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董卓の孫娘はお爺ちゃんを救いたい!〜悪役令嬢、竹簡の予言で滅亡回避〜大悪党の董卓ファミリーが闇堕ちする前に、私が全部救います!  作者: 雨咲 しゆみ
第三章──聖者の奇跡と黒い雲

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#80 歴史を変える

 ***


 漢王朝の滅亡──

 黄巾(こうきん)の乱が起これば、その未来は確実に一歩、私たちに近づく。

 董卓(お爺ちゃん)の暗殺も、その“向こう側”で起こることだ。


 だから歴史を変える。


 聖者・張角(ちょうかく)の“死”だけじゃない。

 もしこの乱そのものを止められたなら、“予言そのもの”の存在だって無くなるかもしれない。

 そしたら私は、もう竹簡に怯えずに済むのだろうか。


「頭を上げろ。それに……」


 思考を遮るように、劉辯(りゅうべん)が私に声をかける。


(かしこ)まった話し方はよせと言ったろう、董白(とうはく)。二人はもう、余と其方の間柄を知っている。いまさらだぞ」


 口元は笑っている。けど、その額には汗。

 劉辯だって怖いんだ。でも皇子として、こんな時ですら精一杯の余裕を見せようとしている。


「ごめんなさい。でも、協力をお願いしてるんだもの。礼を尽くすのは当たり前じゃない」


 私は劉辯の意図を汲んであえて砕けた話し方に戻した。


「それでいい。で、その予言の書……みたいなものはここに持ってきているのか?」


「まさか。もちろん隠してるわよ。忘れたの? 私は“誘拐されやすい”ご令嬢なんだから」


 冗談だ。

 真剣な話をするっていうのに、さっきの感じだと悲壮すぎる。そんな風に思ったのもある。

 でも、劉辯は笑ってくれた。


「ははは。そうだったな。じゃあ、それは今度でいい。新しい予言が出たんだろう。それについて教えてくれ」


 劉辯は私に先を促す。

 この先さらに劉辯の協力を得るのなら、予言の内容をいつまでも隠しておくことは難しい。

 

 何から話そうか迷った挙句、私は黄巾の乱の原因から話すことにした。


太平道(たいへいどう)……っていう宗教が広まってるの」


 太平道──それを口にした途端。李杏の肩がぴくりと震える。

 劉辯が一瞬だけ彼女に目をやると、李杏は小さくすみませんと謝った。


「ここ最近、李杏にも同じ奴らを調べさせていたんだ。余もすでに知っている。最近はこの洛陽(らくよう)でも名を聞くようになった。だが、それが冷夏と何か関係があるのか」


