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価値観の違い

「それでは皆さんが気になってしょうがない特等は…こちらです!!」


「「「「お~!!……お?」」」」


進行役の人が持ってきた特等、それは…


「なんだあれ?」

「錆びだらけの…釜?」


持ち運べるくらいの大きさをした錆びついた釜のようなものだった。

…これが特等?値段がつけられない物?


「こちらはですね、とある冒険者の方がダンジョンを攻略した際に手に入れた解析不能な道具(アーティファクト)です」

「アーティファクト?」

「いつ造られたのか…どのように使うのか…それらが分からないアイテムのことです。このアイテムもあの手この手と調べたらしいんですが、どういうものなのか特定できなかったそうです」


使い道が分からない道具、それを聞いた人はただのガラクタと思うのが殆どかもしれない。


「この特等が冒険者ギルドからの協賛でして、手に入れた冒険者がいらないからと引き取ったものの、使い方が…と言うか使えるか分からない、錆びだらけで見た目が悪い、そのせいで他に欲しい人がいない…扱いに困ってたんだとか」


「値段がつけられないってそう言うことかよ…」

「俺たちはあんなのを求めて福引き券を集めるのに躍起になってたのか…」

「まじかよ…」


でもここは異世界、ダンジョンを攻略したことによって手に入ったというアイテム…アーティファクトなんて呼ばれている正体不明のアイテム…これは…


「正直こちらとしてもこんなガラクタは…ゴホンッ!!なにはともあれ特等おめでとうございます!!」

「ありがとうございます!!」

「え?なんでそんなに笑顔?」

「だってこんなにワクワクするアイテムが手に入ったんですよ!謎だらけのアイテム、少年心?冒険者心?…とにかくうずうずしちゃうんです!!」


そう!こんなにワクワクするアイテムは滅多に手に入らないと思うんだ!!

ゲームでもたまにある何に使うか分からないけど、特定のタイミングで真価を発揮するレアアイテム…これがまさにそうかもしれない!!


「よ、喜んでもらえて良かったです…。と、後2回残ってましたね、では残りも引いちゃってください!」

「あ、そうだった…さらに当てて見せる!!」


1等と2等も当てちゃうぞ~!


ーーーーー


「まあ、そう上手くはいかないよね」

「それはそうですよ、特等が当たったんだから良かったじゃないですか」


流石に追加で当てることはできなかった。

でもタンドップさんの言う通り特等が当たったから僕は大満足だ。

周りの人からは変人を見る目で見られてるけど…


「あんなのをもらって喜ぶなんてな…」

「俺からしたらただのゴミなんだが?」

「此処にいる大半のヤツはそう思うよ」


僕からしたらお宝のそれなんだけどな…価値観は人それぞれということだよね。


「でもこれって本当になんなんでしょうか?変哲のない錆びついた釜にしか見えないですけど…」

「ダンジョンで手に入ったものってことでしたし、何かしら使い道があると思うんですけどね」

「その内使い方が分かるといいですね」


手入れだけはしておこうかな、錆びを取って大事にしまっておくことにしよう。


(…た……マス…を…かく……)


「…?タンドップさん、何か言いましたか?」

「いえ?何も言ってないですよ?」


今、近くで声が聞こえた気がしたんだけど…気のせいかな?


「やっぱり採掘で疲れてるんですね、今日はもう宿で休みませんか?」

「…そろそろ日も暮れそうですし、スターリムに戻りますか」


自分が思ってる以上に疲れてるのかもしれない。

幻聴が聞こえるほど疲れてるとしたら早く休んだ方がよさそうだ。


(…しく……ます…タ…)


…早く戻ろう。


ーーーーー


「おかえり~、依頼はどうだった?」

「とにかく疲れました…早くベッドで横になりたいです」

「僕も寝て疲れを取りたいですね」

「あらあら、もう少し体力をつけた方がいいんじゃない?」


メンフィスさんがロビーで出迎えてくれた。

あんなに疲れるのは早々ないとは思うけど、体力があって困ることは殆どないだろうし…早起きしてランニングでもしてみようか?


「グドウさん、フェスちゃんにさっきの釜を見せてみませんか?もしかしたら何か分かるかもしれないですよ」

「あら?何か手に入れたの?見せて見せて」

「福引きで当てたものなんですけど…これですね」

「…分かる人には分かるユニークなアイテムね」


メンフィスさんが苦笑いしてる。

気を使って言葉を選んでくれたみたいだけど、ガラクタに見えると明け透けに伝わってくる。

う~ん…やっぱりガラクタにしかみえないのかな?


「アーティファクトみたいなんですけど…フェスちゃん、どんなのか分かりますか?」

「アタシは別にこの類いの専門家じゃないわよ?…でもまずは錆びを落とした方がいいわね、全容が分かれば何かしら掴めるかも。ちょっと待ってて」


メンフィスさんが奥の部屋へ入っていく。

それからそう経たない内に戻ってきた、その手にはブラシと小瓶と何か黄色いものが収まっている。


「これはラモンっていう果物なんだけど、これの果汁と塩を混ぜたものを錆びに塗って磨くと錆びが取れるのよ。よかったら使って」

「いいんですか?ありがとうございます」


渡されたラモンと塩を受け取る。

中々頑固そうな錆びだけど頑張って落とそう。

きちんと使える状態にするのが持ち主の責務だよね。


「さあ、疲れたのなら早く寝なさい」

「はい、お休みなさいフェスちゃん、グドウさん」


タンドップさんが自分の部屋へと向かう。

僕も部屋に戻って…の前にちょっと気になることをメンフィスさんに聞いてみよう。


「メンフィスさん」

「なにかしら?」

「アーティファクトが喋ることってあるんでしょうか?」

「そんな話は聞いたことないけど…何かあったの?」

「いえ…何となくです。お休みなさい」


あの時聞こえた気がした声のようなもの。

正体は分からないけど…一応ね。


「これからよろしくね」

(…い……マス…)

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