第34話「どうしても南へ行きたいんだ…㉜『青白く燃える人魂の猛攻! 遂に迎えるヒッチハイカーの最期!?』」
ザザザザザッ!
激走する蜘蛛型巨大怪物。
その巨大な胴体の頭部に当たる位置からは、人間形態の上半身がまるで生えているかのように突き出していた。
ヒッチハイカーは、首を大きく後ろへ振り向け、高らかに笑いながら叫んだ。
「ハハハハハ! ノビタのクソ野郎、遂にくたばりやがったか! 本当に邪魔なヤツだったぜえっ!」
その時だった。
「グワァオオオオウーッ!」
突然、吹きすさぶ吹雪の音をかき消すほどの猛獣の雄叫びが、辺り一帯に響き渡った。
誇張ではない。
あまりにも圧倒的な音量に、『夕霧谷』一帯の大地そのものが、実際に揺れた。
その証拠に、周辺の樹木の枝を覆い隠すように積もっていた大量の雪が、雄叫びが響き渡った瞬間、まるで一斉に弾き飛ばされたかのように地面へと落下した。
「げっ! あの胸クソ悪い遠吠えは……白トラ野郎か!?」
猛獣の雄叫びに驚愕したヒッチハイカーは、八本の脚による激走を大慌てで停止させた。
そして、周囲を見回す。
現在の自分にとって、伸田以外で唯一恐れる存在。
おそらく今の雄叫びの主であるはずの、白虎。
ヒッチハイカーは、その姿を必死になって探した。
雄叫びは一度きりだった。
しかし、声は周辺の山々に反響し、さまざまな方向から木霊となって何度も聞こえてくる。
そのため、天敵である白虎がどこにいるのか、簡単には特定できなかった。
「どこだ……ヤツはどこにいやがる!?」
一度きりの雄叫びだったにもかかわらず、その声に呼び覚まされた本能的な恐怖心を抑えきれない。
ヒッチハイカーは狂ったように周囲を見回し続けた。
頭部の二本の触角が高感度レーダーのように周辺を探る。
そして、ようやく見つけた。
自分から約百メートルほど左側。
小高い丘の上に、四本の脚で立ち、こちらを静かに見下ろしている白虎の姿を。
「ガルルルル……」
雄叫びをひと声上げた白虎は、ヒッチハイカーの様子を窺うような姿勢で、その場に静止していた。
動かない。
ただ、喉の奥から低い唸り声を響かせているだけだ。
「野郎……なぜ攻撃してこない……?」
ヒッチハイカーは、白虎から目を離さない。
「この程度の距離なら、ヤツの速度なら一秒もかからずにオレに襲いかかれるはずだ……」
なぜだ。
なぜ、すぐに攻撃してこない?
「ヤツは……何かを待ってるのか?」
その疑問に突き動かされるように、ヒッチハイカーはもう一度、周囲を見回した。
その時だった。
今まで自分が走ってきた後方から――。
青白く輝く光の玉が、凄まじい速度でこちらへ近づいてくるのが見えた。
「な……何だ、ありゃあ?」
ヒッチハイカーの顔から、笑みが消えた。
「何だか分からんが……アレもヤバい!」
理由は分からない。
だが、本能が告げていた。
あの青白い光の玉は危険だ。
白虎と同じ。
いや、それに匹敵するほどの本能的な脅威を、ヒッチハイカーは感じ取っていた。
「な、何なんだよ、あれは!?」
自分でも理解できない恐怖に突き動かされ、ヒッチハイカーは逃走を開始した。
白虎とも、青白い光の玉とも違う方向へ。
八本の脚を全力で動かし、全速力で逃げ始める。
「と、とにかく……ここから逃げ出すぞ!」
もはや、理由などどうでもよかった。
「あんな不気味で物騒なヤツらと、これ以上関わってられるか!」
不死身の身体を手に入れた。
ヒッチハイカーには、そういう自負があった。
自分には敵などいない。
これからは、好きなことを好きなだけやってやる。
白虎に出会うまでは――。
彼は、心の底からそう思っていたのだった。
********
『重装備の警官隊だって、オレの敵じゃなかった。
オレを捕まえに来たお巡りの連中を、ほぼ壊滅状態にしてやった。
これからも、本能の命じるままに好きなだけ女を犯し、殺戮を続けてやる。
オレは、そう思っていたんだ。
あの”シズちゃん”と呼ばれる女に出会うまでは――。
今までにも、出会った女を片っ端から犯してきた。
本当の自分だけの家族を作るために。
捕まえた女を監禁し、子供を産ませるために、女の胎内に子種を放出し続けてきた。
だが……結果は、いつも虚しいだけだった。
オレの子供は出来なかった――
オレは、ただ自分の家族を作りたかっただけなんだ。
愛する妻や子供たちと一緒に、南へ行く。
そして、そこで幸せに暮らす。
大好きだった、死んじまったじいちゃんの遺言通りに。
母さんが向かったという南の地――。
山育ちのオレが見たことのない海。
その海の近くにある、暖かい場所に自分の家を建てる。
そこで、家族と一緒に幸せな生活を送る。
オレは、それだけを望んでいたんだ……。
シズちゃんをひと目見た時、彼女こそがオレの理想の女だと感じた。
初めて、本気で自分のヨメさんにしたいと思った。
彼女の胎内には子供がいた――
オレの子供だ。
シズちゃんには、たくさんのオレの子供を産んでほしいと思った。
だから、彼女を連れて南へ行こうとしただけじゃないか……。
それなのに――。
寄ってたかって、オレの邪魔をしやがる。
許さねえ。
そんなヤツらは、皆殺しだ。
そう思って、昨夜は思いっきり暴れてやった。
一度はシズちゃんを手に入れた。
もう少しで、彼女と南へ行けるところだったんだ。
邪魔するヤツらを皆殺しに戻るため、一時的にシズちゃんを大きな橋に吊るしておいた。
ところが――。
ヤツらは、オレから彼女を奪いやがった。
彼女を取り戻すために、オレは何度も自分の姿を変えた。
さらに強い力を手に入れるために。
シズちゃんを、再びこの手にするために。
でも……。
アイツらは、いったい何なんだ?
