5.孤立する2人(ジャネット)
離れに移ってから、目に見えて扱いが変わった。
側付きのメイドは2人だけになった上、冷たい目で私を見て、最低限の世話しかしなかった。
そのくせ離れの護衛は多く、私がこっそり本邸に行かないよう、見張られているようだった。
(悔しい)
1人になった自室で、思わず指を噛む。
(こんな筈じゃなかったのに)
当初の計画では、最初の内は叱られても反省した態度をとる事で、お姉様や家族の許しを得て、周りから祝福されて、幸せな婚約、そして結婚をする筈だった。
けど実際は離れに追いやられ、卒業と同時に絶縁されて平民になる事が確定している。
(落ち着こう)
離れに移ってもずっと謹慎を命じられたが、それも今日までで、明日からまた学園に通うようになれば、姉と接触する事が出来るだろう。
それに学園に行けば、ポールにも会えるし、友人達だっている。
そう思いながら、何とか気持ちをやり過ごして、明日を待った。
翌日ポールのエスコートで、登校してきた私に皆が騒然とした。
「ちょっとジャネット、どうしたの?ベドウィル子息は、アネットの婚約者でしょう?いくら妹だからって、姉の婚約者にエスコートしてもらうって…」
姉と共通の友人でもあるキャシーが、代表して聞いてくる。
私とポールは満面の笑顔で、誇らしげに報告した。
「実は僕達、愛し合ってたんだ。だからアネットとの婚約を解消して、ジャネットと再婚約したんだ」
「私達、真実の愛で結ばれてるの。ポールはお姉様より私を選んでくれたの」
「……………………はぁ?何ソレ」
瞬間、キャシーが冷たい目で睨んできた。
それまで様子を伺っていた周囲も、同じく冷たい目を向けてきた。
「キャ、キャシー?どうしたの、そんなに怖い顔して」
「貴方達、自分が何言ってるかわかってるの?姉の婚約者を略奪したり、婚約者の妹に乗り換えたり。よくそんな事、胸を張って言えるわね!?サイテー」
あんまりな言い方に、反論する。
「そんな言い方酷いわ、恋する気持ちは仕方ないでしょう?略奪だとか、人聞きの悪いこと言わないで!」
「そうだ!愛し合ってるんだから、仕方ないだろう。政略の為の義務より、真実の愛こそ優先されるべきだ!」
「ポール…」
「ジャネット…」
加勢してくれたポールに、胸が熱くなる。
見つめると、ポールも私の手を取って、見つめ返してくれた。
その様子に、周りの目が一層冷たくなる。
「あぁそう。だったら好きなだけ真実の愛とやらを、やっていればいいわ。二度と話しかけないで」
そう言って踵を返すキャシーの腕を、慌ててつかんで引き留める。
「待って、私達友達でしょう?おめでとうって言ってくれないの?」
けれどキャシーは、不愉快そうな顔で私の手を振り払った。
「汚い手で触らないで、泥棒女!」
「「な!」」
あまりの言い様に、ポールと2人絶句している間に、キャシーは走り去っていた。
遠巻きに見ていた人達も、周囲とヒソヒソ何かを言うと、無言で立ち去った。
「酷いわ、あんな言い方…」
「ジャネット、可哀想に…。あんな奴、こっちから見限ってやれ。理解してくれる人はきっといるさ」
「えぇ…」
私はそのままポールに慰められながら、一日を過ごした。
けれど翌日以降も、噂が学園中に広がり私とポールは、すっかり孤立した。




