エピローグ「瞬介のいる両世界」
目が覚めた。そこに広がるのは――
「……現実世界か」
公園のような広い空間に樹が植えられていて、車いすをおしている看護師の姿が見えた。のだが……。
「……なんだ?」
なんか違和感がある。
自分の体がいつもよりも軽い。
それに……知力的な何かがごそっと抜け落ちているような感覚だ。
「スマホ、スマホ……」
俺はとりあえずナースコールよりも先に自分の違和感を証明する相手として、あいつらを呼ぶことにした。
「瞬介……これはまた」
そう言って悠人は、ごしごしと目を擦る。
「さすがのおいらもこれはびっくりだよ。ますます存在感がないなんて……」
何やらパソコンを俺に向けて、パシャっとした誠太はこちらに画面を向けていた。
それを見ると俺もびっくりした。映っている自分が消えかかってるかのようなそんな状態――いうなれば、心霊写真とでもいうべきか……それくらいに薄くなっていた。
「ていうかさ、霞がかってるんだよ……意識も」
「そうなのかい?」
「霞がかってる……そりゃ、寝起きみたいなもんかな?」
「そうそう。そんな感じ……」
あれから頭の鈍さも、意識も何かおかしいことに気付いた。
誠太が例に挙げた"寝ぼけ眼"みたいなものだ。
「なんかこりゃあっちの俺も、同じような感じになってそうな……」
「どういう意味だい?」
悠人の問いに、俺はあちらでの出来事を拙いながらも伝えた。
巨大樹ルビーデーモンロードを倒した後のことを鈍い頭で思い出しながら。
誠太はパソコンでカタカタと何かを入力し、悠人はふむとアゴに手を置いて考えていた。
「考えられることは……精霊たちが瞬介へと目掛けて……つまり精霊女王目当てにって感じだから、その力へと統合ってのが考えられるよ」
「瞬介は、その前にも巨大樹だっけ? そいつに取り込まれてずっと寝てたんだろ?」
「あ、ああ……」
「そして、フィーナちゃんがぎりぎりまで寝ていた、と。あたしの精霊力を返しなさいと言ったことも……それに付随するんじゃないかっておいらは思うぜ」
「な、なるほど……」
つまり俺は――と、その時!
「あれ?」
俺は突如場所が変わったことが分かった。
全てが木でできた建物――いわゆるあちら側の世界だ。
「お、おお?む、婿殿?」
「え、あれ? メジェネア?」
「う、うむ……なんじゃ、何か婿殿が薄い気感じがするのじゃ……」
いやそれよりもだ。
「俺は、あっちで目覚めたはずなのに……なんでもうこっちで目覚めて――」
「瞬介?」
「あれ、悠人?」
「どうしたんだい? 何か一瞬だけぼーっとした顔をしたけど……」
「いや、悠人実は――」
「悠人? 婿殿、何を言うておるのじゃ」
「え?メジェネア?」
やばい……なんか色々と。
「つまりは――」
「わらわたちのいる世界と、」
「僕たちのいる世界が、」
「混ざった状態の意識の繋がりをしているということかい?」
「混ざった状態の意識の繋がりをしておるということかの?」
それは不思議な感覚だった。
なんせ瞬きの次の瞬間には、まるで違う世界、そして人と話しているのだ。
辻褄を合わせるレベルがむちゃくちゃだった。
やがて、ラビィが異世界側にも来て悠人たち現実世界を交えた会話を俺を通して行うこととなった。
「そういや、フィーナは?」
「あの方は、また眠りにつかれましたわ」
そこにと指を向けると、確かに俺特製のベッドでぐーぐー眠っていた。
「おそらくは……になるけど、僕の予想でいうなら――」
と言って悠人は俺に解説をした。
フィーナもいわゆる精霊力によって活動していて、それらを俺に奪われ続けたことにより眠りについていたこと、そして巨大樹ルビーデーモンロードを倒したことによって取り込んでいた精霊力が、その大本たる精霊女王を求めて一斉に俺へと入ってきたということ。
そこで、統合が起こりつまりは――
「もしかして、パワーアップしたってことか?」
「そうだよ、瞬介くん」
「半分の半分くらい……試してみないと分からないけどつまりは、クォーター――」
「"4分の1"の力までのハーフリンカーの力を……ということですの?」
ハーフリンカーっていうか、クォーターリンカーとなったということらしい。
で、今はその力が安定しておらず俺の意識も、こっち――現実世界と異世界世界とで行き来している状態になっているということ。存在感もやっぱり異世界側でも相当に薄く見えるらしいので、つまりは安定するまでこういう感じになるってことだ。
「行ったり来たりか……そ、そりゃとてつもない面倒臭さが伴っているな……」
「そうだね。でも、安定さえすれば今までの半分からそのもう半分になるから」
「まさにシュンスケ様の力が増すことになりますわね」
ということで、俺は力が安定するまで現実世界、異世界が混同するという奇妙な生活を始めることとなったのだ。