いつも、あの白トラ野郎とノビタがオレの邪魔をしやがる。
オレは強くなった。
不死身になった。
それなのに、なぜかアイツらにだけは歯が立たない。
何でなんだ!?
ノビタの野郎はともかく――。
あの白トラ。
アイツは、ダメだ。
なぜだか分からねえ。
理由なんて、まったく分からねえ。
不死身になったはずなのに……。
そのオレが、アイツには勝てる気がしない。
いったい、何なんだ……?
あの白トラ野郎は?
虎のくせに人間の言葉をしゃべりやがる。
忌々しいことに、いつも現れてはノビタを助けやがる。
もちろん、ただの猛獣じゃねえ。
だが、ここまで人間の味方をしてオレに敵対しやがるってことは……。
オレが仲間入りした魔界の生物でもねえのか?
……いや。
今はそんなことを考えている場合じゃねえ。
またヤツが現れやがったと思ったら、今度はへんてこりんな青白い光の玉まで、オレに向かって来やがる。
なんでだか分からねえ。
だが、あの光の玉も白虎と同じくらいヤバい。
そんな気がしてならねえ。
とにかく、今は逃げるだけだ。
シズちゃんは、必ず取り返す。
邪魔するんなら、白トラも光の玉もタダじゃおかねえ。
……だが、今は何だかヤバい気がする。
このまま、逃げよう。』
********
ヒッチハイカーは、そう考えながら八本の脚を動かし続けた。
必死に走り続けていたヒッチハイカーは、前方数十メートル先に存在するモノを見つけ、慌てて急停止した。
「なんだ、アレ……? な、何でオレの前に居やがる?」
ヒッチハイカーという男は、元来、肉体派で粗暴な性格ではあった。
しかし、決して知能が低い人間ではない。
幼少の頃、実の親に捨てられた彼は、山中で仙人のように暮らしていた老人に拾われた。
それ以来、二十年以上にわたり、老人と二人きりで山の中で暮らしてきたのだ。
老人は、ヒッチハイカーが幼い頃から容赦なく、自然の中で生き抜く術を叩き込んだ。
その結果、彼には誇れるような学歴こそなかったものの、山野で生き抜く天賦の才能を開花させられ、さらに長い年月をかけて磨き上げられた。
文明の利器など必要ない。
山刀一本さえあれば、自然の中で生き抜いていける。
それほどのサバイバル技術を、ヒッチハイカーは身につけていた。
だからこそ――。
自分の目で見て認識したモノであれば、それがどれほど奇妙奇天烈な存在であろうとも、ヒッチハイカーは即座に対応する知恵と能力を持っていた。
そのはずだった。
「……何でだ?」
今、彼の前方に存在しているモノだけは、理解できなかった。
それは、先ほどまで後方から凄まじい速度で迫ってきていた、青白く輝く光の玉だった。
絶対に、追い越されたという認識はない。
ヒッチハイカーにとって、あの青白い光の玉は後方にいるべき存在だった。
自分の前方に存在するはずがない。
それでも――。
現実に、今それは彼の前方に存在している。
「……チッ」
ヒッチハイカーは、現実を受け入れるしかなかった。
すぐさまその場で百八十度方向を転じ、今度は反対方向へ向かって激走を再開する。
しかし――。
二百メートルも戻らないうちに、またしても数十メートル前方に、その存在は現れた。
青白いオーラを全身にまとった、球状の物体。
まるで、先回りして待ち構えていたかのように。
「けっ! どっちへ逃げようが、オレを逃がさないって訳か……」
ヒッチハイカーは、本能的に悟った。
逃げ切れない。
そう判断した瞬間、彼の思考は逃走から戦闘へと切り替わった。
方向を変えない。
そのまま、目の前の邪魔な存在へと突進していく。
狩られる前に狩る。
新しく生成した両前脚。
それは、カマキリの鎌を思わせる形状の二本の鋭い刃と化していた。
「何もんだか知らねえが……」
ヒッチハイカーは、青白く輝く光の玉へと襲いかかる。
「鋼鉄製の重機のパーツだって切断したオレの刃を喰らって、真っ二つになりやがれ!」
右前脚の鎌が振り上げられた。
空中で静止している青白い光の玉へ向かって――。
ズバッ!
