第3話:空回りのムードメーカー
修太は決心した。つむぎの隣に立つために、まずは「誰からも話しかけられる存在」になろう、と。
彼は自分の中の「仮面」の角度を少しだけ変えてみた。今までよりも少しだけ大きな声で挨拶をし、ちょっと抜けた言動でみんなを笑わせる。
「修太くんって、なんか面白いよね!」
クラスメイトからのそんな言葉が増えていく。作戦は成功していた。
修太はクラスのムードメーカーとして、毎日を必死に駆け抜けていた。誰かが落ち込んでいれば、不器用ながらに励まし、笑いをとる。その姿は、かつての臆病だった修太からは想像もつかないほど輝いていた。
でも、本当に見てもらいたい「彼女」の場所だけは、遠かった。
ある放課後。修太はふと教室の端に目をやった。
そこには、一人で黙々と宿題をこなすつむぎの姿があった。
(今だ、今なら話しかけられるはず!)
修太は意気揚々と彼女の席へ向かおうと足を一歩踏み出す。
しかし、その時だった。
「おーい、修太! 次の休み時間、またあの面白い話してくれよ!」
背後からクラスメイトの声が飛んでくる。
(あ……)
もし今、つむぎに話しかけて、周りに何か言われたら? 「何あいつ、つむぎに気に入られようとしてるの?」なんて冷やかされたら、せっかく築いたこの「明るい自分」が壊れてしまうかもしれない。
修太はびくりと肩を震わせ、つむぎの元へ向かっていた足を止めた。
……怖い。結局、俺はまだ、この「仮面」に守られているだけなんだ。
修太は力なくその場に立ち尽くし、ただ遠くから、真剣な横顔でペンを走らせるつむぎを見つめることしかできなかった。
ノシ




