表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
董卓の孫娘はお爺ちゃんを救いたい!〜悪役令嬢、竹簡の予言で滅亡回避〜大悪党の董卓ファミリーが闇堕ちする前に、私が全部救います!  作者: 雨咲 しゆみ
第三章──聖者の奇跡と黒い雲

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
84/85

#81 水色の鍵

 ***


「そう、お前だ。文姫」

 劉辯の銀の瞳が文姫を射抜く。


「ちょ、ちょちょっと待ってください! でも陛下だって、私は小紅さまのオマケであって、仙術を引き起こすチカラ──仙力は微々たるものだって知ってるじゃないですかあ!」

 文姫はわたわたと両手を前にして首を振る。その様子を見た李杏が笑う。


「なっ! 笑い事じゃないですよ李杏さん!」

 文姫が少しむくれてそう言ったけれど、李杏はぱたぱたと手で顔を扇ぎながらそれに答えた。


「ごめんごめん。あんまり可愛かったからつい……ね。でも、大丈夫よ文姫ちゃん。あなたの仙力は、ちゃんと強くなっていると思うわ」

 そう言って李杏が取り出したのは、いつか使った水晶玉。


「さあ、この水晶玉に手を翳して。術言は、覚えてる?」

 李杏の口調は柔らかいままだったが、目は少し真剣になった。

 文姫は少しだけまだ疑っている様子だったけれど、結局こくりと頷いた。

 彼女は水晶玉に手を翳し、術言を唱える。


「青龍、朱雀、白虎、玄武、そして黄竜──五神よ、我の呼び声に応え、ここにその力を現したまえ」

 文姫がそう唱えれば、水晶玉の中を五色の光が綺麗な円環となって回る。

 それは前に見た時よりも少し強い輝きを放っていた。


「やはりな……前に見た時よりも強くなっている。董白の仙力によって開花したな」

 劉辯が言う。

「……開花?」

 私が尋ねると、そっと李杏が補足する。

「小紅ちゃんと文姫ちゃんはね、知らず知らずのうちに仙力を高めるための修行の一つ──“対坐巡行(たいざじゅんこう)”をやっていたのよ」

「対坐巡行?」

 私は文姫と二人、その言葉を繰り返した。


「ああ。余も昔、李杏にやってもらった。身体に五行を覚えさせるために、自分より強い仙力を持つものに流し込んで貰うんだ」

 なるほどそれで、文姫の仙力が上がった。というか、文姫の中にある五行の通り道が開いた……って感じかな。


「でも、なぜ私が“鍵”なんですか? 小紅さまの仙力の方が、ずっと強いのに……」

 文姫が水晶玉に手を翳したまま言う。

 確かに彼女の言うとおり、少し強くはなったけれどまだその輝きは微量だ。私と比べても、劉辯と比べても。


「そうだな……だが見ろ」

 そう言って、劉辯は水晶玉に視線を落とす。私と文姫も、一緒になってそれを覗き込む。


「文姫の五行は、綺麗に円を描いているだろう。素直(すなお)で、それにどの属性にも偏っていない」

「ええ、文姫ちゃんの髪の色……まるで透けるような水色。いつかそれは銀色になると思う」

 劉辯が言い、李杏が付け足す。

 水色? 銀色? でもそれに、なんの意味があるんだろう。


「わからないわ劉辯。それは、良いことなの?」

 いつかと同じように、私は劉辯に尋ねる。

 劉辯はこくりと頷いて、棚にあった一本の巻物を取り出す。

 くるくると解かれたそこに描かれていたのは、一人の女性だった。頭には透き通るような髪を束ね、顔には薄いそばかす。

 鳥のように長い爪で、静かに桃を剥いている。


「この女性(ひと)は……?」

麻姑(まこ)だ。八洞神仙(はちどうしんせん)の一人と伝えられている」

「神仙……」

 聞き慣れない言葉を前に、私は劉辯の言葉を繰り返した。

「仙人の中でも、特に天に近いとされた人たちよ」

 李杏がそう付け足す。


「ああ。仙術を使うのは、我ら皇族だけではない。……と、言うよりもむしろ本来。これは修行を通じて自然と対話を重ね、五行を深く解した者たち──仙人が使う術なのだ」


「そして麻姑は、その中でも神仙と呼ばれるほど強い仙力を身につけた人──見て」

 そう言って李杏が指さしたのは、麻姑の髪だった。

「麻姑の髪は、生まれた時は黒だったの。でも仙力が満ちるにつれだんだんとその色は透けて水色になり、最後には青銀色になったわ」

 その話──それって……


「わ、私と同じです……」

 文姫が唖然としてそう答える。よく見れば、その髪色は前よりも少し色が透けているような気がした。

 李杏は文姫を見つめて静かに続ける。


「おそらく貴女は……麻姑と何らかの繋がりがある。仙術に極めて高い適正をもった……仙人の一族の生まれのはずよ」


 李杏がそう言えば、まるでその名に反応したように、締め切った窓がガタリと鳴る。

 扉を見張っていた李儒が、手を口に当ててギラリと目を窓に向ける。

 そのまま何度か鼻を鳴らし、やがて危険がないと悟ると首を振った。


「大丈夫です。単なる風のようだ」

 李儒がそう言ってようやく、一同が胸を撫で下ろす。

 そしてそのまま文姫の目を見ると、劉辯は言った。


「新たな仙術を授けよう。だが文姫、今度はお前が小紅を導け。小紅の扱えない水の行を──玄武の力を借りる。強すぎる小紅の仙力を制御できるかどうかは、お前にかかっている」


 その言葉に、文姫が唾を飲み込む音がした。

 新たな仙術。文姫の出自の謎。まだわからないことはたくさんある。

 だけど私の脳裏には、なぜかあの人の顔が浮かんでいた。

 この世界で文姫のたった一人の父親、蔡邕(さいよう)の顔が。


 ***

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