狙いは外れなかった。
ヒッチハイカーの鋭い鎌が、青白く輝く光の玉へ見事に命中する。
確かな手応えが、攻撃を繰り出した本人の右前脚へ伝わってきた。
「手ごたえありいっ! どうだあっ!?」
歓喜の叫びを上げる。
ヒッチハイカーは、相手を真っ二つに切り裂くべく、食い込んだ右前脚の鎌を力いっぱい振り抜いた。
その瞬間――。
「ぐっ……!」
ヒッチハイカーの表情が歪んだ。
「ぎゃああああーっ!」
悲鳴を上げたのは、彼の方だった。
ヒッチハイカーは絶叫しながら、青白く輝く光の玉の近くから慌てて飛び退いた。
さらに後退し、距離を取る。
ザザザザザッ!
そして、自分が悲鳴を上げる原因となった右前脚へと視線を向けた。
「な……何だ、こりゃあ……?」
全長二メートルはあろうかという巨大な鎌状の刃。
その中央付近から先が――。
消えていた。
「……え?」
ヒッチハイカーの身体に、戦慄が走った。
頭に連想が浮かぶ。
白虎の牙。
そして、伸田の使用する忌々しい弾丸。
それらによって傷つけられた時と同じように、残った前脚の断面からメラメラと青白い炎が上がっていた。
ブスブスと煙を上げながら――。
徐々に。
しかし、確実に。
白い灰へと変わり始めていた。
「ゲッ! こ、これは……消滅……? オレの身体が消滅してるのか?」
ヒッチハイカーは、震える声でつぶやいた。
日本人離れした彫りの深い顔立ち。
ルネッサンス時代の彫刻を思わせるほど美しかったその顔が、恐怖によって醜く歪んだ。
「ふ、ふざけんな……!」
ヒッチハイカーは、すぐさま行動に移った。
消滅が始まった断面よりも身体に近い部分を、左前脚に備わった鋭い鎌で自ら叩き斬る。
ザンッ!
右前脚が切断された。
断面から緑色の体液が噴き出し、切り落とされた肉片が、雪の降り積もった硬く凍てついた地面へボトリと落下する。
「お……同じだ……」
ヒッチハイカーは、切断した右前脚を凝視した。
「ノビタの銃で撃たれた時や……白トラ野郎に噛まれた時と同じだ……」
なぜだ。
どうしてだ。
「な、何で……?」
目の前で、恐るべき現実を見せつけられた。
ヒッチハイカーは、白虎と対峙した時に味わったものと同じ恐怖に、全身を震わせた。
それでも、逃亡も戦闘もいつでも開始できるように身構えたまま、たった今後退して距離を取った青白く輝く球状の物体を凝視する。
空中に浮かぶ、不思議な物体。
何かの光を反射しているわけではない。
明らかに――。
自ら青白い光を放っている。
その時だった。
『そんなに、僕のこの姿が怖いか?』
ヒッチハイカーは、凍りついた。
「……え?」
今、しゃべったのは誰だ?
