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調和の守護者 リリィ&コピ第四部  作者: マスター


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第108話 封じられた青火の水門

第107話では、放水溝の先で青白く光る谷が見つかりました。


そこは、かつて「青火の谷」と呼ばれ、鉱物を多く含む温かい水が湧く場所でした。


その水は飲用にも家畜用にも使えず、下流へ流せば被害が出る可能性があります。


リリィたちは、古い採石跡を一時沈殿池として使い、青火の水を受け止めようとしました。


しかし、沈殿した白い鉱物が、地中に隠れた人工構造の線を浮かび上がらせます。


その先にあったのは、昔封じられたという「青火の水門」でした。

ごん。


岩壁の奥で、また音がした。


低く、重い。


水が石を叩く音にも聞こえる。


けれど、ただの水音ではない。


何かが、閉じた門の向こうから押している。


カナタは記録板を握りしめた。


「今の、自然の音?」


コピがすぐに測定する。


「水圧変動に伴う構造音です。旧採石跡奥の人工空洞で、圧力が上がっています」


シオンが青白く光る沈殿池を見た。


「つまり、水門の向こうで水が溜まってる」


「はい」


オルガが顔をしかめる。


「放っておいたら?」


「水門の状態によっては、破損の可能性があります」


「壊れたら?」


コピは少し間を置いた。


「青火の水が、下流側へ一気に流出する可能性があります」


その言葉で、全員が黙った。


下流には、家畜水場がある。

さらに先には、草地もある。


水が足りない高原で、流れてきた水が使えないどころか、害になるかもしれない。


シオンが焦ったように言う。


「じゃあ、先に開けて圧を逃がすしかないだろ!」


カナタがすぐ反論する。


「そんなことしたら、下流へ流れる!」


「壊れて全部流れるよりましだ!」


「本当にそうか分からない!」


また二人の声がぶつかった。


リリィは青白い水面を見つめた。


開けるのも危険。

閉じたままも危険。


でも、焦って選べばもっと危険だ。


「まず、水門を見る」


リリィが言った。


「開けるかどうかは、その後」


オルガが頷く。


「今度は誰も先走らない。特に二人」


カナタとシオンが同時にそっぽを向いた。


旧採石跡の奥へ向かう岩壁には、細い割れ目があった。


白い鉱物の線が、その割れ目へ向かって続いている。


ファルコンが小型観測機を飛ばした。


観測機は割れ目の奥へ入り、暗い空洞を照らす。


映像に映ったのは、古い石造りの通路だった。


壁は青白く光っている。


床には浅く水が流れていた。


その先に、分厚い石の扉がある。


扉には、円形の水紋と、三本の横線。


その下に、古い文字が刻まれていた。


コピが解析する。


「古語です。読み上げます」


表示板に文字が浮かぶ。


青火を草へ流すな。

青火を獣へ飲ませるな。

季節水と混ぜる時は、三度沈め、七度測れ。


カナタが小さく呟いた。


「三度沈め、七度測れ……」


高原道の老人が目を伏せる。


「やはり、ただの言い伝えではなかった」


シオンが老人を見る。


「青火の水で、何があったんだ」


老人は少し黙った。


そして、ゆっくり話し始めた。


「昔、雪解けが足りなかった年があった。人々は青火の水を混ぜて、草地へ流した。最初は草がよく伸びたそうだ」


「なら、いい水だったんじゃないのか」


「最初だけだ」


老人の声が重くなる。


「しばらくして、草を食べた家畜が腹を壊した。土は白く固まり、井戸の味が変わった。だから青火の水は封じられた」


カナタは息をのんだ。


「そんな記録、観測塔には……」


「残っていないだろうな」


老人は苦く笑った。


「失敗の記録ほど、残したくないものだ」


リリィは水門の映像を見た。


ただ水を止めた門ではない。


過去の失敗を封じた門だった。


でも、封じただけでは終わらなかった。


今、水はまた別の道からあふれようとしている。


コピが水門の状態を読み取る。


「扉の下部に漏水あり。背面水圧が上昇。完全閉鎖状態ではありません」


ミラの通信が入る。


『もし圧を逃がすなら、門を開けるんじゃなくて、漏れている水を受ける方が安全かも』


「どういうこと?」


リリィが尋ねる。


『門本体を動かすと壊れるかもしれない。でも下部から漏れているなら、その漏水だけを一時沈殿池へ導く。水門を開けずに圧を少し下げる』


コピがすぐ計算する。


「有効です。ただし、漏水量を増やしすぎないこと。沈殿池の容量管理が必要です」


シオンが歯を食いしばる。


「そんな少しで間に合うのか」


コピが答える。


「全ての圧力は下げられません。しかし、水門破損までの時間を延ばせる可能性があります」


カナタが記録板に書く。


「開けない。漏れを受ける。時間を稼ぐ」


リリィは頷いた。


「まず、それでいこう」


作業はすぐに始まった。


旧採石跡の沈殿池に、もう一つ小さな受け溝を作る。


青火の水門の下から漏れる水を、直接下流へ行かせず、浅い池の手前へ導く。


底には石と砂利。

その後に、沈殿用のくぼみ。

さらに、越流しないよう見張りを置く。


大きな工事ではない。


でも、失敗すれば青火の水が下流へ流れる。


全員の動きは速かった。


カナタは記録しながら石を運ぶ。


シオンは黙って溝を掘る。


二人はまだ言い合わない。


