#73 悪役令嬢
※このお話は、時系列では#69と#70の間に起きた出来事を書いております。
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時間は決勝の前まで少しだけ巻き戻る──。
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霊帝さまの詩を前に、頭を抱えている文姫。
お母さまにああは言ったけれど、ここから先は私たちの“機転”にかかっている。
(でも一体どうしたらいいんでしょう? 私、“愛”の歌なんて返せません!)
文姫は才女ではあるけれど、その中身はまだ小学生にもなっていない。
“愛”を語るには、人生経験が圧倒的に足らないのだ。
(いいの。ここで“愛”の詩を詠んだらそれこそおしまい。何皇后に、目をつけられる)
そう。この詩に真っ向から挑むのは愚策。
と言うよりも、霊帝さまが“詩を詠んだ”段階で、私たちの“勝ち”は消える。
お母さまが霊帝さまに“愛”を向けられたと何皇后が知った時──いずれ嫉妬の“毒”がお母さまに及ぶのだから。
(じゃ、じゃあ。どうすれば……)
文姫が足元に目を落とす。私も。
小さくて細い足。それに、震えてもいる。
油灯がゆらめく。床に映るのは、お母さまの影“だけ”だ。
お母さま……だけ?
私は、自分たちの足元にもう一度目をやる。……“影”がない。
もう半分忘れかけていたけれど、私たちは“姿が消えてる”んだ。
(文姫……思いついたかもしれない。この“勝負”に勝つ方法)
(えっ!?)
(もう一度筆を貸して。文姫は、四人の特別審査員たちを褒める詩を)
(いったい、何をするんですか?)
(お母さまに動いてもらうの。それに、李儒と劉辯にも)
全部だ。いまの私たちが使えるもの全部。
お母さまの容姿。文姫の詩。李儒の威容。そして、劉辯の“変化の術”。
時間は残り20分くらい。急がないと。
お母さまに宛てた手紙には、こう書いた。
『お母さま。李儒に言って。
楽団に、演奏と踊り子を用意するようにって。“霊帝さま”が言えば、何とかしてくれるって。
意味はわからなくていい。ただ、そう伝えて。
お母さまは、舞いの準備を。詩はこっちで作るから。
私と文姫が、霊帝さまの詠み札を焼く。それが合図』
手紙を滑り込ませると、お母さまが頷く。
「李儒……ちょっと」
李儒は無表情のまま、ほんの一度だけ首を縦に振る。
よし。こっちは大丈夫そうだ。
(文姫、早く。お母さまにだって用意があるわ)
(ちょ、ちょっと待ってください。あの内容……つまり、大会を“乗っ取る”んですか!?)
私はこくりと頷く。
(ええ。霊帝さまの詩を燃やすの。詩は“こっち”で書き換える)
(ああ……なんか物語の“悪役”みたいですね。ドキドキしてきました!!)
ふふっ。文姫は勘違いしているみたいだけど、ちょっと違う。
悪役みたい──じゃない。
正真正銘の“悪役令嬢”なんだよ、私はね。
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