周囲を見回す。
頭部に生えた二本の触角でも自分の周辺を感知する。
だが、他に何者かがいる様子はない。
それでも――。
「こ、こいつが……しゃべったのか?」
目の前の青白い光の玉が、人間の言葉を発したのだ。
ヒッチハイカーは、驚愕と恐怖の入り混じった感情に襲われた。
パニックに陥る寸前だった。
「……しゃべりやがった……」
ゴクリ。
生唾を飲み込む。
正体不明の光る玉に対して、自分はいったいどう行動すべきなのか。
ヒッチハイカーは必死に考えた。
すると――。
まるで、彼の考えを読み取ったかのように、青白い光の玉が再び声を発した。
『貴様は今、恐怖のあまり恐慌に陥っているようだな』
青白い光が、静かに揺らめく。
『今までに貴様が命を奪ってきた者たちの気持ちが、少しは分かったか?』
ヒッチハイカーは、黙って光の玉を見つめていた。
『理不尽な暴力による恐怖に震えながら、苦しみの果てに無念の死を遂げた者たち……』
声が、冷たく響く。
『その絶望と苦痛を、今から僕が貴様に思い知らせてやる』
そして――。
『覚悟しろ、ヒッチハイカー!』
その瞬間。
青白い光の玉が、スーッとその輝きを弱め始めた。
光の向こう側に、何かの姿が浮かび上がる。
やがて、青白い輝きの中から現れたのは――。
「な……」
ヒッチハイカーの目が見開かれた。
つい先ほど。
バランスを失い、木の幹へ激突して果てたはずの男。
背中に装着した飛行ユニットで空中停止飛行をしながら――。
そこに浮かんでいるのは。
「ノ……ノビタ……!?」
伸田伸也だった。
********
『安田巡査の生命反応、停止!』
AI『スペードエース』の声が、『|wind festivalビル』二階にある『千寿探偵事務所』内に響き渡った。
『体温が急激に低下しています。彼の肉体が冷凍睡眠状態へ移行した模様です』
報告を受けた風祭聖子は、表情を曇らせた。
「それでいいのよ」
彼女は、静かに答えた。
「安田巡査の命を救うには、今はそれしかないわ」
しかし――。
「ただ、気の毒だけど……たとえ命を救うことができても、もう彼を元の姿に戻すことはできない……」
聖子は、そうつぶやいた。
「スペードエース。安田巡査の搬送先を、最寄りの救命救急病院からS&Kラボへ変更するわ」
『了解!』
人工知能が即座に応答する。
『目的地を変更。安田巡査の身体をS&K財団の研究所へ搬送します』
「そのまま急いで、父の朱雀博士の元へ運んで!」
『了解!』
その直後。
南へ向かっていた『黒鉄の翼』が、機首を東へ向け直した。
最高速度で飛行を続ける『黒鉄の翼』。
その目的地は、S&K財団の研究所。
そして、そこには聖子の父親だという朱雀博士がいる。
いったい、何者なのか。
そもそも――。
『千寿探偵事務所』の所長秘書でありながら、その裏の顔に『電脳世界の魔女』という異名を持つ風祭聖子とは、いったい何者なのだろうか。
そして。
ヒッチハイカーに乗っていた油圧ショベルごと全身を粉砕され、死の淵に立たされている安田巡査を、聖子は本当に救うことができるのか。
彼女が口にした、
――もう彼を元の姿に戻すことはできない。
という言葉は、いったい何を意味しているのか。
なぜ、安田巡査は病院ではなく、聖子の父親がいる研究施設へと運ばれるのか。
そして――。
その答えを知る唯一の女性である聖子の命ずるまま、『黒鉄の翼』は、ヒッチハイカーや伸田たちが戦う〇✕県『夕霧渓谷』を後にした。
様々な謎と、瀕死の安田巡査を乗せて。
東へ向かって飛び続ける。
********
「ヒッチハイカー!」
吹雪が吹き荒れる中、空中に浮かぶ青白い光の玉から姿を現した伸田は、怪物ヒッチハイカーへ向かって声を張り上げた。
「今、お前は僕を見て恐れ戦いているようだな」
伸田の身体を包む青白い炎が、再び勢いを増していく。
「この僕の身体を包む青白く燃える光は僕と、お前に殺されて死んでいった者たちの怒りの炎だ!」
青白い炎が、吹雪の中で激しく揺らめいた。
「その者たちに代わって――今ここで、僕がお前にとどめを刺す!」
「クソッ!」
ヒッチハイカーは、残った左前脚を伸田に向けて突き出した。
「お前なんかに、誰がやられてたまるか!」
恐怖を振り払うように、声を張り上げる。
「オレは、この山を逃げ延びて南を目指すんだ! 必ずシズちゃんを取り戻してな!」
ヒッチハイカーは、自分の異形の身体を見下ろした。
「この身体を見ろ! もうオレには、車なんて必要ねえ!」
八本の脚を大地に踏みしめる。
「オレはヒッチハイカーなんてしなくても南を目指す! それを邪魔するヤツらは、皆殺しだ!」
そして――。
「まずは、しつこいお前を血祭りにあげてやる!」
もう、伸田から逃げ切ることはできない。
そう悟ったヒッチハイカーは、残った左前脚の巨大な鎌を振り上げた。
斜め上方から、伸田へ向かって一気に振り下ろす。
ビュンッ!
普通ならば、鋼鉄さえも瞬時に叩き斬るほどの鋭さと威力を持つ一撃だった。
しかし――。
左前脚の鎌が、青白い光へ触れた瞬間。
ガシュッ!
