2話「異世界、動乱③」
冒険者のパーティは何もシュンスケのパーティだけではなく、ルインズ率いる冒険者パーティたちも王国の要請によって派遣されていたりする。
だが、さすがに屈強で謎の武器によって進軍してくる帝国軍。
冒険者パーティが加わったくらいでその苛烈な進軍を阻止できるわけもなかった。
のだが――
「どういうことですの?」
「それが――」
ラビィが受け取った連絡は、意外なものだった。
帝国軍はこのまま聖都へ向けて進軍をするものと思ったからだ。
しかしある一点の場所を占拠すると、そこで堅牢な城壁を築いていき、進軍を止めたということだった。
「……聖地、ですか」
「はい」
連絡役の騎士からの情報にラビィは、トランクケースから取り出したテーブルとイスを出した状態でお茶を飲みながら考えに耽った。
散発的な攻撃を繰り出してはいずれの地点まで進むと戻るという消極的な戦闘は、他にも――例えば獣国付近でもということだった。
メジェネアからの情報だった。
「狙いは聖地……その聖地には何があるんですの?」
「それは……」
「かまわん」
そうして現れたのは、第五聖騎士軍を率いる騎士団長だった。
「ラビィ殿、リンス殿、此度の援軍まことに助かっている」
「いえ、こちらこそ。シュンスケ様の護衛をつけていただけてるおかげでわたくし共もこうして戦えているので、助かっておりますわ」
「うむ。それで聖地だったな……」
騎士団長が語った内容それは、取るに足らないものかに見えた。
過去の文献のみならず、この世界についての人間から見た歴史の壁画、今の人たちには理解すらできないであろう古いものがとにかく納められているという場所だった。
「ずいぶんと昔のことばかりがそこに眠っているということですのね」
「そうだな。世界の成り立ちといったこと、それらについてもだ」
帝国軍の――ひいては帝国の考えることがまるで見えなかった。
昔のことなどを知って一体何が……。
それに妙に瞬介を狙う暗殺者たちが多い。
それらは騎士やコーディによって撃ち果たされているが、異常に狙いの頻度が多かった。中には手練れとも言えるモノもいたが、幸運にもラビィたちがいた時だったため問題なく対処ができた。
とにかく帝国の進軍が止まった今、王国側からの支援や砂国の支援などで成り立っている間に帝国軍を退けなければいけないだろうという聖王の方針によって、間髪を入れずに聖地を奪還しようとしていた。
メジェネアは獣国側が散発的になったということで、ラビィたちと合流を果たしていた。
いずれ戦況は落ち着いていき、聖国としては聖地とされる場所を取り戻し、帝国側としても聖地を奪われまいと謎の武器と謎の盾、大型兵器などで一進一退を繰り広げていた。
時が経ち、3ヶ月ほどの膠着を迎えている間にも皇国、山国などの援軍と支援も聖国側に到着し始め、帝国にとっても無視ができない戦力に膨れ上がっていった。
そして――帝国がまた再び動き始めた。
聖地を捨て、そのまま進軍を始めたのだ。
何を見聞きしなんのために長い間そこへいたのか、分からなかったが戦力分析なども進み謎の武器などへの対処も可能になっていた頃にまた再び……というか、
あることに気付いた。それは――
「妙に我らというか、シュンスケ様が狙われているような感じがしますわ」
そうつぶやくのは、ラビィだった。
これまで暗殺者による仕掛けが多かったのだが、今度は軍も動き瞬介がいる場所がまるで分かっているかのようにそこばかり狙われるのである。
メジェネアの提案によって、馬車で移動先を変えて待ってみると、軍と暗殺者はそこへと向かってくるのだ。
「……なんですの、この不気味な動きは」
「まぁわらわたちとしては、殴殺で帝国軍を減らせるから楽といえば楽なのじゃが……」
瞬介がいる馬車を動かし、味方側にとって有利な場所へと誘導すればそこをついて帝国軍の数を減らせるのだ。
何せ、帝国軍は数は多いが瞬介ばかりに集中するので、戦列が縦に伸びがちになるのである。
その横をつけば、伸びた戦線は崩れてしまうのだ。
帝国ともあろう列強国がそのことも知らないはずはない。
それほどまでに集中してきてなんとしても瞬介を仕留めようという動きをする意味がラビィ達には理解ができなかった。
そんな中のことだった。
連絡役である騎士がある情報を持ち帰ってきたのだ。
再び謎の走るものがこちらへと向かってきているという情報だ。
その謎の走るものが馬車に比べるでもない速度で走ってきているため、馬で追いかけようにも追いつけずまたこちらに攻撃を仕組むこともなくただただ瞬介のほうへと走ってくる。
中には、制止に成功し検分を行ったそうだが、不思議な顔でそれを通してしまうということだった。
ますますラビィには分からないことだった。
と、そこへ――
「ラビィ殿! ……"謎の走る箱"がこちらへと向かってくるとのことです!しかも、白旗を掲げて」
「馬車よりも早く駆けてくるのに、白旗を上げてこちらに接近? 騙し打ちであれば、その手前で検分を行ったという騎士に被害が及ぶでしょうし……」
そこにいる護衛をする騎士も、ましてやラビィやメジェネアたちでも分からないことだった。そしてとうとうそれはやってきた。意外なる人を連れて。
「こちら瞬介ー、こちら瞬介ー! ラビィ、メジェネアー!コーディー!いたら応答求むー!」
そうして現れた不思議な乗り物らしきものから大きな声が聞こえるのは、誰あろう瞬介であった。
馬車の中で護衛をしているコーディですらもすぐに行動を起こす。
その鼻に引っかかる、"馬車の中にいる瞬介"と全く同じ匂い。
喜び勇んで馬車から出るコーディをぽかーんと見つめる一同たちだったが、
手前に謎の不思議な乗り物――車から外に出たコーディを抱きしめたのは、瞬介そのものだったのだった。




