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『武田信玄の嫡男に転生した歴史教師、謀反を成功させて父を家臣にする ~武田義信、最強の父子で天下を取る~』  作者: あちゅ和尚


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第7話 廃嫡するなら、戦で決めよう

「武田の家督、この義信にお譲りくだされ。そして父上には、俺の下で天下を取っていただきたい」


 評定の間に、武田義信の声が響いた。


 上座の信玄は扇を膝に置いたまま、嫡男を見据えている。馬場信房をはじめとする重臣たちは、誰も口を開かなかった。庭を渡る風が障子を揺らし、遠くで馬のいななきが聞こえる。


 やがて信玄が、低い声で尋ねた。


「義信。家督を譲れと申すが、わしが退いた後、家中をどうまとめるつもりじゃ」


「父上に従ってきた者を、そのまま使います。働きに応じて役目を与え、これまでの功を無にするような真似はいたしませぬ」


「そなたを当主と認めぬ者が出たらどうする」


「話を聞きます。それでも従わぬなら、武田家に残るか去るかを選ばせましょう。ただし、兵を率いて敵対する者まで見逃すつもりはありません」


 義信は少しも臆さなかった。


「俺が欲しいのは、父上を追い落とすためだけの家臣ではございませぬ。天下を取るために働く家臣です」


 馬場信房が膝を進めた。


「若殿。お志は分かりました。されど御館様は、長年にわたり甲斐と信濃を治めてこられたお方にございます。その御館様を退け、若殿を当主に戴くとなれば、家中の者が納得するだけの理由が必要でしょう」


「もっともな意見だ、民部殿。では、逆に尋ねたい」


 義信は信房へ顔を向けた。


「今の武田家が、このまま十年戦い続けたとして、どこまで領地を広げられると思われる」


「それは敵の動きにもよりましょう。上杉、北条、今川、織田。いずれも侮れぬ相手にございます」


「そのとおり。だからこそ、俺は戦う相手を変えたいのだ」


 義信は持参した地図を広げた。


「父上は越後の上杉と長年争ってこられた。北信濃を守るためには必要な戦だったでしょう。だが、いつまでも上杉を相手に大軍を動かしていては、武田の力をほかへ向けられませぬ」


 信玄が口を挟んだ。


「輝虎を放置すれば、信濃を奪い返しに来るぞ」


「放置するとは申しておりませぬ。北信濃には守るための兵を置き、父上には上杉を抑えていただく。その間に俺がほかの道を開くのです」


「ほかの道とは」


「まず今川との盟約を立て直し、北条との結びつきを保つ。そのうえで美濃を狙う織田の動きを見極め、西へ進む機会を探ります」


 重臣たちが地図に目を落とした。


 織田信長は美濃の斎藤家を攻めているが、まだ稲葉山城を落としてはいない。武田家が西へ向かうとしても、険しい山々と他国の領地が横たわっている。


 義信も、その難しさは承知していた。


「今すぐ京へ攻め上るとは申しませぬ。だが、天下を望むなら、どこへ進むかを決めてから戦わねばならんでしょう。敵が現れるたびに大軍を出していては、いつまで経っても甲斐の外で争うばかりです」