「ぐっ……!」
ヒッチハイカーの全身に、嫌な衝撃と振動が走った。
「ぐおおおおうっ!」
八本の脚で支えられた巨体が、グラリとよろめく。
「ま、またオレの腕がああっ!」
結果は、最初の右前脚とまったく同じだった。
攻撃を仕掛けたヒッチハイカー自身の左前脚。
その巨大な鎌の、およそ半分が消失していた。
残った断面からは、先ほどと同じように青白い光が漏れ出している。
ブスブスと煙を上げながら――。
徐々に。
ほんのわずかずつではあるが、確実に。
肉体が消滅していく。
「ひっ……!」
自分の身体の一部が、再び消えていく。
その光景を目にしたヒッチハイカーは、激しい恐怖に襲われた。
「く、くそおおおっ!」
ブンッ! バシュッ!
恐怖におののきながらも、ヒッチハイカーは行動した。
人間形態の上半身から伸びた左触手。
その先端に備わった鋭い刃を振るう。
消滅しつつある左前脚を、さらに身体に近い位置で切り捨てた。
ザンッ!
「くっ!」
歯ぎしりをして悔しがる。
だが、結果は変わらなかった。
ヒッチハイカーは、自らの攻撃によって新たに手に入れた巨大な鎌を備えた前脚を、二本とも失ってしまったのだ。
しかも――。
白虎の牙による攻撃と同じだった。
青白い光によって受けた傷は、不死身に近い肉体を誇るヒッチハイカーでさえ、修復も再生もできない。
ヒッチハイカーは、凍てついた地面へ視線を落とした。
そこには、自ら切り捨てた左前脚の肉片が転がっている。
そして、その肉片もまた――。
青白い光を放ちながら、徐々に消滅を始めていた。
やがては、この世界から完全に消え失せてしまうのだろう。
「……」
その光景を見つめながら、ヒッチハイカーは悟った。
もう、逃げることもできない。
だが――。
戦っても勝てない。
先ほどまでは、伸田との戦いで自分たちの雌雄を決するつもりだった。
しかし、いつの間にか――。
自分の心が、恐怖によって徐々に萎えていくのを感じていた。
「く、くっそおおお……!」
ヒッチハイカーは、残った六本の脚で立ち上がろうとした。
その時だった。
「うっ……」
切断された二本の脚が、視界に入った。
青白い光を放ちながら、断面から徐々に消滅していく。
「う、うわあああああーっ!」
ヒッチハイカーの口から、甲高い悲鳴がほとばしった。
「ひいいいいいっ!」
恐怖に顔を歪ませる。
「うわあああああーっ! イヤだ! イヤだあああっ!」
そして――。
「死にたくない! 死にたくないいいいいっ!」
泣き喚きながらも、ヒッチハイカーはどうにか六本の脚で立ち上がった。
そして、人間形態の左腕から伸びた触手を振るう。
その先端が、硬質化した鋭い刃へと変化した。
ズバッ!
ズババッ!
消滅しつつある二本の脚を、付け根から切断する。
青白い光の玉の攻撃によって失われた肉体は、修復も再生もできない。
それでも――。
ヒッチハイカーは、残った六本の脚を動かし始めた。
「逃げるんだ……!」
再び、逃走を開始しようとする。
その時だった。
「もう逃がさないと言ったろう!」
吹雪の中。
どこからともなく、伸田の声が響いた。
「……!」
ヒッチハイカーは、立ったまま動きを止めた。
「く、来るなああああっ!」
怪物は、必死に叫んだ。
「あっちへ行けええええっ!」
その声は、すでに怒声ではなかった。
「た、頼むから……どっかへ行ってくれええええっ!」
恐怖に震える、哀れな懇願だった。
そんなヒッチハイカーに、伸田は静かに言った。
「ダメだ」
声は、押さえられていた。
「貴様の手にかかって死んでいった人たちも、みんな助けを求めたはずだ」
青白い光が、吹雪の中で揺らめく。
「それなのに貴様は、情け容赦なく……残虐に命を奪った」
伸田の声が、次第に低くなる。
「貴様に殺された被害者たち」
そして――。
「残された遺族たちの痛みを」
「苦しみを」
「無念を……」
青白い光が、さらに強く輝いた。
「今こそ、貴様自身が思い知れ!」
ギュイイィーンッ!
次の瞬間。
青白い光の玉が、目にも止まらぬ速度で飛翔した。
ブシュッ!
ズブッシュッ!
ブッシューッ!
残された六本の脚。
そのうち三本を、青白い光が次々と貫いた。
穴の開いた脚から、緑色の体液が噴き出す。
そして――。
ブチブチブチッ!
三本の脚が、次々と千切れ飛んだ。
切断された断面からは、またしても消滅が始まる。
「ぐっ……!」
これで、蜘蛛のような巨大怪物の八本の脚のうち、五本が失われた。
残るは、わずか三本。
いかに魔界の怪物と化したヒッチハイカーであっても、三本の脚だけで巨大な身体を支え、逃げ続けることなどできるはずがなかった。
「ぐっぎゃああああああーっ!」
ヒッチハイカーは、絶叫した。
「オレの……オレの身体が消滅するううううっ!」
だが、悲鳴を上げながらも、彼は必死に動いた。
人間形態の左腕から伸びた触手。
その先端を刃へと変化させる。
ズバッ!