 劉辯は顎に手を当てて尋ねる。

 当然だ。太平道は、別に冷夏そのものを引き起こしているわけじゃない。

 でも、問題は別にある。


「三年後……太平道は、全国で一斉蜂起する」


 私たちの横で、李杏(りあん)が息を呑んだのがわかった。

 たぶん彼女には、その影響力の大きさがイメージできている。


 その反応に、劉辯はもう驚かない。

 真剣な目で、ただ続きを待っている。


「原因は、冷夏よ。不作を止めない限り、この未来は避けられない」


 私は断言する。

 正確には、予言書で求められていたことは張角の救済。

 でも一度でも漢王朝の敵になってしまえば、彼を救うことは不可能だ。


「太平道そのものを禁止にすることもできよう。それではダメなのか」


 劉辯が尋ねた。でも、私は知っている。


「“信仰”というものは、決して誰かに禁じられて止まるものではないわ」


 この世のありとあらゆる宗教はほぼ例外なく、どこかの時代・場所で、時の為政者(いせいしゃ)達から禁じられ、弾圧を受けたことがある。


 でも、結果──その宗教が完全に無くなったかと言われれば、答えはノーだ。


 禁じられれば禁じられるほど、弾圧を受ければ受けるほど、信仰は“集まる”し、“強まる”のだ。

 それに“禁教令”なんて出してしまえば、漢王朝と太平道は正式にお互いを“敵”として認定し合うことになる。


 これでは、最悪の結果を招くのも時間の問題だろう。


「そうか……もう、その段階まで来ているのだな」


 劉辯は静かに目を伏せた。

 皇子として、政治で解決することはもう難しい。

 ただ、彼にできることはまだある。


 冷夏を止める。


 それだけ聞けば、とてつもないことに聞こえるだろう。

 でも、目の前の人たち──劉辯あるいは李杏(りあん)なら、その方法を知っているはずだ。


「陛下、もう一度言うわ。私は冷夏を止めたいの。私は宗教に詳しくないけれど……太平道は、“悪”じゃない。信仰は、誰かを苦しみから救うためにあると思う。民から生きる希望を奪うことは、正しいことじゃない」


 この言葉は“本心”だ。

 確かに張角を救うため、劉辯に彼を悪く思って欲しくないっていう“打算”もある。


 でも、張角の憎しみはまだ“漢王朝”に向いていない。

 ただ“悲しみを止めたい”。その一心が、彼を突き動かしている。


 民を救うことが劉辯の願いで、また張角の願いでもあるなら、二人は同じ方向に向かって歩いていける。

 そう思った。


「……」


 劉辯はしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。


「董白。其方の言うことにも一理ある。確かに、いま太平道を禁じるのは博打みたいなものだ。民の不満を受け止めるだけの力はもう……いまの漢王朝にはない」


「へ、陛下!」


 劉辯の言葉を遮るように李杏が声を上げる。

 例え友人として認識されていても、何でも許されるわけじゃない。

 当然、皇子としての言葉には責任が伴う。


 事実上、劉辯は認めたのだ。漢王朝の、劉家の持つ力の失墜を。


「良いのだ李杏。董白にはもう()()()()()()。未来が──見えているのだからな」


 李杏は目を逸らし、劉辯は右手で彼女を制したままこちらを見た。

 細くなった銀の瞳に、強い決意を感じる。


 私はそれにゆっくり頷いた。


「董白──確かに其方の仙力は、天候を操れるほど凄まじい。しかし前にも言ったが、五行とは常に巡るものだ。一夏の気候をそのまま変えてしまえば、その後どんな反動がやってくるかわからない」


 そう言って劉辯は李杏を見た。

 彼女が続ける。


「陛下のおっしゃる通りです。小紅ちゃんの仙力はすごいけれど、それはそのまま“諸刃の剣”になり得るの。かつて先の時代に起きた地震、洪水、干魃(かんばつ)……。そういったものの中には、行き過ぎた“仙術”が原因になったものもあると伝えられているわ」


 その表情は真剣で、彼女は嘘をついていないとわかる。

 また劉辯が続けた。


「逆に、仙術で民が救われた話だって無数にある。つまり問題は、いつ、どう使うかだ。そして何より大切なのは、力を“巡らせる”ことだ」


 劉辯の顔は厳しい。でも、その言葉の中にはヒントもあった。

 私はその言葉を繰り返してみる。


「巡らせる……」


「ああ。うまく五行が“一巡”すれば、何も問題はない。でも董白、其方の仙力の相性は……」


 劉辯は、そこで言葉を切った。


 “火”に──傾きすぎている。


 私の脳裏に、いつか熱に耐えかねて砕け散った水晶玉が鮮明に蘇る。

 その瞬間、胸の奥が急速に冷えた気がした。


 だけど、劉辯の視線はゆっくりと私の背後に移った。


「だから……おそらく今回も。もう一つの“鍵”を握るのは其方だ」


 その視線を追って、私は振り返る。

 そこにいたのはもちろん、“水色の髪”の少女。


 少女は目をぱちくりさせて、口を半開きにしてしばらく言葉を失った。

 そして次の瞬間──、


「ええっ!? ま、()()私ですかぁ〜〜!?」


 文姫(ぶんき)の、どこか間抜けで可愛らしい声が、行政宮の奥に響いたのだった。


 ***

ちょっと短編書いてるから次話は1週間ほどお待ちを♡

よかったら他の読んで待っててくださいね!


面白かったらブクマ&★評価をもらえると

明日の更新の励みになります( ๑❛ᴗ❛๑ )♪

まだまだお付き合いくださいね☆

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