34話 二次創作
「二次創作は一次創作に比べて描くハードルは低い。でも、元々のキャラクターが他にあってそこをいじるからキャラ崩壊が起こりやすい」
今日の授業テーマが何なのかよくわからないまま、倉間氏のそんな話で授業は始まった。
「原作にファンがいれば、そのキャラ崩壊をそれはもう盛大に叩かれる。そりゃ、好きな作品のキャラがわけわからない行動をしていればムカつく。当然だ。
だから、ボクが思うに二次創作の方が発表する心理的なハードルは高いんじゃないかな。少なくともボクはそうだし、そのせいで書く方のハードルも高くなる。これはキャラ崩壊なんじゃないかと一々気にするようになって気楽に描けない」
二次創作に対しては拒否反応を示す層が一定数いるのはわかる。僕もものによってはイラッとくることはあるし、それ故に二次創作は基本的に読まないようにしている。
「でも、気楽に描ける二次創作ってのもある。代表例は『桃太郎』。別に『金太郎』でも『浦島太郎』でも『かぐや姫』でもいいんだけど、つまり、童話の二次創作」
話の流れ的に今日は童話の二次創作をやるのだろう。この前部活で書いたあれも童話の二次創作といえばそうも言えるわけで、確かに対象が童話だとハードルが下がる気はする。
「童話はキャラクターの心理描写をかなり削って、単純明快にしている場合が多い。子ども向けに複雑怪奇な心の揺れ動きを描いても仕方ないし。
だから、後付けで色々つけても案外キャラ崩壊しているって気にならない。原作の熱狂的なファンも、いるにはいるんだろうけど、数は多くないし批判の言葉が方々から飛んできたりもしない」
まぁ、例えばCMでアニメキャラを使えばイメージに合わないなんて言われることもあるだろうが、童話のオマージュをしても、原作の桃太郎はこんなことしませんなんて批判はあまりなさそうだ。作者への冒涜だと思いませんかなんて批判文句も、ことかぐや姫なんて作者誰だよって話だし。
「だから、パッと描くという面では童話の二次創作というのは便利だと思う。ボクも学祭の1ヶ月前に突然何か描いてくれって言われた時はそうした。
あれは焦った。2日で描いてくれってさ。口悪いけど、馬鹿じゃねーのってマジで思った。相手が先輩でも無理に決まってるだろ漫画舐めんなって殴りたかった。実際には殴ってないし、2日で描いたけど。もうやりたくない」
倉間氏としてはその思い出は痛烈なものだったようだが、授業中にそんな話をされてもだからなんだという話。
「ってことで、童話の二次創作なら2日で描けるって前例があるし、あと2日の授業ではそれをやろうと思う。ちなみにボクがやったときは徹夜で文字通りに丸2日かかった」
倉間氏の言う「かく」は「描く」であって「書く」のとはまた話が違う。2日で漫画を完成まで持っていったなら、それこそストーリーの原案はほとんどノータイムで組んだはず。
「童話の二次創作なんてn番煎じだし、気楽にやってみよう。文章でもネームでも可。テーマになる童話を決めるのに時間かけるのもったいないし、そこに悩むならこっちで決めちゃうけど、どう?」
こういうのは自由にと言われる方が困るもので、童話は倉間氏に決めてもらった。結果、設楽さんは『かぐや姫』、紺野さんは『浦島太郎』、そして、僕は『桃太郎』となった。
桃太郎の二次創作なんてそれこそやり尽くされている感はある。
さて、桃太郎。桃から生まれた桃太郎が犬、猿、雉と共に鬼退治をする話。
桃太郎の一部を改変して物語を大きく変えるならどこか。
桃太郎は鬼退治をする。なぜ鬼退治に人ではなく犬だの猿だの雉だのと動物を仲間にしたかといえば、それは金銭ではなく吉備団子を用いて仲間を募ったから。
童話の世界といえど吉備団子で人が雇えるほど世界は優しくない。だから、吉備団子では動物しか仲間にできなかった。
鬼退治に出る子どもに金銭ではなく吉備団子を持たせるというのも正気の沙汰ではない。動物を連れて鬼退治に乗り込むというのもまた、普通に考えれば正気ではない。
村に被害も出ているのであれば、動物ではなく、人間で徒党を組んで鬼を制圧して然るべきだ。
なら、桃太郎が現実的に鬼退治をするならどうなるのか。それを書くことにした。