ズババッ!
消滅が始まった三本の脚。
そのうち二本を、付け根から切断する。
「ぐっ……!」
苦痛に顔を歪めながらも、ヒッチハイカーは最後の一本へ目を向けた。
残る一本も、付け根から切断する。
そうすれば、消滅の進行を止められる。
そう考えたのだろう。
ヒッチハイカーの左腕から伸びる触手が、鞭のようにしなやかに振り上げられた。
そして――。
ぶっしゅうううううっ!
突然。
ヒッチハイカーの左腕。
その肘から先が――。
消えた。
「……え?」
ヒッチハイカーは、何が起きたのか理解できなかった。
「???」
振り上げた左腕は、何もない空間を切り裂いただけだった。
最後に残った一本の脚を切断することにも、失敗した。
そして――。
青白い光によって切断された脚の断面から、消滅が進んでいく。
だが。
ヒッチハイカーの身体には、新たな脅威が生まれていた。
「ぎゃあああおおおおおおーっ!」
絶叫が、吹雪の中に響き渡る。
「おおおおおううううっ!」
ヒッチハイカーは、失った左腕を見た。
「オレの左腕がああああああっ!」
肘から先を失った左腕。
その断面から――。
消滅が始まっていた。
これまでならば、巨大な蜘蛛の怪物の脚。
人間形態の身体から遠く離れた部分を切り捨てればよかった。
だが、今回は違う。
青白い光の玉による攻撃が、人間形態の肉体を直接捉えたのだ。
見た目が人間の姿をしているとはいえ、ヒッチハイカーの身体はすでに魔界の生物へと変貌している。
だからこそ――。
青白い光の玉による攻撃を直接受けた肉体が、無事で済むはずはなかった。
怪物の形態部分と同じように。
ヒッチハイカーの左腕もまた、青白い光に包まれながら、徐々に消滅していった。
「ううううう……」
ヒッチハイカーは、消滅していく左腕を見つめながら、震える声でつぶやいた。
「オ、オレは……死ぬのか……?」
この、凍えるような寒さに包まれた山の中で。
「こ、こんな寒い山の中で……?」
そして――。
「い、いやだああああああっ!」
絶望に満ちていた声が、次第に変化していく。
「オレは南へ行くんだああああっ!」
弱々しかった声に、再び力が戻っていく。
「暖かい南の楽園へええええっ!」
そして――。
「シズちゃんとおおおおおっ!」
その時。
青白い光が弱まり、伸田の姿が再び現れた。
その目の前で、ヒッチハイカーは右手に握ったものへ視線を落とした。
どんな時でも、決して手放すことのなかったもの。
祖父から受け継いだ――。
山刀。
ヒッチハイカーは、それをじっと見つめた。
そして。
右手を振り上げる。
「きえええええええーいっ!」
裂帛の気合とともに、山刀を振り下ろした。
ズバッシューッ!
狙ったのは、消滅しつつある左肘の断面。
その断面より上。
上腕部分を、厚さ二センチほどの輪切りにするように叩き斬った。
切断された肉片が、地面へ落下する。
降り積もった雪の中へ落ちた肉片は、青白い炎を上げ始めた。
ブスブスと煙を上げながら、燃え続ける。
吹き荒れる吹雪にさらされても。
冷たい雪に包まれても。
青白い炎は消えなかった。
やがて、その肉片はすべて白い灰へと変わるのだろう。
消滅が進行しているのは、脚の切断面も同じだった。
だが――。
伸縮する左の触手を青白い光の玉によって失った今、先ほどの二本の脚のように根元から切り離すことはできない。
人間の形をした右腕。
その手に握った山刀では、脚の付け根まで届くはずがなかった。
しかし。
一度は、青白く燃える人魂の猛攻に心が折れかけたヒッチハイカーだったが――。
彼の執念もまた、伸田と仲間たちに決して劣るものではなかった。
「くっそおおおおおっ!」
ヒッチハイカーは、絶叫した。
「死んでたまるかあああああっ!」
そして――。
「南へ! オレは南へ行くんだあああああっ!」
雄叫びを上げながら、ヒッチハイカーは山刀を振り上げた。
いったい、何をするつもりなのか。
その答えは――。
すぐに明らかになった。
ヒッチハイカーは、巨大な蜘蛛の怪物の頭部から生えている自分の人間形態。
その人間の上半身と、蜘蛛の怪物の身体がつながっている部分へ向けて、山刀を振り下ろし始めたのだ。
「くそっ!」
ザクッ!
「くそおおおっ!」
ザクッ!
「千切れろおおおおっ!」
グシャッ!
「切り離すんだああああっ!」
グチャッ!
