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董卓の孫娘はお爺ちゃんを救いたい!〜悪役令嬢、竹簡の予言で滅亡回避〜大悪党の董卓ファミリーが闇堕ちする前に、私が全部救います!  作者: 雨咲 しゆみ
第二章──毒の予言と夜宴の蝶

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#34 お願いハートショット

 ***


 そのまましばらく時が流れた。

 私はじっと黙ったまま、劉辯の背で言葉を待った。

 こういうとき、私なら顔を見られたくないから。


「……董白」


「うん」


「願い事があるんだったな」


 そう尋ねる皇子の声に、もう震えはなかった。

 私はそっと椅子を引き、彼の隣に座った。目だけで彼を見れば、もうそこに弱さの影は微塵もない。

 彼は一つ咳払いをしてから続ける。


「さて、先ほどはみっともないところを見せてしまったが……其方の言うとおり、余は皇子だ。それに、打ち明け話を聞いてもらったという借りもできた。喜んで聞き届けようじゃないか。其方の願いとやらを」


 促すように視線を送り、彼は言った。

 

 そうだ。私はそのためにここに来たんだった。色々と深刻な話を聞いたせいか、すっかり忘れていた。


 でも、何と切り出せば良いだろう? 

 初対面で惜しげもなく披露された『変化の術』だけど、劉辯はあれを『王家に伝わる秘術』と言っていた。

 もしそれが本当なら、みだりに世間に知られて良いものじゃないはずだ。

 

 それを曲げるなら、劉辯が納得するような理由が要る。或いは、さっきのスカウトを呑むか?

 いや待て待て。劉辯は確かに良いやつだけど、それじゃ私が自由に動きづらくなる。

 そんなことを考えていると、劉辯が急かすように声をかける。


「どうした? 何かあるんじゃないのか?」


「いや、あるにはあるんだけど……ちょっと頼みづらいかな〜って」


「なんだ、遠慮しているのか。余と其方の間柄だ、まずは話せ。どんな頼みかくらい聞かせてもらわないと余も判断しかねるぞ」


 劉辯は腕を組んで頭をひねる。


「そ、そうかな?」


「ああ。それで、その頼みは余が何とかできることなのか?」


「う……うん」


 劉辯の問いに私は頷く。

 そうだよね、私が一人で悩んでても話が前に進まない。

 

 じゃあここは……とりあえず出しとくか。

 最近覚えた“あの技”を。


「実は……」


 まずは軽くステップし、劉辯に背を向ける──重要なのは間合い。至近距離で射抜く。


 両手を前に、軽く拳を握り口元へ。そして肘はきゅっと寄せて、羽を畳むみたいに。

 

 振り向く瞬間、首を少し傾けながら……最初はあえて目線を合わせない。


 声にはできるだけ甘さが乗るよう、やや小さめに。


「実はね、『変化の術』を……教えて欲しいの……」


 そこまで言ってから、躊躇いがちに視線を合わせる。もちろん上目遣いで。


 そして──解き放つ。必殺の口撃。


「……お願い」


「ぬぉおおっ!?」


 名付けて、必殺──“お願いハートショット”。

 お爺ちゃんとお父さまだったら、これで大抵のお願いを聞いてくれる。

 

「な、何だその顔は!? って、変化の術?」


 効果は抜群だった。劉辯は顔を真っ赤にして少し混乱している。


「そう、お願い劉辯。私、あの術のこともっと知りたいの」


 そう言って、私はお願いの出力を少し上げた。


「ぐっ!! お、おい! 何だかわからんが、やめろその仕草を!!」


 劉辯の喉が、こくりと鳴った。


「え? なんで……私、可愛くない?」


 さらに出力を上げる。


「ぐ……ぐあああ!! い、いや! 可愛い! すっごく可愛いです!!」


「じゃあ……董白のお願い、聞いてくれる?」


「分かった! 分かったからその感じやめろ!!」


 劉辯は必死に目を逸らしたまま、もう降参だと両手を上げた。


 ふう。何とかなるものね。


「二度とそれを宮中で使うな。……余の心臓がもたぬ」


 ぜえぜえと肩で息しながら、額の汗を拭って彼は言った。


 あ、はい。自重します。(……多分)


「よし。教えてやる。ただし──王家の術だ。守るべき約束がある」


 何とか呼吸を落ち着かせてから、劉辯は続ける。


「絶対にバレるな。この術を使えるのは王家のごく限られた人間だけだ。もしバレたら……其方の命に関わる」


 ***

面白かったらブクマ&★評価をもらえると

明日の更新の励みになります( ๑❛ᴗ❛๑ )♪

まだまだお付き合いくださいね☆

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