2.終わりと始まり 2
王より告げられた真実。それは彼が最初から対魔王戦の切り札であったという事実であった。
「では彼は!ルディは最初からあそこで死ぬために私達と旅を続けてきたというのですか、陛下!」
シーダはその事実に驚愕した。そして王が何故、旅の最初から彼を連れていく事を厳命したのか、その理由を知った。
「あの者は元々国で管理している孤児院の育ちなのだ。だが女神の神託により彼の者の持つスキルが、時に運命をもひっくり返す『トリックスター』という強力な物だとわかった時から、いずれ魔王討伐の際に必要な存在であると思い、信用できる者に預け、そのスキルを隠す意味も含めて道化師として育てさせたのだ」
それはすなわち、彼もまたここにいる4人と同じく生まれながらにして女神より特別な力を与えられた、紛れもなく勇者の仲間である事の証明だった。
勇者パーティとは4人と一人の従者という形ではなく最初から5人パーティだったのだ。
「魔王との戦いにおいてもしもそなたらが力及ばなかった時、その命を持って破滅の運命をひっくり返す役目を担っていたのがあの青年だったのだ!」
シーダ達はここで再びの絶望を味わう事となった。
もし彼女達が魔王を倒せるほどに強かったならば彼は死ななくても良かったという事だからだ。
彼は最初から死ぬつもりで自分達と旅を続けてきたのだと知った。
最後には自分の命を使ってでも助けるべき相手からの冷たい仕打ちに耐えながら、彼は文字通り命を投げ出して彼女達を救ったのだ!
何という事をしてしまったのか!と後悔しても、謝罪すべき相手はもうこの世にはいない。
思い出すのはいつでもどんな時でも笑っていたルディの顔。
シーダ達は自分達と違って何の責任も無いからそうやって無責任に笑っていられるのだと思い、余計に冷たく当たったりもした。
彼はどんなつもりで笑い続けていたのだろうか?
笑いながら『いつか世界中の人々を笑わせてみたい!』と大それた夢を語っていた彼は、最後まで希望を持つように教えてくれた彼は、どんな気持ちでそう言っていたのだろうか?
今となっては知る術も無かった。
姫勇者一行が魔王を倒して帰還した事はすぐに知れ渡った。
魔王が倒されて数日後、国王はお城の前の広場に国民を集めるだけ集めると正式に魔王が討伐された事を皆に発表した。
その時には魔王を倒して英雄となった姫勇者ことシーダ姫を始め、アーデにソフィ、ウルザもまたその見目麗しくも勇敢な姿を国民の前に現した。
その場にいた者たちは歓喜の声で新たな4人の英雄の誕生を祝うのであった。
だが勇者パーティの名前の中には本来であれば無くてはならない者の名前が消されていた。
魔王はこの国の姫にして勇者であるシーダとその仲間3名の手によって打倒されたと広く国内に伝えられた。
この事にシーダ達は強く反発したのだが、今はもう亡くなっている事と魔王戦でのみ活躍しただけという理由で聞き入れてはもらえなかった。
国王としては魔王討伐のためとはいえ孤児を一人犠牲にしたのだ。外聞の良いものではない。
場合によってはルディの死を口実にした現在の状況に不満を持つ者たちによる反乱やもしくは他国からの侵略もありうると判断。
それに未婚の娘たちが長く男と旅を続けていたという事実はよからぬ噂を巻き起こす。
そこにつけ込み彼女たちを本来の価値よりも低く見積もって妻へと求める他国の王族や自国の貴族も出てくるだろう。
それはこれからの政略に陰りをもたらすものであるため認めるわけにはいかなかった。
そう言った思惑が絡まり、ルディが孤児だった事も災いして、勇者パーティの5人目の仲間は王国の歴史からは消される事となった。
シーダ達は強く悔しさを噛みしめながらも王の意思に従い魔王討伐の祝賀パーティなどに出席するのであった。
そんな国の思惑とは裏腹に、国民は魔王討伐による訪れるであろう平和を祝って祭が開かれていた。
酒場はどこも満杯で人があふれ、大通りではこぞって商人が店を開いて財布のひもがゆるくなった住民たちを相手に一稼ぎしようと躍起になっていた。
吟遊詩人は此度の偉業をそれぞれに歌に変えて歌い、恋人達は手を取り合って踊り続ける。
子供達にはおかしがふるまわれ、老夫婦は自宅の窓から外の賑わいを楽しんでいた。
誰もかれもが浮かれ騒ぎ、姫勇者一行を称える言葉と乾杯の音頭が後を絶たない。
街の外れに位置近いその酒場もまた例外ではなかった。
「姫勇者一行に、かんぱ~い!」
そう言っては男たちは杯を傾ける。もう何度目の乾杯だか誰も覚えていなかった。
「ぷはー!やっぱり冷えたエールは美味いなぁ!あ、お姉さん、もう一杯ください!」
「は~い、ちょっとまっててねぇ!」
酒場の娘は両手に杯を多数持ちながら目まぐるしく動いていた。
それを承知しているルディは「は~い!」と声を返してポテトフライを口に運ぶ。
そう、そこには死んだはずのルディが祝賀ムードにかこつけて一人で酒盛りをしているという光景があった。
「無事に魔王も倒されて良かった良かった。命を懸けた甲斐が合ったってもんだよ」
確かにルディはあの時、自ら胸を刺して絶命した。
しかし今ここにルディは生きていて、呑気にエール片手に食事を楽しんでいた。
何故か・・・
「まぁこれからは危ない橋を渡る事無く静かに余生を過ごそうかな?せっかく生き返った事だしね。命大事に、面倒事は極力避けて、と・・・」
そんな彼の決心はしかし呆気なく打ち破られる事となる。
他ならぬ姫勇者一行によって・・・。
次回投稿は未定です。




