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異世界”半”転移譚  作者: 武ノ宮夏之介
第八章「森国エルヴィン」
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9話「元女王vs黒エルフ長老」

ラビィが白エルフ長老を相手にし始めた時と同一の時間――


メジェネアと黒エルフ長老戦は、炎の魔法と、地の魔法との戦いとなっていた。


「なるほどなのじゃ、黒エルフ族は地に長けるとはこういうことか」


「砂の国の女王、その程度か? 2万5千年とは」


「そうじゃな……この程度か」


そうつぶやくと、メジェネアはキセルを取り出すと火種をつけてふぅ~と吐き出す。


「戦いの最中にそのような児戯を!」


「ふぅ~……、児戯に等しいのじゃ」


「なんだと!?」


その言葉に反応した黒エルフ長老は、地に手を当て魔法を唱えた。


「……地の魔法も地に落ちたものじゃ……なんてのう」


メジェネアは1人寒いギャグを言い放つと、足を踏みしめて黒エルフ長老の魔法を止める。


「なに!?」


「そも、唱えるというのはそれほどに高度な魔法。……じゃが、お主が放つ魔法のことごとくが大したことのない魔法。それこそ、わらわの生きた時代では子供でも唱えることなしに放てる……楽なものじゃ。 ――それに」


そう呟いたメジェネアは、キセルを黒エルフ長老に向けて魔法を発動した。


「――トゥルバ・ゼルザール(大地よ揺れよ)」


すると、黒エルフ長老を中心として突如として地揺れが起こった。

立ち上がれないほどの揺らぎは、黒エルフ長老の三半規管を狂わせ、そのまま倒れ伏し、なんとか起き上がろうにも自身が揺れているような錯覚によってそれは叶わなかった。


「わらわはこう見えて、地の魔法が得意なのじゃが……どうじゃ?自らの足を失くした感想……そして呟くだけで揺れる大地の魔法は?」


「こ、こんな……ことが!」


「わらわは婿殿という愛おしい者として受け入れておる。じゃからこういう手段を見られ絶望されることを何よりも怖いと思うのじゃ。しかし――」


ゆっくりと近寄り、そして黒エルフ長老の前まで行きしゃがんだ。

そして、呟く。


「――ラムル・インフィジャール(砂爆)」


摘まむほどの砂を落とした傍から小さな爆発が黒エルフ長老を巻き込んだ。

顔へ、体へと砂を落としていきそこから爆発していく衝撃と砂という粒子の刃が、黒エルフ長老へと襲い掛かる。


「ぐわぁ! や、やめろー!」


そこへ地を伝ってきたように続々と覆面をした黒エルフたちが現れ、メジェネアへと刃を振るってきた。


「……無駄じゃ」


キセルでいなし、そのまま赤熱化させ黒エルフたちの首へと押しあてた。


「――ラアナ・シャラーラ(呪火花)」


「あ、ああああああ!!」


首筋に押しあてられた呪われし火傷が永続的に痛みと熱を与え、黒エルフたちは泣き叫び、暴れその場を転がっていた。


「わらわたちに手を出した報いというものじゃ。永遠の呪われしその火花に身を焦がし枯れるがよい。さて――」


そうして黒エルフ長老のほうへと向き直ると、キセルを吹かせ近づき質問を投げる。


「わらわは元女王ゆえ、拷問などやり方を知らぬのじゃ。……できればお主にはわらわがやりすぎる前に話してほしいのじゃ。帝国のことをな」


その問いに黒エルフ長老は、ビクっとなるが口は固く閉じていた。


「分かりやすい反応、大義じゃ。……さて、どの魔法を使えば――」


メジェネアが呟くと、黒エルフ長老の地獄が幕を開けることとなったのだった。




「……」


「やりすぎたのじゃ……」


もはやそこには、口を利ける者は誰もいなくなってしまった。


黒エルフ族たちはミイラのように渇き、黒エルフ長老に至ってはもはや姿形すらなかったのだ。その時、メジェネアも経験のある赤い光が黒エルフ長老のいた場所から放たれて、中央へと向かっていった。


「まぁ、そうじゃろうな。さて、いくのじゃ」


そして彼女は何も悪びれることもなく、中央へと戻っていく。


メジェネアにとって、死とは些末なこと。

瞬介にさえその瞬間が見えなければ、失望さえされなければあとはどうでもいいのだ。




メジェネアが中央側へと戻ってきた時は、もうすでにほとんどの反エルフ族たちは討ち取られていた。サナダはメジェネアを見かけると軽く手を上げて近寄る。


「そちらも終わったようで何よりでござる」


「うむ、大義じゃな。さすがは音に聞こえし皇国の武士……じゃったか?」


「……さすがは2万5千年の時を――おっと、禁句でござるか?」


「いいや。婿殿に何か思われるのであらば、それは禁句じゃが……あの方はそこらへんはお気にされぬご様子じゃ。ならば、それも禁句とはならぬのじゃ」


「礼を。それにしても"もののふ"とは……昔の武家体系、交流があったその頃の話今度酒を肴に聞いてみたいものでござるな」


「じゃな。婿殿が許せば、そこらへんの話もしてやるのじゃ」


そんなことを言っている間に、ラビィもやってきたのでメジェネア、サナダは共に先行している瞬介たちに追いつくために走り出した。




その頃、瞬介を乗せた馬車は中央の結界樹――その手前にある屋敷から慌てたミーティアがエルフ族の長を連れ脱出をしていた。


脱出の間際、蔓のようなものがミーティアを絡もうとそれを伸ばしてきたが――


「ガルゥ!」


「よし、いいぞ。コーディ!」


と、自分に襲い掛かってきた蔓を切り裂くコーディと声をかける少年を見つけそちらに視線をミーティアは移した。

そこには――


「シュンスケさん!」


「はやくこっちに!」


そうして声を掛けつつ力を使い2人分の体重などを半分にしてながら、ぼそっと愚痴のように瞬介は言い放つ。



「 ……てか、やっと目覚めたと思ったらいきなりラスボスっぽい展開とか……フィーナは寝てるし、コーディじゃ話がそもそもできないから詳しい話を聞きたいんだけど」


瞬介の目の前のそびえ立つ中央の結界樹は、どんどん成長していきそして――

見たことのあるものよりもさらに深紅の赤い赤い樹の化け物へと変化していくのだった。

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