第5話:俺だって、君を守れる
放課後の空気が、いつにも増して温かい。
さっきまで教室で交わした言葉が、修太の胸の中でずっと静かに燃えている。
つむぎと一緒に帰るなんて、昔の自分なら夢にも思わなかったことだ。
二人は並んで教室を出ようとする。先を歩くつむぎが、重い木製のドアに手をかけようとしたその時。
修太は反射的に、でも確かな意志を持って彼女の前に出た。
「……待って」
そう言って、つむぎの手よりも先にドアノブを掴む。
ドアは、想像よりもずっと軽かった。
心の中にあった「恐怖」という名の重りが、いつの間にか消えていたからだ。
修太はドアを大きく開け放ち、つむぎに向かってスッと片手を添えてみせた。
それは、かつてつむぎが自分にしてくれていたこと。でも今の修太にとっては、つむぎを対等なパートナーとして認め、支えるための最初の一歩だった。
「……どうぞ」
さらりと、でも精一杯の強さを込めてそう言うと、つむぎは一瞬驚いたように目を見開き、それから今までで一番柔らかくて、愛おしそうな笑顔を向けてくれた。
「……ありがとう、修太」
その言葉は、修太の心に深く染み込んだ。
「女の子らしい」自分も、「繊細」な自分も、今は全部「強さ」に変わっている気がした。
二人は並んで、夕暮れに染まる廊下を歩き出す。
修太はもう、誰かの後ろを歩く必要なんてない。
これからは、隣で君を守る――。
修太はそう心の中でつぶやきながら、つむぎの隣で少しだけ背筋を伸ばして歩いた。
二人の物語は、ここからまた新しく始まっていく。
完
ノシ




