第5話 連携の実習
食堂の隅の席で、リシャが机に伏せて震えていた。
「もういいでしょ」
「無理。まだ無理」
シィミアはスープに匙を入れた。向かいの友人は肩を震わせたまま顔を上げない。
今朝、リシャは夜が明けてすぐシィミアの部屋にやって来た。心配だったと言う。そして部屋の二段の寝台の、上の段の底板に穴が開いているのを見てしまった。
そこから、この状態が続いている。
「人の頭くらいあったよね……乗っかって、膝だけで」
「……笑いすぎ」
「寮母さんになんて言うの。うちの召喚獣が膝で寝台を割りましたって」
シィミアは匙を置いた。
その台詞を、朝から三回ほど頭の中で組み立てている。どう並べ替えても間抜けにしかならない。
「先生に言う。あの人なら手続きでどうにかしてくれる」
「昨日二回も走らせたんでしょ」
「三回目」
リシャがまた机に伏せた。
シィミアの隣でゼッドが立っている。座らない。昨日からずっとこうだ。周囲の生徒は最初のうちこそ振り返っていたが、二日目ともなると視線の数がわずかに減った。それでも、通りすがりに足が止まる者はいる。
「主よ」
「……なに」
「その皿の端に残っているものは食わんのか」
「食べるってば」
「三口分ある」
「数えないで」
ゼッドが身を屈めた。
シィミアの肩越しにゼッドの手が伸びて、皿の縁を指で示す。ゼッドの黒髪がシィミアの首筋にかかった。昨日と同じ距離だった。昨日と違うのは、シィミアがそれを予想していたことだった。
シィミアは匙を握る指に力を入れて、その手をゼッドから遠い側へ引いた。
狙いは分かっている。昨日と同じ手だ。この男はこちらの手から匙を取って、また口元へ運ぶつもりでいる。
シィミアは自分の手元だけを見ていた。
だから、ゼッドの顔がもう片側から回り込んできたことに気づかなかった。
シィミアが顔を上げると、すぐ横にゼッドの目があった。息がかかる距離だ。
「近い!」
「何をしている。早く食べろ」
シィミアは椅子ごと横へ逃げた。逃げてから、自分が匙を守ることばかり考えていたと気づいた。
この男が求めているのは、こちらが食事を最後まで食べることだ。匙を取り上げるのが目的ではない。さっさと食べてしまえば済む話だった。
「……食べるから、離れて」
向かいで机が鳴った。リシャが顔の半分を腕に埋めたまま、目だけをこちらへ向けている。
「なにその顔」
「なんでもない」
「なんでもなくないでしょ」
「……朝からごちそうさまだなって」
シィミアは残りの三口を無言でかき込んだ。
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第二演習場は校舎の裏手にある。
召喚獣に術を撃たせる演習を行う場所で、召喚術科の実技はここで行う。学園の敷地の端にあって一番広く、外の森へ向けて射撃用の的を据えられるからだった。手前から奥へ長く伸びた形で、周りは低い石積みで囲われていた。
昨日と同じ顔ぶれが、その演習場に並んでいた。
生徒たちの横には、それぞれが契約した召喚獣が控えている。二十人分の召喚獣が揃うと、獣の匂いと魔力の気配で朝の空気が濁って見えた。
「今日から連携実習だ」
教師であるナヤリス・ジャクターが生徒の前に立った。
「契約は結んだ。だが契約は器にすぎん。実際に働かせるには、主と召喚獣の呼吸を合わせる必要がある。今日は初歩を三つやる」
教師は指を折った。
「一つ、物を運ばせる」
教師は演習場の端に置かれた布包みを顎で示した。包みは石積みの際にあり、教師の立っている位置からは十歩以上離れている。
「二つ、主と召喚獣で同時に術を使う。三つ、標的を撃つ」
列がざわついた。攻撃魔法を使う訓練とは、生徒たちの誰も聞いていなかった。
「安心しろ。的の周囲には障壁を張る。逸れた分はそこで止まる。危険はない」
教師はそう言って、足元へ目を落とした。
演習場の端にあったはずの布包みが、教師の靴の先にあった。
「いつの間に?」
カナンが声を上げた。
マルネが肩の上の白い獣を抱え直して、小さな声で言った。
「先生の召喚獣じゃない?誰も見たことがないって聞いた」
「そうなの?」
「寮で誰かが言ってた」
カナンとマルネがそんなやり取りをしている間に、教師は布包みを拾い上げて、名簿の脇へ抱え直した。
「私語は慎みなさい。始めるぞ」
「一つ目と二つ目は無駄だ」
ゼッドが列の中から言った。
教師が目を上げる。生徒の視線が一斉にそちらへ向いた。
「運ばせるのも、術を同時に起こすのも、主と繋がっていれば勝手にできる。順を追って教えるものではない」
「……ほう」
ゼッドがシィミアの手を取った。
