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異世界”半”転移譚  作者: 武ノ宮夏之介
第六章「瞬介の体育祭」
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4話「瞬介の体育祭④」

頭の中で、俺は天国と地獄という体育祭の音楽をかけながら、複数人ずつで行動する奴らを順番に倒していく。


気配を感じるところを順番に、時には隠れながら……時には不意打ちで。

俺にとっての視界に映る奴らの動きは、全く問題ないくらい遅いものだった。

なんていうか、俺も強くなって現代日本で生きるのに苦しいくらいになったもんだなと思ってしまうものだった。







犯人側にとっての狙いは1人、瞬介のみだった。

しかし体育館に連行した中にそれらしい者はいなかった。

ゆえに犯人は、狙いの目くらましとして現金20億円を要求させた後はひたすら学校に通学済みの瞬介を探していた。だが――


犯人側のリーダーには、いつまで経っても見つけたという情報が届かなかった。


「……おかしい。なぜ、ガキ1人見つからない」


レシーバーで逐一報告を受け取っているが、誰一人として見つかってないという。


「まさか……、おい! 放送室とやらの場所を教えろ」


何かに気づいたリーダーは、放送室へと向かいそして全校放送で呼びかけた。


『半田 瞬介! 至急、放送室のある校舎屋上にこい! ……姿を見せなければ体育館に仕掛けた爆弾を爆発させる!』


その呼びかけは、全校放送のため外にも大きく響き渡った。

それに動揺したのはマスコミのみならず、心配で集まっていた保護者たち、また警察たちもだった。


テレビでは、生放送中のためまさか未成年者の呼び出しがかけられるとは思っておらずその名前が全国に轟いたのだ。半田 瞬介の名が。


体育館でも同じくその放送は聞こえていた。

そういえばとクラスメイトは、半田がいないということに改めて気づいた様子でざわざわとした喧噪が聞こえ始めていた。だが――


―ドパーン!


体育館の屋上へと放たれた一発の変わった銃声が響くと、シーンと静まり返った。







はぁ、そういう行動に出たか。

俺はため息をもらすとともに、行かなきゃやばいなととあるところへと連絡を取ると放送室のある屋上へと向かうことにした。

奴らの手先を片付けながら。


やがて、屋上に辿り着き先に来ていた男たちへと手を挙げて歩みよる。


「……半田 瞬介、だな」


「そうだよ」


側近らしき奴らとやり取りをしたリーダーは頷き、そしてこちらに銃を突きつけた。


「狙いはなんだよ、俺なんかを狙ってあんたらに何の得があるっていうんだ?」


「それをお前が知る必要はない。 ……お前はここで死ぬ、ただそれだけだ」


どうやら話すつもりもないようだ。

だが――


「そうかい……。じゃあ――」


全身に身体強化をかけて瞬間的に動いて、奴らに近づいた。そして――


「オラ!」


両方の側近が撃つ前に速攻で倒した。


「きさっ……」


そして、俺がリーダーへと襲い掛かろうとするときあるものを見て動作を止めざるを得なかった。それは右手に握られた何かのボタンだった。


「そうだ……それでいい。お前のお友達たちが建物ごとぶっ飛ばされたくなければな!」


前蹴りで俺を蹴飛ばし、そのまま距離を取るとボタンに指をかけたまま下がっていった。


「ちっ……」


何かを探しているのを見るに、どうやら銃を潰されたことで手元に武器がないのが分かっての舌打ちらしかった。とそこで、リーダーは周囲を見渡す。


そして――


「丁度いい。俺たちがほしいのはお前の命だけだ。そこから飛べ!」


起き上がり、手を挙げた俺に言い放ったのはその言葉だった。


まぁそうだろうなと俺は思っていたし、俺が犯人なら武器がなければこんな高いところから落ちるようにと要求するだろう。


「……死ぬ前に聞いていいか?」


「これから死ぬ奴に何を話すっていうんだ?」


「ふっ」


俺の笑いに気が立ってたのか、乱暴な口調で何がおかしいと怒鳴ってきた。


「……帝国の人間は心が狭いなって」


目差し帽から見えた目に動揺が見えた。

やっぱりか。


俺は核心した。


なので、手を挙げていたのをあるものによって伝えた。

何を!とボタンを見せつける犯人のリーダーにため息とともに言い放つ。


「家族への別れの言葉くらい、言わせてくれよ」


そしてスマホの録音機能を起動させると、俺は……これまでの感謝を伝える。


「母さん、それに親父。今まで俺を育ててくれてありがとう」


俺は犯人のリーダーに目をやると、ため息を吐いた。


「どうやら俺の命はここまでのようだ……本当にごめん」


そのまま俺は今まであったこと、思い出などあらゆることをスマホに吹き込むと電源を切って……そして犯人のリーダーに伝えた。


「遺言だ。これくらい、いいだろ?」


「ふん、貴様が死ねばそれ以外はどうでもいい」


投げろという首を振る動作をしたので、俺はそっとしゃがむとスマホを滑らせた。

それを足で受け取ったリーダーは首でクイっと校舎外へと進むように促してきた。


「はぁ~……まさか、こんな人生の終わりがくるとは」


ボタンを突きつけられゆっくりと俺は校舎外となる柵へと向かう。

柵を登り、そして俺は――




「じゃあなーーーー!!!」


と、仰向けになって身を投げ出した。ゆっくりと、しかし何気に早く俺は大地に向かって落ちていった。

軽い突風が吹いた。


そこへ――


「瞬介くーーーーーん!!!!」


そんな叫びとともに、隠れていた悠人が犯人のリーダーのボタンを蹴って落として取り押さえた様子を感じ取った俺は体の力を抜き、そのまま大地に向かって落ちた。







次にとる行動を予測した報道局各社は、瞬介が飛び降りた瞬間――

一斉にその生中継のその様子を中断して、しばらくお待ちくださいの映像に切り替えたのだった。


警察官の誰もが1人の高校生の痛ましい最期に目を向けなかったのは言うまでもない。

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