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調和の守護者 リリィ&コピ第四部  作者: マスター


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第107話 青白く光る谷

第106話では、葦鳴き谷の地下を走る水が、谷下集落の井戸や床下へ圧力をかけていることが分かりました。


リリィたちは、住民を高台へ避難させ、埋もれていた古い放水溝を少しだけ開きます。


その結果、集落直下の水圧は下がり、急な沈下はひとまず避けられました。


しかし、逃がした水の先で、雪解け水としては不自然な温度上昇と青白い光が確認されます。


第107話では、その光る谷の正体を調べます。

夜明け前の谷は、青白く光っていた。


強い光ではない。


水面の揺れに合わせて、ちらちらと瞬く程度だ。


けれど、暗い谷の底では十分すぎるほど目立った。


シオンは放水溝の出口を見下ろし、顔をしかめた。


「あんなの、昨日までなかった」


カナタは記録板を握りしめる。


「水を逃がしたから、何かが反応した?」


コピが測定値を表示した。


「水温は上昇しています。通常の雪解け水より高い。鉱物成分も増加しています」


オルガが肩をすくめる。


「冷たい水を逃がしたら、温かく光った。分かりやすく嫌な感じ」


「感覚としては正しいです」


「正しいんだ……」


リリィは谷の奥を見た。


集落を守るために水を逃がした。


だが、その先で別の何かを起こしてしまった可能性がある。


「下りよう。ただし、光っている水には触らない」


カナタとシオンが同時に頷いた。


そして同時に前へ出ようとした。


オルガが二人の襟をつかむ。


「順番」


二人は不満そうな顔をしたが、止まった。


少しずつ、この組み合わせにも形ができてきた。


谷へ下る道は細かった。


昨日まで乾いていた岩肌に、放水溝から流れ出た水が薄く広がっている。


その水が、谷底の石に触れるたび、青白い光が生まれる。


カナタは慎重に記録した。


「発光は水そのものではなく、石の表面?」


コピが答える。


「その可能性が高いです。水中の鉱物成分と、石表面の微生物または鉱物膜が反応していると考えられます」


シオンが眉をひそめる。


「毒なのか」


「まだ分かりません。ただし、飲用不可です」


「また飲めない水かよ」


その言葉に、誰も笑えなかった。


高原には水が必要だ。


だが、見つかる水は、濁っている。

地下へ消える。

地面を崩す。

今度は温まり、光っている。


水があるのに、使えない。


その苦しさが、谷の空気に重く残っていた。


谷底には、小さな湧き場があった。


岩の割れ目から、ぬるい水が染み出している。


放水溝から来た冷たい水と混ざり、白い湯気のようなものが薄く立っていた。


コピが測定する。


「温水湧出。高温ではありませんが、地下熱の影響を受けています。鉱物成分は鉄、硫黄、微量の青光反応鉱物を含みます」


オルガが顔をしかめる。


「青光反応鉱物って何」


「仮称です」


「仮称かあ」


カナタが水面を見つめた。


「昔からこの湧き場はあったの?」


シオンは首を振る。


「知らない。谷下の子どもは、この辺りへ来るなって言われてた。地面が抜けるから」


高原道の老人がゆっくり下りてきた。


「昔は“青火の谷”と呼ばれていた」


カナタが振り返る。


「また記録にない話?」


老人は苦笑した。


「観測塔の記録にはないだろうな。これは道の者と谷下の者の言い伝えだ」


「青火の谷……」


「水を入れすぎると、谷が光る。光った水を家畜に飲ませるな。そう言われていた」


コピがすぐに記録する。


「口述記録。青火の谷。発光時の水は家畜飲用禁止」


リリィは湧き場を見た。


また、失われた知識だ。


数字には残っていない。

図面にもない。

でも、暮らしていた人々の言葉には残っていた。


シオンが苛立ったように言う。


「だったら、なんで誰も教えなかった」


老人は目を伏せた。


「聞く者がいなくなった。谷下の家も減った。観測塔は新しい計器ばかり見た」


カナタは黙った。


その言葉は、彼女にも向いていた。


リリィはすぐに話を進める。


「今は責めるより、使える知識に戻そう」


コピが湧き場周辺の地図を作る。


放水溝から来た水は、青火の谷で温水と混ざっている。


その一部は岩の下へ再び染み込み、残りはさらに下流へ流れている。


下流には、小さな支流があった。


その先は、下流側の草地へつながる。


カナタが青ざめた。


「このまま流れたら、下流の家畜水場へ行く」


シオンも顔を強張らせる。


「でも放水溝を閉じたら、谷下集落の下に水が戻る」


オルガが低く言った。


「閉じてもだめ。流してもだめ」


コピが頷く。


「その通りです」


リリィは谷の地図を見た。


水を止めれば、集落が沈むかもしれない。

水を流せば、青火の谷で温まり、鉱物を含んだ水が下流へ届くかもしれない。


「じゃあ、途中で受ける場所を作る」


カナタが顔を上げた。


「受ける場所?」


「飲ませず、下流へ流さず、一度ためて、成分を落とす場所」


コピが計算する。


「簡易沈殿池が有効です。ただし、温水と鉱物反応があるため、密閉せず、換気できる浅い池が望ましいです」


シオンが周囲を見る。


「そんな場所、どこに作るんだ」


高原道の老人が谷の横を指した。


「古い採石跡がある。浅い窪地だ。昔は雨水が溜まっていた」


ファルコンが上空から確認する。