「義信」


 信玄の声が重くなった。


「そなたは、わしが何も考えず戦を重ねてきたと申すのか」


「滅相もございません。父上が信濃を得られたからこそ、俺はその先を考えられるのです」


 義信は父の眼を受け止めた。


「ですが、父上が築いたものを守るだけなら、俺が家督を継ぐ意味もありません。父上を超えてこそ、嫡男として生まれた甲斐があるというものです」


 信玄はしばらく黙っていた。


 息子の言葉には、父の功績を否定する響きがなかった。それでいて、現在の方針を変えるという意思は明らかだった。


「では、その道をそなたに任せて、わしは上杉の相手をしておればよいと申すか」


「はい。父上ほど上杉輝虎を知る武将はおりますまい」


「わしを北信濃へ追いやって、そなたが好き勝手に振る舞う算段ではあるまいな」


 信玄の皮肉に、義信は声を上げて笑った。


「父上の眼が届かぬところで遊ぶつもりなら、わざわざ家督など求めませぬ。俺は父上にも、天下取りのために存分に働いていただきたいのです」


 幾人かの家臣が思わず口元を緩めた。


 しかし信玄は笑わなかった。


「そなたの望みは分かった。だが、わしにはまだ家督を譲る考えはない」


「では、何をすればお譲りいただけますか」


「義信。家督とは、何かを成し遂げた褒美として与えるものではない」


 信玄は扇を置いた。


「わしが当主として家を治めておる以上、そなたには嫡男として支える務めがある。まずはその務めを果たせ」


 義信は静かに頷いた。


「父上のお考えは承りました。ですが、その務めを果たすために兵を預かろうとしたところ、わずか二日で召し上げられましたな」


 評定の間に、重い沈黙が落ちた。


「そればかりか、傅役の兵部は蟄居を命じられ、俺も屋敷へ閉じ込められた。働きで示せと仰せになりながら、働くための手足を奪われては困ります」


「それはそなたが、家中を乱すような言動を重ねたからじゃ」


「ならば、どのような言動が罪となるのでしょう。父上と意見を違えることですか。それとも家督を継ぎたいと申し上げることですか」


 信玄の眉が動いた。


「わしに理屈を申すか」


「理屈を聞いていただくために、ここへ参りました」


 義信は一歩も退かなかった。


     ◇


「若殿。少々よろしいでしょうか」


 発言したのは曽根周防守だった。


 義信が顔を向けると、周防守は信玄へ一礼した。


「恐れながら、家督継承については御館様の御意向が第一にございます。しかし、若殿が何を望んでおられるか明らかになった以上、家中としても今後の扱いを定める必要があるかと存じます」


