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転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件【2026年7月アニメ放映】  作者: 雲雀湯@てんびんアニメ放映中
最終章

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412/425

412.僕たち、友達だろう!?



 しかし一輝は怯むことなく、追い打ちの言葉を浴びせる。


「正確には二階堂さんの足手まといになってしまう自分を、認めることに怯えてる」

「それ、は……」


 今度は頭から冷たい水を被せられたような感覚。

 一輝の指摘が胸に突き刺さり、ズキズキと痛みだす。

 自分でも無意識のうちに考えないようにしていたことだった。

 春希がどうして芸能界を意識から切り離しているのか――そんなの、本人がこの日常に帰ってくるためと言っていたではないか。

 一緒に登校して授業を受け、お昼を食べて部活やバイトをし、同じ食卓を囲む。

 そんな春希の日常の中心にいるのは、隼人だ。

 隼人こそが、今の春希を縛っている。

 そのことに否が応でも気付かされた隼人は、どこか曇った表情をしている一輝に弱音を吐く。


「……けど俺には、春希と同じところにまでいける才能なんてない」

「僕もだよ。同じ業界にいて、ひしひしと感じる」

「それでも一輝は、同じ土俵にいるじゃないか」

「姉さんたちのおかげだね」

「俺は一輝と違って、そんなコネもない。ただの高校生だ……どうすりゃいいんだよ」


 隼人は項垂れ、やり場のない気持ちを零す。

 すると一輝は肩を掴んで隼人の顏を上げさせ、真っすぐに目を見て思いをぶつける。


「なら、相談してくれよ! 僕たち、友達だろう!?」

「一輝……」

「僕だって、どうすればいいかなんてわからないさ。でも一緒に考えることはできる」


 やがて隼人は肩の力を抜き、頬を緩めた。


「そうだな一輝の言う通りだ、悪ぃ。俺、今まで同世代の友達なんて初めてだからさ、こういう時、相談するっていう選択肢がなかった」

「だから、隼人くんはいつも1人で突っ走るんだよね」

「うるせーよ」

「猪突も――余計なこと考えず、すぐ動けるところが隼人くんのいいところだと思うよ」

「誰がイノシシだ!」

「ははっ」


 そう言って隼人と一輝は互いにおかしそうに鼻を鳴らす。

 一息吐いたところで、隼人は話を切り出した。


「で、実際どうすればいいと思う?」


 すると一輝は少し思案した後、重々しく口を開いた。


「……僕はこのまま、二階堂さんが一般人に戻るのも有りだと思う」

「おいおい、最初と言ってることが違うぞ」

「あはは、そうだね。僕個人としてはアイドルや声優している方が、二階堂さんは活き活きしていると思う。だけど二階堂さんが、隼人くんの下に戻りたいというのも本心だろうね。けど……」

「けど、なんだ?」


 もったいぶる一輝に眉を顰める。

 一輝はやけに真面目な顔をして、厳めしく問う。


「隼人くんは、二階堂さんを受け止める覚悟はあるかい?」

「受け止めるって、どういう……?」

「母を亡くして天涯孤独になった二階堂さんにとって、幼い頃の思い出を共有している隼人くんと姫子ちゃんは、特別な存在だ。それこそ、ただの友達の範疇を超えた相手だっていうのは、理解しているかい?」

「それは……」


 大袈裟だ、と言い切れなかった。一輝の指摘通り、今の春希にとって隼人は相棒以上に特別な存在だと、客観的に言われて初めて理解する。

 一輝は、窘めるように言う。


「隼人くんが二階堂さんにこのまま日常に戻ることを、一般人であることを望むなら、その気持ちを受け止めなきゃいけない。その覚悟はあるかい?」

「…………」


 改めて一輝に言われたことを噛みしめる。

 親を亡くした春希は、寄りかかる相手がいなくなった。

 その相手になれるのか?

