10話「Halfass(ハーファス)vs巨大樹ルビーデーモンロード」
ミーティアから事情を聞く間、すっかり巨大樹ルビーデーモンロードへと変貌を遂げた深紅の巨大樹が出来上がっていた。
そこへ――
「婿殿~♪」
―ぽよん
何やらの後頭部に柔かいものが当たると、ぐいっと顔を後ろから掴まれた。
く、素晴らしい感触だが……。
「離せ! メジェネア!」
「う~ん、つれないのじゃ」
「ようやくお起きになりましたのね、シュンスケ様」
「悪い、すっかりと寝こけてしまった」
「……いいえ、この場面で起きてくれたのなら良かったですわ」
ラビィの言葉に、正面にそびえるあの砂国のことを連想するほどのでかい巨大樹を見上げる。
あの時の色よりも深い色をしていた巨大樹は、ゆらゆらと蔓を揺らしては周囲を探るように揺らめいている。
「メジェネア、あの時のあの魔法はできるか?」
俺の問いに、メジェネアはゆっくりと首を振る。
「無理なのじゃ。あの古代魔法はあの地にて有効な魔法。地の条件を満たしておらん」
「……そっか」
つまりは、あの時の大逆転一発勝利ではなく地道にやるしかないってことか。
面倒だがやるしかないだろう。
「ラビィ、メジェネア、それにコーディ! やるぞ」
「ええ、リーダー様」
「無論じゃ、リーダー」
「アォウ!」
フィーナなしでは若干しんどいが、あんまりあいつを当てにするのも良くない。
にしてもなんであいつあんなに具合悪そうなんだろう?
そして俺たちは動き出した。
蔓の数は尋常じゃないほどにこちらへと襲い掛かってくる。
それらをラビィは蹴り、リンスは拳で、メジェネアは魔法を使い、コーディは俺に接してくるものを剣を器用に駆使して次々と対処する。
無論俺は半減の力を駆使してサポートに回っていた。
相手の動きからネガティブイメージに至るそのすべてを。
味方の動きはポジティブイメージのそのすべてを。
てか、あの夢から覚めてから妙に力の使い方が冴えているというか、扱いやすくなっている気がするのだ。それほどに不思議な感覚を持っていた。
とにかく俺は自らの力を操縦するように、そして――
「――半加貼」
相手の半減した力の全てを、俺を介して味方たちに力を"与え"た。
「!」
味方たちは突如として加わった力や魔力に驚いたようだったが、自分の動きやそれに伴う技の冴えなどといったことを実感しているのだろう、先ほどまでとは違うやりやすさで蔓を対処し、本体への攻撃を行おうとしていた。
「ご無礼のほどを。 ――無礼・華麗奔放!」
緩やかにそれでいて大胆な舞のように、ラビィの足からソニック的な衝撃波が振るわれて巨大樹にダメージを与えていく。
「――懸崖撒手」
リンスは、巨大樹に抜き手の連打を叩き込みながら落ちていき最後に巨大樹を揺らすほどの打撃を放った。
「ふふ。負けぬのじゃ。 ――ショーラ・ラッカーサ(炎の踊り子)」
メジェネアは、両手に巻かれた包帯を剣の形にしてそれを燃やすと、両手で次々と斬っていく。
「ガルゥオォウ!」
剣を咥え、そのまま枝を切り裂きに行き蔓の生まれる部分を根っこから斬っていくという剣撃と繰り出していく。ついでにという感じで爪を繰り出すことも忘れずというのがなんともコーディっぽい諦めの悪さというか……。
「なんていうか……改めて自分のパーティメンバーがすごい件……」
ラビィとリンスの足技と拳打。
メジェネアの魔法剣もどき。
コーディの剣を咥えた素早い剣撃。
これにフィーナの腕力を加えたら、まさに最強といった感じだ。
……そのフィーナは馬車で寝ているが。本当にどうしたんだろう、あいつ。
そのまま攻撃を続けていると、相手の消耗を俺で補おうとしようとしているのか俺のほうに攻撃が集中してきた。
前の巨大樹の時と同じだ。
こいつらは、俺みたいに精霊女王の力を取り込もうとしてくる。
多分だが……このままいけば――
「! きた!」
吸引を始めてきた。
問答無用という感じで、その吸引力も前回とは段違いの吸引力だった。
ダ〇ソンかよ、という突っ込みもできないほどのそれに抗うが……。
「さ、さすがにこれは……」
吸引力も半減させているというのに、全然吸引力が落ちてない。
これはやばいな、と思ったその時だった。
「ふざけるんじゃないわーーーーーーー!!!」
馬車から小さい何かが飛び込んで行ったかと思ったら、そのまま巨大樹へと相当な衝撃を伴って衝撃を与えた。
「シュンスケね! このあたしの不調! さっさとあたしに精霊力を返しなさい!」
と言って俺のほうに指を指して、奴はどでかい声で言い放った。
「はぁ……まったく、分かってるよ!」
そうして俺は、全力を持ってそれに応えるためある程度の集中を行い、自身の魔力イメージをフィーナの奴に叩きつけてやる。
「全減解放!」
それは、その場にいる半分の力をフィーナへと全乗せさせて力を与えた。
奴は、凶悪な笑みをこちらに向けると背を向け――
「気持ち悪い奴! 死んじゃえーーーーー!!」
と言って、殴りに殴り徐々に巨大樹は衝撃によって浮き上がり、相手を削りまくっていた。フィーナの体長なのでその削り方はわずかだが、伝わってくる衝撃分も全部が波となり、むちゃくちゃに削りまくった。
結果――
まるで奴が食い散らかしたかのように、巨大樹は形を保てないままにその身を崩していくのだった。
そしてその後、俺へと一斉にやってくる謎の力に耐えられず俺は意識を失ってしまった。




