1話「異世界、動乱②」
―ピィー!
そんな音ともに現れたのは、巨大なダイヤモンドゴーレムだった。
大きさにも驚きだが、そのような貴重なアイテムを持つ冒険者パーティHalfassのメンバーであるラビィのトランクケースにも注目が集まった。
「こ、これは……」
「うちのリーダー、シュンスケ様が迷宮攻略した際に手に入れたものですわ」
「なんと、そのようなものが……」
何やら馬車の中からガルゥという唸り声がしたが、ドヤっぽい唸り方なのでラビィは放置して説明をしていく。
「ひとまず最前線にこのゴーレムを送り、歯止め係として……また盾として獣国との合流の時間稼ぎに使えますわ」
それを聞いて騎士団長はなるほどと頷いた。
「また、我々はその合間にあの謎の武器の解明をするべく行動いたしますの」
「ま、安心するがよいのじゃ」
そうしてメジェネアが声をかければ、お、おうとなんとも扱いにくい冒険者に騎士たちもタジタジとなる。なんせ相手は元女王だ。王族にして冒険者というのは、聖王を頂きに忠誠を示す騎士たちにとっては扱い辛いだろう。
そんなことを微塵も気にしないメジェネアは、キセルを吹かせると早速お出ましかととある方を見て、即座に動き出した。
「メ、メジェネア殿?」
「なぁに、露払いじゃ」
素足で駆けだすメジェネアは、あることを呟きそして速度を上げて走り出した。
「――セイフ・ラッカーサ(剣の踊り子)」
それは包帯が解け、そして次々と巻きついていきまるでアラビアンの踊り子のような恰好へと変わっていくのだった。
「さて、こちらも」
「はい」
そして馬車へと乗り込み、ラビィたちも別方向へと馬を向けて進みだした。
「ラ、ラビィ殿! どちらへ?」
「……ゴーレムを連れての敵情視察ですわ」
やがて、ダイヤモンドゴーレムを筆頭に暴れまわり帝国軍を蹴散らしていく。
そんな中で帝国軍は秘密兵器らしき大きな筒のものを出してきた。
その攻撃力は半端なく、帝国軍相手に無双していたダイヤモンドゴーレムを砕いていく。
「なるほどですわ……あれほどの武器もあるのですわね」
その様子を見守るラビィ。
ダイヤモンドゴーレムはいわば威力偵察のようにして使っていた。
人が持てるサイズの武器では傷がつかないが、あれほどの大きさの筒から放たれる武器は例えダイヤモンドゴーレムであっても、削れていってしまう代物らしい。
その情報は、すぐに聖王軍へと伝達されていく。
「ラビィ殿、いかがなさいますか?」
連絡係の騎士の問いに、ラビィは答える。
「……ちょっと試してみますわ」
そして、駆けだして帝国軍をよそに謎の大型兵器のほうへと素早く近寄っていくラビィに彼は着いていけずその場に留まる。
「何者だ!」
「敵です……わっ!」
そうして周囲にいる帝国軍を蹴りで薙ぎ払うと、さらに大型武器へと近づいていき
そして――
「――剛靴蹴爛!」
技の名前を呟き、足を回転させながらも近寄るとその勢いのままに大型武器へと向かって蹴りを一点に回りながら放つ。
筒の部分が歪み、さらに衝撃で転倒した武器を前にラビィはなるほどと納得して、その場を後にした。
「リンス、あなたの拳程度では無理ですが……"剛力"を纏えばいけますわ」
「かしこまりました」
そうして了承したリンスという冒険者は、次々と帝国軍を拳で打ち払っては別の大型武器へ向かい技を放つ。
「七實剛拳!」
回転をかけ、七回攻撃を加えたのち掌底を放つリンス。
その衝撃は貫いて向かいで砲撃をしていた帝国軍すら巻き込んで衝撃を与えた。
そしてリンスも同じように連絡役の騎士の下に戻り、報告をした。
「お嬢様、アレの耐久力は大したことはありませんでした」
「でしょう? ……おそらく名剣を持った騎士様であれば近寄れさえすれば、斬れると思いますわ」
そう言うと、連絡係の騎士へと向き言い放つ。
「か、かしこまりました! すぐに報告を!」
騎士は思った。
あれほどの攻撃を放てるのは、聖国においてもそこまで数はいないだろうと。
だが彼女らの戦闘力による分析のおかげで地味に聖王軍にとっても、巻き返しができるようにはなってきたのだ。
ただそれでも数が数なだけに、徐々に聖国は飲み込まれていった。
一方、獣国に近い聖国領では――
「セイフ・ショーラ(炎剣)」
包帯を曲刀に変えて燃える剣と化した炎の包帯剣で、メジェネアは鮮やかに帝国軍を蹴散らしていった。こちらも先ほど大型武器を見ていたが、ラビィから渡された《渡り鳥のイヤリング》と呼ばれる迷宮品によって耐久力は大したことはないと知れたため、燃える包帯剣の餌食となり沈黙させていった。
何よりこちらでは――
「ふっ!」
器用に避けては、自身の直剣で相手を刺していく兎。
それを振り払い兎の獣人・ラピスはメジェネアのほうへ視線を向けて話しかける。
「シュンスケ殿のパーティメンバーとここで出会うとは思わなかっただろう」
「……わらわもじゃ。お主の力量は分かっておる。後ろはまかせるのじゃ」
「こちらこそだろう」
そうして半死半生の元女王と兎の獣人は背中合わせで敵に向かい合うのであった。




