398.動物園②思わぬ弁当
驚きの中にあった隼人は、思ったままの感想を口にする。
「なんかすごく懐かしいというか、昔のはるきみたい」
「でしょ? ボクも狙ってみた!」
「んじゃ、今日は昔みたいな感じで遊びに行くか」
「うんっ」
なんだかかつてに戻ったような不思議な感覚に見舞われ、2人して顔を見合わせ、くつくつと笑う。
そして姫子に言われたデートだどうこう考えるのが、バカらしくなってきた。
今日はただ昔のように、いつものように春希と遊べばいい。
そう気持ちを切り替え、連れ立って動物園へ向かう。
案内板に従いつつ人の流れに乗り、迷うことなく到着するものの、隼人と春希はあちゃあといった声を上げた。
「うわ、人めっちゃ並んでる」
「こりゃオンラインでチケット取った方がよかったかも」
「でも数は多いけど、動きは早いな」
「確かに。じゃあボクたちも並ぼう」
隼人と春希がチケット売り場の最後尾に並ぶと、思ったよりも早く人が捌けていき、そして自分たちの後ろにもどんどんと人が並んでいく。
並びながら東と西でエリアが分かれているみたい、料金めちゃくちゃ安くないか、北陸の古城公園にあった動物園とは規模が違うねといった他愛のない話を咲かせていると、さほど時間もかからずチケットを購入することができた。
そして胸を高鳴らせながら園内へ入るなり、目に飛び込んできた建物へ、春希が快哉を叫ぶ。
「わ、五重塔だ! おっきくて、すごく立派! ね、観に行こうよ隼人!」
「おいおい、動物園に来て、最初に行く場所がそこかよ」
「隼人は気にならないの?」
「いや、めっちゃ気になる。てかなんで動物園に五重塔があんの!?」
「びっくりだよね!」
「お、ちょっと待て、園内マップによるとそのすぐ近くに、日本の動物と鳥のエリアがあるぞ」
「ほんとだ、五重塔のすぐ隣にもカモシカもいるっぽい!」
「んじゃ、そこから行こうか」
かくして隼人と春希の動物園巡りが始まった。
五重塔に感銘を受け、カモシカが牛の仲間ということに驚き、ルリカケスの鮮やかさに目を奪われる。
続いて動物園の定番、象の圧倒的な大きさや鼻を使った豪快な水浴び、それぞれ個性が出る愛嬌ある動きに頬が緩む。
ヒグマやツキノワグマを見て、こんな巨体の熊が街中で現れたら、そりゃニュースになるなと話したりも。
またこの日の虎は、暑さにやられたのかヘソ天で寝ていた。大きな猫といった様子の姿に、つくしと同じだねなんて言って笑う。
猛禽類がいるエリアではタカやワシ、コンドルといった大型の鳥の凛々しさや知性を感じさせる瞳に吸い寄せられた。
夜行性の動物がいる建物では、照明が落とされた中、ロリスという原始的な猿やコウモリを、興味深く観察する。
普段は出会えない動物たちを五感で体験し、驚きと感動を分かち合えば、楽しさも倍増だ。
そして東側のエリアを一通り見て回るうちに、気付けばお昼になった。
あちこち歩き回ったおかげでくたくただ。
隼人は屋台が並ぶ休憩エリアを視線で促しながら、春希に言う。
「そろそろお昼にしないか? 食べるものとか、あの辺で売ってるみたいだし」
「それなんだけど、実はお弁当作ってきたんだ。隼人の分もあるよ」
「お、いいのか?」
「うん、ちょっと作ってみたいものがあってね。ボクが席を探すから、隼人は飲み物お願い」
「わかった」
春希が弁当を作ってきたとは驚きだ。
隼人は自販機でペットボトルのお茶を購入した後、人でごった返す休憩スペースをぐるり見渡し、春希を探す。
さほど苦労せず、こちらに向かって大きく手を振る春希を見つけた。
目立っているものの、周囲からはティンクルの春希とは気付かれていない様子。隼人はそのことに苦笑しつつ春希の下へ向かい、テーブルの上に買ってきたお茶を置く。
春希は隼人が対面に座るのを見計らって、作ってきた弁当を鞄から取り出し広げた。
「じゃん!」
春希は手を広げて、誇らしげに自分が作ってきた弁当を見せてくる。
春希が作ってきた弁当は、至ってシンプルなものだった。
アルミホイルに包まれたおにぎりをメインに、おかずは使い捨てのフードパックに入れられた卵焼きにタコさんウィンナー。爪楊枝も添えられている。
これらの弁当を見てテンションの上がった隼人は、思わずといった声を上げた。
「遠足の弁当だ!」
そんな隼人の反応に、春希はしてやったりとほくそ笑む。
「こういうの好きでしょ?」
「誰だって好きだろ、っていうか嫌いな奴とかいるのか!?」
「だよね。動物園に行くっていったら、遠足だと思って。ボクさ、隼人と遠足とかしたことなかったから、そういう雰囲気を味わいたくて」
はにかむ春希に、隼人はそういえばそうだったなと思い、しんみりと笑う。
「そうだな、今まで春希とできなかったこととか、できればいいな」





















