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調和の守護者 リリィ&コピ第四部  作者: マスター


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第112話 季節水源の氷が鳴る

第111話では、青火の水門の圧力上昇に対し、リリィたちは第二受け溝を作って応急対応しました。


一方、北斜面の旧測候小屋から、二人組が旧氷室道へ向かう姿が確認されます。


彼らは、かつて季節水を管理していた「雪室番」の紋を持っていました。


旧氷室道の入口には、


「青火を携える者、戻るべからず」


という警告が残されていました。


しかし、その内部では青火由来と思われる温度上昇が確認されます。


第112話では、リリィたちが旧氷室道へ入り、季節水源で何が起きているのかを追います。

旧氷室道の入口は、雪の下に半分埋もれていた。


黒い裂け目のように開いた道。


入口の木札には、古い文字が残っている。


季節水源。

測らぬ者、入るべからず。

青火を携える者、戻るべからず。


カナタはその文字を何度も見た。


「青火を持って入ったら、戻れない……」


シオンが低く言う。


「脅し文句かもしれない」


コピが首を横に振る。


「警告と見るべきです。内部は氷、地下水、温度差が重なる場所です。青火由来の熱を持ち込めば、急融解や崩落が起きる可能性があります」


オルガがロープを手に取る。


「つまり、かなり危ない」


「はい」


「じゃあ、いつもより慎重に行くよ」


カナタとシオンが同時に頷いた。


二人とも、もう勝手に飛び出そうとはしない。


少しだけ、旅の中で変わり始めていた。


リリィは入口の奥を見た。


冷たい風の中に、ほんの少しだけぬるい空気が混じっている。


ありえない温度差。


「行こう」


旧氷室道の中は、青く暗かった。


壁は氷と石が重なり、ところどころに古い木の支えが残っている。


足元には薄い水が流れていた。


本来なら凍っているはずの季節水路。


しかし今は、ゆっくり溶けている。


コピが警告を出す。


「内部温度、周囲より高いです。青火反応、前方から検出」


カナタが記録する。


「旧氷室道、融解進行。足元に水流あり」


シオンが壁に触れようとする。


オルガがすぐ止めた。


「触らない」


「分かってる」


「手が伸びてた」


「確認しようとしただけだ」


「それを触るって言うんだよ」


二人のやり取りに、少しだけ緊張が緩んだ。


だが、次の瞬間。


氷の奥で、ぱきん、と音がした。


全員が止まる。


小さな亀裂が壁を走った。


コピが即座に言う。


「静止。振動を抑えてください」


誰も動かない。


呼吸の音だけが聞こえる。


数秒後、亀裂の進行は止まった。


オルガが小声で言う。


「……会話も控えめにしようか」


シオンも黙って頷いた。


進むほど、青火反応は強くなった。


やがて、通路の脇に落ちている小さな金属筒が見つかった。


先端に青白い鉱物が付着している。


カナタが顔をしかめる。


「これ、青火を運んだ道具?」


コピが分析する。


「青火水の加温成分を保持する携行容器です。中身はほぼ空ですが、残留反応があります」


リリィは金属筒を見つめた。


誰かは本当に青火をここへ持ち込んだ。


警告を知っていたかどうかは分からない。


だが、旧氷室道はすでに反応している。


さらに奥へ進むと、広い氷室に出た。


天井は高く、中央には凍った水の柱がある。


その柱の下から、細い水が流れ出していた。


まるで、氷の中から季節が少しずつ溶けているようだった。


そして、その柱の前に人が倒れていた。


小柄な影。


旧測候小屋から出た二人組の片方だ。


カナタが駆け出そうとする。


だが、すぐ自分で止まった。


「……近づいていい?」


オルガが周囲を見てから頷く。


「ロープ付きで。ゆっくり」


倒れていたのは、カナタと同じくらいの年頃の少女だった。


白灰色の外套。

胸元には雪室番の紋。

手には空の金属筒。


リリィが膝をつく。


「聞こえる?」


少女のまぶたが震えた。


「……水……止めないで……」


カナタが眉を寄せる。


「あなたが青火を持ち込んだの?」


少女は苦しそうに息をする。


「起こさなきゃ……季節水源が、凍ったまま……高原が、乾く……」


シオンが声を荒げる。


「そのせいで谷下が沈みかけたんだぞ!」


少女は目を見開いた。


「谷下……? 水、戻ってないの?」


「戻ってない!」


シオンの声が氷室に響いた。


直後、天井から細かな氷が落ちた。


オルガが鋭く言う。


「声、落として!」


シオンは唇を噛んだ。


少女は震える声で言った。


「そんな……葦の門を開ければ、湿原へ戻るはずだった……」


カナタが小さく呟く。


「あなたたちも、戻そうとしてたの?」


少女は頷いた。


「雪室番の記録に、そう書いてあった。青火を少し使えば、凍った季節水路を起こせるって……」


「でも、測らずに使った」


カナタの声は静かだった。


責めるというより、確認だった。


少女は目を伏せる。


「測る道具が、壊れてた。時間がなかった。水が来なければ、上も下も乾くと思った」


リリィは少女の手を見た。


凍傷しかけている。


青火の熱を扱いながら、氷室の冷気にさらされていたのだ。


「もう一人は?」


リリィが尋ねる。


少女は奥を指差した。


「兄さんが……源の扉へ……」


カナタが顔を上げる。


「源の扉?」


コピが氷室の奥を照らす。


凍った水柱の向こうに、丸い扉があった。


氷に覆われた石の扉。


