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異世界”半”転移譚  作者: 武ノ宮夏之介
第七章「帝国の躍動」
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プロローグ「異世界、動乱①」

建物を破壊し、瞬介を運び出して馬車に乗せた際に見たのは一面が血の海という光景だった。


倒れている王国兵たちは首を一撃でしとめられていて、そのやり口は暗殺者特有といったものだった。


「馬はどうするのじゃ」


「近くに馬がいれば、この手綱――《達人の手綱》を装備すればすぐに出発ができるのですが……」


そういうわけでコーディを瞬介の護衛に残して、三人で手分けして馬を探すことにした。馬房を見つけ戻った際に馬車の周りに転がっていたのは、コーディが仕留めたらしき暗殺者たちの姿だった。


「コーディ様、さすがですわ。さ、参りましょう。リンス、出しなさい」


「はい」


そうして、手綱を取り付けるとリンスが御者をして早速出発をした。


「それで……どこへ向かうのじゃ」


「それですわ……今も抑えられておりますが、気配を感じます。狙いは――」


目を向けた先には、コーディに守られた瞬介の寝姿だった。

今までは目覚めれば行動せずともぼーっとしていたりしていたのだが、なぜか今もずっと瞬介は眠ったままで目覚める兆候はなかったのだ。


「婿殿を直接狙うのは……あやつらにとって婿殿が相当邪魔なのか……じゃな」


「それくらいしか思い浮かびませんわ。まぁ、とにかく今は――」


そこへ、矢が次々馬車へと飛んできた。

それをメジェネアがキセルで叩き捨てると、ため息を吐いて呟く。


「しつこいのじゃ」


「どうしてもシュンスケ様を、という感じですわね」


「ガルゥゥ」


「分かっておりますわ、コーディ様。さて、メディネア様……」


「なんじゃ?」


「わたくしとして、一つ提案が……」


「ふむ? なんじゃそれは」


そうしてラビィが告げた行先――それは……。







その頃、聖国テラーザの首都・聖都。


帝国の不思議な武器による攻撃によって被害が相当数に上っていた。

それを聞いた聖王はため息をつき、獣国とともに連携を図るべく騎士たちへと連絡を行い防御を聖国、攻撃を獣国という戦術で帝国に対抗しようとしていた。

なお、森国には騎士を派遣していない。

今回の戦には、関わらずの方針を明確にしたからだ。


そこへ急報が入った。


「どうした?」


「それが冒険者パーティHalfass(ハーファス)と名乗るものたちが御目通りをと」


Halfass(ハーファス)……たしか此度の闘技会にて優勝したシュンスケなるものが率いる冒険者パーティだったような」


「左様です」


「そうか……ならば会おう。かの者らであらば何かあるかもしれん」


そうして聖王は、跪くラビィに跪かずのメジェネアに向かい合った。

……メジェネアは生まれながらの2万5千年前の元女王、ならばこの対応は当然と聖王は理解し苦々しい顔をしている騎士を目で制した。


「この度御目通り感謝申し上げますわ。リーダーであるシュンスケはとある事情にて不在でございますが、この度陛下の膂力となれればと馳せ参じました」


「……シュンスケ、とは確か先の闘技会で」


「ええ。優勝しましたが負傷したため、その傷がまだ癒えていないのですが……」


「では其方が今回独断で?」


「ええ、ですが……わたくしたちもなぜか狙われる身なれば、相手の出方またそれに付随する戦力分析などでお役に立てればと思いこうしてまかり越しました」


「狙われる? ……もしやシュンスケとやらか?」


「はい」


それはつまり匿ってもらう代わりに、戦力になるという消極的な申し出という事に他ならなかった。それに激高したのは守護騎士の1人だった。


「無礼な! 守ってもらう代わりに戦力にだと!? 貴様ら風情のためになぜ我が国が!」


「賢しくないはないのう、お主」


「なんだと!?」


……そうして先ほどから聖王の前にも、一歩も引くことなく跪かずのメジェネアがキセルを吹かせるとくっくっくと笑い声をあげた。


「では聞くが、彼奴ら――帝国の者どもの侵略にそなたらは耐えておられるのか?こちらは先の暗殺者たちがそなたらの密使を葬っている現場を目撃、これを助け今頃無事にその遣いは獣国へと向かっておる頃じゃ。それはなぜじゃ?」


「其方らのように身軽な存在がいれば……ということか」


「実に賢しい王じゃ。騎士なるものよ……王が返答を明らかにしたのじゃ」


「ぐっ」


そう、彼らのように身軽にどこでも行ける存在――しかも実力はシュンスケなるものもそうだがこうして控えている聖王側からしても、一部の隙もない。

ラビィという戦力に、その後ろに控えるリンス。

そして先ほどからメジェネアは、包帯をもてあそびながらもキセルを吹かせる。

シュンスケの護衛はコーディにまかせてあるので、この場にはいないが。


「砂国ではそれで救われた。わらわの証言、それで保障にはならんか?」


「……いや、王国によりその情報はこちらにも共有されている」


「であるならば、賢しき聖王よ。ここは我らにまかせるのも一興じゃぞ」


その問いに、聖王は答えた。

滞在を許し、お主らの戦力をあてにさせてもらうと。







「ふん!」


―ガァーン!


聖王軍の繰り出す聖属性の武器を謎の盾で弾き返すと、その勢いによって騎士の1人をぶった切った。

そこへ聖王軍の暗部らしき存在が現れるが、それすらも謎の飛び道具によって撃ち落され無力化されていった。


「だっはっはっは……。脆い、あまりにも脆いぞ!」


帝国軍は、その勢いのまま凄然と進軍をしていった。

進軍を率いる総大将の管轄にある第23軍団長は、気をよくして大きな声で言い放つ。その勢いをそのままにある場所へと向かって……。


そこへ――


―ドゴーン!


とてつもなくでかい煌びやかなゴーレムが現れ、帝国軍を薙ぎ払っては暴れまくりながらも、立ちはだかった。


「な、なんだ……あれは」


その問いに答えず、そのゴーレム――ダイヤモンドゴーレムは吹き主の命じるままに帝国軍を蹂躙していくのだった。

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