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BLACK&WHITE  作者: 鷹雪
TWO FACES
96/178

フォール・オブ・ドミニオン 前編

第6部開始です。

今回の主人公は正体不明の鉄男。マスク・ド・ドミニオンの側のお話となります。

かなーり変則的なことになっているので、若干読みにくいかもしれませんがよかったらお付き合いください。


ストーリーはデュポン社がまだアークシティに来る前のこと。自社の研究発表会を目前にして、スタッフであり友人でもあった男の裏切りが発覚したところから始まります。

ドミニオンの敗北から始まる物語、スタートです。

 それは華やかなるパーティ会場だった。

 コナー・フォスターとライアン・メイヒューはお互い初めて相手の事を知る。

 映像作家と元記者にして作家、2人はまるで十年来の親友であるかのようだった。明るく盛り上がり、その一方でビジネスに神経をとがらせている会場の事などそっちのけにして熱く語り合う。

 夜も遅くなり、それまで放っておかれてへそを曲げていたお互いのパートナーが迎えに来て、流石にそこでお開きということになる。しかし、まだなにか話し足りなかったのか。

 最後にお互いが今、興味を持っている人物について名前をあげることになった。


「マイケル・ヘルムスリー。デュポン社CEO」


 まるでお互いがすでにそのことについて語ったわけではないだろうに。まったく同じ人物の名をあげた。

 破天荒でミステリアス、最近の巷ではまた別の意味で注目されている36歳の男性。2人にまた火がつきそうだと悟ると。女性達はおのおのの相手を叱りつけて部屋へと引っ張っていく。

 彼らには残念なことではあったが、その日はそれでおしまい。『眠りの時間が来た』のである。


 だが、彼等がこのマイケル・ヘルムスリーについて再び会話するのは多くの時間が必要となるのだが、それはまた別の話。



▼▼▼▼▼


『ここ、グリーンランド沖。200キロに位置するパイラン島ではあの大富豪、先日68歳を迎えたばかりのミハエル・トロホウスキーを迎え。今宵にもおこなわれるマキシマ博士の会見で一大発表がなされるとのことです。

 その内容についてはいまだに詳しいことはわかりませんが。鍵となるのは私のこの後ろに見える研究所。このミュートロス研究所に関係があるとの情報が囁かれています。

 そして!この会見の主催はあの、マイケル・ヘルムスリー氏が担当。そうです、先日あのアークシティに自身の設立したデュポン社を移転させるという驚きの発表をしたばかりの…………』



 Dr.マキシマは ―― いや、マキシマ ヨウジはそこで自嘲の笑みを浮かべた。

 まただ。また、負けてしまった。

 夕暮れの近づくミュートロス研究所の宿泊施設は封鎖され、彼の野望は現実の物となる……はずだった。


「なぜだ、マキシマ?なぜ、こんな馬鹿な事を」


 展望台から見える、外の景色を見やるのをやめると。驚くほど静かな心のまま、マキシマはそう自分に問いかけてくる相手の顔を見た。


 マイケル・ヘルムスリー。

 

 少ししぼんだ中肉中背の彼は、最初に出会った19歳の時とは違い35歳となった今では貫禄のあるヒゲ面となっている。自分と同じ科学者で、研究者で、そしてなによりビジネスマン。自分には数少ない……そう、友人……”だった”。


「マイケル、もうよそう。マキシマ……僕も、君がこんなことになってしまって残念だ。本当に。君の苦境に立つ姿は、僕にも覚えがあるものだった。でも、それはいい。とにかく、もうすぐここには軍が到着する。だから……」


 この場所にもう1人いる人物がそう、自分に語りかけてくる。

 なんだ、こいつ?偉っそうに、この俺の苦悩に覚えがあるだと?


 ジェイムズ・マッカーシー。


 マイケルの竹馬の友、幼馴染み。そして金魚のフン。

 間抜けで、天才の後ろでしか役に立てない引き立て役。それがこの俺に同情するだと?