「こうして触れている間、オレ様の力は主の手の甲の印から入って、肩を通って、頭まで行く。主が何かを思えば、思った通りにオレ様の力が動く。口で言う必要はない」
握った手からシィミアの肩へ、そこから頭へ、ゼッドは指でたどってみせた。
シィミアは指の通った先を目で追って、そこでようやく自分が全員の前で手を握られていることに気づいた。
「ちょっと、離して」
シィミアは手を引いた。抜けない。
「説明の途中だ」
「説明はいいから離してって」
列がざわついた。
シィミアは口を引き結んだ。顔が熱い。ここで俯いたら、余計に見られる。分かっているので前を向いたまま、繋がれた手だけを見ないようにした。
「物を運ぶのも術を同時に使うのも撃つのも、これで全部片がつく。三つに分けて覚えるなど、手間を増やしているだけだ」
教師が名簿を繰る手を止めた。
「それは触れている間だけかね」
「離れても残る。そのために、入れた術式を腕の中へ留めておく」
「その、術式を留めておく手順を教えてくれんか」
ゼッドが眉を寄せた。
「……なるほどな」
ゼッドは教師を見たまま、それきり何も言わなかった。
「どうした」
「何でもない。オレ様が知っている術とは違うようだな」
「……そうなのか」
教師は名簿を閉じて、表紙を軽く叩いた。
「では始めるぞ。名簿順だ」
シィミアは教師の顔を見た。教師はゼッドにもっと術の話を聞きたかったように見えた。
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実習は淡々と進んだ。
物を運ばせる課題では、布包みを浮かせて運ぶ精霊もいれば、咥えて歩く幻獣もいる。召喚獣の種類だけ運び方があった。同時に術を起こす課題では、主の術と召喚獣の術の発動がずれて、やり直しになる組が続いた。
カナンの召喚獣は、小鳥の姿をした風の精霊だった。布包みの結び目を嘴でつつき、風で持ち上げようとして、三度目でようやく浮かせた。運ぶ途中で何度も主の肩へ戻ってきては囀り、カナンも負けずに話しかけている。
マルネの召喚獣は、両手に乗るほどの小さな獣だった。綿毛のような白い毛に包まれていて、布包みの上に乗ったまま動かない。マルネが名前を呼びながら包みごと抱き上げて所定の位置まで運び、教師に首を振られていた。
ヒサーラの番が来た。
炎の毛並みを持つ獣が、布包みを背に乗せて一直線に運ぶ。降ろす位置に狂いがない。同時発動では、ヒサーラの掌の光と獣の口元の光が、寸分の差もなく灯った。
標的の課題では、的を正確に撃ち抜いた。焦げ跡が中心からずれていない。教師の張った障壁は、この組には要らなかった。
「よろしい」
教師が名簿に印をつけた。
「見事だ。ヒサーラ・メネト。合格」
拍手が起きた。ヒサーラは獣の首を撫でて、短く頭を下げた。
当然だ、とヒサーラは思っている。
昨日の夜、消灯の後に廊下で聞いた話が頭から離れなかった。部屋へ戻ってからも寝つけず、明け方まで天井を見ていた。眠らないまま朝を迎えたが、それでもこれくらいはできる実力は備えていた。
――負けない。
ヒサーラは獣の首から手を離した。
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「次、リスタース」
シィミアが列から出た。
ゼッドが横に並ぶ。
「主よ」
ゼッドはシィミアの耳へ顔を寄せて囁いた。
「指示は短くしろ。長いと、どこで切るか判断が要る」
「……っ、分かったから!」
耳に息がかかった。シィミアは一歩横へ逃げて、耳を掌で押さえた。
「それと、腕を上げろ」
ゼッドがその一歩を詰めて、シィミアの右腕を取った。
肘の下に手を添えて、真横へ持ち上げる。もう一方の手が肩甲骨のあたりへ回った。掌が背中に当たっている。
「な、なに」
「向きが定まらんと術が散る。肩から指先までをまっすぐ一本にしろ」
ゼッドはそう言いながら、シィミアの背中を軽く押した。
肘に添えられた手が大きい。シィミアの腕なら、握ろうと思えば掌だけで一周してしまう。背中に当たっているほうも同じで、肩甲骨を一枚まるごと覆っている。
そして、温かかった。
朝の演習場で、制服の布越しに伝わってくる。
これは魔力だ、とシィミアは思った。
繋がっているから温かい。それだけのこと。
そう言い聞かせても、心臓が速くなっていく。
理屈は分かる。教本にも同じことが書いてある。書いてあるが、教本は背中に温かい手を当ててこない。
シィミアは前を向いたまま動かなくなった。首から上が熱い。
「顔が赤いな」
「魔力。魔力で酔ってるだけ」
「まだそこまで強くは通しておらん」
「嘘でしょ」
「試してみるか?」
ゼッドはシィミアの耳元でそっと囁いた。
「……っ!」
