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董卓の孫娘はお爺ちゃんを救いたい!〜悪役令嬢、竹簡の予言で滅亡回避〜大悪党の董卓ファミリーが闇堕ちする前に、私が全部救います!  作者: 雨咲 しゆみ
第二章──毒の予言と夜宴の蝶

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#38 仙術の手解き

 ***


「ふう……次にその技を使ったら、もう余は協力せんからな。覚えておけ」


「は、はい……」


 劉辯から再び必殺技の封印を命じられた私は渋々それに同意する。

 ちぇ。そんなに真っ赤になって怒らなくてもいいのに。


「ごほん……それでは、これから印の組み方と術言を教えていく。董白、覚悟はいいか? さっきも言ったが、これは口外無用。使うのは、自分の身に避けられない危険が迫った時だけだ」


 劉辯は念押しするのを忘れない。

 わかってる。でも、今回の危機は私のじゃない。董家全体の危機なんだ。

 だから、その約束はたぶん守れない。


「……うん」


 もう覚悟は決まっている。ただ、それは劉辯の求めている覚悟とは少し違うかもしれないけれど。


「よし。じゃあ、まずは“五行”とは何かおさらいだ。覚えているか?」


「えっと、この世を成している五つの元素……だったわね?」


「ああそうだ。“五行”は、天地のあらゆる場所に、あるべき姿で存在し、全ては循環する。天にして、太陽、月、そして雲。大地にして、森、山、川……それらを“自然”と呼ぶ。すなわち──『(おの)ずから(しか)り』」


「自ずから……ええと、叱られるの?」


「違う。其方は今、何を言っている?」


 はあと息を吐いた後、彼は補足してくれた。


「そうだな、簡単に言えば……あるべき姿に成るべくして成るという意味だ」


 うう……ちょっと難しいけれど、“五行”は勝手にいろんな姿に形を変えて世界を巡ってるって思えばいいのか。


「次に“仙術(せんじゅつ)”──“仙術”とは“五行”の循環に一時的に干渉することで、意図した現象を引き起こす術のことだ。“(いん)”を組むことで道を描き。“術言”を唱えて五行を流しこむ」


 なるほど、“五行”は常に巡ってる電気みたいなもの。そしたら“印”は回路、“術言”はスイッチか。

 頭の中で電気回路をイメージしてみれば、仙術がまるで科学とそう変わらないものの様に思えた。


「それで、印はどうやって組むの?」


「はは、そう焦るな。まずは準備が必要だ。掌をだせ」


 劉辯に言われるまま、私は右手を差し出す。


「『木・火・土・金・水』。親指から順番にそれぞれの元素を意識し、結びつけろ。親指は木、人差し指は火、そのあとは土・金・水の順。最初はなかなか慣れないだろうが、これからはいつも指先に五行を意識するんだ」 


 彼は親指から順番に、一つずつ私の指をなぞりながら言った。

 ちょっとくすぐったい。

 彼が手を離してから、私は掌の緊張をほぐす様に振る。


「うう〜ん……いつも?」


「……そうだ。印は形だけ組んでも意味がない。五行を理解し、その身に宿すことが、仙術発動の絶対条件になる。それと、くどい様だが其方の仙力は規格外だ。正しい道を描けなければ……今度は指を火傷するくらいじゃすまないかもしれないぞ」


 ちらと劉辯は私の右手を見る。

 それに促されるようにして自分の手をよく見れば、人差し指の先に小さな水ぶくれができていた。


「……あ」


 水晶玉から手を離す瞬間感じた熱さ。……火傷になってたのか。

 遅れて、じん、と痛みが走った。こういう痛みは、気づいた途端に追いかけてくる。


「さっきのことは其方の適正もあるが、余も少々軽率だった。……貸せ」


 そう言って、私の手に左手を重ねる劉辯。

 右手だけで印を組むと、ふっと息を吐いた。刹那、重ねた手が淡く光る。


 光が収まれば、火傷は綺麗になくなっていた。


「わぁ……ありがとう。それもできる様になる?」


「ふっ、これは無理だ。……当分はな」


 思わず尋ねた私に、劉辯は笑って答えた。

 その笑顔を見ながら、誰かを傷つける力じゃなく、守ったり、癒したりする力が欲しい。そう思った。


「……うん」


 私は小さく頷く。


「さて、印の組み方と術言だが……」


 そこまで言ったところで、劉辯の顔が明るくなる。彼は眩しそうに目を細めた。

 振り返ると、西の空が赤い。もうすぐ陽が沈む。

 

 まるで朱雀の気配に退いたみたいに、雨雲はもうすっかり散っていた。

 

 ……あ。忘れてた。

 お母さま達が心配するから、陽が落ちる前には帰る約束をしていたんだった。

 あまり遅くならないうちに戻らないと。


「もうこんな時間か……今日はここまでにしよう」


 劉辯の言葉に私も頷いた。


「そうね。続きは……」


 言い終わる前に答えがくる。


「また明日。時間は……今日と同じくらいでいいか?」


 少し緊張したような面持ちで劉辯がこっちを見ている。夕日に染まった頬は少し赤い。


 なんだ? 急いで教えなきゃいけない理由でもあるのだろうか?

 こちらとしては急ぎで覚えたいところなので、その提案はありがたい。


「問題ないわ。じゃ、また明日。この部屋で」


「……門まで送ろうか?」


「ううん。ここでいい」


 軽い挨拶を交わした後、私は急いで行政宮の門を出る。

 西に沈む夕陽が眩しい。晴れた空は、まるで私の心みたいだった。


 太陽に人差し指を重ねて片目を閉じる。

 指先が、まだ少しだけ熱い。私は心の中で小さく呟いた。


 人差し指は火。火の神は朱雀……よし、覚えた。

 今日はちょっと驚いたけど、これからよろしくね。朱雀!


 空を渡る鳥が、どこか遠くから鳴き声を返してくれた。そんな気がした。


 ***

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