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元ヒロイン?だった現モブ男です!  作者: 狗神狼
第2章 ドラクーラル編
13/15

行動

どこで切ろうか迷った末に切らずにそのまま投稿。

中途半端感がすごいですがお気になさらずお願いします。

「風呂、ありがとう」


 扉を開けながら声をかけると、中でコーヒー(匂いでわかった)を飲んでいたアマーレンが、自分の対面にある椅子を指差す。


(座れってことね)


 彼も着替えたのだろう。服がいつもの魔導師の格好から、ラフなものへと変わっていた。

 鎖骨が見える程に開いた丸首の白いシャツをゆったりと身にまとい、限りなく黒に近い灰色をしたカーディガンと黒い細身のズボンでまとめられたシンプルな格好だ。

 シャツ以外は全て黒かそれに近い色をしているせいか、彼の白銀に輝く髪がより一層際立って見える。


「目測りだったが、サイズは合っていたようだな」

「もしかして、今回のために買ったの?」


 どうりでアマーレンの物にしては小さいわけだ。

 「俺以外いない家に、おまえサイズの服があるわけがないだろう」と無表情のまま返してきた彼に、嬉しさで赤面する顔がばれないよう下を向きつつお礼を言う。

 アマーレンは一度台所へ行くと、少したってから手にマグカップを1つ持って戻ってきた。

 差し出されたソレの中はホットミルクで、甘い匂いが鼻をくすぐる。


「ありがとう」


 僕が受け取ると、彼はもとの席に座り再度コーヒーに口をつけた。


「今後のことだが――」


 アマーレンはカップを置いて話しかけてきたので、僕も一度カップをおこうと前屈みになったが、彼から「飲みながらでいい」という言葉をいただいたので態勢を戻す。


「城への移動は明日の昼、昼食を食べてからにする。が、今日の夕方に一度、魔法宮へ行き総団長との顔合わせと、ついでに城への入城許可証と戸籍タグを作ろうと思う」

「総団長……」


(なんか今、サラッと凄いこと言われた気がする)


 「おまえ、戸籍ないだろう」なんてアマーレンが言っているが、今はそんなこと(よくはないが)どうでもいい。


(それよりも、だ)


 どうせ、明日になれば嫌でも魔法宮へ行かないのだ。「わざわざ今から会いに行く必要はないだろう」と思いつつも、そんなことは口には一切出さず、せめて理由が聞きたいと話を促す。


「ああ、連絡したところ、明日は忙しいらしくゆっくりと話ができるかわからない状況らしくてな。そういうのはできるだけ早い方がいい。顔合わせだけでも今日中にしておこうとなったんだ。総団長というのは魔法宮の総まとめ役のことでな、俺たち宮廷魔導師や魔術師の代表のことだ。他所からは魔法長と呼ばれている」


 総団長というからには相当の地位にいる人なんだろうと思ったが、要は「魔法宮のお顔様」だ。

 アマーレン曰く、城の中にはそれぞれ王宮、魔法宮、騎士宮、医薬宮と4つの宮殿があり、それらは王宮を中心に三方を囲うような形で建てられているらしい。

 王宮以外の3つの宮殿をまとめて三方宮と呼び、それぞれの宮殿にそこの代表という意味で総団長がいる。

 ちなみに、王宮に総団長がいないのは頂点が王様だからである。遠い昔には居たそうだが、その時にいろいろと問題が起こり、皇帝以外で王宮の頭となる者がいてはマズイと王宮長の役職をなくしたらしい。


「今の総団長……、魔法長は王弟なんだ」

「王弟……」


 総団長に会うというだけでも気後れするのに、相手はよりにもよって王弟。


(頭が痛くなってきた……)


 これから会う予定の人物が、あまりにも大物すぎて反応に困る。

 そんな僕を他所に、アマーレンが気にすることなく続けて言った言葉に、一瞬耳を疑った。


「名前をルーナルク・サイ・ドラクルトといい、前国王の第三王子なんだが、なかなか面白い人物だぞ」


 ルーナルクと、今言わなかったか。

 一瞬にして彼の姿が頭を横切る。

 限りなく黒に近い紫の髪と垂れ気味なグレーの瞳。服装はいつも黒を基調としたものを身にまとっていた。

 『私』とって一番新しい記憶の彼は、あまり笑わず日に日に眉間の皺が深くなっていく姿で、『私』はそんな彼の眉間をよくつついたり皺を伸ばしたりしていたのだ。

 そんな彼が、魔法宮の総団長をしているなんて……。


(いや、まだ決まったわけじゃない)


 同名の可能性だって、低いとは思うがないわけではないだろう。

 取り敢えず、アマーレンに今日の予定について返事をしてから昼食の用意に取り掛かる。

 この屋敷には召使いなんて人は1人もおらずアマーレンが1人で住んでいるらしい。ならば使われていない部屋が10もあるほど無駄にデカい家をどう維持しているのかというと、洗濯や掃除など全て魔法で行っているそうだ。