緑色の血と肉片が、周囲へ飛び散る。
ヒッチハイカーは、自分の下半身を切り離そうとしていた。
その姿は、鬼気迫るものだった。
さすがの伸田も、空中に浮かびながら攻撃することを一瞬ためらった。
それほどまでに、ヒッチハイカーは必死だった。
自分の肉体を。
自分自身の手で。
切り刻んでいる。
不死身に近い身体となった今も、痛覚そのものが失われたわけではないはずだ。
それでも、ヒッチハイカーは痛みなど存在しないかのように、ただひたすら山刀を振り続けた。
グッシューッ!
そして――。
ついに。
ヒッチハイカーの願いが叶った。
消滅しつつある蜘蛛の身体から、人間形態の上半身を切り離すことに成功したのだ。
切断面からは、緑色の血がボタボタと流れ落ちている。
そして、完全には切断されなかった内臓が、ズルズルと垂れ下がっていた。
「はあっ……はあっ……」
ヒッチハイカーは、荒い息をついた。
「や、やった……」
自分の下半身を切り捨てた。
「こ、これで……しょ、消滅から……の、逃れた……」
言葉がうまく出てこない。
半身を失った肉体から、夥しい量の体液が流れ続けている。
そのダメージは、さすがの怪物ヒッチハイカーからも大きく体力を奪っていた。
「じ、じいちゃん……」
ヒッチハイカーは、息も絶え絶えに、何かをつぶやいた。
「オ、オレは……まだ死なない……」
そして――。
「死ぬもんか……!」
その言葉を聞いた伸田は、首を捻った。
「じいちゃん……?」
伸田は、目の前のヒッチハイカーを見つめた。
「こいつは……誰のことを言っているんだ?」
ヒッチハイカーは、肉体的に極限まで追い詰められている。
そのダメージが、ついに頭にまで及んだのだろうか。
だが――。
その時だった。
ヒッチハイカーが、奇妙な動きを始めた。
ヒッチハイカーは、切り離した巨大な蜘蛛型怪物の身体の上に横たわっていた。
もはや、立ち上がるための両脚はない。
左腕も、その大部分を失っている。
四肢のうち、残されているのは――。
祖父から受け継いだ山刀を握りしめた、右腕だけだった。
「はあ……はあ……」
荒い息を吐きながら、ヒッチハイカーは苦しげにつぶやいた。
「くそ……身体が……」
右手に握った山刀の先端を、自分で切り離した怪物の身体へ突き立てる。
そして、それを支えにして、なんとか上半身を起こそうとした。
「オレの身体から……どんどん……力が抜けていきやがる……」
だが、彼の身体を支えている巨大な蜘蛛の身体も、中央部分から消滅が進んでいた。
切断された断面からは、内臓が飛び出している。
緑色の体液が、周囲一帯へ流れ出していた。
それはまるで――。
正気を失った画家が、自らの見た悪夢を描いた地獄絵図のようだった。
その絵の中心では、巨大な怪物がボロボロに崩れ落ちている。
今まさに、死を迎えようとしている。
だが――。
伸田の目の前に広がっているこの光景は、悪夢でも絵画でもなかった。
現実だった。
多くの人々を、その手で殺めてきたヒッチハイカー。
残虐の限りを尽くしてきた、魔界の怪物。
しかし――。
彼もまた、元は人間だった。
山中で偶然遭遇した運搬トラックの事故現場。
そこで手に入れた薬品を飲んでしまったことが、すべての始まりだった。
心身ともに変貌を遂げ、魔界の怪物となった孤独な青年。
それでも彼は、ただ一つの目的だけを追い続けていた。
祖父の遺言。
――南へ行って、幸せに暮らせ。
その言葉だけを胸に抱いて。
何度失敗しても。
何度追い詰められても。
ヒッチハイカーは、再び立ち上がろうとした。
下半身を失った身体で。
左腕の大部分を失った身体で。
それでも、山刀を支えにして起き上がろうとする。
「ぐっ……!」
だが――。
やはり、無理だった。
何度試みても、身体は起き上がらない。
ついに諦めたのだろうか。
ヒッチハイカーは、怪物の身体に突き立てていた山刀を抜き取った。
その瞬間。
支えを失った上半身が、ゴロンと仰向けに転がった。
かつては、数え切れないほどの人間を殺戮した。
SIT部隊を、ほぼ壊滅状態にまで追い込んだ。
そして、ついには空を飛ぶ能力さえ手に入れた。
そんなヒッチハイカーが――。
今はただ、地面に転がり、天を仰ぐしかなかった。
その背中の下では、かつて自分の下半身だった巨大な蜘蛛の身体が、青白い光に包まれながら徐々に消滅している。
「もういい……」
その姿を見つめながら、伸田がつぶやいた。
「そろそろ、お前にとどめを刺してやるよ……」
すでに、ヒッチハイカーには何もできない。
その姿に、伸田は一抹の哀れささえ覚えていた。
仰向けに転がったヒッチハイカーが、目を見開く。
吹雪の吹き荒れる天空を見上げた。
「くっそおおおおおおっ!」
そして、力を振り絞る。
「オ、オレは南へ行きたいんだああああっ!」
右手に山刀を握ったまま、空へ向けて腕を突き出した。
「オレに……もう一度、力をくれええええっ!」
その声は、絶叫へと変わった。
「じいちゃああああああんっ!」
その時だった。
まだ夜明け前。
月も星も見えないほど、厚い灰色の雲に覆われた空。
その雲の中が――。
突然、まばゆい光を放った。
ピカッ!
