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27話 『承』


「起承転結、ストーリーを構成する基本といえば4コマ漫画」


 そうなのだろうか? 4コマ漫画を書いたことはもちろんないし、読むこともほぼない。


「ストーリー漫画描く時も、とりあえずそのあらすじを4コマで描くなら1コマ目は何でとか、そういうのボクは割と考えるね」


「なるほど、プロっぽいですね」


 漫研部員はブンブン首を縦に振って頷くが、それがプロっぽさなのだろうか?


「ちなみにこの中でストーリーを完結まで書いたことのある人は?」


 漫研部員は手を挙げた。僕は手を挙げない。完結まで物語といえる代物を書いた経験はたぶんない。


「じゃあ、紺野さん、書くとき起承転結のうちどれが難しいと思う?」


「えっと、転、でしょうか?」


「蒼井はどう思う?」


「起か承、個人的には承ですね」


 倉間氏は頷く。


「読む側からすると『転』がおぉ!ってなるところだし、印象に残るんだけど、書く側からすると起承転結のうち書きにくいのは『承』って人が多い。


 まず、プロットを作る段階で『転』を考えない人はいない。そもそも、『転』を思い付いたからストーリーを書くって人も多い。


 で、プロットを作れば自然と『起』と『結』は決めることになる。『起』はキャラクター設定に関わるし、『結』は『転』から生まれてくる。


 でも、『承』はそうでもない。『転』から『結』への流れは思いついても、『起』と『転』を繋ぐ『承』ってやつがなかなかに難しい。


 しかも、プロット時点でそこが曖昧でも書ける気になってネームとか書いてしまう。で、結局、『承』ができずにお蔵入りなんてのは珍しくない。ボクや知り合いの例からするとね」


 無計画に書くと始めはよくても途中で詰まる。ありがちなことだと思う。


「というわけで、ボクはプロットを作るとき、『承』にこそ気を使う必要かあると思っている。もちろん、『承』の部分は読み手からすれば起承転結の中でおそらく最も印象に残らない。でも、その『承』こそが重要だと思うんだ」


 僕が暇潰しに小説を書く際にガチガチにプロットを作るなんてことはない。そもそもがしっかりと完結まで物語を作ろうと思って創作に挑むことがない。


 しかし、仮に本気で物語を作ろうと思うのであれば、プロットも書くのだろうし、その際に『承』には気を使うべきなのかもしれない。


「ってことで今日の授業は『起』と『転』とお題で渡すから、『承』と『結』を考えるって課題をやってもらうかなと。あ、文章でもいいし、漫研の設楽さんはイラストでもいい。

 じゃ、さっき10分で作ったお題配ります。お題は『起』と『転』をランダムに配ります」


 倉間氏は二つ折りの紙を各人に2枚ずつ配った。渡されたそれを開く。


『起』とある高校に仲良しの女子高生3人組がいた。


『転』火星人が地球侵略に現れた。


 ふざけてる。『起』はいい。日常モノの定番。問題は『転』。火星人ってなんだよ。『起』がなんだろうがこの『転』は扱いにくいだろうに。


 とりあえず、シリアスはやめてギャグ路線。火星人なんてものを真面目に扱ってられるか。


 火星人ではなかったが、謎の異星人が突如現れる話、ドラえもんにあった気がする。あれはビー玉かなんかで侵略を回避するんだったか。


『結』はそれをパクるか。何かを渡して火星人と友達になるとか。イメージは日常ギャグ漫画の1話。火星人キャラがレギュラーになるための導入、みたいな。


 なら、『承』は火星人登場のフラグ立てだろう。3人の女子高生が何かをしたせいで火星人が攻めてくる。ドラえもんのひみつ道具みたいな便利アイテムがないとして、女子高生が火星人を怒らせる何か。


 そんなものあるか……?


 ギャグ漫画路線だし、もうなんでもありでいいか。3人の女子高生の設定で、1人を超お嬢様にして、家に天文台があるとか。


 僕は何も書かずにただ頭で考え、漫研部員はしきりに手を動かし何かを書き、紺野さんは時々メモをするような様子だった。


 とりあえず作ったストーリーは、3人の女子高生(お嬢様、お調子者、天才)が天文台で火星を見て、天才が望遠鏡を改造し、火星人の家を覗くことに成功。それに気づいた火星人が激昂し、地球に来襲。色々交渉をするも失敗するが、最終的にお調子者が集めていた石(ただの石)を火星人がいたく気に入り解決。


 なんだ、これ。まぁ、いいか。



「さて、そろそろいいかな。ちなみに実は全員に同じお題を配っていました。みなさんはどんなストーリーを作ったのでしょうか」


 全員にこの変なお題が配られていたと。


「んじゃ、設楽さん、どんなストーリー書いた?」


「はい! 題して、『美少女戦士ブレザーマーズ』」


「うん、アウトだけど続けて」


 タイトルは完全にアウトだったそれは、3人の女子高生が正義のヒーローになって宇宙人と戦うという王道ストーリー。戦闘シーンのイラスト付きだった。


「うん。気を衒ってないところが良かったかな。そういう王道は一定の需要はあるからね。ただ、王道で戦うのはものすごくキツいけど。んじゃ次、蒼井くんいい?」


 指されたので作ったストーリーを発表した。僕のもある意味で王道だろうしこれといって捻りもあるまい。


「へぇ。案外、そういうほのぼの日常系みたいなのなんだね。そういうのも一定の需要があるけど、それだと大事なのはイラストかな。小説には不向きだろうね」


 まぁ、小説として作ったわけじゃないし。


「ちょっと意外だった。面白かったよ。じゃ、紺野さんいい?」


「はい」


 紺野さんの作ったストーリーはかなり予想外だった。


『起』で登場した女子高生3人は火星に暮らす女子高生であり、火星は地球と交戦中で、その戦争の様子を火星に暮らす女子高生の視点で描くというもの。


「1番オリジナリティがあって、漫研と文芸部が形無しってところかな。この課題の答えとしては1番面白かったよ。それが漫画や小説として面白いかは別なんだけどね」


 倉間氏は割と辛辣なことを言う。


「さて、それぞれ面白かったんだけど、『起』と『結』を繋ぐ『承』の話をしようか」


 授業は結構面白かった。でも、為になったのかはわからない。


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