422.俺たちらしくあるために
学校を出て電車に乗り、やってきたのは繁華街にあるスマホショップ。
隼人がスマホを購入した店だ。
その時のことを思い返した隼人が、少しおかしそうに呟く。
「そういやここで初めてスマホ買ったんだよな」
「確か種類がたくさんあって、どれ選べばいいかわからないから持ってなかったんだっけ。そんで結局、ボクと同じ機種にした」
「使い方とか春希に聞けばいいと思ってな。もうスマホ持ってなかった時、どうやって生活してたかわからないくらいだけど」
「でしょー。そんで、この店に何か用? スマホの修理?」
「いいや、ちょっと寄っただけ」
そして向かった先は、百均ストア。
地上5階地下1階総売り場面積1000坪以上、国内最大規模を誇る店だ。
その店を前に、春希がそわそわした様子で訊ねてくる。
「ここで何か買いたいものあったの?」
「いや、特にない。けどここって色んなもの売ってるからさ、見てるだけでもうきうきしてくるよな。ちょっと覗いて行こうぜ」
「いいね」
心の赴くまま、面白そうなものがないか見て回っていく。
観葉植物コーナーでエアプランツ、ガジュマル、テーブルヤシといったものが並ぶ中、見逃せないものを見つけ、隼人は思わず叫ぶ。
「え、コーヒーの木!? コーヒー豆ができる、あのコーヒー!?」
「わ、どうもそのコーヒーぽいね」
すぐさまスマホで検索をかけると、グリーンインテリアとして人気があるらしい。
そして実際に実を付けてコーヒーにできるとか、驚くことに野生では10メートル以上の大きさにまで成長するとか、コーヒーの産地では剪定して2~3メートルの高さに育成し、収穫しているということを知る。また寒さに弱いものの、初心者にも育てやすいともあった。
隼人と春希は2人して気になる、育ててみたいかも、温度管理が案外手間じゃないかと会話が弾む。
バラエティグッズコーナーでは春希があるものを見て、好奇心に満ちた声を上げた。
「わ、メガネストローだって!」
「うっ、俺の心の中の小学生がめちゃくちゃ欲しがってる!」
メガネストローは文字通り、メガネ状になったストローだ。
ジュースが目の周りをくるくる回って飲める代物。
傍から見てもバカバカしく、笑えそうなグッズである。
置き場にも困るし、洗うのだって手間だろう。
だけど100円だし、使い捨てればいいやと割り切り1つだけ購入した。
他にも仕分けされてるポーチが便利そう、ジオラマ用の道具を見かけて久々に作りたくなってきた、この大きさの蓋つき収納ボックス便利そうなどと話して店を後にする。
次に足を向けたのはカラオケセロリ。
隼人はかつてのことを思い出し、苦い顔をして呟く。
「ここでハニートーストを、やけ食いするように食べたっけ」
「あったね、そういうこと。ていうか今日見て回っているとこって、隼人とスマホを買いに来た時と同じコース辿ってる?」
さすがに春希も気付いたようだ。
隼人は悪戯がバレたような顔で首肯する。
「まぁな」
「今日、隼人がしたかったことが、いまいち見えてこないんだけど」
「それはそれとして、楽しめただろ?」
「まぁね」
顔を見合わせ、にししと笑う。
そして隼人はコホンと咳払いをして、少し躊躇いながら言う。
「これも確認みたいなものだから」
「また出た、確認」
「最近さ、あの日春希が言っていた『ボクたちって一体何だろう』て言葉の意味をよく考えるんだ」
「……ボクたちは、ボクたちだよ」
春希は困ったように言う。
隼人はどこか遠いところを見ながら呟く。
「再会して離れている間に色々変わったことがあって、知らなかったことを知って、それでも変わらないものがあるってわかったんだ。春希は春希だった」
「そうだね、ボクも隼人に驚かされたことがいっぱいあったけど、隼人は隼人だった」
「きっと、俺たちの根っこの部分は変わらない。でも環境や立場は、嫌でも変わっていく。これは避けられない」
「それは……」
「なぁ春希、これからも俺たちが俺たちでいるには、俺たちらしくあることが必要だと思うんだ」
「…………どういうこと?」
眉を寄せる春希に、隼人はスマホで時間を確認した後、どこか寂しそうに言う。
「次が今日、本当に行きたかったところだ。付いてきてくれ」





