その中央には、四つの印が刻まれている。


草。

雫。

葦。

青火。


そして、その上にもう一つ。


雪の結晶の中に、小さな芽。


コピが解析する。


「季節水源の主制御扉と推定されます」


オルガが嫌な顔をした。


「また扉?」


「はい」


「この高原、扉多すぎない?」


誰も笑えなかった。


扉の前には、背の高い青年が立っていた。


旧測候小屋から出た、もう一人の影。


彼はリリィたちを見ても逃げなかった。


ただ、凍った扉に手を当てている。


「遅かったな」


青年は静かに言った。


カナタが一歩前へ出る。


「あなたたちが水を動かしたんですか」


「動かした。止まった季節を戻すために」


シオンが低く唸る。


「戻ってねえ。谷下も上も壊れかけた」


青年の表情がわずかに揺れた。


「……葦鳴き谷は?」


「沈みかけた。でも、まだ残ってる」


少女が泣きそうな声で言う。


「兄さん、違ってた。水、湿原に出てない」


青年は目を閉じた。


その顔には、悪意よりも疲労があった。


「記録が欠けていたか」


カナタが拳を握る。


「欠けてる記録で、勝手に門を動かしたの?」


青年は振り向く。


「観測塔は、何年も季節水源を見なかった。牧草地は貯水池だけを見た。谷下は存在しないことにされた。誰も全体を見ていない」


カナタは言い返せなかった。


青年は続ける。


「なら、残った雪室番がやるしかない」


「でも、測らずにやった」


カナタの声が震える。


「それで、全部危なくなった」


氷室が静まり返る。


青年は扉から手を離した。


「だから、最後に直接開ける。季節水源の本流を戻せば、細い分水路の狂いは押し流せる」


コピが即座に警告を出す。


「危険です。現在の下流系は不安定です。本流を急開放すれば、貯水池、谷下、青火水門、すべてに急激な圧力変化が発生します」


青年は唇を噛む。


「それでも、このまま乾けば同じだ」


リリィは前へ出た。


「同じじゃない」


青年がリリィを見る。


「急に開ければ、選ぶ時間も逃げる道もなくなる。今なら、まだ止められる」


「止めてどうする。水は必要だ」


「開けないとは言ってない。測ってから、少しずつ開ける」


青年は笑った。


疲れたような笑いだった。


「測る道具は壊れている」


カナタが一歩前へ出た。


「私が測る」


青年の目が細くなる。


「観測塔の記録係が?」


「そう。今まで知らなかった。でも、今から測る」


シオンも横に立った。


「谷下も入れてな」


カナタは頷いた。


「入れる」


青年は二人を見た。


少しの間、何も言わなかった。


その時、氷の柱が大きく鳴った。


ぱきん。


今度は、さっきより深い音。


扉の上の氷に亀裂が走る。


コピが警告する。


「青火反応により、源扉周辺の融解が進行。主制御扉の自然開放リスクがあります」


オルガが叫ぶ。


「自然開放って、勝手に開くってこと!?」


「はい」


リリィは扉を見た。


青年が開けるかどうかではない。


青火を持ち込んだ時点で、扉はもう目覚め始めている。


コピが急いで計算する。


「開放までの予測時間、不安定。早ければ二十分以内」


カナタが息をのむ。


「二十分……」


少女が泣きそうに兄を見る。


「兄さん……」


青年の顔から、初めて強い焦りが見えた。


「止められるのか」


コピが答える。


「完全停止は困難です。ただし、冷却水を戻し、青火反応を薄めれば、開放を遅らせられる可能性があります」


シオンが叫ぶ。


「冷却水ってどこから!」


カナタが地図を広げる。


「旧氷室道の入口側に、まだ凍った支流がある。そこを少し割れば、冷たい水をこっちへ流せる」


コピが頷く。


「有効です。ただし、流しすぎると通路が凍結し、退路を失います」


オルガが頭を抱えた。


「流しても危ない、流さなくても危ない!」


リリィは短く言った。


「少しだけ流す。時間を稼ぐ」


青年は扉の前から離れた。


「……手伝う」


カナタは彼を見た。


「名前は」


「ユオ」


少女が小さく言う。


「私は、ネーヴェ」


雪室番の末裔。


ユオとネーヴェ。


水を戻そうとして、危機を広げてしまった二人。


でも今は、同じ氷室の中にいる。


リリィは全員を見た。


「ここで言い争う時間はない。ユオ、氷室の構造を教えて。カナタ、記録。シオン、冷却支流の場所を一緒に確認。オルガ、安全確保。コピ、開放予測を見て」


全員が動き出す。


第112話の終わりは、答えではなかった。


扉はまだ閉じている。


けれど、氷の亀裂は広がっている。


ぱきん。


再び音がした。


季節水源の氷が鳴っていた。


開けるためではなく。


もうすぐ、勝手に開いてしまうという警告として。

第112話では、リリィたちが旧氷室道へ入り、季節水源へ向かいました。


そこで見つかったのは、雪室番の末裔である兄妹、ユオとネーヴェです。


彼らは水を奪おうとしていたのではなく、凍った季節水源を青火の力で起こそうとしていました。


しかし、記録が欠け、測定道具も壊れていたため、分水路、貯水池、谷下、青火の水門に危険を広げてしまいます。


終盤では、青火の影響で季節水源の主制御扉が融け始め、自然開放の危険が迫ります。


開けるか閉じるかではなく、勝手に開いてしまうかもしれない。


次回は、リリィたちが冷却支流を使い、季節水源の自然開放を遅らせようとします。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

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