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調和の守護者 リリィ&コピ第四部  作者: マスター


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第109話 貯水池の底にある門

第108話では、青火の水門が昔封じられていた理由が分かりました。


青火の水は、草地や家畜に被害を出した過去があり、下流へ流さないために閉じられていました。


しかし水門には、最近削られた跡と「開放準備済み」という符号が残されていました。


誰かが青火の水門を開けようとしている。


そう気づいた直後、観測塔から緊急連絡が入ります。


貯水池の水位が、また急に下がり始めたのです。

「貯水池の水位がまた下がっている!」


通信越しの声は、明らかに焦っていた。


牧草地の代表だ。


『さっきより速い! このままだと、夜までもたない!』


カナタが顔色を変えた。


「そんな……雫の門は、まだ少ししか動いてないはず」


コピがすぐに地図を開く。


「分水室の雫の門操作だけでは、この低下速度は説明できません」


シオンが低く言う。


「じゃあ、貯水池そのものに穴があるってことか」


リリィは立ち上がった。


「戻ろう」


オルガが頷く。


「走るけど、割れ目には近づかない。何度も言うけど、落ちたら終わり」


カナタはもう反論しなかった。


「分かってる」


短く答え、先に駆け出す。


ただし、道の真ん中を選んで。


前より少しだけ、危険を見る目が増えていた。


貯水池へ戻ると、水面は目に見えて下がっていた。


さっきまで泥の縁近くまであった水が、中央のくぼみへ吸われるように減っている。


水面には、小さな渦ができていた。


ごぼっ。


ごぼぼっ。


底のどこかで、水が抜けている音。


牧草地の人々は、ヤギを遠ざけながら不安そうに見ていた。


「水が戻ったと思ったのに……」


「また消えるのか」


「今度こそ家畜を動かすしかないのか」


リリィは池の縁へ近づこうとして、足を止めた。


泥が柔らかい。


このまま近づけば、また沈む。


コピが測定する。


「中央部で漏水。吸い込み速度が上昇しています。池底に開口部がある可能性があります」


カナタが叫ぶ。


「開口部って、昨日の渦跡?」


「同じ位置に近いです」


ミラが通信で言った。


『完全に塞がないで。圧力の逃げ道を急に止めると、別の場所が抜けるかもしれない』


シオンが歯を食いしばる。


「じゃあ、見てるだけかよ」


「違う」


リリィは周囲を見る。


「吸い込みを弱める。水を全部止めるんじゃなくて、泥や家畜が吸い込まれないようにする」


コピが案を出す。


「浮き板と麻袋で、開口部の上に吸い込み防止の覆いを作ります。底へ押し込まず、水中で浮かせます」


オルガがすぐに動く。


「材料!」


牧草地の人々が板を運ぶ。


高原道の老人が麻袋を出す。


シオンも何も言わずに手伝った。


カナタは水位を記録しながら、作業の配置を書く。


「水位低下、継続。吸い込み防止覆い、設置準備」


リリィはその横顔を見た。


焦っている。


でも、手は止まっていない。


今のカナタは、ただ叫ぶ記録係ではなかった。


浮き板を三枚つなぎ、下に麻袋を吊るす。


重しではない。


水の勢いを散らすための布だ。


ファルコンが上空から渦の中心を示した。


「位置、少し右。そこから落とす」


オルガとシオンがロープを持ち、リリィが合図を出す。


「ゆっくり!」


覆いが水面へ落ちる。


渦の上へ流され、吸い込まれかける。


だが、麻袋の布が水流を受け、勢いを散らした。


渦は消えない。


でも、細くなった。


コピが数値を読む。


「漏水速度、約三割低下」


牧草地の代表が息を吐く。


「止まったのか」


「いいえ。遅くなっただけです」


その答えに、代表は肩を落とした。


だが、すぐに顔を上げる。


「三割でも、時間は稼げるんだな」


「はい」


リリィは頷いた。


「今は、その時間で底を見る」


池の水位が下がったことで、泥の一部が露出していた。


昨日までは見えなかった場所。


そこに、石の縁が見えた。


丸い。


自然の岩ではない。


カナタが目を細める。


「何、あれ」


コピが拡大する。


「人工物です。円形の石枠。開口部の周囲に設置されています」


シオンが呟く。


「貯水池の底にも、何かあるのかよ」


高原道の老人が、杖を握りしめた。


「まさか……」


リリィが振り向く。


「知っているの?」


老人はすぐには答えなかった。


やがて、かすれた声で言う。


「昔、貯水池には“底の口”があると聞いた。水を逃がすためではなく、水を戻すための口だと」


カナタが鋭く言った。


「また言い伝え?」


「そうだ」


「どうして今まで言わなかったの」


老人は苦い顔をした。


「おとぎ話だと思っていた。池の底を見た者など、もういなかったからな」


カナタは悔しそうに唇を噛む。


でも、怒鳴らなかった。


代わりに記録した。


貯水池底部、円形石枠。通称、底の口。用途不明。


コピが石枠周辺を測る。


「水はこの石枠の内側へ吸い込まれています。ただし、完全な穴ではありません。格子状の構造があり、そこに泥と根が詰まっています」


ミラが通信で言う。


『昔の戻し口なら、地下水位が高い時に水が湧き、低い時に抜ける構造かも』


シオンが顔をしかめる。


「つまり今は、戻すんじゃなくて吸ってる?」


「地下側の圧力が低い、または別の水路が開いている可能性があります」


リリィは息を吸った。


「分水室とつながってる?」


コピが地下構造を重ねる。


「可能性はあります。貯水池底部の開口は、雫の門の下流側、または別系統の地下水路につながっていると推定されます」


カナタが顔を上げる。


「別系統?」


