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元ヒロイン?だった現モブ男です!  作者: 狗神狼
第2章 ドラクーラル編
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理由

お久し振りです!


それではどうぞ!

「先ほど言っていた女性が、おまえにあの家を与えた人か?」


 アマーレンが僕を見て聞いてくる。

 僕はそれに戸惑うことなく「そうだよ」と答えた。間違いではないが真実でもない返答にアマーレンは「そうか」と言っただけでそれ以上は何も聞いてくることはなかった。

 その後は、最初の予定通りに僕用の入城許可証とついでに戸籍タグを魔法宮内の事務・管理室で発行してもらうと門の前で移動魔法を使い家へ帰ってきた。


 戸籍タグとは自分の名前や年齢、職業、能力などが記載されたブレスレットのことである。作り方は簡単、専門の役所の窓口で「戸籍を作りたい」と言うと真っ新な戸籍タグを渡されそれに自分の血を1滴垂らすだけだ。後はそれを手首に付け、係員の説明を聞けば終わりである。

 ただし、血を垂らすのも手首へ付けるのも係員の目の前で行わなければならないし、本人の許可なく自分のタグ以外に触れようとすると感電してしまうのでいろいろと面倒くさい代物である。

 デザインはいたってシンプルで、国の紋章が彫られたシルバーのプレートに同じくシルバーの細い鎖が2本、絡まるように伸びているだけのものだ。

 手首に鎖を巻きつけて留めると、留め具の部分が消え去りサイズが変わって腕から外れないようになる。

 記録は自動で更新され、頭で念じれば記載内容が空中に投影されて見れるようになっている。自分自身では気づかないうちに手に入れた能力なども映し出されるので、使い方によってはそれなりに便利なものと言えるだろう。


 ついでに、入城許可証とは台座にクロムパイロープガーネットが嵌められた指輪のことで、石の中には魔法で国の紋章が彫られているのだ。大体の人がその用途通り指に嵌めるなか、アマーレンはこれにチェーンを通してネックレスにしていた。

 僕の許可証は、最初手元にチェーンがないからと指へ嵌める気でいたが、アマーレンにお揃いのチェーンを渡されたので胸元で揺れている。


 部屋に設置された時の色石を見ると、色が黄緑から緑へ変わりかけていた。そんなに長く話していた自覚はなかったが、ここを出てから2時間ほどたっていたらしい。


「すぐに、夕食を準備するね」


 魔法を使うために腰に添えられていた手を放してもらいキッチンへ急ぐ。

 今の時間は日本でいうところの午後7時。向こうでなら丁度食事中か今から食事を始めるといた辺りの時間だろうが、こちらの世界ではもう既に食事が終了していないとおかしい時間なのである。

 これから凝った料理を作っている時間はない。

 冷蔵庫を漁って適当な野菜と豚肉を取り出す。できあがた料理は野菜炒めとお浸し、サラダと野菜スープの4品だ。全体的に野菜中心になってしまったが仕方ない。短時間でできる料理で思い浮かんだのがこれだったのだ。そのかわりに、炒め物の豚肉はかなりの量が入っているので許してほしい。

 本来なら、これにご飯もほしいところなのだが、どこにも見当たらなかったので諦めた。

 よく考えたら、『私』の記憶にも米というものが存在していた形跡がないので、もしかしたらこの世界自体に存在しないのかもしれない。あとでアマーレンに聞いてみよう。

 料理を並べれば、アマーレンがコップやお箸、カトラリーの用意をしてくれる。

 本来この世界にお箸というものはなかったのだが、僕が木を削って作って自作のお箸を使っていたのを見て彼も使うようになったのだ。

いつもの静かな食卓を終え食器を片付けている。

 机の方へ戻ると、昼と同じくアマーレンが入れてくれたコーヒーを貰う。


「本当なら……」


 突然そう切り出された言葉に彼へ目を向けると、彼は手元の本へ視線を落としたまま口を開く。


「本当なら、俺の弟子ということでおまえを寮に入れるのではなく、この家から通えるようにしたかったのだがな、総団長に止められて無理だった」


(だろうねぇ)


 『使用者』や『可能性持ち』が現れた場合、訓練中の住居は城壁内と決まっているのだ。

 それを、魔導師の弟子だからという理由で城外から通うなど無理な話だろう。


「アレンがそう言うってということは、アレンの(ここ)から通った方がいい理由があるってこと?」


 彼は無駄なことは極力しない人間である。そんな彼が「通った方がいい」と言うなら何か訳があるはずだ。

 アマーレンの横顔をジッと見る。彼は顔を本の方へやったまま視線だけを僕へ向ける。


「俺が2つ持ちなのは知っているだろう?」


その言葉に小さく頷いて返す。


「本来、光や闇の魔法は使える者が極端に少なくどちらか片方使えるというだけでも保護という名目で他国へ取られないよう国は監視下におきたがる」


 「理由はわかるか?」と視線で問われてすぐさま思考を巡らせる。


(光や闇の魔法とそれ以外の魔法との違いはなんだ?)