「周防守。そなたまで義信に味方するか」


「いいえ。御館様へお仕えする気持ちは変わりませぬ。ただ、若殿を謀反人と定めるのであれば、それに相応しい証が必要ではございませぬか」


 信玄の眼が細くなった。


「証がなければ、嫡男を戒めることもできぬと申すか」


「戒めることと、謀反の罪で処断することは別にございます」


 周防守の声は慎重だったが、言葉を濁してはいなかった。


「飯富兵部少輔殿も、すでに出仕を止められております。家中では様々な噂が広がっており、このままでは御館様に従う者と若殿を慕う者が、互いを疑い始めましょう」


 馬場信房が頷いた。


「周防守の申すことにも一理ございます。若殿が家督を求めたことと、兵を挙げたことは違いましょう」


「無論、わしとて承知しておる」


 信玄は二人を見渡した。


「だからこそ、義信をここへ呼んだのじゃ。あやつが家督を求める考えを改めるなら、事を大きくする必要はない」


 義信が口を開いた。


「父上。俺が家督を諦めれば、兵部の蟄居も解いていただけますか」


「それは兵部自身の振る舞いを調べてから決める」


「では、俺だけが考えを改めても、兵部は助からぬかもしれんわけですな」


「義信。家臣の処分を、そなたとの取引に使うつもりはない」


「承知しております。俺も兵部を盾にして家督を求めるつもりはありません」


 義信は膝を進めた。


「ただ、俺に従ったというだけで、長年武田に尽くした男を失うことは避けたいのです」


 信玄は息子を見つめた。


 父への反抗を口にしながら、義信は一貫して家臣の命を守ろうとしている。


 その態度は、単なる若気の至りとは違っていた。


「義信。最後に聞く。わしに従い、家督の要求を取り下げる気はないか」


「ございませぬ」


 義信は即座に答えた。


 信玄は深く息を吐き、居並ぶ重臣たちへ向き直った。


「ならば、もはや放置できぬ。義信は当分の間、嫡男としての役目を解く。所領と兵の指揮にも関わらせぬ。家督継承については、改めて考えることとする」


 ざわめきが広がった。


 嫡男の役目を解かれるということは、事実上の廃嫡に近い。


 今まで沈黙していた家臣たちも、互いの顔を見合わせた。


 義信は父を見つめたまま、ゆっくりと口を開いた。


「父上。それは俺を廃嫡なさるということですか」


「そう受け取っても構わぬ。ただし、今すぐ別の者を嫡男に立てると決めたわけではない」


「なるほど」


 義信は頷いた。


 そして、笑った。


「父上。とうとうここまで来ましたな」


「何がおかしい」


「父上が俺を廃嫡なさるというなら、俺も遠慮しておれませぬ。黙って従えば、俺を慕ってくれた者まで立場を失いますからな」


 義信は座を正し、居並ぶ重臣たちを見渡した。


「皆に聞いてもらいたい。俺は父上の命を奪うつもりはない。武田の家を壊すつもりもない。だが、嫡男としての役目を解かれたからといって、天下を望むことまで諦める気はない」


