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第6話

遅くなって申し訳ない


 【決闘】の日から一月。

 心を入れ替えた、生まれ変わったといっても過言でもないセシルはあれから交友関係が広がり、高校生らしい青春を謳歌する……ということはなかった。やはり周りは自分たちを馬鹿にしていたのではと思うものがそれなりにおり、また彼と【決闘】したゾルタンが数日後に退学となったことも大きいのだろう。恐らく一週間ほど前のテストで本気を出して上位10人入りしたことも距離を取られる原因だ。尤も、彼が溝を埋めて歩み寄るつもりがないのが一番の原因だと思われるが。

 しかしあれから彼に向かって陰口をたたくような生徒はかなり減ったため前よりは充実しているのは確かだろう。



 本日は来月に行われる行事、【魔法祭】についての話し合いだ。

 この都市上半期の目玉行事といっても過言ではなく、多くの人が外から集まってくる。【魔法祭】とはこの都市にある四つの高校同士で点数を三日間に渡って競い合う大会のようなものだ。競技にはサッカーや棒倒し、射撃や障害物競争など様々な種目がある。

 そしてこの行事の目玉競技は【魔法大会】だ。

 【魔法大会】とはその名の通り魔法の大会で参加自由、【模擬】の魔法のもとで行われる。

 この大会での戦いは【決闘】として扱われ、運よく自分の高校の【数字持ちナンバーズ】と当たれば下剋上が可能となっている。ちなみに【数字もちナンバーズ】は理由がない限り全員強制参加だ。

 といっても負けてしまう【数字もちナンバーズ】収得できる点数も優勝すれば全競技中最大なので参加しない生徒からみてもかなり重要となっている。



 クラス内の話し合い(セシルほぼ不参加)の結果、セシルは射撃と【魔法大会】、シャロンは100メートル走などの陸上競技と【魔法大会】(強制参加)、レイラはサッカーに決まった。




 そして練習のために何時ものように放課後の修練場。

 この場にはセシルとシャロンの二人だけでレイラはサッカーの練習のために別行動だ。


「さてどうする? 今更お前はかけっこの練習なんて必要ないだろ」


 【強化】を使えるシャロンは身体能力が他と比べて圧倒的に違う。

 はっきり言ってチートだ。

 

「そういう君も射撃なんて朝飯前じゃないか」


 セシルは文字通り針の穴を通すくらい精密に魔法を使える。

 よっぽどなことがない限り負けることはないといえる。


「なら久しぶりに一戦しないか? 最後にやったのは春休みだっけ?」

「いいね。勘を取り戻す意味でもよさそうだ、君のね」

「言ってくれるな。ルールは……手を地面に着けさせるってのでどうだ?」

「わかった、それでいいよ」


 そうしてシャロンが同意すると【規則】が自動発動してカウントダウンが始まる。

 周りにいた生徒が【数字持ちナンバーズ】のⅢが出ることもあって興味を持って観戦を始め、カウントダウンが完了した。


「【サンダーボルト】」


 挨拶がわりといった風属性上級魔法の雷がセシルに向かう。


「【ブリザード】」


 セシルもお返しと水属性上級魔法の吹雪を放つ。

 これらはお互いにぶつかること無く相手へと向かった。


「【フレイムウォール】」

「【スチールウォール】」


 シャロンは焔の壁で雪を溶かして勢いを無くし、セシルは鉄の壁で電気を逃がすことで防いだ。


「さーすが」

「君もね」


 お互いに称賛すると己がもっている武器を抜いて突っ込む。

 シャロンは剣を抜き、セシルは短剣を抜いて魔法を唱える。


「【ウェポン・マイナス】」


 するとシャロンの剣の長さが少し短くなる。

 それは間合いを狂わせてシャロンを不利にする。

 

「【エンチャント・ウインド】」


 シャロンが剣に風を纏わせそれを振るう。

 剣から斬撃が飛び出してセシルの足元へ飛んでいく。


「【ライズ・グランド】」

 

 セシルの魔法によって地面が斬撃の高さだけ盛り上がる。

 相手の魔法をそれに当てて回避し、その上を走り抜けるが相手にも新たに魔法を使う機会を与えた。


「【ウェポン・プラス】」


 シャロンの武器が元の長さに戻った。

 【ウェポン・マイナス】は時間が経てば解除されるが隙をさらす暇はこの勝負にはない。

 二人の武器がぶつかり合う。

 元々の運動能力はセシルのほうが高いが、持っている武器に対しての熟練度はシャロンのほうが高く、今は剣の間合いで戦わされているセシルのほうが若干不利だ。打ち合うたびに押されていく。