 怒りを覚えたが、なぜか平坦な声が勝手に口から飛び出していく。


「マイケル、覚えているかな?ロスでの夜の事だ。もう、16年も前の話になる。今日のゲスト、トロホウスキー氏と君。とても刺激的なディスカッションをした」 

「ああ、覚えているさ。忘れるわけがない」

「本当に?」

「もちろんだ。デュポン社も、君の研究に出資したのも。全てはあの夜のことが始まりだった」

「……あれは楽しかった。本当に、心の底からそうだった」


 Dr.マキシマはそう言うと。ポケットから銃型注射器を取り出して素早く自身の首元に押し当てトリガーを引く。

 マイケルとジェイムズが慌てて止めようとした時には、マキシマは激しく苦しみだし……。


 そして、その肉体が激しい変貌を遂げようとしていた。



▼▼▼▼▼



「ジーザス」

「なんてことを、なんてことをしたんだ。マキシマ」


 2人の呆然とした言葉に、マキシマは心地よさを感じる。

 展望台の外に見える太陽がオレンジがかってきた。夕暮れの時間が来る。変化の終わりで、一日の区切りで、そしてなにかの終わりを告げるものだ。

 オレンジ色の光に照らされたマキシマの体は、先程までの東洋人の平均的な姿では全くなかった。

 筋肉が盛り上がりすぎてあちこちが裂け、骨すら成長して身長も体重も膨れ上がり。人というよりも、巨人になりかけの化物といったそいつの醸し出す雰囲気はもはや野獣のそれに近かった。


「どうだ?この姿の感想は、2人とも。これが研究の成果だ」

「なんて……ひどい」

「醜い」

「ひどい?醜い?本気でいっているのかい?このの姿を見て!?」


 相手の言葉に激して話しだすと、裂けてしまった筋肉の間が赤く輝きだし。顔の鼻にあった一本の古傷もそれと同じような変化が始まる。


「これが俺だ!マイケル、あの時目指すと俺が言った目標の完成だ!!『人は、次のステージに立たねばならない。それはすでに目の前にある』どうだ!?俺のその答えは」

「そんな醜い化物になることがか?」

「違う。人が超人の力を超えるこの姿が、だ」

「へぇ、そうか。ならおしえてくれないか。その身体だと、何が違う?骨格を異常成長させ、筋肉も限界を超えて膨張させた。それで?

 空が飛べる?エネルギーを吸収できる?さらにそれを放出できる?ほかに何が出来る?」

「わかってない。マイケル、君にはこの力の凄さを理解できていない。私の研究の本質がわかってないのだ」

「なら聞かせてくれ。その膨れ上がっただけの筋肉を見せびらかされても、何とも思わんよ」

「『超人はどこから生まれ、どこへいくのか』これはあの夜のテーマだった」


 マキシマは得意げな顔で語りだす。


「The Crashという世界規模の災害の後に生まれ続けた超人の存在は、混乱を生んだ。

だが同時に大きく全てを動かした。世界はどうだ?あの前世紀のグレート・ウォーの勝者も敗者も関係なくしてしまった。なぜならば超人達があらわれたからだ。

 人間達は彼等を見て神だと言う。恐ろしいものだと言う。突然変異で、遺伝子のバグ。いや、未来だと言う。

 だが私は違う。

 アレは別種なのだ。人ではない。だが、恐れるべきものでもない。

 そして今のこの私の姿が答えだ!君は先程、私の姿を見て醜い化物だといったな。間違いだと指摘させてもらおう。なぜなら、これから私はこの肉体の使い方について学ぶ。人の遺伝子に刻み込まれた情報を、自在にとりだし活用する。それが出来ると確信している。

 それによって私の力はさらに強化される。

 そうだ、この肉体はこの先もまだまだ強化されていく。脳に秘められた力は次々と目覚めていく。遺伝子に刻まれた情報の手がかりからあらゆる可能性を模索していく。それが今のわたしだ!」

「マキシマ博士、君は……狂っている」

「ジェイムズ、凡人の君に理解できないのはしょうがない。しかし、そこにいるマイケルは違う。彼は理解している。だから私の計画も読み、破綻させてのけたのだ。

 彼は私と同類なのだよ。だから天才なのだ。そしてだからこそ私はその場合を想定して用意しておいたのだ!