 信房が険しい顔になった。


「若殿。それでは、御館様へ弓を引くと宣言されるのと同じにございますぞ」


「必要となれば、そうなるでしょう」


 義信は静かに答えた。


「ただし、俺から父上の寝首を掻くような真似はいたしませぬ。刀を交えることになったとしても、最後は俺自身が決着をつけます」


 その言葉に、勝頼が顔を上げた。


「兄上!」


 義信は弟へ視線を向けた。


「四郎。お前は父上に従え。高遠の兵を、俺のために動かす必要はないぞ」


「兄上、それでは武田が二つに割れます!」


「分かっておる。だから、できるだけ短く終わらせる」


「戦になれば、そのように都合よく収まるとは限りませぬ!」


「そのとおりだ。四郎、お前の言うことが正しい」


 義信は弟の言葉を正面から受け止めた。


「だが、俺はもう退けん。父上も俺を退けると決められた。ならば、どちらが武田を率いるか、決着をつけねばならんだろう」


 勝頼は唇を結んだ。


 兄の決意が固いことは、昨夜の話で理解していた。


 しかし、こうして父と兄が互いに退かぬ姿を目にすると、胸の内に重いものが広がってくる。


 信玄が扇を持ち直した。


「義信。そなたは、わしに戦を挑むと申したな」


「はい」


「その言葉、取り消すなら今のうちじゃ」


「取り消しませぬ」


 義信は顔を上げた。


「父上。武田の家督、戦で決めましょう。もちろん、できるだけ家臣の血を流さずに済む方法を考えます。そのうえで、俺が勝ったなら家督をお譲りいただきたい」


 信玄は扇を強く閉じた。


「愚か者め。戦を始めておいて、血を流さぬなどと申すか」


「血を流さずに済むなら、その方がよいというだけです。戦う覚悟がないわけではありません」


「そなたには兵もおるまい。どうやってわしに勝つ」


 義信は口元に笑みを浮かべた。


「それを今ここで申し上げては、父上に手の内を教えるようなものではございませぬか」


 信玄は息子を睨みつけた。


 だが、義信は目を逸らさなかった。


 評定の間にいる家臣たちは、二人のやり取りを息を詰めて見守っている。


 ついに父子の争いが、言葉の応酬では済まぬところまで進んだのである。


     ◇


「義信を屋敷へ戻せ。以後、わしの許しなく人を出入りさせるな」


 信玄の命令が下ると、控えていた武士たちが動いた。


 義信は抵抗せず立ち上がった。


「父上。俺を閉じ込めても、考えは変わりませぬぞ」


「承知しておる。だからこそ、これ以上家中を乱す前に手を打つ」


 信玄は馬場信房へ向き直った。


「民部。義信の身柄はそなたに任せる。粗略に扱うな。ただし、外へ出すことは許さぬ」


「承知いたしました」


「それから、兵部を召し捕れ。密かに家臣へ働きかけた件について、直接問いただす」


 義信の足が止まった。


「父上。兵部を捕らえるのですか」


「当然じゃ。出仕を止められた身で周防守を訪ね、そなたのために動いておる。見過ごすわけにはいかぬ」


「兵部を謀反人と決めつけるおつもりなら、俺が黙っておりませぬぞ」


「まだ罪を定めたわけではない。だが、取り調べは必要じゃ」


 信玄の言葉はもっともだった。


 義信も、それを理解している。


 しかし史実を知る彼にとって、虎昌が捕らえられるという話は、単なる取り調べでは済まされなかった。


 飯富虎昌は、義信事件で命を落とすことになる武将だ。


 その運命を変えるために動いてきたのに、ここで何もしなければ、同じ結末を迎えるかもしれない。


「父上。兵部を捕らえるなら、少なくとも俺の立ち会いをお許しくだされ」


「ならぬ。そなたはすでに身柄を預けると決めた」


「では、兵部の命だけは保障していただきたい」


「義信。わしに何度同じことを申す」


 信玄の声に怒気が混じった。


「兵部に罪がなければ、何も恐れる必要はない。罪があれば、法に従って裁く。それだけのことじゃ」


 義信は父を見つめた。


 しばらくして、深く頭を下げた。


「承知いたしました」


 そのあまりに素直な返答に、信玄はわずかに眉を動かした。


 義信は何も言わず、信房に伴われて評定の間を後にした。


     ◇


 屋敷へ戻る道中、馬場信房は一度も義信へ話しかけなかった。


 館から出てしばらくしたところで、ようやく口を開く。


「若殿。なぜ、そこまで御館様へ逆らわれるのです」


「俺の方が、武田を天下へ導けると思っておるからだ」


「御館様も同じことを考えておられます」


「分かっておる。だから、どちらが正しいか確かめたいのさ」


 義信は馬を止めた。


 信房も手綱を引く。


「民部殿。俺に従えとは言わん。父上への忠義は、今までどおり尽くしてくれ」


「若殿……」


「ただ、一つだけ覚えておいてほしい。俺は父上を殺すために動くのではない。武田家をもっと強くするために動くのだ」


 信房は厳しい顔のまま答えた。


「そのために御館様へ兵を向ければ、家中の者が死にます」


「そうならぬよう、俺も知恵を絞る」


「若殿。戦は、始める者の思いどおりに終わるとは限りませぬ」


 義信は頷いた。


「よい忠告だ。覚えておこう」


 信房は、その返答に意外そうな顔をした。


 若殿は自分に反論せず、忠告を受け入れたのである。


「だが民部殿、俺にも言わせてくれ。戦を恐れて何もせねば、守るべき者を失うこともある。俺はそういう結末を知っておる」


