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無花果の回ー6

歩く。



丁度夕陽がさよならしそうな時間帯。

アテンナは夕方になっても車や人の往来が激しい。

騒がしい街だな。


ロリータ店で買ったスマートフォンを操作する、電話帳の欄には一件、情報屋ロリータ。


ふっ。

初の異世界携帯をGETして登録者の最初が50代の肥ったババアとは。

悲しい、悲しいけどある意味面白いからいっか。


因みにこの携帯電話なんと体内通信で電話掛けたり取ったりできるらしい。

脳内で連絡したい相手を思い浮かべたりすればいいらしいが……

今度やってみよう。


あと最高にどうでもい話だけどババアの名前は店の名前と同じくロリータ。

しかも日本のロリータとこっちのロリータの意味は同じ。



…………



やれやれ世も末だな。



「誰か~その男を止めてください~!」

車の騒音や人だかりの喧騒をかき消さんばかりの大声。

人の群が一斉に声の主を探して視線を彷徨せる。声は続く


「私のバッグ、泥棒です!捕まえてください!」



声の主発見。OL風のファションの美女エルフ!

ショートボブの髪型が何とも可愛らしい!

これは是非泥棒を捕まえて仲良くならねばいけない。



見とれていると

「きゃっ」「痛ぇな」「痛いよ~お母さ~ん」等々声が聞こえる美女エルフから10メートル先に男が人波を押し退ける走っている。


色褪せた野球帽にサングラスダサい上下のジャージ、手には不釣り合いなピンクと黄色の可愛らしいバッグ


「どけ!」


道行く人を突き飛ばしたり、蹴り飛ばしながら走っている。



どこの世界にもいるのね、泥棒した上に暴力とか許せんな、前の俺ならスルーしていたが。

だか今の俺は違う!

突き飛ばされた一般人達よ仇は俺が打つ!

決してバッグを取り戻して美女エルフと仲良くなって最終的にはエロい事したいなんてやましい気持ちは一切ない!大義名分のもと



「故に我は義によって動く!」


あっ、やべっ、声に出しちゃった道行く人のなんだこいつ的な目線が痛いがとりあえず。

泥棒男を追いかけるか

見ると泥棒が遠く離れ丁度人差し指位の大きさなっている


「とうっ!」


意味の無い掛け声と共にダッシュ

一歩足が前に出る度に泥棒が近づく、40秒で隣に並んだので

「やぁ」と軽く声をかけた後に顎先に右のチンジャブ


「かはっ」と口から空気を漏らし膝から倒れる泥棒。


「ふっ。悪いことをした後には天罰があるもんなんだぜ」


と無駄にカッコつけておこう。

バックを拾い息を切らしながら此方に走ってくる美女エルフの元に届ける。


「ありがとうございます」


必死に頭を下げお礼を言う美女エルフ。尖った耳が身体の動きに合わせてピクピク動くのがなんとも可愛らしい。


「いやいやそんな人として当然の事をしたまでですよ」


「本当にありがとうございます。でもすごいですねあっという間に追い付いてすぐ倒しちゃうなんて、もしかして攻性ギルドの方ですか?」


ん?

そういえばアテンナの街に来てから攻性ギルドというワードをよく聞くな、海での魔物の時にも聞いたしロリータばあさんも言ってたし。


「絶対そうですよね!凄いな~まだ若いのに、やっぱり格好いいなぁ~攻性ギルドの人達って。私も小さい頃に目指してたんですよ!

でも向いてなくて結局諦めちゃいましたけど」


エヘヘと照れ隠しに笑う美女エルフ



惚れてまうやろ~!!!

そんな可愛いハニカミ笑顔反則やろ~!


「あの、大丈夫ですか?」


思わず身悶えしてしまった。爽やか笑顔で答えておこう。


「因みに何階級か教えて貰っていいですか?」


何階級?何それ?どうしよとりあえず誤魔化しとくか


「私のかっ」


「あの一つお伺いしてもいいですか?」


そっと美女エルフの両手を握り言葉を遮る。


「あっ、ハイ!?」


よし!話しは逸れたな


「実は俺、今晩泊まる所が無くて、色々あって危険な海賊や魔物、オークに狙われて命辛々逃げてきたんです」


大きな括りで言うなら嘘は言っていない。握った手を優しく胸の前までもっていく。


「お姉さんさっきお礼がしたいって言ってましたよね良ければ今晩泊めっ」


「ミルネ!」


「あっ!コウ君!」


俺の手をものっそい勢いで払いのけコウ君と呼んだ男の元に走っていく。


ミルネと呼ばれたエルフ美女は駆けつけた男に抱きつき、男もミルネを抱き抱える。

映画のワンシーンの様に抱き合いながらクルクルと回りだす。

鼻と鼻とがふれ合う位の距離で男が喋る。


「待ち合わせ場所にいないから心配したぞ何処にいってたんだ?」


「ごめんなさい。泥棒にバック盗まれちゃって、でもこの子が助けてくれたんだよ」


男とミルネはお互いを見つめ合いながらチラッとだけ本当に一瞬だけ此方を見てまた二人の世界に入る。


「きっとこの子もコウ君と同じ攻性ギルドだよ。だって一瞬で泥棒やっつけちゃうんだもん」


「へぇまだ若いのに優秀だな、でもミルネが俺以外の男を褒めるのはあまり良い気分じゃないな」


「もう、コウ君やきもち?でも可愛いそんな所も好き」


「俺も好き」


そしてコウ君と呼ばれている男とミルネは人目も憚らず往来のど真ん中でキスをする。

二人の甘ったるい声はどこまでも広がりアテンナの街を包み込むようだ。








うん。










そんな俺からしたらゴミみたいなやりとりをずっと見せられているんですが俺はどうすればいいのかな?