 しかし、さすがに細かい味の調整が必要とされる食事まで魔法で作るのは難しいらしく、普段はどうしているのか聞いたところ「外食している」と返された。彼自身は料理ができないこともないが、いちいち作るのが面倒くさいらしい。

 アマーレンに物の場所を聞きながら着々と仕上げていく。

 今日の昼食はサンドイッチだ。冷蔵庫(電気ではなく魔法で冷やすタイプ)の中身を好きに使っていいと言われたので、定番の卵サンドとハムやレタス、トマトなどを挟んだ野菜サンドを作ってみた。

 本当はカツサンドも作りたかったのだが、時はすでに昼を回ってもうすぐおやつの時間だ。あまり時間をかけていられないと今回は諦めたのである。

 食後にはアマーレンがコーヒーを入れてくれたので洗い物を終わらせてから2人で一息ついた。

 パラパラと本を読む彼の向かいで、特に何かをするわけでもなくまったりとした時間を過ごしていると、気づけば窓から差し込む陽の光がもうだいぶ傾いていた。

 この世界に機械仕掛け時計という物はなく、代わりに使われているのが「時の色石」と呼ばれる物だ。

 これは、色を変えることによって時間を知らせてくれる石で、夜中の零時は青とし、そこから青紫→紫→赤紫→赤→赤橙というふうに色の3原色と間それぞれ3色ずつの計12色で時間を示してくれる仕組みになっている。

 見方としては、0時から2時の間を青、2時から4時の間を青紫、4時から6時の間を紫というふうに変色具合で知ることができる。

 日本では12の数字を2周することで1日の終わりを迎えていたが、こちらでは12の色を1周することで1日が終わるようになっている。

 しかし、時の色石を持っているのはそれなりの地位にいる者やお金のある者だけで、一般の平民は太陽の傾きや影の長さ、星の位置などで時間の流れを確認しているのだ。この王都では1時間ごとに時間の数だけ町の中心にある時の塔の鐘が鳴るので空を見上げる必要はないが、民は皆生きるための知識として見方を覚えている。

 僕は部屋の端に置かれている時の色石へ目を向けた。


「アレン、石が黄色から黄緑へ変わりかけてる」

「ん? もうそんな時間か」


 アマーレンも時の色石を見て本を閉じる。


「着替えてくるから少し待っていろ」


 食堂を出ていこうとする彼に僕の服装について聞くと、「そのままでいい」と言って扉が閉められた。


(総団長って王族なんだよね?)


 「本当に大丈夫なのか」と疑問に思いつつ、大人しく待っていると、彼は10分も経たずに戻ってきた。

 服装はいつもの魔導師スタイルで、手には背中に国の紋章が描かれ、右腕には旗色である暗赤色の腕章が付いた灰色のローブが握られている。


「これを羽織っておけ」


 そう言って渡されたローブを大人しく身に付けると、フードを目深に被らされた。


「行くぞ」


 アマーレンに手を取られた瞬間、周りの風景が一変する。目の前には巨大な門とソレを中心に左右へどこまでも広がる城壁が悠然と佇んでいた。

 視線を上へ向けると、門の上部分にシンボルである鷹が描かれているのが目に入る。そのことから、ここが王城三大門の1つ「空飛(からたか)の門」であることがわかった。

 王城三大門とは城壁に3つある門のことで、それぞれに「空飛の門」、「海泳(かいえい)の門」、「森走(しんそう)の門」と名がつけられている。

 門にはその名の特徴を表す生き物が掘られており、空飛の門に鷹、海泳の門に鯱、森歩の門に狼が描かれているのだ。

 突然の魔法移動で驚いている僕の手を引いて、彼は門番へ近寄る。


「アマーレン・アルトだ。魔法宮総団長への客人を連れている」


 アマーレンがフードを脱いで許可証を提示すると、門番がすぐさま確認し入城することができた。

 その際、確認ということで僕の顔と名前を確認されたが、この場では割愛しておこう。

 長い廊下を、彼に手を引かれたまま歩く。魔法宮の中では白いローブを羽織り、フードを目深に被った人が忙しなく動き回っていた。


(見られてる?)


 宮殿に入ってから異様に視線を感じる。それらは僕へ向けているモノもあれば、アマーレンへのモノもあり、そこへ込められた感情は感じ取れるものだけでも様々だ。

 視線を向ければ一様にそらされる。


(なんか、気持ち悪い)


 そんなことを考えつつも引かれるまま足を進めれば、だんだんと人が減っていき、目的の場所へ着いた頃には人っこ1人いないようになっていた。


説明って難しい!

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