第6話 最強伝説、終了のお知らせ。
翌朝。
学園中に衝撃の映像が公開された。
『アウラ・ソーロン最強伝説を検証してみた』
投稿者は、学園の映像研究部。
内容は至って真面目なものだった。
まず、最初の殻兵撃破事件。
防衛砲台の映像を解析すると、アウラは戦闘に一切関与していなかった。
次に、神崎レオとの模擬戦。
施設の整備記録から、照明の固定部品がすでに破損していたことが判明した。
そして避難所での事件。
アウラが進路を変えたのは、壁に通行禁止の表示があったから。
さらに地下鉄での戦闘。
戦果を上げたのは、レオとリツ。
アウラは一度も攻撃していない。
つまり。
『結論:アウラ・ソーロンの戦闘能力を証明する客観的な記録は存在しない』
「ほらあああああ!!」
リツは教室で叫んだ。
「だから言ったじゃない!」
「……うむ」
レオも腕を組んでいた。
「認めざるを得ないな」
「やっとわかった?」
「アウラの戦闘能力は、依然として未知数だ」
「なんでそうなるのよ!!」
しかし、今回ばかりは周囲の反応も違った。
「なんだ、ただの噂だったのか」
「結局、一発も撃ってないんだろ?」
「俺でも勝てるんじゃね?」
「最強って言われて調子乗ってただけだろ」
今までアウラを恐れていた生徒たちは、一斉に態度を変えた。
廊下ですれ違っても道を譲らない。
以前のように遠巻きに見る者もいない。
むしろ、面白半分に声をかける者まで現れた。
「おい、最強さん!」
「ん?」
「今日も銃を忘れたのか?」
「うん」
「ははは! 本当に何もできないんじゃねえの?」
「そうかもしれないな」
アウラは怒らなかった。
ただ普通に、自分の席へ戻った。
◇
「……あんた、悔しくないの?」
昼休み。
リツが尋ねた。
「何が?」
「みんなに馬鹿にされてるじゃない」
「まあ、そうだな」
「そうだな、じゃなくて!」
リツは机を叩いた。
「本当に弱いなら弱いって言えばいいし、強いなら一度くらい証明すればいいじゃない!」
アウラは少し考えた。
「……証明したら、何か変わるのか?」
「え?」
「俺が強かったら、みんな安心する。弱かったら、がっかりする」
「……まあ、そうかもね」
「でも、それって俺の問題じゃないだろ」
リツは言葉に詰まった。
「俺が強いかどうかで、みんなの価値が変わるわけじゃないし」
「……」
「それに、昨日の地下鉄だって、神崎とリツがいなかったら危なかった。あの二人が強かった。それでいいんじゃない?」
「二人って、あんた誰を数えてるのよ」
「……二人じゃなかったっけ」
「私とレオで二人だけど!」
「ああ、そうか」
「もう!」
リツは思わず笑ってしまった。
変な奴だ。
本当に変な奴だ。
強いのか弱いのか、さっぱりわからない。
けれど。
「……ねえ、アウラ」
「何?」
「私、もうあんたが最強かどうかなんて、どうでもよくなってきた」
「そうか」
「うん」
リツは少しだけ笑った。
「少なくとも、悪い奴じゃないし」
アウラも小さく笑った。
「……ありがと」
◇
その日の放課後。
学園の中央司令室に、軍から緊急連絡が入った。
『衛星軌道上に未確認艦隊を確認』
『数、二百隻以上』
『全艦、東京第七防衛都市へ進行中』
青砥先生の顔が青ざめた。
「二百……?」
通常、ヴェイルが都市を襲撃する際に投入する艦船は、多くても数隻。
二百隻など、七年前の大侵攻以来である。
「どうして、突然……」
通信担当官が叫んだ。
『敵艦隊から通信です!』
「内容は!?」
『……それが……』
担当官は震える手で、画面を表示した。
そこには、人類の言語に変換された一文が映し出されていた。
『アウラ・ソーロンを引き渡せ』
青砥先生は、言葉を失った。
そして、通信は続いた。
『拒否するならば、都市を消去する』




