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董卓の孫娘はお爺ちゃんを救いたい!〜悪役令嬢、竹簡の予言で滅亡回避〜大悪党の董卓ファミリーが闇堕ちする前に、私が全部救います!  作者: 雨咲 しゆみ
第一章──破滅の予言と滲む未来

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#17 お父さまと

 ***


「ぜぇ、ぜぇ。うう……苦しい……」

「だ、大丈夫かい。小紅!?」


 振り返り、慌てた様子で声をかけてくるのは父、阿樂(あれく)だ。

 あの後、華雄はしっかりと王宮に手紙を届けて戻ってきた。「なんか、当たり前のことしただけなのにお役人に感心されちまったぜ」と得意げに話していたことから、丁寧な返事を用意して正解だ。間違いなくあの文は霊帝さまの元に届いたろう。


 あれから三日──いま私は身体を鍛えている。華雄と約束したとおり、父を無理やり誘って。


 ただ歩くのも暇なので、父は私にいろんな昔話をしてくれた。

 阿樂(あれく)は色白で線の細い人だ。本来の名は、イスカンダルというらしい。


 こちらに来て暫くは商人名の牛輔(ぎゅうほ)を名乗っていたけれど、母と結婚するときお爺ちゃんの婿養子に入り、董輔(とうほ)と名を改めた。


 混血児で、西洋ではなく砂漠の出身だと言っていた。現代ではタリム盆地と呼ばれるその地域は、古くから交易が盛んで色々な土地の血が混ざる。父もその一人だ。

 シルクロードを使って長い道のりをここまでやって来たはいいが、その旅で散々な目に遭い、結局はこの中華に落ち着くことを決めたらしい。さて、何があったんだろうね?


 そんな彼を伴って、私はここ数日、毎朝のお散歩に出ている。何だって? 訓練らしくない? いやいや、基本を疎かにすると後々怪我をすることになるから!? 私だって、最終的にはちょっとぐらい走っても平気な顔でいられるようになるんだもん!


「今日はもう帰ろう。ほら、あの通りで馬車を捕まえて……」


「お父さま。私はいやです」

 阿樂の提案に、私は首を振る。


「いや、やだって言ってもほら、小紅はもう歩けないじゃないか」

「そんなことはありません」


 私はムキになって答える。早くこれくらいは一人でも歩ききれるようにならないと、この先ちゃんと生きていけるか心配になるからだ。


「うう〜ん。でも……いや、そうだね。君は董璃に似て頑固なところがあるからな。これは口で言っても無駄かな」


 父は少し考える素ぶりを見せて、すぐに何か閃いた顔で笑った。この顔は……

 私は身構えたが、父は私の腕をするりと外して掬い上げた。そして、お屋敷に向けて一目散に駆ける。


「ちょっ! お父さま!?」


「ほら、今日もこうして僕が走るから、君は何とかしてこの腕から逃げ出してみるといい」

「ああ、もう! お父さまったらいつもこうするんだから!」


 私はぽかぽかとその胸を叩くが、小さな子供の手足じゃ大人の力には抗えない。

 街を歩く町人たちが、微笑ましいものを見るような顔でこちらを見ている。は、恥ずかしい。

 そうしているうち、あっという間に私たちはお屋敷についてしまった。


「ほら、ついたよ」

「もう、お父さま! これでも私、もう小さな子供じゃないんですから。少し恥ずかしいですわ!」


 私は不機嫌を全開にして目を逸らす。だって、中身は高校生だぞ? いくら見た目が五歳とはいえ、これを喜べというのは無理がある。


「もう。素直じゃないな〜」

「私はとっても素直です!」


 そう答える。それにしても、父には体力がないと思っていたのに、蓋を開けてみればどうだ。結構な距離を駆けたのに、今も息一つきらしていない。……この人、見た目に反して“足腰”が強い。旅の人間って、そういうもの?


「あら、貴方、小紅。お帰りなさい。今朝はどうだった?」

 そんなやりとりをしていると董璃が門のそばで私たちを迎えてくれる。


「聞いてくださいお母さま! お父さまが私を甘やかすの!」


「あらあら、阿樂ったら。また今日も小紅を担いで走ったの?」


 母はふふふと口に袖を当てて笑い、私たちを手招きして一緒に門を潜る。

 幸せそうなその表情は、女の子の私から見ても魅力的だ。あかん。これ絶対、霊帝さまに会わせたら惚れられてしまう。


「まあね。小紅も少しずつ歩ける距離が伸びてきたけれど、まだ往復するのは辛そうだったからさ。僕の訓練にもなるからいいんだ。それより董璃、外で何をしていたんだい?」


「ふふ、ほら見て。ちょうど最初の梅の花が開いたの。明後日は何皇后陛下の主催するお茶会よ。後宮の庭園はさぞ綺麗でしょうね」


 母の言葉を聞き、私の胸の奥に棘が刺さる。肝心の茶会への欠席については、まだ母には話せていない。

 ここに来てから毎日、母は髪の手入れや装飾選びに余念がない。この茶会をかなり楽しみにしているように見えたからだ。

 なんて説明すれば思い留まってくれるのか。いっそ、正直に予言のことを伝えてしまうか……?

 そんなことを考えていた時だった。


「ああ。そういえば、確かにそんな催しがあったね。後宮には僕たちは入れないから、楽しんでくるといい──小紅も」


「っえ!?」

「あれ? 董璃から聞いていなかったのかい? 今回の茶会には貴族子女──つまり、君もお呼ばれしているんだよ」


 父の言葉に、胸の奥がすっと冷えた。

 な──何ですって!? 


 ***

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まだまだお付き合いくださいね☆

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