4.予想外の展開(ジャネット)
ポールがお姉様との婚約破棄を宣言してから数日、私は自室で謹慎させられた。
お姉様が倒れたのも謹慎も予想外だったけど、私には自信があった。
実は今度の事は、事前にポールと打ち合わせしていた。
『今度、アネットとの結婚式の相談をする為に、両家で集まるだろう。その時に僕たちの事を告げて、婚約者を交代してもらおう。アネットはごねるだろうし、親からはちょっと怒られるかもしれないけど、元々共同事業の為の婚約なんだ。話自体をなかった事には出来ないだろうし、2人で粘ればきっと通るさ』
打ち合わせの時にそう言って笑っていた、ポールの顔を思い出す。
あれ以来彼から連絡はない。きっと私と同じく軟禁されているのだろう。
でもそろそろ私との再婚約を決める為、伯爵夫妻と一緒に我が家に来るだろう。
そんな事を考えているとメイドから「旦那様がお呼びです」と、声がかかった。
(いよいよだわ!)
私は期待に胸が高鳴るのを感じながら、応接室へと急いだ。
部屋に入ると予想通り、両親と兄の他に、ポールとポールの両親が揃っていた。
ポールは殴られたらしく、顔が腫れていたが、晴れやかな顔をしていた。
兄の隣に座わろうとして、姉の姿がない事に気づいた。
「あら、お姉様は?」
「…アネットなら、まだ臥せっている」
「そうなの?」
仏頂面で父が言った。
その言葉に落胆する。
(お姉様に許しをもらって、祝ってもらいたかったのに…まぁいいか)
肝心なのは婚約する事だ。
それに一緒に暮らしているのだから、これからいくらでも機会があるだろう。
そう思って、今は我慢する事にした。
席に着くと、早速父が切り出した。
「アネットの要望は2つです。まず1つ目は『もう彼を信用できないし、家に迷惑をかけられない』との事なので、ベドウィル子息の要望通り、アネットとの婚約を破棄し、ジャネットと再婚約を結ぶという事で」
父の言葉に、ポールと顔を見合わせて喜び合う。
「やったわ!これで私達堂々と一緒にいられるわね」
「あぁ!これからはずっと一緒だ!愛してるよ、ジャネット」
「えぇ私も」
手を取り合って喜んでいると、父と小父様が無言で私達を引き離した。
喜びに水を差されて不満げな顔をすると、父を含めた全員から睨まれた。
(さすがにちょっと早かったかしら…でもどうせ再婚約は確定なのに、皆ケチね)
その後は何もなかったように、婚約破棄と再婚約の手続きが進められて、晴れて私とポールの婚約は成立した。
「ではこれで、ポールとジャネットの婚約は成立しました」
父が無表情で言うが、そんな事は気にならなかった。
喜びを隠しきれずにいたが、父の次の発言に驚く。
「そしてアネットの2つ目の要望は『二度と2人の顔を見たくない、存在自体関わりたくない』とのことですので、ベドウィル子息は二度とアネットに会わず、連絡も取ろうとしないでくれたまえ。こちらもジャネットを外に出す」
「「え」」
ポールと2人驚く。
「ちょっと待って下さい、僕はアネットに謝罪をしないと。申し訳ない事をしたと思うから…」
「本当に申し訳ないと思っているなら、アネットの要望を聞き給え。君に拒否権はない」
「待ってお父様。悪いと思ってるから、謝ろうと思ってるのよ。だから追い出そうとしないで、お姉様に会わせて」
「フン、本当に悪いと思ってるなら、アネットの気持ちを無視して、無理やり会おうなんて思わないはずだ。お前はただ単に、アネットに見せつけて優越感に浸りたいだけだろ」
「な!私はお姉様に許してもらいたいだけよ、酷いわお兄様」
説得しようとする私の言葉を、兄が一蹴する。
追い打ちをかけるように、父が続く。
「どちらにしろもう決定だ。お前の荷物はもう離れに運び込んである。学園を卒業するまでは、親の義務を果たしてやるが、卒業と同時に絶縁する。後は2人で結婚でも何でも好きにするがいい」
「そんな…」
その後は無理やり話し合いの場から連れ出されて「二度と本邸に近づくな」と言われ、離れに送られた。




