第4話:静寂を破る、小さな音
放課後の教室は、先ほどまでの騒がしさが嘘のように静まり返っていた。
西日が差し込み、教室の片隅をオレンジ色に染めている。
つむぎは、まだ一人でノートに向かっていた。
修太は教室の出口付近で、帰る準備をしながら、心の中で葛藤していた。
(また怖がって逃げるのか? ずっとこのまま、ただのクラスメイトで終わるのか?)
その時、カツン、と小さな音がした。
つむぎの机から、ペンケースが床に落ち、中から消しゴムがコロコロと音を立てて転がっていく。
それは運命のように、修太の足元で止まった。
教室には、二人しかいない。
……今だ。
今度こそ、自分から動くんだ。
修太は自分の鼓動が耳元でうるさいほど鳴るのを感じながら、ゆっくりとしゃがみこんだ。
手には、つむぎの消しゴム。
つむぎがこちらに気づき、きょとんとした顔で振り返る。
修太は震える手でそれを差し出そうとしたが、ふと、あの日の「クラスメイトが拾って、つむぎが笑顔を見せたシーン」が脳裏をよぎった。
(いいや、あいつらの真似じゃなくていい。俺は俺のやり方で……)
修太は勇気を振り絞り、つむぎの元まで歩み寄る。
いつもなら怖くて目を逸らしてしまうけれど、今は彼女の瞳をまっすぐ見つめた。
「……つむぎちゃん、落としたよ」
声は少し震えていたけれど、その眼差しには、隠しきれない熱が宿っていた。
つむぎは一瞬驚いたように目を見開いたあと、ふわりと柔らかな表情を浮かべた。
それは、他の誰にも見せていない、少しだけ隙のある笑顔だった。
修太の心の中で、何かがパチンと弾けた音がした。
もう、逃げない。この瞬間のために、自分はここまで変わろうとしてきたんだ。
ノシ




