8話「令嬢vs白エルフ長老」
中央に広がる森都。
そのさらに中央には、巨大な樹がそびえだっていた。
その両脇には、2人がいて先頭にはエルフ族たちが立ち並んで、弓を構えていた。
「放てー!」
その声とともに、周囲から精霊力を取り込んで打たれる矢は雨の如く様々な属性を宿してHalfassたちの場へと届かんとしていた。
しかし――
―スタッ
馬車から軽く降りる様は優雅で、しかしてその足は苛烈に舞い――
「――豪蹴……(ごうか)」
その足裁きにより、矢は……雨のような矢は全てが止まりそして――
「絢乱!」
再び足を変え、ひらりと蹴り返した。
その結果、矢は逆にエルフ族たちへと襲い掛かった。
矢はランダムに飛び散り、まるで暴れ乱れるようにエルフ族たちに突き刺さっていく。
「なんと、凄まじきはその足技じゃ……では、わらわも」
キセルを吹かし、ふぅ~と息を吐いたメジェネアはその火種をトーンと落とし、
「――ナール(火)……」
それが自身が緩めた包帯へと付くと、蛇のように動きそして――
「ソーバーン(蛇)」
残ったエルフ族たちに火の蛇と化した魔法が襲い掛かった。
周囲にはそれぞれの蛇たちによる火の力が活発化されていき、轟々と燃え広がる。
水の矢で消化を試みるが、それさえも通じず消すに及ばずだった。
「わらわの魔法は、呪い。呪いをうぬらごときで消せるはずもないのじゃ」
あれだけ集まっていたエルフ族の大半を、たった2人にやられたことに2人の長老は、冷たい目でじっと見つめていた。
「ふむ、わらわは左じゃ」
「では、わたくしは右をいただきますわ」
そう言って、それぞれ攻撃を放ち相手を自分側へと引き寄せていった。
「……では、我々は予定通りにシュンスケさんを守りつつも、中央へと」
「婿殿を頼むのじゃ」
「お頼み申しますわ」
やがて、中央へと向けて移動する連中の前には武装化したような甲冑姿の赤い蟻たちがみえてきた。ミーティアたちエルフ族は水属性の矢を放つが、それらを苦も無く退ける魔物たちに一瞬怯むが、各々の馬車から飛び出してきたドワーフ、侍軍団たちが走り込んでそれぞれの獲物で斬り裁いた。
「ミーティア殿、ここは拙者らにまかせて先へとゆかれよ!」
サナダの声に、ミーティアは頷いて答えてエルフ族たちへと声をかけて、そして先へと進んでいった。
フィーナはと言えば……何やら元気がなく、ただひたすら瞬介の傍で大人しくしている状態でコーディもさすがのこの状態のフィーナに威嚇することもなく、ただひたすら瞬介を守るために周囲を注意していた。
そのまま眠る瞬介を乗せた馬車は、やがて巨大な樹へと近づいていく。
▽
一方その頃のラビィはと言えば、白エルフ長老と戦っていた。
普通の碧眼ではない血の様に赤い目の……この血塗られし魔物ルビーデーモンを想像させる力はさしものラビィも受け身に徹していた。
「先ほどの、攻撃は……やらぬのか!」
「……」
蹴りでかわし、身を避け、その柔軟さ溢れる身体能力は限界まで身体強化を施してようやくという感じだった。だが、彼女に焦りは全くなかった。
(ふふふ……なんでしょうね。実戦に勝る武舞こそ至高。我がリースリッド家の家訓に相応しき……舞踏ですわ)
木製にも関わらず様々な属性を器用に切り替えながら振るわれるそれ一撃が必殺と呼んで差支えない攻撃なはずのそれを、彼女は喜びながらも避けていく。
避けるさまはまさに踊りを踊るかのように優雅にしなやかに。
「淑女の嗜み、見せて差し上げますわ」
そうつぶやくと、先ほどよりも苛烈に蹴りを入れていき風属性によって風を巻き起こしながら相手の懐へと入っていく。
「ぐっ、この! 人間ごときが!」
「あなたは今、その人間ごときに負けるのですわ」
そうして彼女の間合いに入ると――
「――一實千蹴」
そこから足を白エルフ長老へと叩きに叩き込んでいった。
その勢いはまるで千の蹴りを放つかのように、もはや目で追いきれぬ速度でそれらは繰り出されていき、やがて白エルフ長老の体は近くにある樹へと叩きつけられた。
「ぐっ! がはっ!」
倒れ込み、そしてすぐに起き上がる白エルフ長老。
「こ、ここまで……とは……ぐぶっ」
血を吐き、そしてナイフを構えるが――
「……残念ながらそれ以上は、動かないことをおすすめいたしますわ」
「な、何を……がっ」
まず、右腕が落ちた。
「!」
そして、左腕とともにナイフもカコンと樹の根に当たり落ちる。
続いて右足、そして左足とどんどんと自分の四肢が死んでいく様を見てしまう白エルフ長老。
「あなたが死ぬ前にお聞きしたいことがありますの」
その言葉を聞きながらも、彼は動けぬ体で蠢く。
「聞きたいこと、それはどこで帝国と示し合わせたのかということ。帝国から唆されたその残念な頭でもそのくらいはおっしゃることができるはずですわ」
口は動く。
だが、言葉は出てこなかった。
「! ……やはりこの長老」
そうして男は息絶えた次の瞬間――
赤い光が周りに溢れて、その光が中央の樹へと向かっていった。
「あの時の……結界樹の成れの果て、また砂漠でのこと。急ぎませんと」
ラビィは呟くと、スカートを摘まみ上げて走りだしていくのだった。