 どうだ!驚いたか、マイケル!?」

「君の用意が想定外であったことは事実だ、そこは認めよう……」

「ふはははは、そうか。満足だぞ、大いに楽しくなってきた!!」


 そういうとマキシマは2人に背を向け、再びオレンジ色の太陽と向かいあう。

 服は破れ、剥き出しになった皮膚、そしてそこから避けて剥き出しの肉、そこに太陽の温かさを感じる。それを自覚すると、あふれ出る劇場を抑えきれずに咆哮をあげた。


「俺はついに夢をかなえた!人間ではない、超人などでもない。

 アルティメット・ヒューマンシング(究極の人間)MAXIMAの誕生だ!!」


 勝利と、新たな生物の誕生の喜びの声を化物が叫ぶ。

 それはパイラン島の美しい夕陽の中で見る、恐ろしく不安にさせるなにかに見えた。



「さて、ところで君達にはまだ隠している手札があるのか。ここらで聞いておこうと思う」


 突然、冷静に戻ったMAXIMAはそう口にすると。マイケルとジェームズの顔を見やる。


「確か、デュポン社には独自にマスク・ド・ドミニオンなるヒーローを開発。広告塔として使っていたはずだ。彼はどこかね?」

「……それをなぜ、今聞く?」

「なに、どうせ君等が次に用意するのはそいつだろうと容易に想像が出来るからね。だが、同時にそれはないんじゃないかとも思っているんだよ。

 たしか先週だったね?イギリスで大空中戦をやらかしたのは。そのTV中継を、俺は”自分の研究データ”を処分しながら見ていたよ。だいぶ、酷い目に合わされていたようだった」

「研究を、処分しただって!?」

「何を驚くんだ、ジェームズ?俺の気持ちがわかるんじゃなかったのか?あの、ヒノモトのクソ共に散々に馬鹿にされ、屈辱を味わされた来たのだ。お前等のような奴等にこの”俺”の究極の力についての手がかりなど残しておくものかよ。当然、全てを処分した。助手たちも含めてね」

「なんてことを……」

「万が一、そんなことはないが。もしこのMAXIMAが破れるような事態があったとしよう。その後でマイケル、君のような優秀なビジネスマンが。この研究を引き継いで、どこかの軍に超人兵士などといって売り込まれては困るのでね」

「……そこまで用意周到なのは驚きをこえて気持ち悪いな」

「好きにいってくれ。ところで、最初の質問に戻ろうか。君等の自前のヒーローはどうした?どこにいる?いないのかな?それとも……」

「何を考えている?」

「逆だよ。君等はどうも緊張感が足りない。この状況で、俺が次に何をすると思うんだ?」


 その言葉で2人の顔が蒼くなるが、MAXIMAはそれを存分に堪能しながら言葉を続ける。


「君達を殺すさ。だが、ジェームズ。君はついでだ。俺の狙いはマイケルにある」


 そういうとMAXIMAはゆっくりと視線をマイケルに向けると、2人はじりじりと後ろに交代を始める。展望台の入り口までは階段を下りても30メートルはある。多分、逃げきることはできないだろう。


「マイケル。同い年だった君が、あの夜の後。姿を消したと聞いた時は失望もしたが、実は喜びもしたんだよ。

 君は才能もあったが、お父上の会社の事もあった。あの巨大財閥のことが。ただの研究者にすぎなかった私には、それが羨ましかった」

「そりゃどうも。だが、デュポン社は私が作ったもので、ヘイズの家とは関係ない」

「フハハハハハ、そうだったな。だが、君にはわからんだろう?敗戦国の東洋人などが自由に金を使わせてもらえるのは、同じ国の者だけだった。あのヒノモトだけだった!

 10年の俺が築き上げた栄華は、たった1日。たった1度の拒否で全てを取り上げられた!何もかも全てだ!

