001 ラーメン狂いのダンジョンボス
大学生活がおちついた五月のゴールデンウィーク明け。
中坊の頃から言語交換アプリでよくダベっていた、見た目だけ可愛いコスプレ外国人女子との待ち合わせ場所に向かっていた。
その待ち合わせのビル手前には、異様なまでの人だかりが出来ていた。
何事かと思い周囲の言葉に耳を澄ませてみると、どうやら「ダンジョン自衛隊」が凶悪犯を取り囲み、対処に当たっているらしい。
ネットの知り合いとリアルで会うってだけで若干の気恥ずかしさと面倒臭さがあるのに――ビジュが極まった外国人美少女相手だから多少のワクワク感もあるが――余計に事態をややこしくしないで欲しい。
「ヤメロ! 鉛玉をこれ以上食わすナ! 今日はラーメンなんだゾ!? 麺硬めニンニクヤサイアブラマシマシなんだゾ!? 分かってんのかニンゲン共!」
…………うん、なんだろう。
めっちゃ聞き覚えのある声がする。
……え? いやまさか、は?
――ちょっとまて!?
自衛隊に囲まれてるのってアイツなのかよ!?
「ア! キョーシロー! こっちコッチー! というかウッソ、ヤッダー! リアルだと超イケメンヂャーン!」
「話しかけんなクソ馬鹿野郎おおおおおおおおおおおおっ!」
俺を見つけるなり両手をぶんぶこと嬉しそうに振りやがるのは、周囲360°全方位から銃口を向けられている小さな女の子。
チャームポイントは、頭に二本生えている紫の幾何学模様が刻まれた漆黒の角。
カラコン入りであろう真っ赤なお目々はとってもブリリアント、……じゃねえんだわ!
リアルじゃ初対面だってのにどんな状況だよこれ!
「通して! 道を開けて下さい!」
そう叫びながら、アイツを囲ってた数人の自衛隊員が、無理矢理人混みかきわけ俺に急接近してくる。
なんとなく逃げ出したくなり一歩後退すると、いつの間にか背後に迫っていた一人の中年オヤジ風な男性自衛隊員に、両肩をがっつり掴まれた。
「大丈夫、怖くないよ? 少しお話しするだけだから」
怖いわボケェ!と思わずツッコミかけたその一瞬で、俺まで自衛隊員らにすっかり囲まれてしまった。
「包狂四郎君だよね? あそこのダンジョンボスが君と知り合いだとのたまってたが、それは事実かい?」
正直、人違いです!とパチこいて今すぐこの場から立ち去りたい気分だけど、あの馬鹿が俺の名前を呼んだ以上それは通らないだろう。
となると、ここは素直に答えるしか無いか。
……いや、おいちょっと待て?
そういえばこのオッサン、今なんつった?
「…………は? ダンジョンボス?」
俺にもアイツにも関係ないハズの単語に、首を捻るしかなかった。
「……まさか、知らなかったのかい?」
「知るわけないでしょう!? 知ってたらリアルで会おうとなんてしませんよ!」
というか、ダンジョンボスがなんで俺と言語交換アプリで会話してたんだよ!
しかも実際に会う関係にまでなるとか、あまりにも意味不明すぎるわ!
「それもそうか。……ふむ、君、事態の沈静化に協力してくれるかな? 賢い君なら分かるだろうけど、あのダンジョンボスと君には色々聞かなきゃいけない事があるんだ」
俺の肩を掴んで離さないオッサン自衛隊員は、見るからに軍専用のバスを指さした。
「ボスと一緒にあのバスに乗ってくれないかな? そしたら、別の場所でおじさんたちとお話だよ?」
うーわー……。
面倒くせえこと限りなしだが、ここは言うこと聞く他ねえか。
「……分かりました」
「うん、良い子だ」
肩を離してくれた代わりに、軽く背中を押された。
その勢いのまま、自衛隊員が作った道を歩き、アイツに近づく。
「キョーシロー! ラーメン! はやくハヤク!」
「少しは空気読めねえのお前!? ったく、とりあえずあのバス乗るぞ! ラーメンは後回しだ!」
「エー!? いやだイヤダいやだイヤダ! 脂肪肝にナリタイ痛風にナリタイ糖尿病にナリターイー!」
「それ言えるヤツは人間じゃねえ! とにかく黙ってついてこい!」
「不満マシマシ!」とかほざく馬鹿の手を引いて、なんとかかんとかバスまで到着。
女の子と手をつなぐのは初めてだったけど、モンスターだからか全然緊張もしなかったわ! …………いやマジで!
「バス、……240円払うんだよナ?」
「払わんでいい!」
促されて車内に乗り込むと、さっきの男性自衛官がやってきた。
「はい目隠しするよ? 秘密基地にいくからねー?」
「ヒミツキチ!? ワクワクするナ!?」
「やかましいわ!」