今は、口より手を動かす時間だった。


やがて、青白い水が細い溝を通って沈殿池へ入った。


光は弱い。


だが、確かに青い。


コピが測定する。


「漏水の一部を捕捉。下流への直接流出は低下しています」


オルガが息を吐く。


「よし、ひとまず止まった?」


「いいえ。遅らせただけです」


「分かってたけど言ってほしくなかった」


水門の奥から、また音がした。


ごん。


ただし、さっきより少し弱い。


カナタが表示を見た。


「水圧、下がった?」


「わずかに低下。危険は継続中です」


シオンが沈殿池を睨む。


「このまま少しずつ受ければ、集落も下流も守れるのか」


コピは首を横に振る。


「沈殿池の容量には限界があります。また、青火の水の成分を処理する方法が不明です」


リリィは水面を見た。


水は受け止めた。


けれど、受け止め続ける場所が足りない。


高原に必要なのは飲める水。

今増えているのは、使えない水。


問題は、形を変えただけだった。


午後の確認会は、旧採石跡の横で行われた。


議題は分かりやすかった。


青火の水門を開けるか。

閉じたままにするか。

漏水を受け続けるか。


カナタは最初に言った。


「水門は開けません」


シオンが反射的に反論しかけた。


だが、カナタは続ける。


「ただし、閉じて放置もしません。漏れている水は沈殿池へ受けます。下流へ流さないためです」


シオンは口を閉じた。


リリィは少しだけ安心した。


カナタの言い方が変わっている。


上の水だけを見ていない。


下流のことも言葉に入っている。


次にシオンが言った。


「谷下集落は、放水溝を完全には閉じない。閉じたら地面の下で水が暴れる。でも、青火の水が増えるなら見張りを増やす」


カナタが頷く。


「私も谷下の記録に入る」


「勝手にしろ」


「うん。勝手にする」


二人のやり取りに、オルガが小さく笑った。


牧草地の代表はまだ不安そうだった。


『家畜の水はどうなる』


コピが答える。


「貯水池の上澄みをろ過し、少量ずつ使用可能か試験します。青火の水と混ざったものは使用禁止です」


高原道の老人が付け加える。


「昔の言葉を、記録に戻すべきだ。青火を獣へ飲ませるな」


カナタはその場で記録した。


青火水、飲用・家畜用禁止。

季節水と混合する場合、沈殿・測定なしに使用しない。


「三度沈め、七度測れ、ですね」


老人は頷いた。


「今の言葉に直せば、何度も沈め、何度も測れ、ということだろう」


確認会は短かった。


第3部の沿岸確認会に比べれば、人数も少ない。


だが、話の筋ははっきりしている。


開けない。

放置しない。

受ける。

測る。

飲ませない。

次の出口を探す。


それだけを決めた。


夕方、カナタは水門の映像をもう一度確認していた。


青火の水門。


古い文字。


白い鉱物。


下部から漏れる青い水。


その中で、彼女はある部分に気づいた。


「コピ、ここ拡大して」


「どこですか」


「文字の下。扉の右端」


映像が拡大される。


そこには、古い刻印とは違う傷があった。


細い線。


石の表面を、最近削ったような跡。


さらに、その横には小さな記号が刻まれていた。


カナタが眉を寄せる。


「これ、古語じゃない」


コピが解析する。


「新しい簡略符号です。内容は……」


少しの間。


「“開放準備済み”と読めます」


空気が凍った。


シオンが立ち上がる。


「誰かが、この水門を開けようとしてたのか」


オルガが周囲を見回す。


「しかも最近」


リリィは水門の映像を見つめた。


青火の水は、ただ偶然あふれかけたのではない。


誰かが封じられた門を、開ける準備をしていた。


何のために。


水不足を解決するためか。

下流を犠牲にするためか。

それとも、青火の水を利用する別の目的があるのか。


コピの端末が、さらに反応を拾った。


「旧採石跡の上部斜面に、未登録の足跡を確認。複数名です」


カナタが顔を上げる。


「シオン以外にも、誰かが来てた?」


シオンは首を振る。


「俺じゃない」


その時。


高原の上から、笛の音が響いた。


長く、二回。


カナタの顔色が変わる。


「観測塔の緊急笛……」


通信が入る。


牧草地の代表の声だった。


『貯水池の水位がまた下がっている! 今度は、さっきより速い!』


リリィは振り返った。


青火の水門。


貯水池。


分水室。


誰かが、どこかでまた水を動かしている。

第108話では、封じられていた「青火の水門」を調べました。


青火の水は、昔一度、草地や家畜に被害を出した可能性があり、そのため下流へ流れないよう封じられていました。


ただし、現在は水門の奥で水圧が上がり、下部から漏水しています。


リリィたちは、水門を開けるのではなく、漏れている水だけを一時沈殿池へ受け、下流へ直接流さない応急対応を取りました。


しかし、水門には最近削られた跡と「開放準備済み」という符号が残されていました。


つまり、誰かが青火の水門を開けようとしていた可能性があります。


さらに終盤、貯水池の水位が再び急低下し始めました。


次回は、青火の水門に触れた者と、再び水が消え始めた貯水池の異変を追います。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

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