「位置確認。放水溝下流と家畜水場の間。迂回溝を掘れば水を入れられる」


オルガが笑う。


「また古い場所が役に立つね」


カナタはすぐに記録した。


青火谷の水を、旧採石跡へ一時退避。飲用禁止。成分確認。


作業は急いで始まった。


ただし、今回も全部は開けない。


放水溝から流れる水の一部だけを、浅い迂回溝で旧採石跡へ導く。


水を受ける。

勢いを落とす。

泥や鉱物を沈める。

下流へ直接行かせない。


リリィとオルガが石を並べる。


シオンが溝を掘る。


カナタは、いつものように記録を取りながら手伝った。


途中でシオンが言う。


「記録係って、手も汚すんだな」


カナタは土まみれの手を見せた。


「必要なら汚す」


「上の観測塔の人間は、見てるだけだと思ってた」


「私も、谷下のことを知らなかった」


二人は一瞬、黙った。


それは謝罪ではなかった。


でも、最初の喧嘩よりはずっとましだった。


迂回溝がつながると、青白く光る水の一部が旧採石跡へ流れ込んだ。


浅い窪地に水が広がる。


光はすぐには消えない。


しかし、流れが弱まると、底へ白い粉のようなものが沈み始めた。


コピが測定する。


「鉱物粒子の沈降を確認。下流へ流れる成分は一部低下」


カナタが息を吐く。


「これで安全?」


「いいえ。安全とは言えません。あくまで一時退避です」


「だよね」


カナタはもう、その答えに怒らなかった。


少しだけ慣れてきたのかもしれない。


夕方、谷下集落と観測塔をつないだ確認会が開かれた。


議題は三つ。


放水溝を閉じないこと。

青火谷の水を家畜に飲ませないこと。

旧採石跡を一時沈殿池として使うこと。


牧草地の代表は不安そうだった。


『下流の水場はどうなる』


コピが答える。


「今夜は使用停止を推奨します。代替として、貯水池に残った上澄みを少量ずつろ過し、家畜用に使えるか確認します」


カナタが付け加える。


「水場には印を出します。知らずに飲ませないように」


シオンも言った。


「谷下からも見張りを出す」


牧草地の代表は、しばらく黙っていた。


やがて、低い声で答える。


『分かった。だが、明日も飲めなければ家畜を動かすしかない』


リリィは頷いた。


「その判断も準備しておきます」


水を戻すだけでは足りない。


飲める水にすること。


飲めない水を知らせること。


動かすべき時に家畜を動かすこと。


第四部の問題は、どんどん広がっていく。


夜。


旧採石跡の水は、まだ薄く光っていた。


ただし、流れが弱まった分、谷全体の青白さは少し落ち着いている。


リリィたちは交代で見張りを立てた。


カナタは沈殿池の横で記録を書いている。


シオンは少し離れた岩に座り、集落の方を見ていた。


「なあ」


シオンが言った。


カナタが顔を上げる。


「何」


「観測塔の記録に、谷下を入れるって言ったよな」


「言った」


「……消すなよ」


カナタはすぐに答えた。


「消さない」


シオンはそれ以上何も言わなかった。


リリィは二人を見て、小さく息をついた。


対立は消えていない。


でも、同じ地図を見るところまでは来た。


その時、コピの端末が鳴った。


「リリィ。沈殿池の底に異常があります」


「異常?」


「沈降した白色鉱物が、一定の線を描いています」


カナタとシオンも近づく。


旧採石跡の底。


青白い光の下で、白い粉が流れに沿って沈んでいる。


ただの模様ではない。


まるで、地面の下に隠れている溝の形をなぞっているようだった。


ファルコンが上空から映像を重ねる。


白い線は、旧採石跡の底を横切り、さらに岩壁の奥へ向かっている。


高原道の老人が顔色を変えた。


「その方向は……」


リリィが尋ねる。


「何があるの?」


老人は、しばらく答えなかった。


やがて、かすれた声で言う。


「昔、封じた水門がある。青火の水を、二度と下流へ流さないために閉じた門だ」


シオンが立ち上がる。


「そんなものがあるなら、なんで今まで黙ってた!」


老人は首を振る。


「場所までは知らなかった。言い伝えだけだ」


コピが白い線の先を解析する。


「地下構造反応あり。旧採石跡の奥に、人工的な空洞が存在します」


その瞬間。


沈殿池の底で、青白い光が一段強くなった。


水面が震える。


そして、岩壁の向こうから低い音が響いた。


ごん。


まるで、閉じた門の向こう側から何かが叩いたような音だった。


リリィは息をのむ。


逃がした水は、ただ青火の谷を光らせただけではなかった。


封じられた古い水門を、再び目覚めさせようとしていた。

第107話では、放水溝の先で見つかった青白い光の正体を調べました。


そこは、かつて「青火の谷」と呼ばれていた場所で、雪解け水が地下熱や鉱物成分と反応し、青白く光っていました。


ただし、その水は飲用にも家畜用にも使えません。


放水溝を閉じれば谷下集落が危険になり、流し続ければ下流の家畜水場へ悪影響が出る。


そこでリリィたちは、古い採石跡を一時沈殿池として使い、青火の水を下流へ直接流さないようにします。


しかし、沈殿した白い鉱物が、地中に隠れた人工構造の線を浮かび上がらせました。


その先にあるのは、昔封じたとされる「青火の水門」。


次回は、その封じられた水門と、青火の水が下流へ流されなくなった理由へ迫ります。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

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