シィミアは言い返そうとしたが、声にならなかった。
列の後ろで、誰かが息を呑んだ声がした。
一つ目の課題が始まった。
「いいから、あれ運んでよ」
シィミアが布包みを指した。
ゼッドが片手を振る。
包みが浮いた。浮いて、そのまま校舎の屋根より高く上がった。
「高い! もっと低く!」
包みが落ちた。地面に届く直前で止まり、そのまま滑るように所定の位置へ入る。
シィミアの腕が熱い。
肘から肩を通って、背中まで上がってくる。ゼッドが力を動かすたびに、その道筋がはっきりしていく。繋がっているというのは、こういうことらしい。
熱いのは魔力であって、それ以外ではない。
シィミアは自分にそう言い聞かせて、次の指示のために息を吸った。
「……できてはいる」
教師が名簿を見た。
「余計な動作があったな」
二つ目の課題は、もっと悪かった。
シィミアの掌に小さな光が灯る。ゼッドの指先にも光が立つ。同時に、という合図でシィミアが術を放った。
ゼッドの光のほうが先に出た。しかも大きい。シィミアの光は相手の光に呑まれて、どこへ行ったのか分からなくなった。
「合わせてって言ったでしょ」
「合わせた。お前が遅い」
「わたしの速さに合わせるの!」
「……やってみよう」
やり直しになった。二度目も、三度目も同じだった。シィミアの光が出る前に、ゼッドの光が場を埋めてしまう。
やるたびに腕が熱くなる。
三度目のときには、肘から肩までが火を当てられているようだった。繋がっているぶんだけ、向こうの力が流れ込んでくる。それがどれだけ大きいものなのか、腕で測れてしまう。
シィミアは掌を握った。
――分かってる。悪いのはわたしだ。
出力の差がありすぎて、合わせる側が合わせきれていない。ゼッドに速さを落とさせるか、自分が速くなるか。どちらかしかないのに、どちらもできていない。
走ったわけでもないのに、呼吸が浅くなっている。繋がっているぶんだけ、向こうの力が流れ込んでくるらしい。
三つ目の課題が来た。
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演習場の奥に的が据えられている。
木の板を何枚も重ねて鉄の帯で締めた、厚さが人の腕ほどもあるものだ。
その後ろと左右には、実習の初めに教師が張った障壁がある。空気が固まって薄い膜になっていて、手前から見ると森の木立がわずかに歪んで見えた。
「撃て。逸れた分は障壁が止める」
ゼッドが横に立つ。
「主よ。腕が下がっている」
「上げてるって」
ゼッドがシィミアの背後へ回ると、上体を倒して肩越しに両腕を伸ばした。ゼッドの掌がシィミアの手首と肘を同時に取って、真っ直ぐに直す。シィミアの背中にゼッドの胸が当たっていた。
背中が熱い。
朝に掌を当てられた時とは比べものにならない。触れている面が広いぶん、流れ込んでくる量も違う。肩甲骨のあたりから腕へ抜けて、指先まで通っていくのが分かる。
「これで肩から指先まで一本になった」
「だから、近い」
「離れると直せん」
ゼッドの黒髪がシィミアの頬に触れた。息が耳の後ろにかかっている。
シィミアは前を向いたまま動かなくなった。腕を下ろせば直されるし、直されればまた近づかれる。どちらにしても逃げ道がない。
「主よ。合図を寄越せ」
耳のすぐ後ろで声がした。
シィミアは一度息を吐いてから、的を指した。
「わたしが言ったら撃って」
「承知した」
シィミアが指先を的へ向けた。
ゼッドの手が、シィミアの手の甲の印へ重なる。
指の間へ指が入って、そのまま向きを固定された。背中に胸が当たっている。
熱が一段上がった。
背中も、腕も、重ねられた手の甲も、全部が同じ熱さで繋がっている。流れ込んでくるものが、指の先で行き場をなくして溜まっていくのが分かる。腕の中で脈打っている。
耳のすぐ後ろで声がした。
「息を止めるな。吐きながら出せ」
シィミアは息の止め方すら忘れていた。
「――撃て!」
声が出た。
その瞬間、視界が白くなった。
音は、遅れて来た。
的が消えていた。木の板も鉄の帯も残っていない。
その向こうの地面が、線を引いたように抉れている。土が溶けて、縁が赤く光っていた。術による破壊跡は障壁のあった位置を越えて、石積みの囲いを削り、森の手前まで届いている。
根元から折れた木が一本、傾いて倒れた。それに続いて後ろの木々もゆっくりと倒れていく。
教師の張った障壁は、最初から無かったかのように消えている。
演習場が静まり返った。
誰も声を出さない。前の列の生徒が、何歩か後ろへ下がる足音だけがした。
シィミアは腕を上げたまま立っていた。手はまだゼッドに握られている。
息が上がっていた。