 そして君だ。

 突然現代社会へと戻った君は、カメラの前で派手にパフォーマンスを繰り返し。裏ではデュポン社を立ち上げた。僅か6年、たった6年で君と俺との立場は逆転だ!

 君の情けをもらわなければ、今日という日を迎えることはなかった……」

「その感謝がこれかい?」

「ハハハ、そうだ。その通りだ。この研究の成果は誰のものでもない、俺の物だ。俺自身の物だ!

 俺の夢で、未来だった!

 それをあの夜の老人を迎えて、君の主宰する場で発表するだって?駄目だ、お断りだ。

 老いさらばえて死にゆく者と、今を輝く実業家にして発明者、そしてそれに救われた哀れな研究家。それをマスコミのカメラの前で撮られ、この先の自分の誉れにしろと言うのか!?こんな屈辱があるか!?」

「そう思われていたとは知らなかった。流石に少しショックだよ」

「冗談ではないぞ、マイケル!俺はNippon人だ。サムライの国の男だ。ヒノモトなんぞに誇りを踏みしだかれたとしたって、自分の心の錦は変わりはしない。それを今度はお前の下でもう一度味わえだと?冗談じゃない!?」

「心が痛むな」

「同感だ、マイケル……ところで疑問があるんだ。君に痛む心臓があるのかな?」


 この瞬間、世界が止まったような気がした。いや、少なくとも何を言われたのかピンと来ないマイケルと、不吉な笑みを口の端に浮かべるMAXIMAはそうだった。しかし、ジェームズだけは違っていた。


「危ないっ」


 いきなり駆けだすと、棒立ちになっていたマイケルを激しく突き飛ばした。いきなりのことに尻もちをついて無様にもひっくり返ってしまったマイケルが体を起こすと、そこには信じられない光景があった。


「おやおや、狙いが外れてしまったかな」


 MAXIMAの楽しげな声は、苦しみのうめき声に続いて血を吐きだすジェームズの苦悶の調べにのせるように言い放つ。

 友人の体を突き飛ばしたジェームズの胸板にはMAXIMAの巨大な手が無造作につきこまれている。さらにMAXIMAがジェームズの肩に手を置くと、胸に突きこまれた自分の腕を「よいしょ」と声に合わせて引っこ抜く。

 メリメリという嫌な音に混じり、骨の砕けるような音もした気がした。

 しかしなによりも、その穴からあふれ出る血と内臓のうごめきがマイケルを打ちのめした。


 ゴフッ


 ジェームズがむせて、始めて気を取り直すと。マイケルは這って友人の元へ行きその手を握る。傷口など見るまでもない。一刻を争う状態だが、現在この施設は全めい封鎖をされており。人を呼ぶことも、助けを求めることもできない。


「……無事……?」

「ああ、ああ!いつもながらいい仕事だった。さすが幼馴染みだ、よくわかってるよな」

「もう……手遅れ……」

「そんなわけあるか!大丈夫だ、傷は浅い。すぐに治る。ああ……えっと、キャスリンを呼ぶ。あの婆さん、確か看病は自分は得意だと言っていた。あれは本当だぞ、子供のころはそれで何度も助けられた。お前にもそれを経験させてやる」

「知ってる……」

「息をしろ!大丈夫だから!待て、待ってろよ」

「家……族には……いい……」

「そんなことは必要ない。助かる、僕を誰だと思っている。サイバネティクス医療の分野でも結果を残してきているんだぞ」


 悲痛な光景であった。こんなことにならないために、出来る限りの手は打っていたし用意もあった。

 だが、それでも起きた。備えが足りなかったのだ。


 そして、そんな事態を引き起こした究極の人間を名乗る存在となったMAXIMAは満足そうにその2人を見ていた。


「ああ、ジェームズ。おお、マイケル。君達をここまで苦しめるつもりはなかった。ところで、君の失われた10年ではこれほど悲しい経験は何回あったんだい?」


 無神経に投げかけられる言葉などマイケルは一々反応などしてやらなかった。変わりに、彼に変わってもうすぐにでもこの世から旅立とうとする友人に全ての意識を向けていた。それでわずかでも彼が自分の側にいられるならと。


