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元ヒロイン?だった現モブ男です!  作者: 狗神狼
第2章 ドラクーラル編
14/15

魔法宮総団長

大変お待たせいたしました。1ヶ月ぶりの投稿です。


それではどうぞ!

 アマーレンが扉をノックし呼びかける。1拍の後返事があり入室が許可された。


 ドクンッ


 書類のタワーがいくつも立ち並ぶ机の向こう側、持っていたペンを手放しその顔がこちらへ向けられた瞬間、心臓が一度だけ大きく脈打った。もう、すでに記憶でしかないはずの『私』が反応したのだろう。


「君がアルトの弟子のカイドーか?」


 テノールとバリトンのちょうど間くらいだろうか。高くはないが、低くすぎることもない落ち着いた声が耳に心地よく響く。


「はい、テル・カイドウといいます」


 それだけ答えるのが精一杯だった。

 間違いない。20後半から30前半といったところだろうか。記憶よりも成長してはいるが、限りなく黒に近い紫の髪と不機嫌そうな灰色の目は『私』の大切な友達である彼の特徴だ。

 なによりも、記憶の『私』が「彼だ」と叫んでいる。

 彼は僕と目が合った一瞬、驚いた顔をしたがすぐに元に戻る。


「私はルーナルク・サイ・ドラクルトという。ここ、魔法宮の総団長をしている者だ。君のことはアルトから聞いている」


 ルーナルクは椅子から立ち上がると、机を迂回して僕の目の前に立つ。


「2つ持ちは、今までの記録上彼しかおらず、君は史上2人目ということになる。君も彼のようになるのか、それともまた違うモノになるのか、君の今後を楽しみにしている」


 三日月型に歪んだ灰色の瞳が僕の目を捉える。その目に、僕は全てを見透かされているような感じがして、なんとなしの居心地の悪さにそらそうとするが、何故か体が言うことを聞かない。


「君に関して、本来ならばこちら側が用意した講師のもとで勉強をしてもらうのだが、君はアルトの弟子ということなのでな。彼たっての希望で、今後もアルトのもとで学んでもらうことになった」

「え?」


 僕は横に立つ彼の方へ顔を向ける。

 「そうなればいいなぁ」とは思っていたが、相手は宮殿関係者だ。いくら僕の師匠がアマーレンだろうとも、彼も仕事が忙しいだろうし(ほんのひと握りしかいない魔導師様なんだ。忙しいはずである……、たぶん)講師専門の魔術師を紹介される確率の方が高いと思っていたので驚きだ。

 「聞いてないんだけど?」と視線で訴えると、アマーレンは「大切な弟子を、そう易々と手放すわけがないだろう」となんでもないことにように言い放った。


「そういうことだ。ただ住む場所や稽古場が変わっただけで、今後も修行は二人で頑張ってもらう。もちろん、他の講師がいいというなら用意するが――」

「いえ、結構です」


 被せ気味に返事をしてしまったが気にしない。僕の返事に対してアマーレンが嬉しそうに笑った気がするが、まあそんなことはどうだっていいだろう。

 ルーナルクは特に表情が変化するということもなく「そうか」と頷いた。


「では、この話はここまでにして、君の居住地についてだが、君の部屋を魔法寮の一室に用意をしてある。必要な物は既に運ばれているので明日は身1つで来てもらって構わないからな」


(身……、1つ?)


 僕はその言葉に首を傾げる。


「あの、着替えとかは?」


 その問いかけに、ルーナルクは「アルトがもう運び込んでいる」と答えた。

 アマーレンの方を見ると、彼は心なし口角を上げて頷いてきた。


「君は何も心配することなく来てもらって大丈夫だからな」

「はい、ありがとうございます」


 これで、もう話は終わりなのだろう。アマーレンがルーナルクへ頭を下げて扉の方へ向かうのに、僕も付いていこうと足を踏み出した瞬間ルーナルクから「カイドー」と声をかけられた。


「はい」


 振り返ると、彼は僕の目を真っ直ぐ見て、口を開こうとし一度戸惑うように閉じた。


(どうしたんだろう?)


 ジッと待つこと数えで10秒。腹を決めたのか、彷徨わせていた視線が僕を捉える。


「イーナ……、イルミーナ・モンドという女性を知っているか?」


 ドクンッ


(ああ、まただ)


 彼に名前を呼ばれた瞬間、『私』が笑った気がした。たぶん、僕を見て『私』に結びついたことが嬉しいのだろう。

 確かに魂が同じということが関係しているのか、僕と『私』の顔は似ている。髪型と色彩を変えれば、そのまま僕は『私』になるだろうというほどにそっくりなのだ。

 だからと言って、僕が『私』であるなど信じてもらえるわけがないだろうし、もとからバカ正直に教えるつもりなどない。


「身内ですが、それがどうかましたか?」

 正確には「(僕の)内(に記憶としている生きている存在)ですが……」だけど、口に出していないだけで嘘は言っていない。

 ルーナルクは「そうか」と何かを考えるように視線を斜め上へ向ける。少ししてから「引き止めてすまない」と言って退室を促された。


「そうですか。それでは、失礼いたします」

「ああ、君が今後どう成長するのか楽しみにしている」


 今度こそ、僕はアマーレンと共に部屋を出ると後ろ手に扉を閉める。


読んでくださっている皆様、誠にありがとうございます。

今後も地道に頑張らせていただきたいと思います。


感想・訂正点などいただけると幸いです。

いつでもどこでも受け付けておりますので、気が向いた時にでも書き込んでいただけると嬉しいです。

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