腕の熱が引かない。抜けていったはずなのに、肘から肩までがまだ脈打っている。シィミアは肩で息をしながら、自分が今撃ったものを見ていた。
「なんであんなことになるの」
「言われた通りに撃った」
「的を撃ってって意味だよ。森まで薙ぎ倒せなんて言ってない」
「オレ様は言われた通りに撃った。それだけだ」
教師が歩いてきた。障壁のあった位置で立ち止まり、何もない空間を手で探っている。二度撫でて、それから石積みの縁へ屈み込んだ。
「……リスタース」
「はい」
「本日は評価を保留する」
シィミアの手が下りた。
「制御できていない。威力の問題ではない。指示と結果が一致していないということだ。当たっていたのが人であれば、止める手段がなかった」
「……はい」
「召喚獣の力に主が追いついていない。実習として成立していない」
名簿に、印がつかなかった。
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教師が囲いの修繕を上に通すと言って校舎へ戻った後、生徒たちが動き出した。
「見た? 障壁ごとだよ」
「先生の障壁って、上級の魔獣でも壊せないやつでしょ」
「木、何本折れてんの」
声はシィミアの周りに集まってくる。誰も戻ろうとしない。
「リスタース、あれ何て指示したの」
「撃ってって言った」
「それで的の向こうまで消えたの? なんかもっと、徹底的にやれとか言ったんじゃなくて?」
「言うわけないよ……」
輪の中で、誰かが言った。
「やっぱりさ、メイミア先輩の妹だからじゃない?」
声が揃った。
「あー、それはあるかもね」
「血筋ってやつでしょ」
「死霊術科の首席の妹だもんね」
「もしかして実力、隠してたの?」
シィミアは黙っていた。
違う、と言いたかった。撃ての一言で的の後ろの木々をなぎ倒した。そこに自分の技量は一片も入っていない。あれば、止められたはずだった。
技量がないから、評価が保留になった。
そのことを説明しようとしても、言葉が出てこなかった。褒められている場で、褒められる資格がないと言うのは、どう並べても言い訳に聞こえる。
輪の外で、ヒサーラが立っていた。
獣を連れたまま、その場から動かずにいる。
自分は合格した。焦げ跡は的の中心からずれておらず、障壁には触れてもいない。
あの子は保留だった。指示と結果が一致していない。
それなのに、人が集まっているのはあの子のほうだった。
そして今、メイミア先輩の名前が出た。
先輩は自分の力で首席になった。それなのに、この連中はその名前を、実力もない妹を褒める理由に使っている。
ヒサーラは手の中の何かを握り潰そうとして、何も持っていないことに気づいた。
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人が減った後、シィミアは崩れた石積みの前にしゃがんでいた。
熱は引いている。転がる石には溶けて固まった跡がある。指でなぞれるほど滑らかになっていた。
「気にするな」
ゼッドが横から言った。
「気にするよ。保留だって言われたんだけど」
「あの老いぼれの張った障壁が薄すぎる。お前のせいではない」
「わたしのせいだよ」
シィミアは石積みから目を離さなかった。
「撃てって言えば的で止まると思ってた。止まらなかった。それだけの話でしょ」
「では次から、どこで止めるかも言えばいい」
ゼッドはあっさり言った。
「お前が言えば、オレ様はそこで止まる。今日は言わなかった。それだけだ」
シィミアが顔を上げた。
ゼッドは責めていない。責める素振りもない。指示が足りなかったという事実だけで、そこから先を言わない。
効率を最優先するはずの男が、手順を間違えた主を一言も咎めなかった。
シィミアは、それを妙だとは思わなかった。思う余裕がなかった。
「……次はちゃんと言う」
「そうしろ」
ゼッドがシィミアの横へ屈み込んだ。目の高さが並ぶ。
「腕を出せ。三度も魔力を通した」
シィミアは黙って右腕を差し出した。ゼッドが手を取って、召喚印から肘まで指でたどっていく。
熱くない。
さっきまで火を当てられているようだったのに、今は何も来ない。何も通っていないからだ。そういうものだと分かっているのに、シィミアは自分の腕を見た。
「何ともないな」
「だから平気だって言ったでしょ」
ゼッドが手を離した。
離れた途端、顔が熱くなった。
魔力は通っていない。通っていないし、掴まれていた腕でもない、顔が熱い。
シィミアは顔を両手で覆って、その場にしゃがみ込んだ。
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次話からは毎日19時更新となります。