「【バブルバースト】」


 起死回生のための魔法をセシルが発動させる。

 大量の泡がシャロンの目の前ではじけて目をくらませた。


「くっ、【ウインド・スラッシュ】」


 シャロンはでたらめに正面に魔法を放つ。

 だが狙いは甘く簡単に避けられてしまった。

 二人は再び、しかし今度は短剣の間合いで打ち合うことになる。

 今度はシャロンの武器の長さが仇となり押されていく。


「仕方ない。【ウェポン・マイナス】」 


 シャロンは苦肉の策といった感じで己の武器を短くする。変に相手の武器を変化させたら一撃を貰うとも考えたからでもあった。しかしそれでもやはりじわじわとだが押されていく。


「このままいけるか」

「いいや、まだだよ」


 今まで防戦だったシャロンが打って出る。

 相手の攻撃を無理やり弾いて横に剣を薙いだ。

 しかし完全な体制の一撃ではなくセシルが簡単に防ごうとしたが、


「ッ!」


 武器の長さが元に戻ってセシルの腕を切り裂いた。

 もちろん【模擬】の保護下だったが武器を持っていたほうの腕は動かなくなる。

 シャロンの特技は魔法を通常よりも弱く、低魔力で放つことだ。

 これにより剣がもとに戻るまでの時間を調節して隙を狙った。

 シャロンはしてやったりといった顔をするがセシルは苦痛に顔を歪ませながらも不敵に笑っていた。


「これで僕の」

「いいや俺の勝ちだ。【ライズ・グランド】」


 すぐさま唱えられた魔法によってシャロンの武器を持っていない方の腕、即ち右手に隆起した地面が当たった。


「あ」

「俺の勝ちだな」


 【模擬】が空中に勝者の名前を記した。


 周りの生徒は手を切りつける容赦の無さや魔法の正確性に驚いていたが、彼らにとってこれは軽い運動だということまでは知ることがなかった。






「あー悔しいよ。あんな形で負けるなんて」

「俺の腕を斬って油断したな。まぁ普通はあれで負けだからなぁ。あれは完全に予想外だ」


 二人は勝負後、お互いの動きの評価をしていた。

 あの後も何度か勝負しており、セシルの二勝一敗に終わった。


「それで……久しぶりに制限なしで戦った気持ちは?」

「実にすがすがしかった」


 セシルはあの【決闘】の時まで体に重りをつけていた。

 本人は運動能力の調節とトレーニングを兼ねてやっていたようだが。

 ……嫌われるに決まっている。


「どうする?」

「そうだな……レイラの方にいってみるか」

「僕も気になるしいいよ」


 二人は決めるとすぐさま運動場の方へ向かった。






「……」

「……」


 二人のたどり着いた場所は死屍累々だった。

 地面も何か焦げている。

 唯一レイラだけが立っていた。


「……レイラ」

「シャ、シャロン。これは違うわよ! ただ魔力を込めすぎただけなんだから!」

「ああうん。もうわかった」


 サッカーとは相手のゴールにボールを蹴り入れるスポーツである。

 人に向かって魔法を打ってはいけないがそれ以外は特に言及されてボールに纏わせるのは可能となっている。

 ボールを破壊してしまうと相手に点が入るがそれでも纏わせればかなりのシュートになる。

 何が言いたいかというとレイラはバカみたいな炎をボールに纏わせてシュートを打ったのだ。

 地面の焦げ跡から察するに半径二メートルは会ったのではないだろうか。

 ゴールキーパーに同情する。

 そして彼女以外が倒れているということは余波で巻き込んだのだろう、全員倒している。

 そういうスポーツじゃないから!


「流石【砲台】。バ火力だな」

「~~~~!!」


 太陽が飛んで行ったが彼に意味はなかった。 

読んでくださってありがとうございます。


スチールウォール

地属性上級魔法

鉄の壁を地面から作り出す。


ウェポン・マイナス、プラス

地属性中級魔法

武器の長さを変える。武器以外も可能、一定時間で戻る。


エンチャント・ウインド

武器に風をまとわせる。振ると速度に応じた斬撃が飛ぶ。


ライズ・グランド

地属性初級魔法

地面を盛り上げる。


バブルバースト

水属性初級魔法

泡を出現させはじけさせる。目に入ると痛い。



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