 相棒だ、なんて言ったところで、未熟者の青臭い約束でしかない

 隼人はまだ、ただの高校生でしかないのだから。

 そのことを、思い知ったばかりだ。

 やがて予鈴が鳴ったところで、一輝が少し言いにくそうに話を締める。


「とりあえず今の僕から言えるのは、二階堂さんが芸能界に復帰するのか、一般人として戻るのかは、隼人くんの意思が重要ってことだね」

「……責任重大だな」

「はは、何かあったら頼ってくれよ」

「あぁ、そうする」


 そして2人して、困った顔で笑った。



 ――春希の今後をどうするのかを決めるのは、自分次第。

 そのことを一輝に指摘された隼人は、余計にどうすればいいのかわからなくなった。

 そもそも自分でも春希にどうなって欲しいのか、答えを出せていない。

 だけど、このまま流されているのはダメだろう。

 一輝からガツンと言われて、目が覚めた。

 あぁして本心をぶつけてくれる友人に感謝だ。

 隙あらば春希をジッと目で追い、考える。

 どうするのが、春希にとって一番いいのか。

 自分にできることはなんなのか。

 そうやって自問自答し続けたこの日の夕飯時。

 当の春希から、困った声が上がった。


「えーっと隼人、今日は午後からずーっと見られてる気がするけど、ボクに何かある?」

「あー、その……」


 春希のことっを考えるあまり、ずっと春希を見つめていたようだった。

 隼人が言葉を詰まらせていると、春希が聞きにくそうにしつつも訊ねてくる。


「やっぱ昼休み、海童にボクのことで何か言われた?」

「ふーん、おにぃってば一輝さんと何かあったんだ?」

「いや、なんていうか……」


 続けて姫子がさりげなく昼休みの件について言及してくるも、答えあぐねる。

 しばしまごつくものの、あの時のことをバカ正直に話すわけにはいかなくて。

 隼人は観念したようにゆっくり息を吐き出した後、これまで思っていた、あることを口にした。


「今の春希ってさ、髪短くして昔みたいだなって。もし月野瀬であのままずっといたとしたら、こんな感じだったのかなぁって思ったんだ」


 すると姫子が、どこか納得したような顔をして賛同する。


「あー、そうかも。今のはるちゃんだと、余計にそう思う。なんていうか幼い頃からこの4人で一緒だったら、こんな風だったのかなって気がしてさ」

「だろ? きっとそういうあり得た日々もさ、楽しかったんだろうなって。だけど、現実は違う。もう、そんなことはならないんだ……」

「おにぃ……」「隼人……」


 隼人が胸の内を吐き出すと、どこかしんみりとした空気が流れる。

 きっと、皆も同じことを思っているのだろう。

 だがその時、ふいに沙紀が思いもよらぬ声を上げた。


「お兄さん次の休みの日、私とデートしましょう!」

「で、デート!?」


 いきなりのことにびっくりしたのは隼人だけでなく、姫子と春希も沙紀へと驚きの目を向けている。

 その沙紀は毅然とした態度で、はっきりと口にした。


「はい、デートです!」

「えっと、どこか行きたいところでもあるのか?」

「あるといえば、あります。けどそれはお兄さんと、年頃の男女として行きたいところ、って意味です」

「へ? それって……」

「文字通り、年頃の男女がするデートです。私的に、お兄さんをドキッとさせるつもりで臨むデートです。ダメですか?」


 いきなりの展開にあ然としつつも、隼人は沙紀の勢いに気圧される形で頷いた。


「あ、あぁ、わかった」



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― 新着の感想 ―
とても良い友達が出来た。 そして真っ直ぐに向き合ってくれる仲間もいる。 それだけで幸福な事ですね。 答えを出す為に動くのも、また凄い。 なかなか出来る事ではありません。
誰かさんはホント煮え切らないな 
春希さんが心から笑えていないと隼人さんが気付いたこと、隼人さんの様子がおかしいと姫子さんが気付いたこと、それらと同じように、沙紀さんが気付いていることもあるかもしれませんね。
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