 義信の声には、普段の豪快さとは違う重みがあった。


 信房はそれ以上、何も言わなかった。


     ◇


 屋敷へ戻った義信は、門をくぐるなり家臣へ命じた。


「妻を呼んでくれ。それから、手元にある書付をすべて持ってこい」


 屋敷の門には、信玄の兵が増やされていた。義信の供回りも武具を預けさせられ、外へ出ることを禁じられている。


 しかし義信は、焦った様子を見せなかった。


 正室が姿を現すと、まず評定で何が起きたかを説明した。


「父上から、嫡男の役目を解くと言い渡された」


 妻の顔色が変わった。


「それは……廃嫡なされたということでございますか」


「まだ正式に次の嫡男を立てたわけではないが、似たようなものだろう」


「義信様、これからどうなさるおつもりですか」


「父上に家督を譲っていただく」


 義信が平然と答えると、妻はしばらく言葉を失った。


「……御館様は、お認めにならないのでしょう」


「ああ。だから、別の方法を考えることになる」


 義信は妻の手を取った。


「お前には危険が及ぶかもしれん。今川へ戻りたいなら、俺から父上へ申し上げよう」


 妻は首を振った。


「私は義信様の妻にございます。父上の国へ戻れば済むというものではありません」


「そうか」


「ただし、一つだけお願いがございます」


「何だ」


「どうか、お命を粗末になさらないでください。御館様を倒されるおつもりなら、なおさらでございます」


 義信は妻の眼を見つめた。


 その言葉には、恐れと覚悟の両方があった。


「約束しよう。俺はまだ死ぬつもりはない。天下を取るには、やることが多すぎるからな」


 義信が笑うと、妻もかすかに微笑んだ。


 そのとき、廊下から足音が響いた。


「若殿、申し上げます!」


 駆け込んできたのは、義信に長く仕える家臣だった。


 息を切らしながら、庭へ膝をつく。


「飯富兵部少輔殿の屋敷へ、御館様の兵が向かったとの知らせにございます!」


 義信の表情が変わった。


「兵部は」


「まだ捕らえられたという知らせはございませぬ。ただ、屋敷の周囲に兵が集まっているとのこと」


「何人だ」


「二十余人と聞いております」


 義信は立ち上がった。


 虎昌はすでに蟄居を命じられ、その屋敷も監視されていた。そこへさらに兵が向かったとなれば、身柄を押さえるためと考えるべきだろう。


 父は迷っていない。


 評定が終わるなり、次の手を打ってきたのである。


「使いを出せるか」


 家臣は首を振った。


「門の見張りが厳しく、若殿のお名前で外へ出ようとすれば止められます」


「なるほど。父上も手抜かりがないな」


 義信はしばらく考えた。


 そして、腰の刀へ手を伸ばしかけて苦笑した。


 刀はすでに預けさせられている。


 だが、刀がなければ戦えぬほど、前世の六十五年間を無駄に過ごしてきたわけではなかった。


「妻よ。悪いが、少々出かけてくる」


「義信様……どちらへ」


「兵部の屋敷だ。あの男を一人で死なせるわけにはいかん」


 妻は止めなかった。


 ただ、義信の袖を握り、静かに頭を下げた。


「どうか、ご無事で」


「任せておけ」


 義信は笑った。


「父上も本気になられた。ならば、俺もそろそろ本気を見せねばな」


 門へ向かうと、見張りの武士たちが慌てて立ち塞がった。


「若殿! 御館様から外出を禁じられております!」


「承知しておる。だが、兵部が捕らえられる前に会わねばならん」


「なりませぬ! お戻りくだされ!」


 若い武士が槍を横に構えた。


 義信は足を止めた。


「お前たちを傷つけたくはない。道を開けてくれぬか」


「御命令です。たとえ若殿でも、お通しするわけには参りませぬ!」


 義信は小さく息を吐いた。


「そうか。ならば仕方あるまい」


 次の瞬間、義信は槍の穂先から身を外し、柄を握る武士の懐へ滑り込んだ。


 相手が槍を引こうとしたところで、その腕を押さえて重心を崩す。若い武士は何が起きたかも分からぬまま、門脇の土の上へ転がった。


 別の武士が駆け寄ったが、義信はその手首を取り、勢いを利用して前へ投げた。


 二人とも刀を抜く間もなかった。


「怪我はないか」


 義信が尋ねると、転がった武士たちは呆然と顔を上げた。


「若殿……」


「お前たちは命令に従った。それでよい。父上には俺が勝手に出たと報告してくれ」


 義信は倒れた武士へ手を差し出した。


「責めを負わせるつもりはない。俺が戻ったら、父上には自分で申し開きをしよう」


 武士たちは互いの顔を見合わせた。


 義信は二人を立ち上がらせると、門外へ歩み出た。


 すでに陽は傾き、甲府の町には夕暮れの影が伸びている。


 飯富虎昌の屋敷までは、そう遠くない。


 だが、その道の向こうでは信玄の兵が動き始めていた。


 義信は大きく息を吸い、肩を回した。


「父上。俺から兵を取り上げても、まだこの身体が残っておりますぞ」


 そして、愉快そうに笑った。


「さあ、親子喧嘩を始めようか!」


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https://youtube.com/shorts/LjVQgpFxZ2E?si=X6VKhxz29nXoLekJ

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