「大丈夫だ、怪我は大したことはない。こんなの、あの婆さんの不味い薬膳スープに比べれば全然だ。ほら、最初のブースターのテストを思い出せって。君が止めたのに、僕は危うくコンクリートの地面にキスして血まみれになる所だった」

「あれは……やばかった」

「そう!そうだ、ヤバかった。おかげで従来の噴射式は最悪だと結論が出たわけだ。自分の財布だと、ついついケチりたくなってた時だった。いい教訓だ」

「……そのかわり……新しい物に……」

「そうだったな、君には新し物好きの大馬鹿野郎と言われた。でも、どうせなら全部新しい方がいいじゃないか。その方が綺麗だし、なにより気分がいい」

「ははは……ごほっ」


 血の塊が口や傷口からごぼりと音を立ててあふれ出て、マイケルは慌ててしまう。


「ああ!済まなかった、この話はやめよう。そうだ、そう。なにがいいかな。くそっ、考えろ。思い出せっ!!馬鹿野郎っ」

「マイケル……キミ……に……必要だ」

「そうだ!ああ、そうだ!お前が必要だ、ジェームズ。まだ死ぬな。あと60年ぐらい待て、いや、59年と11カ月でいい。とにかく今はダメだ。まだ、駄目だ!」


 友人を必死に引きとめようとするが、マイケルのその努力もむなしく。ジェームズは、ゆっくりと目を閉じると深く息を吸おうとして……それが叶わず、永遠に時を止めてしまった。

 それを自分の目で見ていながら信じることができず、マイケルはただ冷たくなっていく友人の掌を握ったまま固まっているしか出来なかった。



 MAXIMAは満足だった。

 計画を潰されかけたと思った時は、どうなるかと思ったが。それでも勝利に間違いはなかったのだ。

 コバンザメが自分の好意に邪魔したことも、こうして憎むべき相手が苦悩の果てに嘆き悲しんでいる様を見てスッキリとしていた。だが、それだっていつまでもこうしているわけにはいかない。

(さて、それではマイケル。そろそろお前も友人の所へ送ってやろう)

 自然とその口元の笑みは大きくなり、ただでさえ凶相となったその顔を一層醜いものへと変える。




 この時、このミュートロス研究所内を自由に歩き回れるものはなく。展望台の出来事に誰も手をだせないと、そう思われていた。

 だが、そうではなかったのである。

 展望台の窓の外だった。そこに突如として蒼黒い何かがはためくと、ガラスを破って何かが突入してきたのだ。

 それはマイケルの前に立ち、今まさにトドメを指さんとするMAXIMAに対して何かを放って見せた。MAXIMAの方も、いきなりの事に対処できず。くぐもった声をだすと、マイケルの前からゆっくりと後ずさっていく。



 マイケルはその騒ぎを耳にはしていても、聞いてはいなかったし。見ようともしなかった。



 だが、再び窓ガラスが割れる音がすると。展望台が静かになったことに気がついて始めて顔をあげる。



 青黒い色調のコスチュームは巨体をつつみ。肩からすっぽりと嵌めるようなヘルメット。長く意思のあるような動きをするマントからはみ出て見えるのは、手甲と一体となった鋭い鋼鉄の爪。

 それは東海岸では有名な伝説的クライムヒーロー、ブルービーストその人の姿だった。死んだ友人の手をとり呆然としているマイケルを横に、2つの影が激しく何度も交差する。

 そしてブルービーストは、どうにかしてMAXIMAを展望台から投げ捨てると、すぐには後を追わず彼はマイケルの元へと来て見下ろした。


 しばし、その目がマイケルを見る。


 そしてブルービーストは、地上へと落ちていったMAXIMAを追って。再び展望台から飛び出していく。

 マイケルはその背中の人物の行動にすら気がついてはいないようだった。

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