コピは少し間を置いた。


「はい。分水室の三門とは異なる、第四の水路です」


その言葉に、周囲が静まった。


草の門。

雫の門。

葦の門。


そして、貯水池の底にある第四の水路。


今まで誰も記録していなかった流れ。


「また、記録にない道……」


カナタの声は小さかった。


シオンが言う。


「責めてる場合じゃない。そこから水が消えてる」


カナタは頷いた。


「うん。今は止める方法を考える」


二人の間に、ほんの少しだけ協力の形が見えた。


だが、問題は簡単ではない。


開口部を完全に塞げば、貯水池の水は残るかもしれない。


でも地下の圧力が行き場を失えば、谷下集落や青火の水門に影響が出る可能性がある。


逆に放置すれば、貯水池は空になる。


牧草地の人々は水を失い、家畜を移動させるしかなくなる。


リリィは地図を見た。


上も下も、同じ水を必要としている。


でも、水路は人間の都合どおりには分かれてくれない。


「今日は完全に塞がない」


リリィが言った。


「覆いで吸い込みを弱める。水位を見ながら、家畜用の上澄みを少しずつ確保する」


牧草地の代表が不満そうにする。


「それで足りるのか」


「足りないかもしれません」


リリィは正直に答えた。


「だから、家畜の一部移動も準備してください」


代表は顔をしかめた。


「今から動かすのは負担が大きい」


「水がなくなってからでは、もっと危険です」


しばらく沈黙があった。


やがて代表は、重く頷いた。


「弱い家畜から、南の仮置き草地へ動かす」


カナタがすぐに記録した。


家畜一部移動準備。貯水池上澄み、ろ過後に少量使用。底部開口は完全閉鎖しない。


夕方までに、貯水池の急低下は少し落ち着いた。


止まったわけではない。


でも、夜までに空になる危険は下がった。


子ヤギたちは遠くの囲いへ移され、水辺には近づけないよう柵が置かれた。


観測塔では、貯水池、分水室、谷下集落、青火の水門の四か所を同時に見る体制が作られた。


カナタは壁に大きな地図を貼る。


シオンがその横に立った。


「こっちにも谷下の井戸を書け」


「分かってる」


「あと、放水溝」


「書いてる」


「青火の水門も」


「それも書いてる!」


二人はまた言い合いかけた。


でも、カナタはふと手を止めた。


「……助かる。場所、教えて」


シオンも一瞬固まる。


そして、気まずそうに視線をそらした。


「最初からそう言え」


「今言った」


「遅い」


「でも言った」


オルガが小声でリリィに言った。


「この二人、意外と相性いいかもね」


リリィは苦笑した。


「喧嘩しながら地図が進むなら、いいのかも」


夜。


貯水池の水位は、まだじわじわ下がっていた。


だが、覆いのおかげで渦は弱い。


コピが表示を確認する。


「水位低下、継続。ただし、急落は回避」


カナタが記録する。


「底の口、仮覆い有効。完全閉鎖なし」


シオンが窓の外を見る。


「このまま朝までもつのか」


「今の速度なら、可能性は高いです」


コピが答える。


その時、ファルコンが外から戻ってきた。


「貯水池の底部開口、その周囲に足跡がある」


カナタが顔を上げる。


「足跡? 池の底に?」


「水位が下がって露出した泥の上だ。新しい」


リリィたちは急いで池へ向かった。


月明かりの下、泥の上に確かに足跡があった。


水辺に近づいた跡。


しかも一人ではない。


複数人。


石枠の近くで止まり、戻っている。


コピが照合する。


「シオンの足跡とは一致しません。カナタ、牧草地代表、現在確認済みの作業員とも一致しません」


オルガが低く言った。


「つまり、別の誰かがここにも来てた」


リリィは石枠を見た。


青火の水門。

分水室。

そして貯水池の底の口。


どこにも、新しい痕跡がある。


水は自然に狂っているだけではない。


誰かが、古い水路を知っていて、触っている。


その時、覆いの下で何かが光った。


一瞬だけ。


青白い光ではない。


金色に近い、小さな反射。


カナタが声を上げる。


「今、何か光った!」


コピが水中映像を拡大する。


覆いの下。


石枠の内側。


泥に半分埋まった金属板があった。


そこには、三つの印ではなく、四つの印が刻まれている。


草。

雫。

葦。

そして、見慣れない印。


丸い水滴の中に、小さな炎。


コピが静かに告げた。


「第四の印を確認。青火と季節水を接続する門の可能性があります」


カナタは息をのんだ。


「貯水池の底が、青火の水門につながってる……?」


その瞬間、石枠の奥から、低い音がした。


ごん。


第108話で聞いた、青火の水門と同じ音。


リリィの背筋が冷えた。


貯水池の底と、封じられた青火の水門は、別々の問題ではなかった。


同じ仕組みの一部だったのだ。

第109話では、貯水池の水位が再び急低下しました。


原因は、池底にある人工的な円形石枠、通称「底の口」でした。


そこから水が地下へ吸い込まれていたため、リリィたちは完全には塞がず、浮き板と麻袋で吸い込みを弱める応急対応を行いました。


同時に、家畜用の上澄み確保と、一部家畜の移動準備も始まります。


さらに、池底の泥には複数人の新しい足跡が残っていました。


青火の水門、分水室、貯水池の底。


各地に新しい操作痕があることから、誰かが古い水路を知り、意図的に触っている可能性が高まります。


最後に見つかったのは、草、雫、葦に続く第四の印。


青火と季節水をつなぐ門の存在です。


次回は、貯水池の底にある第四の門と、季節水と青火の水がなぜ接続されていたのかを調べます。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

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