 「使用者」や「可能性持ち」の存在が希。

 1つ1つの魔法自体がどれも強力である。

 普段の生活ではあまり必要としない。


(ん? 生活で必要としない?)


「もしかして、軍事や内政の強化……、だったりする?」


 「否定してくれ」と願いながら恐る恐ると口に出せば、彼の目が三日月型に歪み口角が上がる。その表情が答えだ。


(嘘だろう……)


 そう思いつつも、頭の片隅では「ああ、やっぱりなぁ」と納得している自分がいる。


「魔法の強さから敬意と畏怖の念を抱かせる存在が1人いるだけでも他国からすれば脅威となり、国内の民衆からは国の繁栄の象徴として崇め奉られる。故に、見つける度に国中がお祭り騒ぎってわけだ。城内での修行が終わった後も、宮仕えの魔術師になってくれたら大手を振ってのお出迎え。もしそうでなかったとしても、生活は王都に限定され見えないところでの監視付き。片方持ちでそれだ。ならば、2つ持ちは?」


 想像しただけで気分が悪くなる。

 眉間に皺を寄せる僕を見て、アマーレンが笑ってくしゃくしゃと頭を撫でてくる。


「今日、魔法宮で視線を感じただろう?」


 黙って頷くと、彼が「あれはな……」と言って続けた。


「ここ10年、どちらの使い手や可能性持ちが見つからず焦っていたところに両方持ちが現れたことで周りの好奇心を刺激してしまった結果だ」

「はあ?」


 皺を更に深くした僕に、アマーレンの笑顔が苦笑に変わる。


「今、この国には光魔法の使い手が3人と闇魔法の使い手が1人しかいない。修行生は闇魔法の可能性持ちが一人いるが、ソイツは13年修行をしていて一度として闇魔法を使えたことがないという、ひどい言い方をすると可能性があるだけの存在になりそうな奴だ。そんな中で、希少どころか俺以外に発見されていなかった両方持ちが現れたとなればこうなってしまうのも仕方のないことなのだろう」

「でも、あの視線のなかには嫌なものも混ざってたよ?」

「さっきも言ったが、光と闇の魔法が使える者はその強さのせいで魔法界の中では畏怖されている。1つだけでもそうなのに、両方ともなればどうしても恐怖を抱かずにはいられない者もいるだろう。あとは、嫉妬の念だな。魔法界ではやはり使い手は特別なんだそうだ。それ故に……、ということだろう」


(なるほどねぇ)


 あと言えるとしたら、「アマーレンが魔導師である」ということもだろうか。

 魔術師と魔導師には、その力量に越えられない程に大きな差がある。

 魔術師の最高峯である第一級魔術師は数日で村1つ潰せるほどの実力を持つ者に与えられる称号だ。それだけでも十分と言えるだろうが、魔導師の強さはその比ではない。魔導師とはその気になれば同じ数日で国1つを潰すことができてしまう実力を持つ者であることを意味する、いわば「触れるな、危険」を相手に伝える記号なのだ。

 魔導師の存在は希少で、居ない国の方が多く、ここドラクーラルでも魔導師はアマーレン1人だと本人が教えてくれた。

 そんなことから、魔導師がいる国では彼らを軍事力の象徴として扱う国も少なくないと聞く。

 魔法宮でアマーレンに向けられていた視線は、大半が嫉妬と強い畏怖の念だった。この国でもそれは変わらないのだろう。

 そして、そんな魔導師(アマーレン)が弟子(僕)を連れて歩いていれば、視線が集まるのは当然のことと言えよう。

 アマーレンはそんな視線から僕を守ろうとしている。住居を彼の家にしようとしたのもその1つだろう。

 畏怖されているだけならば陰でコソコソされているだけですむが、嫉妬はそうじゃない。両方持ちというだけで奇異の目に曝されるのに、彼の弟子ということで彼に良い感情を持たない者からも害を与えられるかもしれない。


(まあ、それは可能性でしかないけどね)


 そうそう魔導師に喧嘩を売るようなバカはいないだろうが、用心に超したことはないだろう。

 自慢ではないが、アマーレンは僕のことをそれなりに可愛がってくれている。その僕に自分が理由で危害を加えられれば彼は黙っていないだろうことは一目瞭然だ。

 また、アマーレンは僕と自分を重ねて見ている時がある。彼の過去に何があったのか詳しくは知らないが、あまり良い思い出ではないのだろう。僕が同じ思いをしないよう気を遣ってくれているようだ。


「大丈夫だよ」


 僕がそう言うと、彼は僕の本心を読み取ろうと目をジッと見て黙る。


「大丈夫。僕はアレンの弟子なんだよ。多少のことでどうこうなるほど軟な精神はしていない。それに、いざとなったら仕返しするから安心して」


 そう笑って言えば、彼は少ししてから肝負けしてくれたらしく困ったような笑みで「そうか」と返してくれた。


「しかし、本当に何かあれば迷わず俺に言えよ」


 僕の頭を撫でながら忠告してきた彼に、僕は「心配性だなぁ」と苦笑しつつも頷いて返した。


今後もマイペースに投稿していきたいと思います。

よろしくお願いします。

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