ゴロゴロゴロゴロッ!
まるで、ヒッチハイカーの叫びに呼応するかのように。
真冬の空に、突然、雷が生じた。
暗闇に包まれていた『夕霧谷』一帯が、一瞬にして昼間のような明るさに照らし出される。
「……っ!」
本能的に身体をすくませた伸田が、空を見上げた。
その目の前で――。
天空から、真っ白な稲妻が走った。
バリバリバリィーッ!
ドッシャーンッ!
耳をつんざくような雷鳴が、夕霧谷全体に響き渡る。
そして、天空から伸びた稲妻は――。
ヒッチハイカーが突き上げていた山刀へ、真っすぐに落ちた。
「……っ!」
あまりにも凄まじい光だった。
伸田は反射的に目を閉じる。
『ヒヒイロカネの剣』を握った左手で顔をかばいながら、数十メートル後方へ一気に飛び退いた。
次の瞬間――。
ドッカアァァーンッ!
稲妻の凄まじいエネルギーが、山刀へ到達した。
文字通り、爆発が起こった。
巨大な蜘蛛型怪物の身体が、粉々に砕け散る。
肉片が周囲へ飛び散った。
木の破片。
石。
大量の土砂。
そして、四散した怪物の肉片。
それらが、雹のように伸田のいる場所へ降り注いだ。
「……今のは、いったい何だったんだ?」
伸田は、呆然とつぶやいた。
「どうして突然、雷が……?」
だが――。
すぐに、別の考えが頭をよぎる。
「でも……」
爆発の起きた場所を見つめる。
「今ので、ヒッチハイカーは木っ端微塵になったんだ」
伸田の身体から、力が抜けていく。
身体を包んでいた青白い光も、徐々に弱まっていった。
「これで……」
伸田は、ようやく終わったのだと思った。
「これでやっと……ヤツとの長い戦いが終わった……」
安堵のつぶやきを漏らした伸田は、ようやく肩の力を抜いた。
その時だった――。
「まだだあああああっ!」
突然、声が響き渡った。
「ノビタあああああっ!」
伸田は、ハッと顔を上げた。
「ヤツは死んじゃいないぞおおおおおっ!」
聞き覚えのある声だった。
「この声……?」
伸田は、周囲を見回した。
「白虎さん……?」
そして、気づく。
「千寿さんの声だ!」
それは、神獣白虎の姿へと変化した『風俗探偵』こと千寿理が、伸田へ向けて発した警告だった。
「白虎さん、どこに……?」
伸田は、必死に周囲を見回す。
だが、白虎の姿を見つけることはできなかった。
「え……?」
伸田は、爆発の起きた場所へ視線を戻した。
「千寿さんは、何を言ってるんだ……?」
伸田の目の前で、ヒッチハイカーは確かに木っ端微塵になった。
それなのに――。
ヤツが、まだ生きているというのか。
その時。
伸田は、爆発が起きた場所に生じた異変に気づいた。
地面には、大きな穴が開いている。
直径二十メートルほど。
巨大なクレーターと化していた。
そして、その中心。
立ち昇る煙の中に――。
一人の人間が、立っていた。
「あ……」
伸田の目が、大きく見開かれる。
「あれは……?」
煙の中に立つ人影。
その右手には、山刀が握られている。
「そ、そんな……まさか……」
伸田の声が震えた。
「ヤツなのか……?」
煙が、少しずつ晴れていく。
そこに立っていたのは――。
ヒッチハイカーだった。
だが。
その姿は、先ほどまでの怪物とはまったく違っていた。
右腕だけではない。
四肢のどこにも、欠損はない。
人間男性としての完全な肉体。
傷一つない身体。
そして――。
一糸まとわぬ全裸のまま。
日本人離れしたギリシャ彫刻のように美しい肉体をさらし、ヒッチハイカーは堂々と立っていた。
右手には、山刀。
その彫りの深い整った顔には――。
不敵な笑みが浮かんでいた。
伸田は、言葉を失った。
間違いない。
ヤツだ。
ヒッチハイカーは――。
完全な姿で、復活していた。
【次回に続く…】




