この場にいた全員の動物的な本能とでも言うべきものが危険を知らせていたのだ。

 車内でただ一人魅入(みい)られた様に恍惚(こうこつ)とした表情を浮かべて男に従っている水木エリ以外の全員が、この危険なヒッチハイカーから目を()らし、車の進行方向や横に無理やり自分の目を向けていた。

ヌチュッヌチュッ、ヌチュッヌチュッ…

「はあ、はあ、はあぁ…」

 しばらくの間、エリが自分の唾液をたっぷりと()らしたヒッチハイカーの性器を懸命(けんめい)に手でしごく卑猥(ひわい)な音と、彼女が発する荒い呼吸音だけが車内に響いていた… 

 車内にいる全員が、この謎の男の存在を恐ろしく感じてはいるのだが… 若者達の呼び覚まされた性的な本能は興奮状態となり、男達は皆勃起(ぼっき)し、女達は膣奥(ちつおく)からジワーっと(あふ)れ出す液体をどうする事も出来なかった… 車内にいる全員が恐怖を感じながらも、若さゆえに抑えきれない性的興奮から荒い呼吸を繰り返し、全身から性的フェロモンを分泌(ぶんぴつ)発散していた。その興奮が恐怖と入り混じって、全員の欲情をさらに高めるのだった。

 ヒッチハイカーが加わってからの狭い車内は、暖房と若い6人の男女が感じた恐怖と性的興奮の両方によって大量のアドレナリンが分泌され、皆の体温が異様に上昇していた。このことを証明するかの様にムンとする熱気が車内に(こも)り、曇り止めの『デフロッサー』を使用しているフロントガラスと『リアデフォッガー』と呼ばれる結露取りの機能の無い横の窓ガラスを全て白く曇らせていた。

 それだけでは無く、車内の全員が何かのきっかけで一斉に乱交状態に入りそうな、大麻や合成麻薬を使用したパーティーにも似た陶酔の雰囲気(ふんいき)(かも)し出しているのだった。

 

 車外では相変わらず吹雪(ふぶ)いて風の音が荒れ狂っていた。

 大学生達一行が乗った車は、果たして予定通りの目的地まで辿(たど)り着けるのだろうか?

 そして、車に乗り込んできた奇妙なヒッチハイカーの男の正体と目的とは一体…?

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