とりあえず全てを破壊し尽くす魔王になればいいのかな?


それともあれかな、うん。

えっ~と、あれあれ、そう。あのあれ、さっきの自分の発言を想いだし恥ずかしさの余りにこの場から立ち去りたい、いや立ち去ろう!



「待ってくれ」


そぉ~っとこの場から立ち去ろうとしたらコウ君に呼び止められてしまった。

ってか何で俺がコウ君って呼んでんだ!


コウ君は見た目は20代前半の爽やかイケメン、キリリとした鋭い目に鮮やかな赤色の髪、外見に亜人のような特徴が無いから人間だろう。

腰に立派な剣を差し。黒色のズボンとブーツに白のトレンチコートを羽織っている、その白色がまた俺には眩しいぜ。



コウ君は俺が気絶させた泥棒を見た後に携帯を取りだし何やら操作、

立体光学映像が飛び出し冴えない中年男の姿が青い粒子によって表れる。

「こいつは最近指名手配されたゾッツという男のようだね。罪状は殺人、強姦、窃盗。安いが賞金も出ているギルドか警察にいけば賞金が貰えると思うよ」


「う、うっす。情報あざっす」


ぎこちない返答にもコウ君はニッコリの爽やかスマイル


「ミルネを助けてくれてありがとう僕はコウ・オリゼ、鷹の羽という攻性ギルド事務所に所属している、君は何処かの事務所に所属しているのかい?」


「コウ君はね攻性ギルドでも達人と呼ばれる9階級なんだよ、凄いでしよ~。困ったことがあったらコウ君に相談するよいいよ」


「やめろミルネ恥ずかしいだろ、でも本当に困った事があったら相談してくれ役所で会うかも知れないしね」


恥ずかしいだろって言った割には満更でもない顔すんなよ。


「あ~、えっと、今日この街に来たばっかりなんでよく分かんないんすけど」


コウ君は俺の言葉を聞いて爽やかさを+200%程増量した。


「そうか!だったら我が鷹の羽に所属しないかい?アテンナでは結構有名な攻性ギルドだよ」


「あっ、いや、でも」


「君は何も心配しなくて良いよ全部僕に任せてくれ明日にでも一緒に事務所に行こう!」


コウ君は爽やかな見た目に反してグイグイ来るなぁ~


「あ~というか。攻性ギルドって何すか?」



この言葉を切っ掛けに始まった。

~コウ君とミルネ嬢のラブラブ攻性ギルド説明~


攻性ギルドとはうんたらかんたらとくっそ長い説明を右から左へ聞き流していたがあまりにも熱心に語るもんだからちゃんと聞いてしまった。


要約すると攻性ギルドというのは人に害をあたえる魔物、異形の方、亜人に同業の犯罪者や賞金首、果ては魔王といった害悪を狩り金を稼ぐ職業の一つ。



大事な事だか攻性ギルドは己の力と魔術で戦う為に常に死と隣り合わせだとコウ君が言った後。


「だから私はいつもコウ君が心配」


「ミルネ」


強く抱き合う二人、いや説明中でもイチャイチャするんかい!


他にも研究ギルド、学術ギルドといったものもあるらしく。

魔術の研究、魔術を使うことでの人体に与える影響、魔術を生み出す付加価値の均一化や人体への軽減。

魔術を使った学術の論理的推論がなんたらかんたらと説明してくれたが、さっぱり意味が分からんかった。



「コウ君子供にも分かるように説明しなきゃメだよ!」


「あははっ、ごめんごめんミルネの前だからつい格好いい所を見せようと思って」


「もう、コウ君はそんな事しなくても充分格好いいよ、私の王子様」


「ミルネ」


いやだからなんで説明の合間に抱き合ってキスすんだよ!

もういいよお前らどっか行けよ!




~~~




アテンナの中心にはバカでかい役所がありその敷地の一画に攻性ギルド課という建物が存在。

攻性ギルド課では、新規の冒険者登録受け付け。

犯罪者、賞金首の引き取り、それに次ぐ賞金変換。

危険指定の魔物、異形の方、亜人等の引き取り、逸れに次ぐ賞金変換。

国や個人からの依頼討伐の情報提供。

依頼指名の斡旋。

街の警備手配。

世界各地にある穴、塔、ダンジョンへの資源採掘

等々またグダグダ説明が始まったが要は攻性ギルドと仕事を繋げるパイプのようなもんだろ?


攻性ギルド達は一人で活動する者もいれば団体で活動する者もいる、

団体で活動する者達は自分達で事務所を持つ。


コウ君の場合は鷹の羽という攻性ギルド事務所に所属しているとの事。


攻性ギルド事務所は個人でも仕事を受けることもあり大手になればなるほど国や王族、貴族からの直接指名依頼があるらしい。


冒険者は攻性ギルド課に登録すると町中で武器を持つ事が許される、



攻性ギルド達の強さは1~15の階級で表している。

1~2、初心者

3~5、駆け出し

6~8、一人前

9~12、達人

13~14、到達者

15、神をも殺す強さ


コウ君は9階級だったか。

達人だから結構強いのね



一区切りついた後にまたコウ君&ミルネ嬢が何か説明がしようとしたので


手のひらを突き出し続く言葉を遮る。

攻性ギルド課までの道程を聞いて


「この泥棒を届けてきます」


笑顔で告げ、この場を立ち去る。

何故かコウ君はついてこようとしたのでやんわり拒否








少しでも早くこの場から立ち去りたい。


だって


なんか


疲れた





泥棒オッサンを引きずりながら歩いていると無性にやるせない気持ちに襲われたのでとりあえず、オッサンを蹴っておく。



「ぐふっ」

と声にならない声が投げ出され、街の喧騒にのまれ消えていく。

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